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4. 呪われた家系
しおりを挟む「ただいま……」
「あら、おかえり恵。やっと帰って来たのね……どうしたの?」
玄関に入った途端、まるで全身から力が抜けた感じになり座り込んでしまった。
「お母さん……私の家系って、何なの?一体何が起きてるの?」
「恵、どうしたの急に……。とにかく上がって。話はゆっくり聞くから」
母は私の背中を支えてリビングに連れて行った。体に重力がいつもの2倍かかっている感じになりすごく重たかった。私はあのお寺であったことを話した。
「そう…………。お坊さんがそんなことを……。でも、私にも家系のことはよく分からないのよ。あの村のことも、戦争の時に全て燃えちゃって記録がないの。墓が荒らされてたことも、どうしてそんなことが起きるのか何とも言えないわ……。でも、母さんと何か関係があるのかもしれない」
「お母さん。私、伊豆に行くって言ったよね。村があった場所、どこか分かる?」
母は徐にスマホを取り出し、地図アプリを開いた。
「うーん、確か……母さんが住んでたところはこの辺りだったと思うわ。もう村の跡すらなくて、木に囲まれちゃってるけどね……。あっ、そういえばこの近辺に恵比寿様を祀った祠があるって聞いたけど。今もあるみたいだし、そこを目印にすればいいんじゃないかしら」
「恵比寿様……」
「うん。豊漁の神様よ。漁業が盛んな地域では、信仰対象にされることが多いのよ。でも、母さんが言うには元々違う水神を祀ってたみたいだけど。それくらいのことしか分からないわね……」
「私たちが伊豆に行くことが決まった直後に、あの現象が起きた……。呼ばれてる気がするの。おばあちゃんに……。結局、何で亡くなったのか分かってないんだよね?」
「表向きには心不全を起こして亡くなったことになってるけどね……。もう結構な歳だったから、そういうこともあるのよ……」
母は祖母の話になると決まって動揺したり、お茶を濁すことがあった。何か知っている。私に何かまだ話していないことがある。私はふとリュックにつけられた長方形の御守りに目をやった。本体は茶褐色の布に包まれており手作り感があった。そのお守りを外すと、表裏を観察した。
「そういえば、このお守り……もらった時は良く分からなかったけど、何でおばあちゃんはこれをくれたのかな?」
「代々受け継がれているものだって言ってたわ。水の近くに行く時は必ずこれを持てって。でも、言われてみたら、どうしてそんなことしなきゃいけないのかしらね」
「何かから守ってるんだ……。水に纏わる何かから……。おばあちゃんのお墓も、濡れてたって言ってたし……」
母は眉を顰めながら、私の手からそのお守りを受け取った。
「普通のお守りとは違うわね……。何か硬いものが入ってる。木のような何か……。でも、迂闊に中身見れないわ。こんなことが起きてたら尚更よね……。ねぇ、本当に行くの?」
母が私に顔を近づけた。私はゆっくりと首を縦に振った。
「お坊さんのあの言葉が気になってさ……。呪われてるって……急に……。酷いよね……。でも、なんかそんな気もしなくはないけど……。私たちが霊が見える体質なのも、何かあるんじゃないかなって……。明日、バイト終わったらもう一回お寺に行ってみる。ちゃんと、お坊さんにどういうことか聞いてみたいの」
「分かった。それなら、これ……。何かあったら困るから」
母はそう言うと、お守りを返して来た。そして私は、もう一度そのお寺に行くことにした。だが、そこで待ち受けていた真実は、とても受け入れ難いものだった。
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