鷹華の日記(公開版)

Yuzki

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5人目~工藤道仁~

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 5.私のバイト先の店長、工藤道仁(くどうみちひと)

 翌日の放課後、店長の呼び出しに応えて、バイト先である大正浪漫喫茶『桜花』にやってきました。
「おう、陽花ちゃん来てくれてありがとな。バイト代は色付けとくから、ちょいと今日頼むわ」
「構いませんよ。私もちょっと息抜きがしたかったというか、しばらく余計なこと考えたくなかったというか……」
「ほぉーう? 陽花ちゃんも思春期真っ只中だもんな、色々悩むといいさ。……っと、そろそろ行かねえと」
「お仕事ですよね? いってらっしゃい」
「いってくらあ。三時間ほどで戻るから、頼んだぜ」

 そんな遣り取りを店長とした後、私はバイト用の制服に着替えます。
 桃色を基調とした、大正時代の女学生が着ていたとされる服です。
 そして私の仕事とは、給仕……あるいはウェイトレスと言ったほうが伝わりやすいでしょうか。
 ここでバイトを始めたばかりの頃は、お皿やカップを落として割ったり、注文をミスしたりと散々でしたが、今ではそんなこともほとんどなくなりました。
 常連さんがたまに、そのことを私をからかってきますが、そんな遣り取りももう慣れたものです。

 さて、この大正浪漫喫茶『桜花』ですが、ここは何というか、雰囲気重視というか最早それしかない、と言っても過言ではないお店です。
 店長の趣味全開で運営されており、というか店長が別の『お仕事』で不在になることもある時点でお察し下さいというか何というか。
 さて、お客さんも常連さんが一人二人だけののんびりとした時間を過ごし、そろそろ三時間も経とうかという頃に。
「ただいま戻ったぜ」
「あれ、陽花? 今日はバイトだったっけ?……あー、道仁にヘルプ頼まれたのか。お疲れ様」
 店長が、兄を連れて店に戻ってきました。
「ちょっと仕事の息抜きに、ここで夜食を調達しようと思ってきたんだけど、そこでバッタリ道仁に会ってなあ」
 兄さんお疲れ様です、と席に着いた兄に水とお絞りを差し出します。
 店長が近くにやってきて、
「陽花ちゃん、俺が居ない間に……特に問題なさそうだな? じゃ、上がってもらって大丈夫だ」
「お? お仕事終わりかー。それじゃ、陽花も何か食べてくか?」
 折角の兄の魅力的な提案ではありますが、
「んー、店長のお邪魔になるのも悪いですし、月華が一人で家で待ってますし、早く帰ることにします」
 そりゃ残念、と兄は寂しそうな顔をしていますが、店長はどこか嬉しそうです。
 ちなみに店長と兄とは中学高校と同級生で、いわゆる親友、という間柄なのだそうです。
 それは兄の談で、店長から言わせると、
「んー? 陽花ちゃん? 早く帰るんじゃないの? 大丈夫?」
 釘を刺されました。
 いえ、私としては男の人同士であっても、お互い合意の上なら良いと思うのですが……。
 あッ、すみません店長! もうあがりますね!

「大丈夫か? もう遅い時間だし、家まで送っていこうか?」
「大丈夫ですよ、兄さん。私ももう子供ではないので」
「いや、子供とかそういうことじゃなくて、立派で可愛らしい女性だからこそ不安になるというか、」
「お褒め頂きありがとうございます……でも大丈夫ですよ。では、お疲れ様でしたー」
 おうお疲れー、という店長と、気を付けて帰れよー、という兄の声を背にして、私は店を出た。

 さて、これで五人の話が全て終わりましたけれども。
 ではでは、最初の質問に立ち返りましょう。
 私の好きな人は、この中の一体誰なのでしょうか?
 次回は答え合わせの回でもありますが、その前に。
 まだ、明確に語っていない一人が居ましたね。
 その人についても、次で語らせて頂きましょう。
 
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