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第一章
シャワー室
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検査を終えると、ボクは身体を洗う。とても暗い、大きなシャワー室で、一人で。
無機質なコンクリートの壁。その中に、仕切りで区切られた五つの個室のような場所があって。個室の中に入ると、天井に一本の細い配管が通ってる。
バルブを捻ると、配管から水が出でてくるので。ボクはマスターに貰った服を丁寧に脱いで、それを浴びた。
……この時のボクは、秘密を持っている。誰にも内緒で、コッソリと。ボクは、さっきの”続き”をする。冷たい水が全身を襲うけれど、身体の芯と心の奥は、いつも暖かい。
マスターほど上手には出来ない。不慣れな手つきで、ボクは、自分のそれを刺激する。あの人を想って、一生懸命に。
「……気持ちいい?」
それは、ふとした驚きだった。いつもなら誰も居ないこのシャワー室に、今日は他に誰かが居たようだった。
驚きのあまりボクは、思いがけないタイミングで果ててしまい。その余韻に上手く浸ることが出来なかった。
「あ……ごめんね。邪魔、しちゃった」
声は、隣の個室から聞こえてきた。そして小さな壁から、ひょっこりと姿を現す。……それは、ボクと同じくらいの子供だった。
「一緒に、いいかな。一人じゃ、寂しくて」
その子は半身を壁に隠して、ボクに話しかけている。ボクは呆気に取られていて、何も返事を返すことが出来なくて。しばらくして、自分の手についたのを流してから、ようやく答えることが出来た。
「……君は、誰?」
「僕は、僕。……君は?」
「……ボクも、ボク」
「そうなんだ……。じゃあ、僕たち、一緒だね」
すると僕は、ボクの目の前に姿を現した。背丈はボクと一緒ほどだけど、髪はボクよりも短く、前髪で目が少し隠れている。首の所に小さなホクロがあって、それがなんだか可愛らしい。
「……君も、新しい服を貰ったんだ」
「うん。素敵、でしょ」
僕は、ボクと同じく新しい服を着ていた。汚れ一つない、純白のドレス。――マスターと一緒。
僕は服を見せびらかすように、フフフと笑いながら、その場でくるっと一回転した。それはまるで、絵本で見た”舞踏会”というものにそっくりで。……すごく、羨ましい。
「ねえ、君も着て見せてくれない?」
すると僕は、ボクの黒いワンピースを見た。ボクは嫉妬していたので、そっぽを向いた。
でも、どうやらこの子もイジワルをするらしい。僕はボクがそっぽを向いたのを見ると、急に近づいてきて――。
「――お願い、着て?」
耳元で囁いた。吐息が、くすぐったかった。肩に触れるこの子の手が、とても冷たく、暖かく。
なぜかボクは、その声に逆らえなくて。ボクは濡れた身体を拭かないまま、ワンピースに手を伸ばした。
「……可愛いよ。すごく、似合ってる」
布が身体に張り付いて、恥ずかしい。僕から刺さる視線が、なんだかこそばゆくて。思わずボクは、身をすくめたのだけど……。
「えっ……、え……?」
すると僕は、突然服の上からボクを触った。……マスターとは、違う手つきで。優しく、……激しく。
「怖がらないで。僕に、任せて」
やけに器用な指先。まるで触手のような艶めかしさが、ボクを弄んでいる。さっきの余韻で、まだ敏感なのに。
こんなの、知らない。こんなに激しいの、知らない。いつもなら痛いのに、どうして。
いきたくない。マスター以外で、いきたくない。あの人以外で、感じたくない。なのに、どうして。どうしてこんなに、甘えたくなるの?
「っ……!」
――出てしまった。あの人、以外で。
「……早漏さんなんだね。それでも、可愛いよ。……あれ?」
……汚してしまった。あの人から貰った服を、汚してしまった。こんなに、綺麗な服なのに。
嫌われるだろうか。怒られるだろうか。それとも、もうどちらもしてくれないだろうか。
こんなボクなんかが、あの人からの贈り物を、傷つけるなんて。そんなの、嫌だ。そんなの、嫌だ。嫌だ。嫌――。
「――ごめんね。悲しませるつもりは、なかったんだ」
すると僕は、ボクの頬にキスをした。それでボクは、ふと我に返って。知らないうちに、自分が涙を流していたことに気が付く。
「君が素敵だったのが、ちょっと羨ましくて。……イジワルしちゃった」
「ボ、ボク……」
「大丈夫だよ。汚れちゃったら、洗えばいいんだ。マスターだって、許してくれるよ」
僕はボクの服を、そっと脱がした。そして出しっぱになっていたシャワーに濡らして、汚れた所を洗ってくれた。
「そのままじゃあ、寒いよね。……じゃあ、これ、貸してあげる」
すると僕は、突然自分のドレスを脱いだ。華奢で繊細な体が、露わになって。なぜだかボクは、それにドキドキしちゃって。
僕は、ドレスを差し出してくれた。ボクは少し戸惑ってから、ようやく受け取って。ボクは、少しだけぎこちない動きで、白いドレスに身を包んだ。
「……あり、がとう」
……僕の匂いがする。まるで、自分が知らない誰かになった感じ。今までの自分とは、少しだけ違うような。
「いいんだよ。元々は、僕のせいだしね」
ワンピースを洗い終わった僕は、いくらか水を払い落として、壁にかけた。あれが乾くまでには、少し時間がかかると思う。
「ねえ、探検しない?」
「……探検?」
「そう。乾くまでに、時間がかかるでしょ? だからその間、ちょっとだけ、探検するの」
僕の言うことに、驚きはなかった。だってボクも、この中を探検したいと思っていたから。
でもそれは、許してくれない。マスターにというわけじゃないけど、もっと他の人に、怒られてしまう。それで、お仕置きを受けてしまう。
「……駄目だよ。怒られちゃうから」
「大丈夫。僕、秘密の抜け穴を知ってるんだ。ねえ、一緒に行こう?」
すると僕は、ボクの両手を握った。それはマスターとは違って、とても小さな手で。なぜだかボクは、少しだけ嬉しかった。
「……で、でも、君のお洋服は? マスターが、お外に出る時は、いつもおめかしをしなさいって」
「フフ、大丈夫。ほら、見て」
僕は、大きなバスタオルを持っていた。それをマントのように羽織ると、少しだけマスターに似ていた。
「わあ……」
「素敵でしょ? 最近気が付いたんだ。これならおめかしだものね。さあ、行こう!」
こうしてボクは、やや僕に引っ張られる形でシャワー室を抜け出した。ほんの少しの、ささいな冒険が、始まったのだ。
無機質なコンクリートの壁。その中に、仕切りで区切られた五つの個室のような場所があって。個室の中に入ると、天井に一本の細い配管が通ってる。
バルブを捻ると、配管から水が出でてくるので。ボクはマスターに貰った服を丁寧に脱いで、それを浴びた。
……この時のボクは、秘密を持っている。誰にも内緒で、コッソリと。ボクは、さっきの”続き”をする。冷たい水が全身を襲うけれど、身体の芯と心の奥は、いつも暖かい。
マスターほど上手には出来ない。不慣れな手つきで、ボクは、自分のそれを刺激する。あの人を想って、一生懸命に。
「……気持ちいい?」
それは、ふとした驚きだった。いつもなら誰も居ないこのシャワー室に、今日は他に誰かが居たようだった。
驚きのあまりボクは、思いがけないタイミングで果ててしまい。その余韻に上手く浸ることが出来なかった。
「あ……ごめんね。邪魔、しちゃった」
声は、隣の個室から聞こえてきた。そして小さな壁から、ひょっこりと姿を現す。……それは、ボクと同じくらいの子供だった。
「一緒に、いいかな。一人じゃ、寂しくて」
その子は半身を壁に隠して、ボクに話しかけている。ボクは呆気に取られていて、何も返事を返すことが出来なくて。しばらくして、自分の手についたのを流してから、ようやく答えることが出来た。
「……君は、誰?」
「僕は、僕。……君は?」
「……ボクも、ボク」
「そうなんだ……。じゃあ、僕たち、一緒だね」
すると僕は、ボクの目の前に姿を現した。背丈はボクと一緒ほどだけど、髪はボクよりも短く、前髪で目が少し隠れている。首の所に小さなホクロがあって、それがなんだか可愛らしい。
「……君も、新しい服を貰ったんだ」
「うん。素敵、でしょ」
僕は、ボクと同じく新しい服を着ていた。汚れ一つない、純白のドレス。――マスターと一緒。
僕は服を見せびらかすように、フフフと笑いながら、その場でくるっと一回転した。それはまるで、絵本で見た”舞踏会”というものにそっくりで。……すごく、羨ましい。
「ねえ、君も着て見せてくれない?」
すると僕は、ボクの黒いワンピースを見た。ボクは嫉妬していたので、そっぽを向いた。
でも、どうやらこの子もイジワルをするらしい。僕はボクがそっぽを向いたのを見ると、急に近づいてきて――。
「――お願い、着て?」
耳元で囁いた。吐息が、くすぐったかった。肩に触れるこの子の手が、とても冷たく、暖かく。
なぜかボクは、その声に逆らえなくて。ボクは濡れた身体を拭かないまま、ワンピースに手を伸ばした。
「……可愛いよ。すごく、似合ってる」
布が身体に張り付いて、恥ずかしい。僕から刺さる視線が、なんだかこそばゆくて。思わずボクは、身をすくめたのだけど……。
「えっ……、え……?」
すると僕は、突然服の上からボクを触った。……マスターとは、違う手つきで。優しく、……激しく。
「怖がらないで。僕に、任せて」
やけに器用な指先。まるで触手のような艶めかしさが、ボクを弄んでいる。さっきの余韻で、まだ敏感なのに。
こんなの、知らない。こんなに激しいの、知らない。いつもなら痛いのに、どうして。
いきたくない。マスター以外で、いきたくない。あの人以外で、感じたくない。なのに、どうして。どうしてこんなに、甘えたくなるの?
「っ……!」
――出てしまった。あの人、以外で。
「……早漏さんなんだね。それでも、可愛いよ。……あれ?」
……汚してしまった。あの人から貰った服を、汚してしまった。こんなに、綺麗な服なのに。
嫌われるだろうか。怒られるだろうか。それとも、もうどちらもしてくれないだろうか。
こんなボクなんかが、あの人からの贈り物を、傷つけるなんて。そんなの、嫌だ。そんなの、嫌だ。嫌だ。嫌――。
「――ごめんね。悲しませるつもりは、なかったんだ」
すると僕は、ボクの頬にキスをした。それでボクは、ふと我に返って。知らないうちに、自分が涙を流していたことに気が付く。
「君が素敵だったのが、ちょっと羨ましくて。……イジワルしちゃった」
「ボ、ボク……」
「大丈夫だよ。汚れちゃったら、洗えばいいんだ。マスターだって、許してくれるよ」
僕はボクの服を、そっと脱がした。そして出しっぱになっていたシャワーに濡らして、汚れた所を洗ってくれた。
「そのままじゃあ、寒いよね。……じゃあ、これ、貸してあげる」
すると僕は、突然自分のドレスを脱いだ。華奢で繊細な体が、露わになって。なぜだかボクは、それにドキドキしちゃって。
僕は、ドレスを差し出してくれた。ボクは少し戸惑ってから、ようやく受け取って。ボクは、少しだけぎこちない動きで、白いドレスに身を包んだ。
「……あり、がとう」
……僕の匂いがする。まるで、自分が知らない誰かになった感じ。今までの自分とは、少しだけ違うような。
「いいんだよ。元々は、僕のせいだしね」
ワンピースを洗い終わった僕は、いくらか水を払い落として、壁にかけた。あれが乾くまでには、少し時間がかかると思う。
「ねえ、探検しない?」
「……探検?」
「そう。乾くまでに、時間がかかるでしょ? だからその間、ちょっとだけ、探検するの」
僕の言うことに、驚きはなかった。だってボクも、この中を探検したいと思っていたから。
でもそれは、許してくれない。マスターにというわけじゃないけど、もっと他の人に、怒られてしまう。それで、お仕置きを受けてしまう。
「……駄目だよ。怒られちゃうから」
「大丈夫。僕、秘密の抜け穴を知ってるんだ。ねえ、一緒に行こう?」
すると僕は、ボクの両手を握った。それはマスターとは違って、とても小さな手で。なぜだかボクは、少しだけ嬉しかった。
「……で、でも、君のお洋服は? マスターが、お外に出る時は、いつもおめかしをしなさいって」
「フフ、大丈夫。ほら、見て」
僕は、大きなバスタオルを持っていた。それをマントのように羽織ると、少しだけマスターに似ていた。
「わあ……」
「素敵でしょ? 最近気が付いたんだ。これならおめかしだものね。さあ、行こう!」
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