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第一章
身体検査
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「おはよう。さてさて、今日の調子はどうかな?」
「問題ありません、マスター」
今日もボクは、いつものように治療室へと来た。でも今日は珍しく、他の人はいない。居るのは、マスターだけ。
こういう時は、この部屋が広く感じる。少しだけ解放されて、幸せになれる。いつもは怖い機械も、薬品も。この地獄すらも。マスターと一緒なら、怖くない。
マスターはボクが知る中で、一番偉い人間で。そして、一番ボクを理解してくれる人。
いつも不思議な仮面をつけているから、素顔は見えない。仮面は顔半分を隠しているから、見えるのは唇だけ。でもきっと、すごく綺麗なのだろう。だっていつも着ているマントは、とても綺麗だし。その隙間からたまに見える手のひらだって、とてもとても綺麗なんだ。
「今日はちょっと、いつもより強い薬をうつからね。少し痛むだろうけど、我慢するんだよ」
「はい、マスター」
マスターは、注射器を取り出した。中には緑色の液体が入っていて、それがボクの身体に入ってくるのだ。
小さな針が、ボクの腕に刺さる。少しチクッとした痛みの後に、血管の中に液体が流れ込んでくる。そして時間が経つにつれて、全身が、とても痛い。
「……ま、マスター……」
「ああ。ほら、手を握っててあげよう。君なら、耐えられるだろう?」
怖い。身体の中を、毛虫が這っている気がする。でも、マスターの暖かい手が、それを紛らわせてくれる。
そして少しすると、ようやく痛みが治まった。ボクが息を切らせて、マスターの顔を見ると、マスターは、頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったね。さあ、次は身体検査だよ。……お洋服を、脱いでごらん」
「……うん」
ボクは名残惜しくも、マスターから手を離して、自分のお洋服を脱いだ。前に貰った、マスターからのプレゼント。元々は灰色の大きなワンピースだったんだけど、もうすっかり汚れてしまって、ボロボロになっちゃった。
毎回恒例の、身体検査。頭、首。胸、お腹、足の先までもが、マスターに見られていく。ボクはいつもそれが恥ずかしくて、顔が真っ赤になっちゃうんだけど。マスターはいつも、優しく手を握っててくれる。
「うん。特に問題はないようだね。……さあ、こっちの方はどうかな?」
そして足の検査を終えて、最後に。マスターの手のひらが、ふとももを撫でるようにつたっていく。……最後はいつも、ボクの大事な所に辿り着いて。ボクとマスターは、……愛し合う。
「……マスターっ……」
「ほら。ゆっくり力を抜いて……」
いつもマスターは、ボクを優しく触る。他の乱暴な人たちと違って、とっても、優しい。……この瞬間だけが、ボクの生きがい。
「……ああ、そうだ。甘えていいんだよ、私に」
すごく、ドキドキする。思わずボクは、マスターの腕にしがみつく。息が途切れ途切れになって、上手く呼吸が出来ない。
マスターの細くて大きな指先が、ボクを刺激する。だんだんと近づいてくるそれに、ボクは密かな恐怖を抱いていた。そして同時に、――興奮も。
「――あ――」
あっという間に訪れた。全身を包み込む、甘い静電気。頭の中で次々と溢れてくる、ピリピリとした幸福感。
今のボクの顔は、きっとだらしないのだろう。ボクがマスターに希う、この顔。
……マスターの、淡い口紅が塗られた、小さな唇。……ボクはそれに、必死に甘えた。
「……ん……」
――キス。ボクはマスターと、それをした。唾液と共に流れ込んでくる、マスターからの、愛。
時おり舌が甘噛みされ、その度にボクは気絶しそうになる。そしてボクがもう一度果ててしまいそうになると、マスターはボクにイジワルをするように、口を離した。
「……ほら。綺麗にしてくれるかい?」
「……うん」
マスターは、左手を差し出した。その美しくしなやかな指先には、ボクの、白い痕跡が。
ボクはそれを、舌の先で拭い取る。……苦い。でもマスターの見せる、口元の微笑みが。それを甘くさせた。
「良い子だね。……さあ、おいで。新しいお洋服を用意したんだ」
するとマスターは、仮面を戻し、ボクの元を離れて隣の部屋に行ってしまった。
……いつもこうだ。マスターはいつも、ボクにイジワルをする。ボクはもっとしたいのに、いつもお預け。ボクは少しだけそっぽを向きながら、マスターについていく。
「ほら、ごらん。どれでも好きなものを、プレゼントしてあげるよ」
隣の部屋には、沢山のお洋服が並べられていた。まるで絵本で見たお店のように、煌びやかな部屋で。色とりどりのお洋服があった。
「これとか、似合うと思うんだ。ほら、こっちだって」
ボクには、服のことはわからない。でもマスターがボクの服を選んでくれている時は、とても幸せだ。だからボクは、マスターが一番喜んでくれた服を、選ぶ。
「……ああ、やっぱりこれが、一番似合う。君も、そう思うかい?」
「――うん。マスター」
ボクは鏡に映る、ボクとマスターを見た。マスターの隣には、ボクがいる。ボサボサの長い髪だけど。小さな体だけど。とても綺麗な黒いワンピースを着て、ここに居る。……ああ、幸せだ。
「問題ありません、マスター」
今日もボクは、いつものように治療室へと来た。でも今日は珍しく、他の人はいない。居るのは、マスターだけ。
こういう時は、この部屋が広く感じる。少しだけ解放されて、幸せになれる。いつもは怖い機械も、薬品も。この地獄すらも。マスターと一緒なら、怖くない。
マスターはボクが知る中で、一番偉い人間で。そして、一番ボクを理解してくれる人。
いつも不思議な仮面をつけているから、素顔は見えない。仮面は顔半分を隠しているから、見えるのは唇だけ。でもきっと、すごく綺麗なのだろう。だっていつも着ているマントは、とても綺麗だし。その隙間からたまに見える手のひらだって、とてもとても綺麗なんだ。
「今日はちょっと、いつもより強い薬をうつからね。少し痛むだろうけど、我慢するんだよ」
「はい、マスター」
マスターは、注射器を取り出した。中には緑色の液体が入っていて、それがボクの身体に入ってくるのだ。
小さな針が、ボクの腕に刺さる。少しチクッとした痛みの後に、血管の中に液体が流れ込んでくる。そして時間が経つにつれて、全身が、とても痛い。
「……ま、マスター……」
「ああ。ほら、手を握っててあげよう。君なら、耐えられるだろう?」
怖い。身体の中を、毛虫が這っている気がする。でも、マスターの暖かい手が、それを紛らわせてくれる。
そして少しすると、ようやく痛みが治まった。ボクが息を切らせて、マスターの顔を見ると、マスターは、頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったね。さあ、次は身体検査だよ。……お洋服を、脱いでごらん」
「……うん」
ボクは名残惜しくも、マスターから手を離して、自分のお洋服を脱いだ。前に貰った、マスターからのプレゼント。元々は灰色の大きなワンピースだったんだけど、もうすっかり汚れてしまって、ボロボロになっちゃった。
毎回恒例の、身体検査。頭、首。胸、お腹、足の先までもが、マスターに見られていく。ボクはいつもそれが恥ずかしくて、顔が真っ赤になっちゃうんだけど。マスターはいつも、優しく手を握っててくれる。
「うん。特に問題はないようだね。……さあ、こっちの方はどうかな?」
そして足の検査を終えて、最後に。マスターの手のひらが、ふとももを撫でるようにつたっていく。……最後はいつも、ボクの大事な所に辿り着いて。ボクとマスターは、……愛し合う。
「……マスターっ……」
「ほら。ゆっくり力を抜いて……」
いつもマスターは、ボクを優しく触る。他の乱暴な人たちと違って、とっても、優しい。……この瞬間だけが、ボクの生きがい。
「……ああ、そうだ。甘えていいんだよ、私に」
すごく、ドキドキする。思わずボクは、マスターの腕にしがみつく。息が途切れ途切れになって、上手く呼吸が出来ない。
マスターの細くて大きな指先が、ボクを刺激する。だんだんと近づいてくるそれに、ボクは密かな恐怖を抱いていた。そして同時に、――興奮も。
「――あ――」
あっという間に訪れた。全身を包み込む、甘い静電気。頭の中で次々と溢れてくる、ピリピリとした幸福感。
今のボクの顔は、きっとだらしないのだろう。ボクがマスターに希う、この顔。
……マスターの、淡い口紅が塗られた、小さな唇。……ボクはそれに、必死に甘えた。
「……ん……」
――キス。ボクはマスターと、それをした。唾液と共に流れ込んでくる、マスターからの、愛。
時おり舌が甘噛みされ、その度にボクは気絶しそうになる。そしてボクがもう一度果ててしまいそうになると、マスターはボクにイジワルをするように、口を離した。
「……ほら。綺麗にしてくれるかい?」
「……うん」
マスターは、左手を差し出した。その美しくしなやかな指先には、ボクの、白い痕跡が。
ボクはそれを、舌の先で拭い取る。……苦い。でもマスターの見せる、口元の微笑みが。それを甘くさせた。
「良い子だね。……さあ、おいで。新しいお洋服を用意したんだ」
するとマスターは、仮面を戻し、ボクの元を離れて隣の部屋に行ってしまった。
……いつもこうだ。マスターはいつも、ボクにイジワルをする。ボクはもっとしたいのに、いつもお預け。ボクは少しだけそっぽを向きながら、マスターについていく。
「ほら、ごらん。どれでも好きなものを、プレゼントしてあげるよ」
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「これとか、似合うと思うんだ。ほら、こっちだって」
ボクには、服のことはわからない。でもマスターがボクの服を選んでくれている時は、とても幸せだ。だからボクは、マスターが一番喜んでくれた服を、選ぶ。
「……ああ、やっぱりこれが、一番似合う。君も、そう思うかい?」
「――うん。マスター」
ボクは鏡に映る、ボクとマスターを見た。マスターの隣には、ボクがいる。ボサボサの長い髪だけど。小さな体だけど。とても綺麗な黒いワンピースを着て、ここに居る。……ああ、幸せだ。
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