崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第一章

塔の上へ

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 橋を渡っていくと、やがて大きな塔が見えてきた。全部コンクリートで出来ていそうな、灰色の長い塔で。一番てっぺんは、天国にすら届いていそうだった。
「わあ、すごい……。これって、何?」
「僕にもよくわからないんだ。でも、ここは面白いんだよ!」
 すると僕は、塔に向かって走る。でもボクは、塔を見上げるのに精いっぱいで。それについていけなかった。
「ねえ、手伝って! ここ僕だけだと、大変なんだ!」
 塔に入るには、大きな扉を開ける必要があった。それはボクたちよりもずっと大きくて、頑丈で。でも頑張れば開きそうなくらい。
 ボクは急いで扉の前に行って、僕と一緒に扉に両手を添える。そして息をぴったりあわせるために、せーので一気に力をこめた。
「ううん、うう……」
 びくともしない、という訳ではなかった。鍵はかかっていないようで、このまま押していれば開きそうな感じ。
 その証拠として、ずっと力を入れていると、扉が少しづつ開いて行く。重くて古びた音が、お腹の中まで響き渡った。
「――よし、入ろう!」
 すると僕が、一足先に塔の中へ姿を消した。それで気が付いたけど、既に扉は開いていた。正確に言えば、ボクたちが通り抜けるには十分なくらいの隙間が、出来ていたのだ。
 必死に扉を全部開けようとしていた自分が、なんだかバカに思えて。また少しだけ顔を赤くしながら、僕の後を追った。
「……あれ?」
 でも塔の中は、思っていたよりも呆気なかった。中にあったのは、何か昇降機のようなものだけで。他には目新しいものは、特に見当たらない。
「ばあっ!」
「わあ!?」
 突然、目の前が真っ暗になった。でもすぐに、僕のイタズラだと気が付く。
「ど、どうしたの?」
「フフ。ちょっとこのままで居てね。素敵なもの見せてあげるから!」
 そのまましばらくボクは、僕の操り人形になった。僕はゆっくりとボクを導いて、多分まっすぐ進んだ。
 そして足の裏の感覚がコンクリートではなく、冷たい鉄に変わると。昇降機の辺りに来たんだとわかって。続けて何かレバーのような音や、機械を操作する音がしたと思うと。突然、地面が動いた。
「うわっ」
 昇降機が動いたらしい。上か、下か。どっちからわからないけど、動いている。でも感覚的には、上に行ってるような。
「お空の向こうに行くの?」
「うーん、どうかな。よくわかんないけど、まあ、行けばわかるよ。ほら、着いた」
 昇降機が止まった。衝撃が大きくて、少しだけ身体が浮いた。直後に扉が開くような音がして、僕は再び歩き出す。
 ……穏やかな風。風が柔らかいと思ったのは、いつぶりだろう。でもその感覚は、すぐにどうでもよくなった。
「わっ、何……?」
 ボクを襲った、知らない感覚。今まで、歩いたことのない場所。鉄でも、コンクリートでも、タイルでもない。なぜか足の裏がチクチクして、くすぐったいんだ。
「こ、こわいよ。ここ、どこなの? どこを歩いてるの?」
「フフ。内緒!」
 知らない音がする。知らない匂いがする。まるで今ここにある自分以外のものが、全て知らないもののようで。
「帰ろう、ここ、嫌だ……」
「――駄目。行くの」
 ……やっぱり、この子はイジワルだ。ボクは嫌なのに、歩くのをやめてくれない。
「大丈夫。きっと、君もここが好きになるよ。……ほら」
 するとボクの目から、僕の手が離れた。だから、後はボクが自分で目を開けたら、目の前が見えるけど。なんだか、その勇気がなくて。
 だからボクは、甘えた。ボクは僕の手を、握った。ボクらの指が重なり合って、すこしだけ、勇気を貰って。――そして、目を開けた。
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