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第三章
お茶の時間
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それは、夢だった。ボクの見ていた、夢だった。 夢なんて、いつぶりに見ただろうか。……それも、あんな怖い夢。
「クロ、そこの緑のフラスコを取ってくれるかい?」
「……うん。マスター」
今ボクは、マスターのお手伝いをしている。荷物を運んだり、本を取ってきたり。そしてマスターも、一生懸命にお仕事をしていた。色々な液体を、混ぜたり、何かを入れたり。よくわからない、色んなこと。
「ありがとう。もう少ししたらひと段落するから。先に休憩しててくれ」
「……わかった」
怖い。マスターと、離れてしまうのが。マスターが、離れていくのが。
「あ、クロ。おつかれ。お茶、入れたよ」
隣のお部屋へ行くと、シロが居た。椅子に座って、テーブルの上で、ティーカップに何かを注いでいた。
綺麗なお洋服。昨日マスターに、プレゼントしてもらったもの。白くて、ふりふりしたのがついてる、ドレス。前のと似てるけど、ちょっと模様が違ってて。
そしてボクの方も、同じだった。前とは模様が違うお洋服を、プレゼントしてもらった。……とっても、嬉しくて。一緒に、シロと、お洋服を見せあいたかったけど。
「っ……」
ボクは、シロから目を背けた。後ろで、シロの悲しそうな声がした。
「……怒ってるの? 昨日の、こと」
怒ってない。それに、シロが嫌いなわけじゃない。でも、……どうして、あんなことを。どう、して? ……それだけが、わからなかった。
「大好き、だからだよ」
それは、まるでボクの心を読んだような言葉だった。……でも、本当に、それだけ?
「僕は、君のことが大好きなんだ。……僕らが知り合う、ずっとずっと、前からね」
「え……?」
「フフ。さあ、お茶が冷めちゃうよ。早く、こっちに来て」
シロは、ボクに近づいて。ボクの手を引っ張った。……またボクは、それを拒めなくて。二人、一緒に。椅子に座った。
「紅茶、って言うんだ。古い昔の飲み物で、美味しいんだよ」
シロが、ティーカップを差し出した。中には、薄いオレンジ色の液体が入ってて。……ほのかに、甘い匂いがする。
ボクはそれを、おどおどしながら受け取って、飲んだ。飲み物なのかどうか、わからなかったから。でも、結局、美味しかった。飲んだことが、ないくらい。
「えへへ。おかわり、あるからね」
シロは、笑顔だった。とても、嬉しそうで。……なんだか、複雑な気持ち。
「いい匂いがするね。私にも、一杯貰えるかな」
すると、マスターがお部屋に来た。お仕事が終わったようで、マントが汚れている。
「マスター、もう安定したの?」
「うん。細胞分裂のは、もうほぼ完成かな。後はベビーデザインの問題なんだけど、そこはまだもう少し時間がかかりそうだ」
ボクの隣に、マスターが座った。シロが、もう一個ティーカップを取り出して。紅茶……? を、注いだ。
「うーん、いいね。これはどこのだったかな?」
「ニルギリだよ。この前作ってみたんだ。難しかったけどね」
マスターが、紅茶を飲む。……。小さな、お口で。
「……ああ、美味しい。やっぱり久しぶりの紅茶は、染みわたる」
「そう、よかった。じゃあまた今度作って……」
「――でも、私は……ミルクティーが、飲みたいな」
「……え」
「入れて来て、くれるかい?」
するとシロは、なぜか悲しそうな顔をした。……そして、マスターのティーカップを受け取って。椅子から立ち上がった。
「……わかり、ました」
シロがしょんぼりしながら、どこかに行った。小さな扉を抜けて、お部屋から出ていっちゃって。……どうしたんだろう。
「……ようやく、二人きりになれたね」
「クロ、そこの緑のフラスコを取ってくれるかい?」
「……うん。マスター」
今ボクは、マスターのお手伝いをしている。荷物を運んだり、本を取ってきたり。そしてマスターも、一生懸命にお仕事をしていた。色々な液体を、混ぜたり、何かを入れたり。よくわからない、色んなこと。
「ありがとう。もう少ししたらひと段落するから。先に休憩しててくれ」
「……わかった」
怖い。マスターと、離れてしまうのが。マスターが、離れていくのが。
「あ、クロ。おつかれ。お茶、入れたよ」
隣のお部屋へ行くと、シロが居た。椅子に座って、テーブルの上で、ティーカップに何かを注いでいた。
綺麗なお洋服。昨日マスターに、プレゼントしてもらったもの。白くて、ふりふりしたのがついてる、ドレス。前のと似てるけど、ちょっと模様が違ってて。
そしてボクの方も、同じだった。前とは模様が違うお洋服を、プレゼントしてもらった。……とっても、嬉しくて。一緒に、シロと、お洋服を見せあいたかったけど。
「っ……」
ボクは、シロから目を背けた。後ろで、シロの悲しそうな声がした。
「……怒ってるの? 昨日の、こと」
怒ってない。それに、シロが嫌いなわけじゃない。でも、……どうして、あんなことを。どう、して? ……それだけが、わからなかった。
「大好き、だからだよ」
それは、まるでボクの心を読んだような言葉だった。……でも、本当に、それだけ?
「僕は、君のことが大好きなんだ。……僕らが知り合う、ずっとずっと、前からね」
「え……?」
「フフ。さあ、お茶が冷めちゃうよ。早く、こっちに来て」
シロは、ボクに近づいて。ボクの手を引っ張った。……またボクは、それを拒めなくて。二人、一緒に。椅子に座った。
「紅茶、って言うんだ。古い昔の飲み物で、美味しいんだよ」
シロが、ティーカップを差し出した。中には、薄いオレンジ色の液体が入ってて。……ほのかに、甘い匂いがする。
ボクはそれを、おどおどしながら受け取って、飲んだ。飲み物なのかどうか、わからなかったから。でも、結局、美味しかった。飲んだことが、ないくらい。
「えへへ。おかわり、あるからね」
シロは、笑顔だった。とても、嬉しそうで。……なんだか、複雑な気持ち。
「いい匂いがするね。私にも、一杯貰えるかな」
すると、マスターがお部屋に来た。お仕事が終わったようで、マントが汚れている。
「マスター、もう安定したの?」
「うん。細胞分裂のは、もうほぼ完成かな。後はベビーデザインの問題なんだけど、そこはまだもう少し時間がかかりそうだ」
ボクの隣に、マスターが座った。シロが、もう一個ティーカップを取り出して。紅茶……? を、注いだ。
「うーん、いいね。これはどこのだったかな?」
「ニルギリだよ。この前作ってみたんだ。難しかったけどね」
マスターが、紅茶を飲む。……。小さな、お口で。
「……ああ、美味しい。やっぱり久しぶりの紅茶は、染みわたる」
「そう、よかった。じゃあまた今度作って……」
「――でも、私は……ミルクティーが、飲みたいな」
「……え」
「入れて来て、くれるかい?」
するとシロは、なぜか悲しそうな顔をした。……そして、マスターのティーカップを受け取って。椅子から立ち上がった。
「……わかり、ました」
シロがしょんぼりしながら、どこかに行った。小さな扉を抜けて、お部屋から出ていっちゃって。……どうしたんだろう。
「……ようやく、二人きりになれたね」
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