崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
19 / 139
第三章

お茶の時間

しおりを挟む
 それは、夢だった。ボクの見ていた、夢だった。  夢なんて、いつぶりに見ただろうか。……それも、あんな怖い夢。
「クロ、そこの緑のフラスコを取ってくれるかい?」
「……うん。マスター」
 今ボクは、マスターのお手伝いをしている。荷物を運んだり、本を取ってきたり。そしてマスターも、一生懸命にお仕事をしていた。色々な液体を、混ぜたり、何かを入れたり。よくわからない、色んなこと。
「ありがとう。もう少ししたらひと段落するから。先に休憩しててくれ」
「……わかった」
 怖い。マスターと、離れてしまうのが。マスターが、離れていくのが。
「あ、クロ。おつかれ。お茶、入れたよ」
 隣のお部屋へ行くと、シロが居た。椅子に座って、テーブルの上で、ティーカップに何かを注いでいた。
 綺麗なお洋服。昨日マスターに、プレゼントしてもらったもの。白くて、ふりふりしたのがついてる、ドレス。前のと似てるけど、ちょっと模様が違ってて。
 そしてボクの方も、同じだった。前とは模様が違うお洋服を、プレゼントしてもらった。……とっても、嬉しくて。一緒に、シロと、お洋服を見せあいたかったけど。
「っ……」
 ボクは、シロから目を背けた。後ろで、シロの悲しそうな声がした。
「……怒ってるの? 昨日の、こと」
 怒ってない。それに、シロが嫌いなわけじゃない。でも、……どうして、あんなことを。どう、して? ……それだけが、わからなかった。
「大好き、だからだよ」
 それは、まるでボクの心を読んだような言葉だった。……でも、本当に、それだけ?
「僕は、君のことが大好きなんだ。……僕らが知り合う、ずっとずっと、前からね」
「え……?」
「フフ。さあ、お茶が冷めちゃうよ。早く、こっちに来て」
 シロは、ボクに近づいて。ボクの手を引っ張った。……またボクは、それを拒めなくて。二人、一緒に。椅子に座った。
「紅茶、って言うんだ。古い昔の飲み物で、美味しいんだよ」
 シロが、ティーカップを差し出した。中には、薄いオレンジ色の液体が入ってて。……ほのかに、甘い匂いがする。
 ボクはそれを、おどおどしながら受け取って、飲んだ。飲み物なのかどうか、わからなかったから。でも、結局、美味しかった。飲んだことが、ないくらい。
「えへへ。おかわり、あるからね」
 シロは、笑顔だった。とても、嬉しそうで。……なんだか、複雑な気持ち。
「いい匂いがするね。私にも、一杯貰えるかな」
 すると、マスターがお部屋に来た。お仕事が終わったようで、マントが汚れている。
「マスター、もう安定したの?」
「うん。細胞分裂のは、もうほぼ完成かな。後はベビーデザインの問題なんだけど、そこはまだもう少し時間がかかりそうだ」
 ボクの隣に、マスターが座った。シロが、もう一個ティーカップを取り出して。紅茶……? を、注いだ。
「うーん、いいね。これはどこのだったかな?」
「ニルギリだよ。この前作ってみたんだ。難しかったけどね」
 マスターが、紅茶を飲む。……。小さな、お口で。
「……ああ、美味しい。やっぱり久しぶりの紅茶は、染みわたる」
「そう、よかった。じゃあまた今度作って……」
「――でも、私は……ミルクティーが、飲みたいな」
「……え」
「入れて来て、くれるかい?」
 するとシロは、なぜか悲しそうな顔をした。……そして、マスターのティーカップを受け取って。椅子から立ち上がった。
「……わかり、ました」
 シロがしょんぼりしながら、どこかに行った。小さな扉を抜けて、お部屋から出ていっちゃって。……どうしたんだろう。
「……ようやく、二人きりになれたね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...