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第三章
事故
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……。痛い。とても、痛い。どこもかしこも、痛くて痛くて、たまらない。
音がする。キーンって、バチバチって。あと、それから。ガラガラって音も、聞こえる。
何があったんだろう。確か、ボクらはエレベーターに乗っていて。それで……。ああ、そうだ。突然エレベーターが、すごい勢いで降り始めたんだ。
「う……うう……」
ボクは、身体を動かそうとした。とても痛かったけど、頑張れば動けそうだったから。
両手を、床につけて。両膝も、床につけて。四つん這いになったあたりで、ようやくボクは、目を開けることが出来た。
「……あれ……?」
そこは、瓦礫の中だった。辺り一面、瓦礫で溢れかえってて。ここがどこなのか、一瞬わからなかったけど。上の方で電球がチカチカ点滅していたから、ここはエレベーターなのかな、と思った。
実際、それは正解だった。よく辺りを見渡してみると、さっきまでボクらが握っていた手すりや、ついさっき見かけた自動ドアが、そこらにあった。
「……シロ……? シロ、シロ!?」
そして、気が付いた。シロが見当たらないということに。
こんな状況で、どこか遠くに行くわけがない。行けるわけがない。そうすると、必ず近くに居るはずだ。……でも、見当たらないってことは、まさか。
ボクはすぐに、なんとか起き上がった。そして手当たり次第に、瓦礫を押しのけていった。
「シロ! シロ! お願い、返事をして! シロ!」
きっとシロは、この瓦礫に埋もれちゃったんだ。どうして、こんなことに。お願い。そんな、そんなの、嫌だ。
「……ここ、だよ。……クロ」
声がした。すぐにボクは、その方向を見て。力いっぱい瓦礫をどかした。そして、大きな一枚岩みたいなのを、なんとか動かすと。……その後ろに、シロが居た。
「……シロ……! ――よかったっ……!」
思わずボクは、シロに抱きついた。本当に、本当によかった。死んじゃってたら、どうしようかと思った。
「……えへへ。……心配、した?」
「うん、うん! あたり、まえでしょ……?」
シロは、にぶい笑顔を浮かべていた。それで気が付いたけど、シロは足に怪我をしていた。
「し、シロ……」
ふくらはぎに、鉄パイプが刺さっている。パイプを伝って、血が流れている。……こんなの、痛いに決まってる。
「……手伝って、くれないかな。これ、引き抜く、の」
「え……。で、でも……」
「大丈夫、だよ。……ふんばる、から」
するとシロは、目をつむった。すごく、苦しそうで。歯を食いしばっていた。
だからボクは、急いだ。両手でパイプをつかんで、一呼吸入れて、……全力で引っ張った。
「う……うあああっ! うわあああっ!!」
叫んでる。シロが、叫び声をあげてる。血が、いっぱい出てる。溢れてる。止まらない。早く、早く、引き抜かなきゃ。
そうして急ぐと、ある瞬間でスポっというように抜けた。力の行き場を失ったボクは、思わず後ろにのけぞっちゃって。瓦礫に頭をぶつけてしまった。
「……はあっ……はあっ……うっ……」
ボクはパイプを放り投げて、シロの足をもう一度見た。……やっぱり、血が止まらない。むしろさっきより、多くなってる。シロの息も、声も、同じ。とても、辛そう。
「ど、ど、どうしよう……。……あ」
その時ボクは、あることを思い出した。それは、ずっと昔のことで。マスターとの思い出だった。
「……マスター、ごめんなさいっ……!」
そうしてボクは、自分のワンピースのスカートの所を、破り取った。そしてそれを、包帯みたいに、シロの足に巻いた。……あの時のマスターと、同じように。
「……く、クロ。何してるの……? それは、大切な……」
「大切、だけど。シロの方が、大切、だから」
でも、足りてない。布全体に血が染みわたって、漏れてくる。まだ、まだ。……ボクの手も、血で濡れていく。
「も、もっと……!」
今度は、さっきより沢山破いた。思いっきり破いた。そして、怪我のところに当てた。……これで足りるだろうか。少しだけ、血が染みる速度が、遅くなった気がする。
「……フフ。それじゃあ、ミニスカートみたいだよ……うっ!」
「喋っちゃだめだよ! じっとしてなきゃ!」
ボクは布をぐるぐる巻いて、固結びをした。そのあたりで、ようやく血が収まったらしくて。……ボクは心の底から、大きく息を吐いた。
「……ありがとう、クロ」
シロが、お礼を言っていた。ボクは、返す言葉がなくて。……シロを、ぎゅって抱きしめた。
「……えへへ。……それにしても、ここ、ずいぶん落ちちゃったなあ」
するとシロは、上を見上げた。だからボクも、上を向いた。そこには長い長いエレベーターの通路があって、大きな唸り声のような風が、響いている。
「マスターの言ってたのは、確か地下二十階だから。だいたいそれより、十階くらいは下に来ちゃったのかな……」
「……どうしよう、シロ」
「うん。非常階段とかで登っていくしか、なさそうだけど……――?」
その時、音がした。……いや、違う。さっきボクは、エレベーターの通路で、唸り声のような風がしていると思った。……でも、違った。
これは、風とかじゃない。だってよく感じてみれば、今風は吹いていないんだ。……だから、この音は。
「……急ごう、クロ。多分ここは、地下三十階。この辺りは最近、封鎖したんだ」
「封鎖? ど、どうして……?」
「……手に負えない化け物が、居るからだよ」
音がする。キーンって、バチバチって。あと、それから。ガラガラって音も、聞こえる。
何があったんだろう。確か、ボクらはエレベーターに乗っていて。それで……。ああ、そうだ。突然エレベーターが、すごい勢いで降り始めたんだ。
「う……うう……」
ボクは、身体を動かそうとした。とても痛かったけど、頑張れば動けそうだったから。
両手を、床につけて。両膝も、床につけて。四つん這いになったあたりで、ようやくボクは、目を開けることが出来た。
「……あれ……?」
そこは、瓦礫の中だった。辺り一面、瓦礫で溢れかえってて。ここがどこなのか、一瞬わからなかったけど。上の方で電球がチカチカ点滅していたから、ここはエレベーターなのかな、と思った。
実際、それは正解だった。よく辺りを見渡してみると、さっきまでボクらが握っていた手すりや、ついさっき見かけた自動ドアが、そこらにあった。
「……シロ……? シロ、シロ!?」
そして、気が付いた。シロが見当たらないということに。
こんな状況で、どこか遠くに行くわけがない。行けるわけがない。そうすると、必ず近くに居るはずだ。……でも、見当たらないってことは、まさか。
ボクはすぐに、なんとか起き上がった。そして手当たり次第に、瓦礫を押しのけていった。
「シロ! シロ! お願い、返事をして! シロ!」
きっとシロは、この瓦礫に埋もれちゃったんだ。どうして、こんなことに。お願い。そんな、そんなの、嫌だ。
「……ここ、だよ。……クロ」
声がした。すぐにボクは、その方向を見て。力いっぱい瓦礫をどかした。そして、大きな一枚岩みたいなのを、なんとか動かすと。……その後ろに、シロが居た。
「……シロ……! ――よかったっ……!」
思わずボクは、シロに抱きついた。本当に、本当によかった。死んじゃってたら、どうしようかと思った。
「……えへへ。……心配、した?」
「うん、うん! あたり、まえでしょ……?」
シロは、にぶい笑顔を浮かべていた。それで気が付いたけど、シロは足に怪我をしていた。
「し、シロ……」
ふくらはぎに、鉄パイプが刺さっている。パイプを伝って、血が流れている。……こんなの、痛いに決まってる。
「……手伝って、くれないかな。これ、引き抜く、の」
「え……。で、でも……」
「大丈夫、だよ。……ふんばる、から」
するとシロは、目をつむった。すごく、苦しそうで。歯を食いしばっていた。
だからボクは、急いだ。両手でパイプをつかんで、一呼吸入れて、……全力で引っ張った。
「う……うあああっ! うわあああっ!!」
叫んでる。シロが、叫び声をあげてる。血が、いっぱい出てる。溢れてる。止まらない。早く、早く、引き抜かなきゃ。
そうして急ぐと、ある瞬間でスポっというように抜けた。力の行き場を失ったボクは、思わず後ろにのけぞっちゃって。瓦礫に頭をぶつけてしまった。
「……はあっ……はあっ……うっ……」
ボクはパイプを放り投げて、シロの足をもう一度見た。……やっぱり、血が止まらない。むしろさっきより、多くなってる。シロの息も、声も、同じ。とても、辛そう。
「ど、ど、どうしよう……。……あ」
その時ボクは、あることを思い出した。それは、ずっと昔のことで。マスターとの思い出だった。
「……マスター、ごめんなさいっ……!」
そうしてボクは、自分のワンピースのスカートの所を、破り取った。そしてそれを、包帯みたいに、シロの足に巻いた。……あの時のマスターと、同じように。
「……く、クロ。何してるの……? それは、大切な……」
「大切、だけど。シロの方が、大切、だから」
でも、足りてない。布全体に血が染みわたって、漏れてくる。まだ、まだ。……ボクの手も、血で濡れていく。
「も、もっと……!」
今度は、さっきより沢山破いた。思いっきり破いた。そして、怪我のところに当てた。……これで足りるだろうか。少しだけ、血が染みる速度が、遅くなった気がする。
「……フフ。それじゃあ、ミニスカートみたいだよ……うっ!」
「喋っちゃだめだよ! じっとしてなきゃ!」
ボクは布をぐるぐる巻いて、固結びをした。そのあたりで、ようやく血が収まったらしくて。……ボクは心の底から、大きく息を吐いた。
「……ありがとう、クロ」
シロが、お礼を言っていた。ボクは、返す言葉がなくて。……シロを、ぎゅって抱きしめた。
「……えへへ。……それにしても、ここ、ずいぶん落ちちゃったなあ」
するとシロは、上を見上げた。だからボクも、上を向いた。そこには長い長いエレベーターの通路があって、大きな唸り声のような風が、響いている。
「マスターの言ってたのは、確か地下二十階だから。だいたいそれより、十階くらいは下に来ちゃったのかな……」
「……どうしよう、シロ」
「うん。非常階段とかで登っていくしか、なさそうだけど……――?」
その時、音がした。……いや、違う。さっきボクは、エレベーターの通路で、唸り声のような風がしていると思った。……でも、違った。
これは、風とかじゃない。だってよく感じてみれば、今風は吹いていないんだ。……だから、この音は。
「……急ごう、クロ。多分ここは、地下三十階。この辺りは最近、封鎖したんだ」
「封鎖? ど、どうして……?」
「……手に負えない化け物が、居るからだよ」
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