崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第四章

実験

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 ……。ここは、どこだろう。知らない場所だ。それに、知らない匂いがする。
 ボクは、歩いてるのかな。それとも、止まってるのかな。……足は、動いてるように見えるんだけど。
 両方の手首に、何かがついてる。この輪っかみたいなの、なんだっけ。確か、とても嫌なものだった気がするんだけど。
 ……。誰? 誰かが、ボクの前を歩いてる。ボクの後ろで、誰かが歩いてる。
 前の人が、ロープを握ってるのが見える。ロープが、ボクの手のやつに繋がってる。……。ってことは、ボクを引っ張ってるの?
 大人だ。見たこともない人だけど、大人だ。やっぱり大人は、ボクを虐めるのかな。またどこかに連れていかれて、何かをされるのかな。
 怖いな。寂しいな。そういえば、シロはどこだろう。一緒に居たはずなんだけど。それに、メアも。二人が、どこにも見当たらない。
「私はここにいるよ、黒」
 ……? あ、メアだ。メアが、居た。なんだ。よかった。やっぱり、その丸いガラスのやつ、とっても似合ってる。
「……ねえ、お願いがあるんだ」
 お願い……? どうしたの、そんなに真剣な顔をして。
「黒のことを上に伝えたんだけど、どうやらまだ信用してないみたいなの。……だから、ちょっとここで、力を見せてほしいなって」
 ……。大人の人たちが、ボクの手首の輪っかを外した。そうすると、大人の人たちはどこかに行っちゃって。この大きくて暗い部屋には、ボクとメアだけになった。
「ね。あれ、見える?」
 メアが、遠くを指さした。……するとそこには、何かが立っていた。スポットライトが当たってる。……人間?
「大丈夫。あれは、人形だよ。……ただの、人形だから。……黒に、あれを倒してほしいの」
 ……倒す? どうして?
「皆を守るためだよ。君が力を使って、守るためにね。ちゃんと訓練しとかなきゃ」
 皆を……。シロ、マスター。皆を、守る……?
「そう。……だから、ほら。やってみせてよ」
 メアが、ボクの右腕に手を添えて。ボクの手のひらを、人形に向けた。……そしたら、なぜだか、あの人形を倒せるような気がしてきて。遠いはずの人形が、とても近くに見えて。……なんだか人形が、動いてるようにすら見えていた。
「大丈夫。大丈夫。……君は、何も考えなくていいの。ただ、ほら。……力を、籠めてみて」
 ……ボクは、マスターのことを想った。シロのことを想った。弱くてちっぽけなボクだけど、本当は、二人を守りたいんだ。もちろん、メアのことも。
 だから、守りたい。もしもボクに力があるなら、守りたい。
「あれは、敵。ただの、敵。皆を傷つける、悪い奴。……さあ、やってごらん?」
 敵。皆を、守らなくちゃ。倒して、皆を助けなくちゃ。ボクはそう思って、頑張って力を入れてみた。……あいつを倒すことだけを、考えて。
 そうすると、不思議なことが起きた。……少しずつだけど、人形の頭が、大きくなったんだ。どんどん大きくなって。風船みたいに大きくなって……。そして、割れた。
「――アハハ、凄い凄い!! やっぱり、黒はすごいよ! 黒は、すごく強いじゃない!!」
 血が、噴き出してる。ぶしゃーって。人形の周りが、血で染まっていく。水たまりみたいに。
「気にしない気にしない。ほら、次が来たよ?」
 すると、どこからかまた別の人形が現れた。しかも今度は、三体。
「ね。あれ、全部一気に倒せる?」
 ……出来るのかな。よく、わからない。でも、今度はさっきよりも頑張ってみた。そしたら、出来た。三体の人形が、同時に破裂した。しかも今度は、頭だけじゃなくて、全身が。
「キャハハハ!! 凄い! 凄い! 思ってた以上だよ、黒! すごく素敵!」
 いい、のかな。これで、いいのかな。よく、わからない。本当に、ボクがやったのかな。
「はあー。はあー。ありがとう、もう十分だよ。どうやら他の奴らも、君のことをわかってくれたみたい」 
 するとメアが、両手をパンパンって叩いた。そしたら、またあの大人が戻ってきた。今度は、一人だけだったけど。
「黒を部屋に案内しろ。言っとくが、可能な限り丁寧に扱え」
「はっ、了解しました」
「……まあ、傷がつかない程度になら自由にして構わない。行け」
 大人が、ボクの肩に手を置いた。そのままボクは、大人たちにどこかへと連れていかれた。メアは、行かないのかな。ボクは、どこへ行くのかな。
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