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第七章
出会い
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「だ、誰だ!!」
俺とレオは、ワンテンポ遅れて銃を構える。まさに意表を突かれたと言うに相応しく、数秒も呑気してしまった。
「おわっ! ちょっと待ってくれ、敵じゃない!」
侵入者は愚かしくも、言い訳をかます。しかしそんなのは通用しない。とにかく俺は、いつでもコイツに弾丸をぶち込めるよう。引き金に指を添えていた。
「待ってくれって、本当だ! 俺はレジスタンスじゃないんだ! 二人に話があって、ここに来たんだよ!」
「……。なんだと?」
しかしコイツは、レオと同じヘルメットをかぶっている。これはレジスタンスの標準装備で、奴らなら常備しているものだ。
「ちょっと待て、今取るから! ……ぐ、あれ髪が引っかかって……」
何をもたついてるんだか。もう面倒だから、足でも撃ってしまおう。そう思って俺が足に狙いを定めたかと思うと、途端にコイツはヘルメットを脱ぎ終えた。
やたら目立つ赤髪。ちょっと童顔。……やっぱり、会ったことはない。撃とう。
「――、あれ? ……オメー、確か……。……ああ! ロイン、ロインじゃねえか!?」
「え?」
その時、レオが叫んだ。……俺は、コイツのことを知らない。顔も知らない。だが、噂だけは聞いていた。俺たちよりも早くレジスタンスを抜けた、もう一人の脱走者。
「……コイツが、熱血ウザ野郎のロインなのか?」
「話が早くて助かるよ、そう俺だ! ……って、え?」
「脱走したとは聞いてたが、オメーこんなとこで何やってんだ? てか、どうやってここまで……」
質問が錯綜している。とにかく今整理すべきなのは、コイツがここで何をしているかだろう。俺たちには、侵入者を即刻射殺する許可がある。
「十秒だけ釈明の猶予をやる。それが終わったら、撃つ。十、九、八……」
「うわ! いやだから、敵じゃないって! 協力してほしいんだよ! ――クロを、助けるために!!」
「……。なんだと?」
今コイツ、何て言った? ……クロを、助けるため?
「相手の弱点を突く。戦闘における基本だ。やはり殺すしかない」
「いや何でそうなる!? 武器だって持ってないだろ! それに、攻撃するならもうしてるさ! とっくの昔に!」
確かに、武器の類は見当たらない。だがここからでは、腹の中は見えない。胃の中に爆弾を入れている可能性もある。
「俺はここずっと、機会をうかがってたんだよ! その辺の物陰からさ!」
「……何?」
「それで、ちょうどいい所で話をしようと思ったのに。……その、いつもお邪魔だったみたいだもんで……」
……。瞬間。俺の顔が、破裂しそうなまでに熱くなった。まさか、いや、そんな。……え?
「も、もしかして、お前……。み、見て……たの、か?」
……ロインは、ゆっくりと頷く。だから俺は、頭が沸騰して。とてつもなく、恥ずかしくなって。気が付けば、感情のままに引き金を引いていた。
「おわああああッ!?」
「殺すッ! コイツ、絶対殺すッッ!!」
生かしちゃおかない。だが怒りのあまり、照準が定まらない。ロインはちょこまかと動き、弾を避けている。そして数秒で弾切れになり、俺が換えの弾薬を取り出そうとすると。レオが、俺の肩を叩いた。
「まあ落ち着けって。見られて困るようなもんでもないだろ?」
「だ、だって! コイツは、俺たちの……」
「ロインの言う通りだ。それが本当なら、もっと前から攻撃する機会はあったはず。……なら、とりあえず話だけでも聞いてやろうぜ。それから、殺す」
「どっちにせよ殺すのか!? げほっ、はあ……っはあっ」
ロインは、息を切らしていた。俺もだった。……コイツ、絶対に許さない。俺が、俺が心を許しているのは、クロとレオだけなんだ。……勝手に、見るなんて。
「……さ、さっきも言った通り。俺はクロを助けたいんだ。それで、見ててわかったんだが。二人とも、クロと、知り合いなんだろ?」
「……だったら、どうした」
「……力を、貸してくれ。このままクロが、ここに居ていいわけがない」
「……」
あまり、考えないようにしていた。その事については。……クロがこのまま、ここに居ていいのかと。
「お前には関係ない。死ね」
しかし、関係ない。ロインには関係が無い。むしろお前がクロに関わろうとしている以上、無視して逃がすわけにもいかなくなった。
「わかっているだろ! このままシュバルツの元に居続ければ、クロは飼い殺される!!」
「だからといってお前がどうすんだよ。お前が、どうやって守んだよ。レジスタンスからも抜けて、かといってこちら側でもなく。……どうやんだよ、そんなの」
少なくともこちらには、シロが居る。良くも悪くも、シロは、クロのことを愛している。そしてクロも、シロを愛している。……。そういう意味では、信用出来るんだ。
「俺は、俺達はあいつらとは違う! 俺達は、”本当の”レジスタンスなんだ! 信用してくれ!」
「……いきなり知らん奴が現れて、どうして『はいそうですか』と信用出来んだよ」
「それは、俺がここに居る事が証明になるはずだ! そうだろ!?」
「……」
ロインがここに居る。確かにそれは、奇妙な点だ。ここの警備は、人間が入ることはまず不可能。死角なんてない。どうやってコイツは、ここまで来た?
「……俺がここに居る事が出来るのは、ある意味君達と同じ理由だよ」
「……何?」
「本来なら、元レジスタンスだった君達二人も、この部屋に入った瞬間攻撃されるはずだ。でも、されない。なぜだかわかるか?」
「そらオメー、俺たちを攻撃しないように設定してるからだろ?」
「ああ、その通りだ。俺の仲間が、監視システムを書き換えて。俺を攻撃しないように設定してるんだよ。わかりやすいぜ」
「……。そんなの、レジスタンスでだって出来ない。お前ごときが、どうしてそんなことが出来る?」
「だから、”本当の”レジスタンスなんだよ。俺たちは、本気で対抗しようとしているんだ」
「話が通じないな。本当も何も、レジスタンスはレジスタンスだろ」
「……。いや、違うんだ」
「……?」
「あれは、本物じゃない。……偽物なんだよ」
俺とレオは、ワンテンポ遅れて銃を構える。まさに意表を突かれたと言うに相応しく、数秒も呑気してしまった。
「おわっ! ちょっと待ってくれ、敵じゃない!」
侵入者は愚かしくも、言い訳をかます。しかしそんなのは通用しない。とにかく俺は、いつでもコイツに弾丸をぶち込めるよう。引き金に指を添えていた。
「待ってくれって、本当だ! 俺はレジスタンスじゃないんだ! 二人に話があって、ここに来たんだよ!」
「……。なんだと?」
しかしコイツは、レオと同じヘルメットをかぶっている。これはレジスタンスの標準装備で、奴らなら常備しているものだ。
「ちょっと待て、今取るから! ……ぐ、あれ髪が引っかかって……」
何をもたついてるんだか。もう面倒だから、足でも撃ってしまおう。そう思って俺が足に狙いを定めたかと思うと、途端にコイツはヘルメットを脱ぎ終えた。
やたら目立つ赤髪。ちょっと童顔。……やっぱり、会ったことはない。撃とう。
「――、あれ? ……オメー、確か……。……ああ! ロイン、ロインじゃねえか!?」
「え?」
その時、レオが叫んだ。……俺は、コイツのことを知らない。顔も知らない。だが、噂だけは聞いていた。俺たちよりも早くレジスタンスを抜けた、もう一人の脱走者。
「……コイツが、熱血ウザ野郎のロインなのか?」
「話が早くて助かるよ、そう俺だ! ……って、え?」
「脱走したとは聞いてたが、オメーこんなとこで何やってんだ? てか、どうやってここまで……」
質問が錯綜している。とにかく今整理すべきなのは、コイツがここで何をしているかだろう。俺たちには、侵入者を即刻射殺する許可がある。
「十秒だけ釈明の猶予をやる。それが終わったら、撃つ。十、九、八……」
「うわ! いやだから、敵じゃないって! 協力してほしいんだよ! ――クロを、助けるために!!」
「……。なんだと?」
今コイツ、何て言った? ……クロを、助けるため?
「相手の弱点を突く。戦闘における基本だ。やはり殺すしかない」
「いや何でそうなる!? 武器だって持ってないだろ! それに、攻撃するならもうしてるさ! とっくの昔に!」
確かに、武器の類は見当たらない。だがここからでは、腹の中は見えない。胃の中に爆弾を入れている可能性もある。
「俺はここずっと、機会をうかがってたんだよ! その辺の物陰からさ!」
「……何?」
「それで、ちょうどいい所で話をしようと思ったのに。……その、いつもお邪魔だったみたいだもんで……」
……。瞬間。俺の顔が、破裂しそうなまでに熱くなった。まさか、いや、そんな。……え?
「も、もしかして、お前……。み、見て……たの、か?」
……ロインは、ゆっくりと頷く。だから俺は、頭が沸騰して。とてつもなく、恥ずかしくなって。気が付けば、感情のままに引き金を引いていた。
「おわああああッ!?」
「殺すッ! コイツ、絶対殺すッッ!!」
生かしちゃおかない。だが怒りのあまり、照準が定まらない。ロインはちょこまかと動き、弾を避けている。そして数秒で弾切れになり、俺が換えの弾薬を取り出そうとすると。レオが、俺の肩を叩いた。
「まあ落ち着けって。見られて困るようなもんでもないだろ?」
「だ、だって! コイツは、俺たちの……」
「ロインの言う通りだ。それが本当なら、もっと前から攻撃する機会はあったはず。……なら、とりあえず話だけでも聞いてやろうぜ。それから、殺す」
「どっちにせよ殺すのか!? げほっ、はあ……っはあっ」
ロインは、息を切らしていた。俺もだった。……コイツ、絶対に許さない。俺が、俺が心を許しているのは、クロとレオだけなんだ。……勝手に、見るなんて。
「……さ、さっきも言った通り。俺はクロを助けたいんだ。それで、見ててわかったんだが。二人とも、クロと、知り合いなんだろ?」
「……だったら、どうした」
「……力を、貸してくれ。このままクロが、ここに居ていいわけがない」
「……」
あまり、考えないようにしていた。その事については。……クロがこのまま、ここに居ていいのかと。
「お前には関係ない。死ね」
しかし、関係ない。ロインには関係が無い。むしろお前がクロに関わろうとしている以上、無視して逃がすわけにもいかなくなった。
「わかっているだろ! このままシュバルツの元に居続ければ、クロは飼い殺される!!」
「だからといってお前がどうすんだよ。お前が、どうやって守んだよ。レジスタンスからも抜けて、かといってこちら側でもなく。……どうやんだよ、そんなの」
少なくともこちらには、シロが居る。良くも悪くも、シロは、クロのことを愛している。そしてクロも、シロを愛している。……。そういう意味では、信用出来るんだ。
「俺は、俺達はあいつらとは違う! 俺達は、”本当の”レジスタンスなんだ! 信用してくれ!」
「……いきなり知らん奴が現れて、どうして『はいそうですか』と信用出来んだよ」
「それは、俺がここに居る事が証明になるはずだ! そうだろ!?」
「……」
ロインがここに居る。確かにそれは、奇妙な点だ。ここの警備は、人間が入ることはまず不可能。死角なんてない。どうやってコイツは、ここまで来た?
「……俺がここに居る事が出来るのは、ある意味君達と同じ理由だよ」
「……何?」
「本来なら、元レジスタンスだった君達二人も、この部屋に入った瞬間攻撃されるはずだ。でも、されない。なぜだかわかるか?」
「そらオメー、俺たちを攻撃しないように設定してるからだろ?」
「ああ、その通りだ。俺の仲間が、監視システムを書き換えて。俺を攻撃しないように設定してるんだよ。わかりやすいぜ」
「……。そんなの、レジスタンスでだって出来ない。お前ごときが、どうしてそんなことが出来る?」
「だから、”本当の”レジスタンスなんだよ。俺たちは、本気で対抗しようとしているんだ」
「話が通じないな。本当も何も、レジスタンスはレジスタンスだろ」
「……。いや、違うんだ」
「……?」
「あれは、本物じゃない。……偽物なんだよ」
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