崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第九章

変態

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 あれから、何日かが過ぎて。ボクは、ラムと一緒にお仕事のお手伝いをしてた。洗濯物を運んだり、みんなにご飯を出したり。……アイジスは、一緒じゃなかったけど。はじめてのお仕事だったから、はりきってた。
 アイジスは、レオと一緒の新しいお仕事が出来たみたいだった。おじいちゃんに頼まれたもので、断り切れなかったって。だからお仕事に行く前は、思いっきりぎゅーってしてあげて。帰りを待つことになった。
 ラムは、仕事熱心だった。おじいちゃんから頼まれたお仕事を、あのパソコンのお部屋でいろいろこなしてて。よくわかんないけど、すごかった。あの、その。……文字が、いっぱいあった。
 ……。だから、時間が出来た。洗濯物も、ご飯も。全部やりきっちゃったら、お仕事がなかった。何か手伝えることはないかをおじいちゃんに聞いたけど、何も無いらしくて。
 ボクはお仕事を探すために、そこら中を歩き回ってた。でも、特にやることはなさそうで。……。というか、みんなが、ボクにお仕事をくれないんだ。
「あ、あの。……何か、やることは、ないですか?」
「え? ……あ、ああ! いや、ないです! 大丈夫です」
 休んでた作業員の人に、聞いてみる。けれどもその人は、しどろもどろで。何かもじもじしてるだけで。お仕事をくれそうには、なかった。
 だからボクは、悲しくて。その場を立ち去ろうとしたんだけど……。
「あ、あの!」
「は、はい」
「……サイン、くれませんか?」
「……。え?」
 ……サイン? サインって、あの、契約書とかをつくる……?
「お、おれクロさんのファンなんです! モデルの写真、見ました!」
「……? しゃしん……?」
「ほら、これ!」
 するとその人は、何かの絵本をボクに見せた。……そこには、なんとボクの写真が載ってた。
「あれ……?」
 いつの間に撮ったんだろう。前にラムに撮ってもらったのもあるけど、知らない写真もある。ボクが、ご飯を出してる所とか。洗濯物を、運んでるのか。……。そういえば、何度かラムを見かけたような……。
「仲間ウチの中でも、話題なんですよ! 可愛い新人が入って来たって!」
「……?」
「あの、これ! これに、サインください!」
 その人の顔は、とても嬉しそうだった。でも、あまりよくわからなくて。……ペンと無地の紙を出してることだけが、わかった。
「……えっと、サイン、すればいいんですか?」
「はい! あの、マーシャ君へって書いてください!」
 契約書じゃなさそうだった。だから、ペンと紙を受け取って。……『クロ』、と書いた。それで、その下に。その人が言った言葉も、つけたした。
「ああ、ありがとうございます! へへ!」
 その人はサインを受け取ると、嬉しそうに飛び跳ねた。それで、何度もボクに頭をさげて。どこかへと立ち去ってしまった。
 ……。なんだろう。よくわからない。あれが、というか今のが、お仕事だったんだろうか? ……ただ名前を書いただけなのに。
「あらーーあクロじゃない!! こおーーんぬァ所に居たのねえええええ!!??」
「ひっ……」
 背筋が、凍った。……後ろから、甲高い嬌声のようなものが聞こえてきて。すぐにボクは、その場から逃げようとしたんだけど。……足を動かす前に、マカ先生が抱きついてきた。
「つーかーまえた!! クロ!! タッチ! ホールド!! いえーすゥァァアッ!!!」
「……っ……」
 ……悪い人じゃない。でも、変態さんだ。……だから、あまり、会いたくなかった。だっていつも、ボクがこの人にご飯を渡すとき。ボクの手に、胸を当ててくるんだもの。
「どーして逃げるのおォーー???? アタシにもサインちょーだい!!!! 白いえちえちな、サインちょーだい!!!! アタシの子宮にな!!!!!!!」
「……」
「いいじゃない、産ませてよおォーー!!! クロの赤ちゃん、産みたいじゃないィ!?!?!? きっとKawaiiな子が生誕するに違いないと確信するわ!!! アタシは!!??」
 ボクは、耳を塞いでる。目も、閉じてる。……ぺたぺたと、触られてるけど。無視した。
「もう、いけずゥ!! しょーがないわねえ!!! じゃあ写真だけで勘弁してあげんこともないわよ???? つかさせろ!!!!」
「……?」
「撮ったんでしょォ!?!?!? ラムはね、天才写真家なのよァ!!! ことすけべな写真に関しては、ずば抜けてるんだから!!!! そんなあの子なら、クロのドスケベフルボッキもんのやつを撮ったはずよ!!! つか撮れ!!!!」
 ……。どうやら、ラムは約束を守ってくれてるみたい。普通の写真はともかく、えっちな写真は、秘密にしてくれてるみたいだ。
「ねえ~、お願いよォ~~?? 写真ちょうだいよォ~~~???? それか見せてよお~~、見抜きさせてよ~~~???? ぶっかけるからァああ~~??」
 耳元で、囁いてきて。息が、かかって。……胸を、あそこを、優しく触られて。ボクは、必死に耐えた。無視し続けた。そうすると……。
「先生!!」
「あえ~~??」
 誰かが来たみたいだった。……誰か、声がして。ふとボクは、そっちを見てみる。
 ……白衣を着た人。汗をたらしながら、必死そうな顔をしてる。……どうしたんだろう。
「先生、手を貸してください! 患者が暴れて手が付けられないんです!」
「あ~~?? 唾つけときゃ治るってんなもん~~。今アタシは、クロを誘惑するので忙しーのお~~」
「いえ、それが……”特別患者”の方で……」
「ええ~~?」
 するとマカ先生は、ボクから離れた。
「もう、仕方ないなあ~~~。じゃあちょっくら、おっぱい飲ませに行きますかあ~~????」
 ……。お仕事、かな。怪我をした人が、出たのかも。……こう考えるのは、悪い事かもしれないけど。ちょっとだけ、助かったな。
「ねえ、クロも来る~~~??」
「……え……?」
「人手が欲しいのよォ~~~。手伝ってよおォ~~~~???」
 正直に言って、嫌だった。……でも、お仕事だしな。他にやることも、ないんだし。お仕事なら先生も、ボクにえっちなことをしないかも……。
「……わかり、ました」
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