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第十三章
フィアンセ
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ボクは二人に連れられて、どこかの部屋に来た。確かここは、使われてない部屋だって。前におじいちゃんが言ってたけど。
ここにあるのは、古い電球と。いくつかの小さな箱だけ。前は倉庫か何かだったみたい。
『では、私は見張りを。後は頼みます』
『わかりました』
すると、金色の子が外に出ていった。それで、鍵が閉まる音がして。ボクは銀色の子と二人っきりになった。
ここで何するんだろう。特訓でもするのかな。前にアイジスとレオがしてたのを見たことがある。ふっきんとか……? うでたて……。なんだっけ。確かそんなの。
『それでは始めます。準備はよろしいですね』
「う、うん……。でも、何をするの?」
すると銀色の子は、ゆっくりとボクに近寄ってきた。遠慮なしに、一気に。だから……お顔が、とても近くて。
怖いくらい、きれいなお顔だった。ほっぺが、見ただけでもわかるくらいすべすべで。柔らかそうで。瞳の色が、まるで透き通った水みたいな。
それでボクは、少しだけ意識しちゃった。どきどきして、思わず目をそらしちゃって。でも、そうすると。この子は、突然ボクの顔に手を添えて。無理矢理ボクの顔を、自分に向けた。
「あっ……」
真っ直ぐな、目だった。ボクを、真っ直ぐ見てて。まるで心の中が、全部見透かされちゃってるみたいで。
『いいですか、クロ。あなたが力を得るには、いわば封印のようなものを解かなくてはなりません』
「……ふういん?」
『ええ。マスター・シュバルツがあなたに施した、安全装置。それを解除すれば、あなたはもっと強力な力を操ることが出来るようになります』
「……力を……。それって、どうやるの?」
ボクがそう言うと、この子は、ボクの頭の後ろに左手を添えて。右手で、ボクを抱きしめるようにして……。
『古来より、封印を……呪いを解くには。王子のキスと、決まっています』
「えっ……――」
ボクに、キスをした。今までに味わったことがないくらい、とても、優しく。
唇が、柔らかくて。暖かい。それはまるで、マスターのように。……乱暴な人たちとは、全然違う。
心なしか、どこかでこういうのを望んでた自分が居た。ちょっとだけ、してみたいって。ちょっとだけ、……悪いことをしたいって。
でも、変だった。ボクが息が苦しくなって、少しだけ離れると。この子は、それを許さないようにもう一度キスをしようとする。
『駄目ですよ。ちゃんと、しないと』
「ま、待ってっ……。息が、苦しくて……」
聞いてくれなかった。この子は、またキスをした。今度は、少し強引に。ボクは逃げようとするけど、逃げられない。この子が、ボクを抱きしめてるから。
逃げ場が無いってことは、どうしようもないってことで。ボクは、逃げたかった。もう。この子のキスは、今までボクがしてきたような、キスじゃない。……あえて言うなら、本物のキスだった。
「んっ……! んんっ……!」
怖い。何か、何か来る。どこか、奥の方から。何かを、引きずり出されてる。
息を、息を吸わなきゃ。じゃなきゃ、駄目だ。苦しいからとか、そういうのじゃなくて。吸わなきゃいけない。
「っ……!」
でも、許してくれなかった。この子は優しい目で、ボクを見てて。……それで、伝わってきた。ボクを逃がす気は、ないって。
足から、力が抜けてきた。手が、震えてきた。身体中が、ぞわぞわして。鳥肌が、立っていって。
思わずボクは、この子のお洋服をつかんだ。そうしないと、倒れちゃいそうだったから。
「……ぷはっ……!」
するとこの子は、突然唇を離した。だからボクは、たくさん息を吸って。壊れそうになる何かを、保った。
『まだ私の名を、お伝えしていませんでしたね』
「はあっ……はあっ……。な、なまえ……?」
『ええ。私の名は、アラネア。クロ、あなたの……。フィアンセです』
「……?」
ふぃあんせって、なんだろう。確か前に、マスターに聞いたことがあったような。
でもそれを思い出す余裕は、なかった。だってもう一度、この子が……。アラネアが、キスしようとしてたから。
ボクは、拒んだ。アラネアの胸に手を当てて、押し返そうとした。だって、そうしないと。次にあんなキスをされたら。
でも、出来なかった。止められなかった。思えば、当たり前で。あんなに強いアラネアのことを、ボクなんかの力で止められるはずがなかった。
だから、キスをしちゃった。三回目の。なぜか、今までのとは全然違ってて。唇が触れた瞬間、ボクは。……意識が、飛びそうになってしまった。
頭の中で、何かが溢れてる。溶けちゃいそうな、何かが。身体の中を溶かしていく、何かが。
もうこうなれば、ボクは自分で立っていられなかった。でも、アラネアが支えてくれて。優しく、抱いていてくれて。
何かが来るのが、わかった。でも気が付いた時には、もう、出ちゃってて。……ボクは泣きながら、白いのを、出しちゃってた。まるで、少しだけ開けた、蛇口みたいに。
それだけじゃない。それ以外にも、ボクの中から何かが出て来ているのがわかった。今までは奥の方に眠ってた、何か。それをアラネアが、起こしちゃって。引きずり出しちゃって。
気が付けばボクは、アラネアにされるがままだった。後のことは、覚えていない。……ただ、少しだけ。忘れてしまいたくなるほどの、快感があったのは覚えてる。
今までのボクが、安っぽくて。今までしてきたものが、どれだけ子供っぽくて。本当のものを知らなかったのか、嫌でも思い知った。
だからボクは、忘れることにした。心の奥底に、しまっておくことにした。……だって、そうじゃないと。……ボクはもう、マスターや……シロのことが。全部、どうでもよくなってしまいそうだったから。
ここにあるのは、古い電球と。いくつかの小さな箱だけ。前は倉庫か何かだったみたい。
『では、私は見張りを。後は頼みます』
『わかりました』
すると、金色の子が外に出ていった。それで、鍵が閉まる音がして。ボクは銀色の子と二人っきりになった。
ここで何するんだろう。特訓でもするのかな。前にアイジスとレオがしてたのを見たことがある。ふっきんとか……? うでたて……。なんだっけ。確かそんなの。
『それでは始めます。準備はよろしいですね』
「う、うん……。でも、何をするの?」
すると銀色の子は、ゆっくりとボクに近寄ってきた。遠慮なしに、一気に。だから……お顔が、とても近くて。
怖いくらい、きれいなお顔だった。ほっぺが、見ただけでもわかるくらいすべすべで。柔らかそうで。瞳の色が、まるで透き通った水みたいな。
それでボクは、少しだけ意識しちゃった。どきどきして、思わず目をそらしちゃって。でも、そうすると。この子は、突然ボクの顔に手を添えて。無理矢理ボクの顔を、自分に向けた。
「あっ……」
真っ直ぐな、目だった。ボクを、真っ直ぐ見てて。まるで心の中が、全部見透かされちゃってるみたいで。
『いいですか、クロ。あなたが力を得るには、いわば封印のようなものを解かなくてはなりません』
「……ふういん?」
『ええ。マスター・シュバルツがあなたに施した、安全装置。それを解除すれば、あなたはもっと強力な力を操ることが出来るようになります』
「……力を……。それって、どうやるの?」
ボクがそう言うと、この子は、ボクの頭の後ろに左手を添えて。右手で、ボクを抱きしめるようにして……。
『古来より、封印を……呪いを解くには。王子のキスと、決まっています』
「えっ……――」
ボクに、キスをした。今までに味わったことがないくらい、とても、優しく。
唇が、柔らかくて。暖かい。それはまるで、マスターのように。……乱暴な人たちとは、全然違う。
心なしか、どこかでこういうのを望んでた自分が居た。ちょっとだけ、してみたいって。ちょっとだけ、……悪いことをしたいって。
でも、変だった。ボクが息が苦しくなって、少しだけ離れると。この子は、それを許さないようにもう一度キスをしようとする。
『駄目ですよ。ちゃんと、しないと』
「ま、待ってっ……。息が、苦しくて……」
聞いてくれなかった。この子は、またキスをした。今度は、少し強引に。ボクは逃げようとするけど、逃げられない。この子が、ボクを抱きしめてるから。
逃げ場が無いってことは、どうしようもないってことで。ボクは、逃げたかった。もう。この子のキスは、今までボクがしてきたような、キスじゃない。……あえて言うなら、本物のキスだった。
「んっ……! んんっ……!」
怖い。何か、何か来る。どこか、奥の方から。何かを、引きずり出されてる。
息を、息を吸わなきゃ。じゃなきゃ、駄目だ。苦しいからとか、そういうのじゃなくて。吸わなきゃいけない。
「っ……!」
でも、許してくれなかった。この子は優しい目で、ボクを見てて。……それで、伝わってきた。ボクを逃がす気は、ないって。
足から、力が抜けてきた。手が、震えてきた。身体中が、ぞわぞわして。鳥肌が、立っていって。
思わずボクは、この子のお洋服をつかんだ。そうしないと、倒れちゃいそうだったから。
「……ぷはっ……!」
するとこの子は、突然唇を離した。だからボクは、たくさん息を吸って。壊れそうになる何かを、保った。
『まだ私の名を、お伝えしていませんでしたね』
「はあっ……はあっ……。な、なまえ……?」
『ええ。私の名は、アラネア。クロ、あなたの……。フィアンセです』
「……?」
ふぃあんせって、なんだろう。確か前に、マスターに聞いたことがあったような。
でもそれを思い出す余裕は、なかった。だってもう一度、この子が……。アラネアが、キスしようとしてたから。
ボクは、拒んだ。アラネアの胸に手を当てて、押し返そうとした。だって、そうしないと。次にあんなキスをされたら。
でも、出来なかった。止められなかった。思えば、当たり前で。あんなに強いアラネアのことを、ボクなんかの力で止められるはずがなかった。
だから、キスをしちゃった。三回目の。なぜか、今までのとは全然違ってて。唇が触れた瞬間、ボクは。……意識が、飛びそうになってしまった。
頭の中で、何かが溢れてる。溶けちゃいそうな、何かが。身体の中を溶かしていく、何かが。
もうこうなれば、ボクは自分で立っていられなかった。でも、アラネアが支えてくれて。優しく、抱いていてくれて。
何かが来るのが、わかった。でも気が付いた時には、もう、出ちゃってて。……ボクは泣きながら、白いのを、出しちゃってた。まるで、少しだけ開けた、蛇口みたいに。
それだけじゃない。それ以外にも、ボクの中から何かが出て来ているのがわかった。今までは奥の方に眠ってた、何か。それをアラネアが、起こしちゃって。引きずり出しちゃって。
気が付けばボクは、アラネアにされるがままだった。後のことは、覚えていない。……ただ、少しだけ。忘れてしまいたくなるほどの、快感があったのは覚えてる。
今までのボクが、安っぽくて。今までしてきたものが、どれだけ子供っぽくて。本当のものを知らなかったのか、嫌でも思い知った。
だからボクは、忘れることにした。心の奥底に、しまっておくことにした。……だって、そうじゃないと。……ボクはもう、マスターや……シロのことが。全部、どうでもよくなってしまいそうだったから。
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