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第十三章
事後
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幾らかの時間が過ぎたみたいだった。長かったような……短かったような。でも、ハッキリわかってたのは。今までに体験したことがないくらいに、その。濃密だったってことで。
まるで、初めての時みたいに。自分の裸を見られるのが、恥ずかしくて。それで、とっても優しくて。……もう、忘れられそうにない。
『大丈夫ですか、クロ?』
アラネアが、ボクにシーツを着せてくれていた。ボクはそれを着て、身体を小さくしてて。顔も真っ赤にしてた。
『フフ。素敵でしたよ』
ボクは思わず、シーツで顔を隠した。アラネアの顔をまともに見ることが出来なかったから。
『とにかくこれで、封印は解除されました。もうあなたは、誰にも負けません』
「……」
本当かな。ただ、気持ちよかっただけだったけど。……これで、皆を守れるのかな。大切な人、皆。
『失礼します』
すると、金髪の子が部屋に入って来た。ようやくわかったけど、この子は見張っててくれたんだ。ボクがアラネアとしている間、ここに誰かが来ないように。……そういえば、さっき扉が開いたような音がしたけど。気のせいかな。
「ねえ、その。さっき、誰か見てなかった……?」
『いえ。誰も居ませんでしたよ。誰も来ていません』
「……そう」
もしかして、この子が見てたのかな。そうだとしたら、とても恥ずかしい。あんなだらしない姿なんて、見られたくないし。
『さあ、クロ。そろそろ行きましょう。力の練習もしておかなくてはなりませんから』
そうしてボクは、二人と一緒に部屋を出た。その間はずっと、アラネアが手を握っててくれて。この手を通じて、ボクの心臓の音が聞こえないかがとても心配だった。
ボクらは、一旦食堂に戻った。それでそこから、運動場に向かっていたんだけど。その途中でアイジスを見かけた。大きな荷物を持ってたから、お仕事の最中だったんだと思う。でも。
「あれ……?」
変な感じがした。アイジスの顔が、辛そうっていうか。一瞬しか見えなかったけど。
だからボクは、思わずアイジスを追いかけようとした。でもアラネアがボクを離してくれなくて。そうこうしているうちに、アイジスはどこかへ行ってしまった。
「ね、ねえ。お願い、練習は後じゃ駄目かな。追いかけないと……」
『駄目です。すぐにやらないと、意味がないんです』
「でも、アイジスが……」
すると、金髪の子が近くに寄ってきた。何か怒っているような、ムスッとした顔で、ボクを見て。
『なぜあんな奴のことを気に掛けるんですか。あいつは、ただの下衆野郎なのに』
アイジスの悪口を言った。だから、嫌だった。ボクはムキになってアイジスを追いかけようとする。でもアラネアは手を離してくれないから、腕が痛かった。
「離して、アイジスはボクが見守って無いと駄目なんだ。ボクが、守ってあげないと……」
『あんな奴、死んでしまえばいいんです。当然の報いですよ』
「っ……」
『あなたのように崇高な方が、守るべき相手ではありません。間違いを犯した者は、裁かれる。それがこの世の道理――』
その時だった。ボクは思わず、カッとなって。生まれて初めて人を叩いた。昔ボクも誰かにやられたように、ほっぺを思い切り、手のひらで。
痛かった。手のひらが、ジンジンとして。でもそれが気にならないくらい、……腹が立っていた。すごく、むかついていた。
「アイジスを、悪く言わないで。……お願いだから」
金髪の子は、少し唖然とした様子でボクを見てた。それでもすぐに、冷静さを取り戻して。
『あいつは間違っているんです。あなたのような子供に手を出した時点で、死ぬべきなんです。それはあなたもわかっているでしょう』
難しいことを言ってきた。正直言って、全部を理解することは出来なかった。でも多分、アイジスは悪いことをしたって言ってるんだと思う。でも。
「……。ボクには、そういうことはわからない。でも、ボクが間違ってるなら。アイジスが間違ってるって言うんなら。……間違ったままでいい」
『……』
「ボクは、アイジスを守りたいんだ。ボクが、アイジスを守りたいんだ。……それじゃあ駄目なの? それともボクは、それすらも選べないの?」
『それではあなたまで、裁かれることになってしまいますが』
「いいよ。それでいい。……だから、お願いだから。アイジスのことを悪く言うのは、止めて」
『……』
わからなかった。確かにアイジスは、ボクに色々としたんだけど。でもそもそもは、ボクが誘ったんだ。だから言ってしまえば、ボクも同罪。
でも金髪の子は、アイジスだけを責めて。ボクを責めてない。……えっと、ボクのことを棚に上げてる。なぜだかそれが、すごく嫌だった。
どうしてみんな、嫌うんだろう。どうしてみんな、憎しみ合うんだろう。金髪の子も、アイジスも。……メアも、ここの人たちも。皆、皆。もう、わからない。
『わかりました。そこまで言うなら、代わりに私が見てきます』
「え……?」
『その間にあなたは、訓練を行ってください。……それなら文句はありませんよね』
すると金髪の子は、アイジスの消えた方に歩いて行った。ボクの代わりに、アイジスを探しに行ってくれるみたい。
でも、何だか怒ってた。声が少し怖かった。……急にボクの頭が冷えて、謝りたくなって。金髪の子に声をかけようとするんだけど。
『今はそっとしておきましょう、クロ』
アラネアが止めた。今度はさっきより、少し強めに。
『すみません。彼は少し感情的なんです。……それもこれも、クロを想ってのことで。許してやってください』
「……。うん……」
『それより私達は、訓練に集中しましょう。さあ、こちらです』
そうしてボクは、アラネアと一緒に運動場の方に行った。その途中で、金髪の子の背中をずっと見てたんだけど。……金髪の子の背中が、少し悲しそうに見えた。だからボクは、後でちゃんと謝ろうと思って。今の出来事を心に留めておいた。
まるで、初めての時みたいに。自分の裸を見られるのが、恥ずかしくて。それで、とっても優しくて。……もう、忘れられそうにない。
『大丈夫ですか、クロ?』
アラネアが、ボクにシーツを着せてくれていた。ボクはそれを着て、身体を小さくしてて。顔も真っ赤にしてた。
『フフ。素敵でしたよ』
ボクは思わず、シーツで顔を隠した。アラネアの顔をまともに見ることが出来なかったから。
『とにかくこれで、封印は解除されました。もうあなたは、誰にも負けません』
「……」
本当かな。ただ、気持ちよかっただけだったけど。……これで、皆を守れるのかな。大切な人、皆。
『失礼します』
すると、金髪の子が部屋に入って来た。ようやくわかったけど、この子は見張っててくれたんだ。ボクがアラネアとしている間、ここに誰かが来ないように。……そういえば、さっき扉が開いたような音がしたけど。気のせいかな。
「ねえ、その。さっき、誰か見てなかった……?」
『いえ。誰も居ませんでしたよ。誰も来ていません』
「……そう」
もしかして、この子が見てたのかな。そうだとしたら、とても恥ずかしい。あんなだらしない姿なんて、見られたくないし。
『さあ、クロ。そろそろ行きましょう。力の練習もしておかなくてはなりませんから』
そうしてボクは、二人と一緒に部屋を出た。その間はずっと、アラネアが手を握っててくれて。この手を通じて、ボクの心臓の音が聞こえないかがとても心配だった。
ボクらは、一旦食堂に戻った。それでそこから、運動場に向かっていたんだけど。その途中でアイジスを見かけた。大きな荷物を持ってたから、お仕事の最中だったんだと思う。でも。
「あれ……?」
変な感じがした。アイジスの顔が、辛そうっていうか。一瞬しか見えなかったけど。
だからボクは、思わずアイジスを追いかけようとした。でもアラネアがボクを離してくれなくて。そうこうしているうちに、アイジスはどこかへ行ってしまった。
「ね、ねえ。お願い、練習は後じゃ駄目かな。追いかけないと……」
『駄目です。すぐにやらないと、意味がないんです』
「でも、アイジスが……」
すると、金髪の子が近くに寄ってきた。何か怒っているような、ムスッとした顔で、ボクを見て。
『なぜあんな奴のことを気に掛けるんですか。あいつは、ただの下衆野郎なのに』
アイジスの悪口を言った。だから、嫌だった。ボクはムキになってアイジスを追いかけようとする。でもアラネアは手を離してくれないから、腕が痛かった。
「離して、アイジスはボクが見守って無いと駄目なんだ。ボクが、守ってあげないと……」
『あんな奴、死んでしまえばいいんです。当然の報いですよ』
「っ……」
『あなたのように崇高な方が、守るべき相手ではありません。間違いを犯した者は、裁かれる。それがこの世の道理――』
その時だった。ボクは思わず、カッとなって。生まれて初めて人を叩いた。昔ボクも誰かにやられたように、ほっぺを思い切り、手のひらで。
痛かった。手のひらが、ジンジンとして。でもそれが気にならないくらい、……腹が立っていた。すごく、むかついていた。
「アイジスを、悪く言わないで。……お願いだから」
金髪の子は、少し唖然とした様子でボクを見てた。それでもすぐに、冷静さを取り戻して。
『あいつは間違っているんです。あなたのような子供に手を出した時点で、死ぬべきなんです。それはあなたもわかっているでしょう』
難しいことを言ってきた。正直言って、全部を理解することは出来なかった。でも多分、アイジスは悪いことをしたって言ってるんだと思う。でも。
「……。ボクには、そういうことはわからない。でも、ボクが間違ってるなら。アイジスが間違ってるって言うんなら。……間違ったままでいい」
『……』
「ボクは、アイジスを守りたいんだ。ボクが、アイジスを守りたいんだ。……それじゃあ駄目なの? それともボクは、それすらも選べないの?」
『それではあなたまで、裁かれることになってしまいますが』
「いいよ。それでいい。……だから、お願いだから。アイジスのことを悪く言うのは、止めて」
『……』
わからなかった。確かにアイジスは、ボクに色々としたんだけど。でもそもそもは、ボクが誘ったんだ。だから言ってしまえば、ボクも同罪。
でも金髪の子は、アイジスだけを責めて。ボクを責めてない。……えっと、ボクのことを棚に上げてる。なぜだかそれが、すごく嫌だった。
どうしてみんな、嫌うんだろう。どうしてみんな、憎しみ合うんだろう。金髪の子も、アイジスも。……メアも、ここの人たちも。皆、皆。もう、わからない。
『わかりました。そこまで言うなら、代わりに私が見てきます』
「え……?」
『その間にあなたは、訓練を行ってください。……それなら文句はありませんよね』
すると金髪の子は、アイジスの消えた方に歩いて行った。ボクの代わりに、アイジスを探しに行ってくれるみたい。
でも、何だか怒ってた。声が少し怖かった。……急にボクの頭が冷えて、謝りたくなって。金髪の子に声をかけようとするんだけど。
『今はそっとしておきましょう、クロ』
アラネアが止めた。今度はさっきより、少し強めに。
『すみません。彼は少し感情的なんです。……それもこれも、クロを想ってのことで。許してやってください』
「……。うん……」
『それより私達は、訓練に集中しましょう。さあ、こちらです』
そうしてボクは、アラネアと一緒に運動場の方に行った。その途中で、金髪の子の背中をずっと見てたんだけど。……金髪の子の背中が、少し悲しそうに見えた。だからボクは、後でちゃんと謝ろうと思って。今の出来事を心に留めておいた。
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