崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十三章

訓練

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 そこは、大きな広場みたいになっていた。運動が出来るように作られた場所らしいから、とても広くて。こういうのを多目的ドームって言うみたい。
 ボクたち以外にも、何人かの人が居た。皆それぞれが走ったり、重そうな何かを持ち上げてたりしてて。身体を鍛えてた。……筋肉がすごい。皆、アイジスとレオみたいに身体ががっしりしてる。
『さあ、クロ。まずは準備運動と行きましょう』
 ボクとアラネアは、動きやすいお洋服に着替えていた。それでアラネアの真似をしながら、身体をほぐしていく。こういうのをやるのは初めてだったから、少しドキドキしてた。
『いいでしょう。それでは訓練の内容を、簡単に説明します。よろしいですか』
「うん」
『まずあなたは、既に目覚めている力があります。それが、サイコキネシス。簡単に言えば、直接手を触れずに、物体を動かしたりすることが出来る能力です』
「……メアに、教わったアレ?」
『はい。ただあれは、力の悪用です。あんな風に使っては危険極まりない。あれはあれとして、今後もっと繊細に扱えるようになっていきましょう』
「うん。わかった」
『今回は、新たに目覚めさせた能力。――”予知”の練習をしましょう。本来なら指導役として、あの人が居て欲しい所ですが……』
「……?」
『まあ習うより慣れろと言います。やってみましょう』
 するとアラネアは、五つのコップをテーブルの上に置いた。そしてボールも取り出して、左端のコップに入れて。コップをシャッフルする。
『さあ、どれにボールが入っているか。当ててみてください』
 前にマスターが見せてくれたことがある。こういうの、手品って言うんだ。
 でも前の時と同じで、やっぱりわからない。アラネアの手つきは、とても早くて。ボールの入ってるコップをすぐに見失ってしまった。
『考えないでください。ただ、感じ取るんです』
 そうは言っても、中身が見えないんなら仕方ない。もう当てずっぽうでやってみようかと思って、適当に言おうとするんだけど。
『ふむ。では、これではどうでしょうか』
 するとアラネアが、一番右端のコップを持ちあげた。だからそのコップには、何も入っていないってことがわかる。
『では、次です』
 次にアラネアは、隣のコップに手を添えた。それで今と同じように、ゆっくりと持ち上げようとするんだけど。……でも、その時だった。
「あ……。ま、待って」
 変な感じがした。モヤモヤっていうか、ざわざわっていうか。それでボクはアラネアに待ってもらって、少し集中する。
 何かが見える気がした。中身がとかじゃなくて、何かこう、頭の中に浮かんでくる。ぼやーっとしてて、よく見えないから。ボクは目を閉じて……大きく息を吸った。
「……。多分、なんだけど。そのコップに……ボールが入ってると思う」
 ボクは目を開けて、アラネアに伝えた。それでアラネアは頷いて、コップを持ちあげた。……正解だった。そのコップには、ボールが入っていた。
『お見事です。なぜ今、当てることが出来ましたか?』
「えっと。その。……頭の中に、浮かんできたの。アラネアがコップを持ちあげて、ボールが出てくるのが」
『ふむ、なるほど。どうやら今は、数秒ほど先の未来が見えるようですね』
「……未来が、見える?」
『ええ。予知というのは、未来を見る能力のことです。個人差はありますが、訓練次第でもっと先の未来も見えるようになりますよ』
 ……それが本当なら、すごいと思った。だってそれなら、いつ誰が傷つくかとかがわかるから。皆を守ることに繋がる。
『……』
 でも、変だった。すごい力なのに、アラネアは喜んでない。
「ど、どうしたの?」
 アラネアの顔が、暗い。というよりは、何かを心配しているようだった。マスターがたまに、ボクに対して浮かべてた……顔。
『ある、一人の人間が居ました』
「……?」
『その人物はあなたと同様、未来を読む力を持っていました。ですがある日、その人物は力を捨てたんです。なぜだか、お分かりですか』
 ボクは少し考えてみた。でも、今はよくわからなかった。だってこれがあれば、皆を救えるのに。
「あっ……」
 するとアラネアが、なぜか急にボクを抱きしめた。さっきみたいに、優しく。
『覚えておいてください。あなたは、一人の人間なのです。……知らない誰かのために、自分を犠牲しないでください』
「ど、どういうこと?」
『すぐにわかります。きっと、あなたなら。……わかってしまうから、心配なんです』
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