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第十四章
Imitation
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その時のボクの衝撃は、どう例えたらいいのかわからなかった。でも今までに覚えがないくらい、驚いたのだけは確かで。
鏡を見ているようだった。仮面を外したその子の顔は、なんでかはわからないけど……。ボクそっくりだったんだ。
「え……? え……?」
「ボクは、君なんだ。君も、ボクなんだ。……これで、信じてくれた?」
するとその子は、ボクの首筋に鼻をくっつけた。仮面が無くなった分、思いっきり匂いを嗅いでて。
でもボクはまだ困惑している最中だったから、どうしようも出来なかった。拒むことも、受け入れることも。何も出来なくて。
「ね、お願い。代わってよ。これなら、バレないと思うんだ」
「で……でも……」
返事を聞く前に、その子はボクに仮面をつけた。紐を通されて、縛られて。もう自分では取れそうにないくらいだった。
「……少しで、いいから。……お願いだから」
ボクは仮面の目元から、その子の顔を見た。……目が、ぐるぐるしてる。このまま断ったら、殺されてしまいそうだった。
だからボクは、頷いた。……仕方なかった。だって、死にたくなくて。
「ありがとう……!」
その子は嬉しそうに、ボクに抱きついた。それで先にお風呂を出て、さっきまでボクが着ていたお洋服に着替えて。ボクを急かす。
……なんだか、もう戻れないような気がした。その子は、もう返してくれない気がする。じゃあ……ボクは、もうクロじゃない? ならボクは、誰になったの?
「ま、マスター……」
ボクたちはシャワーの部屋から出て、マスターの所に行った。その子が嬉しそうにマスターに声をかけると、マスターはこっちを向いた。
「やあ、クロ。少し遅かったね」
「ご、ごめんなさい。えっと、身体を洗ってて……」
ボクは壁際に居て、それを見守ってた。今までボクがしていたものが、ボクじゃない誰かによって、目の前で起こってて。
すごく怖かった。今になって、急に恐ろしくなった。……もうマスターは、ボクをボクとして見てくれない。それどころか、昨日みたいに……。
「さあ、おいで。ご飯にしよう」
「う、うん……!」
マスターがこっちに来た。その子が、嬉しそうに手を伸ばしてて。……二人の距離が近くなる度に、心臓が痛かった。
心の中が、黒くなっていく感じがした。何か気持ち悪い物が、べったりついていって。気分が悪くなった。
苦しい。死んでしまいそう。……違うの、マスター。クロは、ボクなんだ。その子は、ボクじゃなくて。……ボクが……。
「――、え――」
「大丈夫かい、クロ」
その時だった。ボクが思わず、倒れそうになった瞬間。……マスターが、ボクを受け止めていた。
「え……?」
「湯に当たり過ぎたのかな。のぼせているのかもしれないね」
……、どうして。だって今、マスターはあの子と話してて……。
「さあ、おいで。冷たいタオルでも用意しよう」
マスターはボクの手を握っていた。あの子じゃなくて、ボクの手を。……なんで? ボクは仮面を、つけてるのに。
「ま、マスター……? どう……して……」
あの子が言った。でもマスターが振り向くことは、なくて。
「仮面を付け替えたぐらいで、私の目を欺けるとでも?」
マスターはボクから、仮面を外した。それで足で踏んで、壊してしまった。
「っ……!」
「貴様は自分がクロに似ていると思っているかもしれないが、それは大きな間違いだ。貴様とクロは、全く違う。別物なんだよ」
「……そん……な……」
あの子の目を見た。……絶望してた。目から光が、無くて。表情も無くて。……全部が空っぽなのが、伝わってきた。
「偽物ごときが、思い上がるなよ。貴様はもう用済みだ。どこへなりとも消えてしまえ」
「……マスター……ボ、ボクは……」
「聞こえないのか。――”死ね”と言っているんだよ。お前に価値なんぞ、無い」
鏡を見ているようだった。仮面を外したその子の顔は、なんでかはわからないけど……。ボクそっくりだったんだ。
「え……? え……?」
「ボクは、君なんだ。君も、ボクなんだ。……これで、信じてくれた?」
するとその子は、ボクの首筋に鼻をくっつけた。仮面が無くなった分、思いっきり匂いを嗅いでて。
でもボクはまだ困惑している最中だったから、どうしようも出来なかった。拒むことも、受け入れることも。何も出来なくて。
「ね、お願い。代わってよ。これなら、バレないと思うんだ」
「で……でも……」
返事を聞く前に、その子はボクに仮面をつけた。紐を通されて、縛られて。もう自分では取れそうにないくらいだった。
「……少しで、いいから。……お願いだから」
ボクは仮面の目元から、その子の顔を見た。……目が、ぐるぐるしてる。このまま断ったら、殺されてしまいそうだった。
だからボクは、頷いた。……仕方なかった。だって、死にたくなくて。
「ありがとう……!」
その子は嬉しそうに、ボクに抱きついた。それで先にお風呂を出て、さっきまでボクが着ていたお洋服に着替えて。ボクを急かす。
……なんだか、もう戻れないような気がした。その子は、もう返してくれない気がする。じゃあ……ボクは、もうクロじゃない? ならボクは、誰になったの?
「ま、マスター……」
ボクたちはシャワーの部屋から出て、マスターの所に行った。その子が嬉しそうにマスターに声をかけると、マスターはこっちを向いた。
「やあ、クロ。少し遅かったね」
「ご、ごめんなさい。えっと、身体を洗ってて……」
ボクは壁際に居て、それを見守ってた。今までボクがしていたものが、ボクじゃない誰かによって、目の前で起こってて。
すごく怖かった。今になって、急に恐ろしくなった。……もうマスターは、ボクをボクとして見てくれない。それどころか、昨日みたいに……。
「さあ、おいで。ご飯にしよう」
「う、うん……!」
マスターがこっちに来た。その子が、嬉しそうに手を伸ばしてて。……二人の距離が近くなる度に、心臓が痛かった。
心の中が、黒くなっていく感じがした。何か気持ち悪い物が、べったりついていって。気分が悪くなった。
苦しい。死んでしまいそう。……違うの、マスター。クロは、ボクなんだ。その子は、ボクじゃなくて。……ボクが……。
「――、え――」
「大丈夫かい、クロ」
その時だった。ボクが思わず、倒れそうになった瞬間。……マスターが、ボクを受け止めていた。
「え……?」
「湯に当たり過ぎたのかな。のぼせているのかもしれないね」
……、どうして。だって今、マスターはあの子と話してて……。
「さあ、おいで。冷たいタオルでも用意しよう」
マスターはボクの手を握っていた。あの子じゃなくて、ボクの手を。……なんで? ボクは仮面を、つけてるのに。
「ま、マスター……? どう……して……」
あの子が言った。でもマスターが振り向くことは、なくて。
「仮面を付け替えたぐらいで、私の目を欺けるとでも?」
マスターはボクから、仮面を外した。それで足で踏んで、壊してしまった。
「っ……!」
「貴様は自分がクロに似ていると思っているかもしれないが、それは大きな間違いだ。貴様とクロは、全く違う。別物なんだよ」
「……そん……な……」
あの子の目を見た。……絶望してた。目から光が、無くて。表情も無くて。……全部が空っぽなのが、伝わってきた。
「偽物ごときが、思い上がるなよ。貴様はもう用済みだ。どこへなりとも消えてしまえ」
「……マスター……ボ、ボクは……」
「聞こえないのか。――”死ね”と言っているんだよ。お前に価値なんぞ、無い」
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