崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十五章

In the smoke

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 一瞬、意識が混濁した。何が起こったのかわからなかった。でもその代わりに、この酷い激痛と。むせ返るほどの土煙だけはわかって。
 頭の中が波打ってる。ゆらゆら揺れて、混ざって。何かが浮かんでくる。……それが嫌だった。だからボクは頭を振り払って、もう一度”それ”を沈めた。
「ぅ……」
 目を開けると、そこは煙の中だった。煙の向こうから、沢山の銃声が聞こえて。ボクは無意識のうちに察した。これはあの子がやったんだって。
 ……。何だろう。こんなこと、前にもあった気がする。遠い昔……? いや、つい最近――。
「大丈夫かい、クロ」
「……、マスター……」
 マスターが居た。マスターはボクのほっぺに手を添えて、話しかけていた。だからボクは起き上がろうとするけど、うまく立てなくて。
「動かなくていいよ。君はここで、少し休んでいてくれ。いいね?」
 なぜだかボクは、とても疲れていた。だからその言葉に甘えて、頷いて。するとマスターはボクにキスをして、煙の向こうに消えていった。
 ……。とてもうるさい。目を閉じてみると、色々な音が聞こえてくる。弾を撃つ音に、何かが爆発する音。それに、それに……。悲鳴。
 誰かが傷ついている。多分悪い人だ。マスターはその人たちと戦ってるんだ。でも悪い人って誰だろう、あの子のこと?
「……。違う……」
 違う。あの子じゃない。もっと別の人だ。あの子は騙されているだけ。きっと何か、事情があって……。
 ……でも、どうして? どうしてボクは、そう思うの? なんであの子が悪い子じゃないって、確信できるの? 会ったこともないのに……。
「あぐっ!!」
 その時だった。どこからか飛んできた石が、ボクの頭に直撃した。……とても痛い。少し血が出ているみたいで、ボクは思わず頭に触った。
「あら……。大丈夫?」
「え……?」
 ……誰かが居た。女の子が、目の前に立っていて。ボクを見てる。
「ほら、来て。手当てしてあげる」
 女の子はポケットからハンカチを取り出して、それをボクの頭に当てた。……優しい人だ・って、ボクは思ったけど……。なぜか素直に受け入れられなくて。
「酷い傷ね……。そうだ、私達の所においで。ちゃんとした治療をしてあげるから」
「あ、ありがとう。でも……マスターを待ってるから」
「あらそう? ……それは残念ね。私達の所に来たら……」
 すると女の子は、ボクの耳元に近づいてきて……。

「――シロを解放してあげるのに」

「ッ……!!」
 シロ。シロ。その言葉がボクに、変な鳥肌を立たせた。ついさっき会ったばかりなのに、なんで。
「可哀想ね。これじゃシロは、ずっと奴隷のまま。あなたを想い続けて、永遠に一人きり。……無様よ」
「な、何のこと……?」
「忘れたの? シロはあなたの大切な、結婚相手じゃない」
「……結婚……?」
 何を言ってるんだろう。ボクは今、マスターと誓いあったばかり。それにボクは他の誰かを好きになったことなんて……。
 ……。本当に無い? 愛おしい人は、マスターだけだった? ボクが好きなのは、本当に……。
「それにあなたには、ちゃんとお礼もしないと。この”腕”の……ね」
 ふと気が付いた。この女の子の左腕は、機械で出来ていた。沢山の小さな機械が、詰まってて。
 女の子は、冷たい金属の指先をボクに這わせてくる。なぜだろう。ボクはこの腕を知っている気がする。いや、この腕の”理由”を知っている。なんで、どうして。
「私には、あなたが必要なの。あなたが居ないと、外へ出られないの。……お願い。一緒に来て」
「で、でも……」
「駄目。来るの。……そのためだったら、手段は選ばないわ」
 すると女の子は、ポケットから注射器を取り出した。針をボクの腕に向けて、刺そうとしてる。だから抵抗しようとした。……でも、女の子がボクに馬乗りになってきて。動けなかった。
「大丈夫。全部私がやってあげる。痛くしないから」
「あうっ……!」
 ……女の子は腰を動かして、ボクのあそこを刺激してきた。それでボクは、少し身体が痺れちゃって。その間に女の子は注射を済ませてしまう。
 嫌な予感がする。何か悪い事が起きる。ボクはそう思っていた。でも時間が経つにつれて、その考えは変わっていって。……思い出してしまうと理解した。
「怖くない。怖くない。ほら、私に任せて。私で、忘れていいの」
 怖い。とても、恐ろしい。ボクは何か知っている。何か大切なことを忘れている。でもそれは思い出したら、駄目なもの。思い出したくないほど、大切なこと。
 忘れたかった。何かでかき消したかった。だからボクは、最初にこの”快楽”を見つけて。それにすがりたくなった。
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