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第十五章
I remembered
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頭の中を何かが駆け巡った。それはまるでロープのように、ボクの心の奥にある物に巻き付いて。ずるずると引きずり出してきた。
記憶だった。思い出したくない、記憶。思い出したくないほどに大切な、想い出。頭の中でそれが再生された瞬間、ボクはどうしようもない絶望感に襲われて。気が付けばボクは叫び声を上げていた。
「……クロ……」
シロが見ていた。メアの目線の先には、シロが居て。つまりそれは、見られたってことで。
……泣いていた。悲しい顔も、怒った顔もしていなくて。ただ、泣いていて。それがボクの心を責め立てていた。
「ち、ち、違う。違う。違うの! これは……そうじゃない!! 違う!!」
裏切った。ボクはシロを裏切っていた。大切な事を忘れて自分の幸せだけに浸っていた。どうして忘れていたのか、そんなことはどうでもよくて。ボクはただ必死に、自分の意思を保とうとしていた。
「何も違わないじゃない。……私を、愛してくれてるんでしょう?」
女の子……いや。メアがボクにしがみついてくる。メアの手がボクに触れる度に、鳥肌が立って。ボクはすぐに離れようとした。叩いて、押して。なんとか引きはがそうとした。
「こ、来ないで! 来ないで!!」
メアは笑っていた。中でボクのを締め付けながら、楽しそうにしてて。……でももう気持ちよくない。あるのはただの嫌悪感だけで。ボクはメアを突き飛ばして、なんとかその場から離れた。
「はあっ……はあっ……!」
嫌だった。少しでもメアで、感じてしまったのが。メアを求めてしまったのが。……そんなの、したくなかったのに。
死んでしまいたい。いっそ。こんなこと、受け入れられない。こんなこと嫌だ。嫌だ。嫌だ。
「……クロは、記憶が無くなってた。……お前の仕業か」
「ええ、そう。色々と勉強したの。大変だったのよ?」
シロがメアに近寄った。シロは今すぐにでも殴り出しそうな顔で、メアを睨んでて。
「これでクロは、私たちのもの。……何も文句はないでしょう?」
「お前のものじゃない」
「どうかしらね。それはすぐにわかるわ。……ねえ、クロ?」
ボクは察した。きっとシロは、メアの仲間になったんだ。……僕が勝手にマスターと結婚するって知ったから、マスターを裏切って。メアの側についた。
……マスター。どうしてボクは、忘れていたんだろう。忘れるわけがない。あんな大切な事。でも、それしか考えられなくて。マスターは、マスターは……。
「さあ、クロ。これで私たちの元に来る気になった? まさかあなたが、大切なシロを見捨てるわけがないものね?」
するとメアが、シロの首元に手を伸ばした。それでお洋服の襟を下ろして、何かチョーカーのようなものが見えて。
……チョーカーは赤く点滅している。ボクはこれを知らないけど、きっとこれは爆弾だ。そうでなくとも、シロを殺せてしまう何かしらのモノ。……つまりシロは、人質なんだ。そうでなきゃ、メアがボクを引き込めないから。
「お願い、クロ。……僕を選んで。じゃなきゃ僕は、生きる意味が無いの」
シロがボクを見ていた。必死そうに、祈るように。……こうなったらもう、ボクに選択肢は無い。……でもどっちにしろ、もう選択肢なんて……。
「選ぶ必要なんてないよ。クロ」
その時だった。後ろからマスターの声がしたと思うと、突然抱きしめられた。
「最初から答えは決まっている。そうだろう? こんな奴らなんて選ぶ意味がない」
……マスターが帰ってきたらしい。多分どこかで何かをしていたんだろうけど……。
いつも思う。マスターはいつも、こういうタイミングで現れる。そう、まるで……見計らっているみたいに。
「さあ、帰ろう。私たちの家に……」
マスターがキスをしようとしてきた。だからボクはそれを押しのけて……。マスターのほっぺを叩いた。
「……ボクに、触らないで」
ボクはその場から離れて、シロの手を握った。それからはもうマスターの顔を見ずに、シロのことだけを見ていた。
「お願い、シロ。今からじゃ……間に合わないかな? 今からでも、約束を……」
するとシロは、嬉しそうに微笑んでくれた。それで何かを答えるわけじゃなくて、ボクにキスをして。……これでボクはようやく、約束を守れた。
ボクはシロに沢山キスをした。今までのを塗りつぶすみたいに、かき消すみたいに。その度に幸せが襲ってきて、とても幸福で。……嬉しかった。
「……どうしてだい、クロ」
後ろでマスターが言った。……ボクはもう、マスターとはお話したくなかった。でもせめて、お別れの言葉だけは言ってあげようと思って。ボクは一言だけ呟いた。
「マスターが、嫌いだから」
記憶だった。思い出したくない、記憶。思い出したくないほどに大切な、想い出。頭の中でそれが再生された瞬間、ボクはどうしようもない絶望感に襲われて。気が付けばボクは叫び声を上げていた。
「……クロ……」
シロが見ていた。メアの目線の先には、シロが居て。つまりそれは、見られたってことで。
……泣いていた。悲しい顔も、怒った顔もしていなくて。ただ、泣いていて。それがボクの心を責め立てていた。
「ち、ち、違う。違う。違うの! これは……そうじゃない!! 違う!!」
裏切った。ボクはシロを裏切っていた。大切な事を忘れて自分の幸せだけに浸っていた。どうして忘れていたのか、そんなことはどうでもよくて。ボクはただ必死に、自分の意思を保とうとしていた。
「何も違わないじゃない。……私を、愛してくれてるんでしょう?」
女の子……いや。メアがボクにしがみついてくる。メアの手がボクに触れる度に、鳥肌が立って。ボクはすぐに離れようとした。叩いて、押して。なんとか引きはがそうとした。
「こ、来ないで! 来ないで!!」
メアは笑っていた。中でボクのを締め付けながら、楽しそうにしてて。……でももう気持ちよくない。あるのはただの嫌悪感だけで。ボクはメアを突き飛ばして、なんとかその場から離れた。
「はあっ……はあっ……!」
嫌だった。少しでもメアで、感じてしまったのが。メアを求めてしまったのが。……そんなの、したくなかったのに。
死んでしまいたい。いっそ。こんなこと、受け入れられない。こんなこと嫌だ。嫌だ。嫌だ。
「……クロは、記憶が無くなってた。……お前の仕業か」
「ええ、そう。色々と勉強したの。大変だったのよ?」
シロがメアに近寄った。シロは今すぐにでも殴り出しそうな顔で、メアを睨んでて。
「これでクロは、私たちのもの。……何も文句はないでしょう?」
「お前のものじゃない」
「どうかしらね。それはすぐにわかるわ。……ねえ、クロ?」
ボクは察した。きっとシロは、メアの仲間になったんだ。……僕が勝手にマスターと結婚するって知ったから、マスターを裏切って。メアの側についた。
……マスター。どうしてボクは、忘れていたんだろう。忘れるわけがない。あんな大切な事。でも、それしか考えられなくて。マスターは、マスターは……。
「さあ、クロ。これで私たちの元に来る気になった? まさかあなたが、大切なシロを見捨てるわけがないものね?」
するとメアが、シロの首元に手を伸ばした。それでお洋服の襟を下ろして、何かチョーカーのようなものが見えて。
……チョーカーは赤く点滅している。ボクはこれを知らないけど、きっとこれは爆弾だ。そうでなくとも、シロを殺せてしまう何かしらのモノ。……つまりシロは、人質なんだ。そうでなきゃ、メアがボクを引き込めないから。
「お願い、クロ。……僕を選んで。じゃなきゃ僕は、生きる意味が無いの」
シロがボクを見ていた。必死そうに、祈るように。……こうなったらもう、ボクに選択肢は無い。……でもどっちにしろ、もう選択肢なんて……。
「選ぶ必要なんてないよ。クロ」
その時だった。後ろからマスターの声がしたと思うと、突然抱きしめられた。
「最初から答えは決まっている。そうだろう? こんな奴らなんて選ぶ意味がない」
……マスターが帰ってきたらしい。多分どこかで何かをしていたんだろうけど……。
いつも思う。マスターはいつも、こういうタイミングで現れる。そう、まるで……見計らっているみたいに。
「さあ、帰ろう。私たちの家に……」
マスターがキスをしようとしてきた。だからボクはそれを押しのけて……。マスターのほっぺを叩いた。
「……ボクに、触らないで」
ボクはその場から離れて、シロの手を握った。それからはもうマスターの顔を見ずに、シロのことだけを見ていた。
「お願い、シロ。今からじゃ……間に合わないかな? 今からでも、約束を……」
するとシロは、嬉しそうに微笑んでくれた。それで何かを答えるわけじゃなくて、ボクにキスをして。……これでボクはようやく、約束を守れた。
ボクはシロに沢山キスをした。今までのを塗りつぶすみたいに、かき消すみたいに。その度に幸せが襲ってきて、とても幸福で。……嬉しかった。
「……どうしてだい、クロ」
後ろでマスターが言った。……ボクはもう、マスターとはお話したくなかった。でもせめて、お別れの言葉だけは言ってあげようと思って。ボクは一言だけ呟いた。
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