崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十九章

Mother……?

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 ――気が付くと、ボクは夢の中に居た。水のように澄み切った青空と、雲のようにふわふわとした大地で。ボクは一人、ぽつんと立っていた。
 ここはどこだろう。そう思って辺りを見渡してみると、地平線の向こうに人影が見えた。ボクはその人に向かって話しかけようとするけど、声は届かなくて。そしてあっという間に、その人影は消えてしまう。
 寂しかった。とても綺麗な場所だけど、誰も居なくて。ボクはとても心細くなって、その場でうずくまっちゃって。皆のことを頭で思い浮かべた。……そうして、ボクは目覚めた。
「あ……」
 最初に見えたのは、古びたタイル式の天井。崩れそうってほどじゃないけど、かなりボロボロで。
 そのまま首を横に向けてみると、点滴用のポールと、等間隔で並ぶベッドが見えたから。ここは医務室なのかな、とか思う。
 なんだか前にも、こんなことがあったような。少し前に、同じ出来事を体験したような気がする。
「おはよう、クロ」
「あ、……メア?」
 一瞬、ボクはシロだと思った。でもそこに居たのは、メアで。
「シロなら今は居ないわ。野暮用でね」
「……そう、なんだ」
 ここはどこだろう。見たことのない場所だ。確かボクは、シロを助けようとして力を使って。それで、倒れて……。
「何も覚えてないの?」
「う、うん。……メアのお家に行って、シロの所に戻ったのは覚えてるけど……」
 その時ボクは、こっそりシーツを握りしめた。あの時のシロの様子が、脳裏に焼き付いていて。
「まあその方が都合はいいわ。とにかく、ここは病院よ。アタシのツテを辿って、ここに来たの」
「そう、なんだ。……ごめんね」
「……? なんで謝るの?」
「だ、だって。病院ってことは、またボク倒れちゃったんでしょ? 迷惑、かけちゃったから……」
「……」
 すると、メアがボクを抱きしめた。この前の時みたいに、とても優しく。
「どうしていつも、アンタはそうなのかしら。全部、自分で抱え込んでばかり」
「メア……?」
「アンタのそういうとこ、嫌いよ。嫌いで嫌いで、仕方ない。……でも……」
 メアは以上、何も言わなかった。だからボクは、何が伝えたかったのかがわからなくて。
 ……いい匂いがする。シャワーを浴びたての時みたいに、髪がふわふわしてる。ボクのこの気持ちって、何なんだろう。どうしてこんなに、心が温かくなるんだろう。
「とにかく、ちょっと待ってなさい。すぐにドクターが来るわ」
「え……。メアの、お姉さん?」
「いや、違うわ。ここのドクターは……」
 その時だった。どこからか、『ピポパポ』って音が聞こえてくる。ボクはその音に気を取られて、医務室の入り口の方に目を向けた。
『患者・ゼロゼロスリーノ起床ヲ確認。バイタルテストヲ開始シマス』
 そこに居たのは、ピンク色のロボット。ブリキのおもちゃのような見た目で、鈍い金属音を響かせながら動いてる。
「これは……?」
「こいつの名前は”ドクトル”。まあ機械の医者よ。古い世代のものだけど、まだ使えるわ」
 ドクトルは僕の隣に来て、脈を診るような動きをした。それから検査機にケーブルを繋いで、何かを調べてる。
『心拍ガ上昇シテイマス。気分ハドウデスカ? リラックス、デキテイマスカ?』
「あ……。う、うん。大丈夫……」
『身体機能、回復中。若干ノ栄養不足ヲ確認。マモナク食事ガ来ルノデ、食ベテクダサイネ』
 すると今度は、トレイを乗せたロボットが食事を運んでくれた。賞味期限がギリギリの、乾パンの缶詰。別にそれはよかったんだけど……。
「……二人は、食べたの?」
「ええ。飽きるほどね。とっとと食べちゃいなさい、腐るわよ」
 メアがそう言った。だからボクは、缶詰を開けて乾パンを食べる。
「……なんか、懐かしいね」
「何が?」
「メアと初めて会った時も、これを食べてた。メアが、ボクにこれをくれて……」
「……まあ、そんなこともあったかもね。いいから黙って食べなさい。次いつ食料にありつけるか、わかんないから」
 するとメアは、病室を出て行ってしまった。その瞬間にボクは、なぜかとたんに寂しくなって。せっかくの乾パンも、美味しくなくなってしまう。
『ドウシマシタ? オチコンデイマスネ』
「……うん。なんで、だろうね」
『フム……。コノ症状ハ、一度見タコトガアリマス。――親ト離レ離レニナッタ、子供ニ見ラレタモノデスネ』
「親……?」
『親ノ愛情、特ニ母性デショウ。人間ニハソレガ、欠カセマセンカラ』
 親。親。両親。お母さん、お父さん。……その時ボクは、ようやく理解した。自分には、そういう人が居ないって。
 だからもしかしたら、メアをお母さんに見立てているのかもしれない。ボクはメアに、母性を求めてる……?
「……君も、こんな気持ちだったの……? ……アイジス……」
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2021.09.09 ユーザー名の登録がありません

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2021.09.09 空倉霰

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