139 / 139
第十九章
Mother……?
しおりを挟む
――気が付くと、ボクは夢の中に居た。水のように澄み切った青空と、雲のようにふわふわとした大地で。ボクは一人、ぽつんと立っていた。
ここはどこだろう。そう思って辺りを見渡してみると、地平線の向こうに人影が見えた。ボクはその人に向かって話しかけようとするけど、声は届かなくて。そしてあっという間に、その人影は消えてしまう。
寂しかった。とても綺麗な場所だけど、誰も居なくて。ボクはとても心細くなって、その場でうずくまっちゃって。皆のことを頭で思い浮かべた。……そうして、ボクは目覚めた。
「あ……」
最初に見えたのは、古びたタイル式の天井。崩れそうってほどじゃないけど、かなりボロボロで。
そのまま首を横に向けてみると、点滴用のポールと、等間隔で並ぶベッドが見えたから。ここは医務室なのかな、とか思う。
なんだか前にも、こんなことがあったような。少し前に、同じ出来事を体験したような気がする。
「おはよう、クロ」
「あ、……メア?」
一瞬、ボクはシロだと思った。でもそこに居たのは、メアで。
「シロなら今は居ないわ。野暮用でね」
「……そう、なんだ」
ここはどこだろう。見たことのない場所だ。確かボクは、シロを助けようとして力を使って。それで、倒れて……。
「何も覚えてないの?」
「う、うん。……メアのお家に行って、シロの所に戻ったのは覚えてるけど……」
その時ボクは、こっそりシーツを握りしめた。あの時のシロの様子が、脳裏に焼き付いていて。
「まあその方が都合はいいわ。とにかく、ここは病院よ。アタシのツテを辿って、ここに来たの」
「そう、なんだ。……ごめんね」
「……? なんで謝るの?」
「だ、だって。病院ってことは、またボク倒れちゃったんでしょ? 迷惑、かけちゃったから……」
「……」
すると、メアがボクを抱きしめた。この前の時みたいに、とても優しく。
「どうしていつも、アンタはそうなのかしら。全部、自分で抱え込んでばかり」
「メア……?」
「アンタのそういうとこ、嫌いよ。嫌いで嫌いで、仕方ない。……でも……」
メアは以上、何も言わなかった。だからボクは、何が伝えたかったのかがわからなくて。
……いい匂いがする。シャワーを浴びたての時みたいに、髪がふわふわしてる。ボクのこの気持ちって、何なんだろう。どうしてこんなに、心が温かくなるんだろう。
「とにかく、ちょっと待ってなさい。すぐにドクターが来るわ」
「え……。メアの、お姉さん?」
「いや、違うわ。ここのドクターは……」
その時だった。どこからか、『ピポパポ』って音が聞こえてくる。ボクはその音に気を取られて、医務室の入り口の方に目を向けた。
『患者・ゼロゼロスリーノ起床ヲ確認。バイタルテストヲ開始シマス』
そこに居たのは、ピンク色のロボット。ブリキのおもちゃのような見た目で、鈍い金属音を響かせながら動いてる。
「これは……?」
「こいつの名前は”ドクトル”。まあ機械の医者よ。古い世代のものだけど、まだ使えるわ」
ドクトルは僕の隣に来て、脈を診るような動きをした。それから検査機にケーブルを繋いで、何かを調べてる。
『心拍ガ上昇シテイマス。気分ハドウデスカ? リラックス、デキテイマスカ?』
「あ……。う、うん。大丈夫……」
『身体機能、回復中。若干ノ栄養不足ヲ確認。マモナク食事ガ来ルノデ、食ベテクダサイネ』
すると今度は、トレイを乗せたロボットが食事を運んでくれた。賞味期限がギリギリの、乾パンの缶詰。別にそれはよかったんだけど……。
「……二人は、食べたの?」
「ええ。飽きるほどね。とっとと食べちゃいなさい、腐るわよ」
メアがそう言った。だからボクは、缶詰を開けて乾パンを食べる。
「……なんか、懐かしいね」
「何が?」
「メアと初めて会った時も、これを食べてた。メアが、ボクにこれをくれて……」
「……まあ、そんなこともあったかもね。いいから黙って食べなさい。次いつ食料にありつけるか、わかんないから」
するとメアは、病室を出て行ってしまった。その瞬間にボクは、なぜかとたんに寂しくなって。せっかくの乾パンも、美味しくなくなってしまう。
『ドウシマシタ? オチコンデイマスネ』
「……うん。なんで、だろうね」
『フム……。コノ症状ハ、一度見タコトガアリマス。――親ト離レ離レニナッタ、子供ニ見ラレタモノデスネ』
「親……?」
『親ノ愛情、特ニ母性デショウ。人間ニハソレガ、欠カセマセンカラ』
親。親。両親。お母さん、お父さん。……その時ボクは、ようやく理解した。自分には、そういう人が居ないって。
だからもしかしたら、メアをお母さんに見立てているのかもしれない。ボクはメアに、母性を求めてる……?
「……君も、こんな気持ちだったの……? ……アイジス……」
ここはどこだろう。そう思って辺りを見渡してみると、地平線の向こうに人影が見えた。ボクはその人に向かって話しかけようとするけど、声は届かなくて。そしてあっという間に、その人影は消えてしまう。
寂しかった。とても綺麗な場所だけど、誰も居なくて。ボクはとても心細くなって、その場でうずくまっちゃって。皆のことを頭で思い浮かべた。……そうして、ボクは目覚めた。
「あ……」
最初に見えたのは、古びたタイル式の天井。崩れそうってほどじゃないけど、かなりボロボロで。
そのまま首を横に向けてみると、点滴用のポールと、等間隔で並ぶベッドが見えたから。ここは医務室なのかな、とか思う。
なんだか前にも、こんなことがあったような。少し前に、同じ出来事を体験したような気がする。
「おはよう、クロ」
「あ、……メア?」
一瞬、ボクはシロだと思った。でもそこに居たのは、メアで。
「シロなら今は居ないわ。野暮用でね」
「……そう、なんだ」
ここはどこだろう。見たことのない場所だ。確かボクは、シロを助けようとして力を使って。それで、倒れて……。
「何も覚えてないの?」
「う、うん。……メアのお家に行って、シロの所に戻ったのは覚えてるけど……」
その時ボクは、こっそりシーツを握りしめた。あの時のシロの様子が、脳裏に焼き付いていて。
「まあその方が都合はいいわ。とにかく、ここは病院よ。アタシのツテを辿って、ここに来たの」
「そう、なんだ。……ごめんね」
「……? なんで謝るの?」
「だ、だって。病院ってことは、またボク倒れちゃったんでしょ? 迷惑、かけちゃったから……」
「……」
すると、メアがボクを抱きしめた。この前の時みたいに、とても優しく。
「どうしていつも、アンタはそうなのかしら。全部、自分で抱え込んでばかり」
「メア……?」
「アンタのそういうとこ、嫌いよ。嫌いで嫌いで、仕方ない。……でも……」
メアは以上、何も言わなかった。だからボクは、何が伝えたかったのかがわからなくて。
……いい匂いがする。シャワーを浴びたての時みたいに、髪がふわふわしてる。ボクのこの気持ちって、何なんだろう。どうしてこんなに、心が温かくなるんだろう。
「とにかく、ちょっと待ってなさい。すぐにドクターが来るわ」
「え……。メアの、お姉さん?」
「いや、違うわ。ここのドクターは……」
その時だった。どこからか、『ピポパポ』って音が聞こえてくる。ボクはその音に気を取られて、医務室の入り口の方に目を向けた。
『患者・ゼロゼロスリーノ起床ヲ確認。バイタルテストヲ開始シマス』
そこに居たのは、ピンク色のロボット。ブリキのおもちゃのような見た目で、鈍い金属音を響かせながら動いてる。
「これは……?」
「こいつの名前は”ドクトル”。まあ機械の医者よ。古い世代のものだけど、まだ使えるわ」
ドクトルは僕の隣に来て、脈を診るような動きをした。それから検査機にケーブルを繋いで、何かを調べてる。
『心拍ガ上昇シテイマス。気分ハドウデスカ? リラックス、デキテイマスカ?』
「あ……。う、うん。大丈夫……」
『身体機能、回復中。若干ノ栄養不足ヲ確認。マモナク食事ガ来ルノデ、食ベテクダサイネ』
すると今度は、トレイを乗せたロボットが食事を運んでくれた。賞味期限がギリギリの、乾パンの缶詰。別にそれはよかったんだけど……。
「……二人は、食べたの?」
「ええ。飽きるほどね。とっとと食べちゃいなさい、腐るわよ」
メアがそう言った。だからボクは、缶詰を開けて乾パンを食べる。
「……なんか、懐かしいね」
「何が?」
「メアと初めて会った時も、これを食べてた。メアが、ボクにこれをくれて……」
「……まあ、そんなこともあったかもね。いいから黙って食べなさい。次いつ食料にありつけるか、わかんないから」
するとメアは、病室を出て行ってしまった。その瞬間にボクは、なぜかとたんに寂しくなって。せっかくの乾パンも、美味しくなくなってしまう。
『ドウシマシタ? オチコンデイマスネ』
「……うん。なんで、だろうね」
『フム……。コノ症状ハ、一度見タコトガアリマス。――親ト離レ離レニナッタ、子供ニ見ラレタモノデスネ』
「親……?」
『親ノ愛情、特ニ母性デショウ。人間ニハソレガ、欠カセマセンカラ』
親。親。両親。お母さん、お父さん。……その時ボクは、ようやく理解した。自分には、そういう人が居ないって。
だからもしかしたら、メアをお母さんに見立てているのかもしれない。ボクはメアに、母性を求めてる……?
「……君も、こんな気持ちだったの……? ……アイジス……」
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
ありがとうございます!