無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

文字の大きさ
2 / 138

2 水を求めて

しおりを挟む
 人間、絶望というものを知ると、なぜか冷静になるらしい。

 例えば、勇者として召喚されるはずが、気がついたら無人島で放置されていたとしよう。最初は当然、現実を受け入れられず、海に向かって「誰かいませんかー!?」と叫んだり、砂浜に「HELP」と書いてみたり、ヤシの木に登って無意味に遠くを見渡してみたりする。

 しかし、何をしても無駄だった。

 俺は悟ったのだ。ここには誰もいない。この島には、俺一人しかいないのだ。

「……となれば、やるべきことはひとつ」

 水を探すことである。

 幸い、俺はまだ冷静だった。無人島における最優先事項は、水の確保。人間は水がなければ三日と持たない。だが、砂浜を掘っても塩水しか出てこないし、椰子の実はあいにく見当たらない。となれば、森の奥に進むしかない。

 ──そして、俺は運命の川を見つけた。

 森を抜けると、そこには信じられないほど澄み切った青い川が流れていた。まるでガラスのように透明で、川底の石までくっきりと見える。木漏れ日が水面に反射し、キラキラと輝いている。

「おお……まるで神々の祝福を受けたような……」

 俺は感動に打ち震えながら、川に手を突っ込んだ。ひんやりと冷たく、心地よい。手のひらをすくい上げて、水をじっくり観察する。

「……飲めるのか?」

 ふと、違和感を覚えた。水面には、奇妙な光る藻のようなものが漂っている。まるで青白い蛍光灯の破片が揺らめいているようだ。

「……うん、まあ、異世界だしな」

 多少のことには驚かなくなっている。下手に躊躇して脱水症状になるよりは、一か八か飲んでみたほうがいい。俺は意を決して、手のひらの水を口に含んだ。

 ──ごくり。

 冷たい。美味い。そして……

「……お?」

 体の内側からじんわりと温まるような感覚が広がっていく。まるで温泉に浸かったときのような心地よさがある。喉の渇きが潤されるだけでなく、全身に力がみなぎるようだ。

「これは……すごいな」

 まさかの回復効果つき。異世界らしさがようやく出てきた。

 さらに俺は、川辺で奇妙な果実を発見した。

 見たことのない形状で、大きさはリンゴほど。表面はうっすらと紫がかった色をしており、わずかに発光している。これは……危険な気配がする。しかし、俺の選択肢は限られている。

 ──食うか、飢え死にするか。

 しばし逡巡したのち、俺は思い切って果実を割ってみた。

 中は鮮やかな黄金色。香りを嗅ぐと、ほんのり甘い匂いがする。未知の食材ではあるが、腐敗した臭いではない。こういう時、人間の本能を信じるのが一番だ。

 ──かぷっ。

 歯を立てた瞬間、果肉がほろりと崩れ、爽やかな甘みが口いっぱいに広がった。

「……うまい!」

 そして、それだけではなかった。食べるごとに、体の疲れがじわじわと消えていくのだ。腹の底から力が湧き上がるような、不思議な感覚。

「これは……まるでゲームの回復アイテムでは?」

 俺は思わず果実をまじまじと見つめる。異世界の食べ物には、どうやら特別な性質があるらしい。

 しばらく川辺で水を飲み、果実を食べて、ようやく人心地がついた。

「これなら……案外、生き延びられるかもしれないな」

 俺は立ち上がり、大きく背伸びをする。水があり、食料があり、回復効果まであるのなら、サバイバル生活もなんとかなりそうだ。問題は、ここに俺以外の生物がいるかどうか……

 その時、森の奥から風が吹き抜け、木々がざわめいた。

「……ん?」

 何かが、いる。

 不意に、背筋がぞくりとした。

 俺は思わず周囲を見回したが、何も見えない。しかし、確かに気配がある。まるで森そのものが生きているかのような、重たい静寂。

「……いや、気のせいか?」

 そう思おうとした矢先、木々の合間に、かすかに光るものが見えた。

 目だ。

 暗闇の中で、無数の目がこちらを見つめている。

 俺の心臓がどくんと跳ねた。

「……お、おいおい、冗談だろ?」

 異世界の夜が、恐ろしいものであるということを、俺はこの時初めて知ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...