無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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3 火を灯す

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 ──夜が来る。

 それは、静かに、しかし確実に忍び寄ってきた。

 昼間はあれほど穏やかだった森が、夕暮れとともに急速に冷え込み、次第に不気味な気配を帯び始める。草木のざわめきが消え、風が止み、遠くで奇妙な鳴き声が響く。太陽が沈むにつれ、あたりの光がどんどん吸い込まれていくようだった。

「……これは、ちょっとマズいのでは?」

 俺は肩を抱え、身震いした。

 とにかく寒い。異世界の夜がここまで冷えるとは思わなかった。昼間の蒸し暑さが嘘のように、体の芯まで凍りつく。

 ──さらに、問題はもう一つある。

 暗闇の中で、何かが光っているのだ。

 最初は星の光かと思った。しかし、それは徐々に数を増やし、形を変え、俺の周囲を取り囲んでいく。

「……目、だよな?」

 間違いない。光の正体は、無数の目玉である。

 大きなもの、小さなもの、青白いもの、黄色く光るもの。森の奥から、じっとこちらを見つめている。生ぬるい視線を感じるたびに、背筋がぞわぞわと泡立つ。

 ──なにこれ、怖すぎる。

「こ、こういう時は……火だ!」

 俺は焦りながら、地面に散らばった木の枝をかき集める。サバイバル知識によれば、原始的な火起こしは「木と木を擦り合わせる」のが基本らしい。

「よし……いくぞ!」

 俺は両手で木の棒を押さえ込み、全力で擦った。

 ギギギ……ギギギ……。

 ……ギギギ……ギギギ……。

 ……。

 まったく燃える気配がない。

「ふざけるなー!」

 俺は無駄に長い棒を振り回し、地面に叩きつけた。すると、近くに転がっていた奇妙な黒い石が跳ね飛んだ。

「ん?」

 何気なくその石を拾い、試しに二つを打ち合わせてみる。

 ──バチッ!

 火花が散った。

「……えっ?」

 もう一度、思い切り叩く。

 ──バチバチッ!

 はっきりとした火花が飛び散る。これは……火打ち石の類ではないか?

 試しに乾いた草の上で石を叩いてみると、火花が草に落ち、ぼんやりと赤く燻り始めた。俺は慌てて息を吹きかける。

「燃えろ……燃えろ……!」

 ──ボッ!

 炎が生まれた。

 火は小さく、頼りない。しかし、それは確実に闇を照らし、俺の手元を赤く染める。

 「やった……!」

 しかし、喜ぶのも束の間。俺はふと気がついた。

 ──あの光る目たちは、どうなった?

 恐る恐る顔を上げる。

 ──いない。

 さっきまで俺を取り囲んでいた光る目が、すべて消えていた。

「……火を、怖がったのか?」

 そう考えると、妙に納得がいく。火というものは、原始の時代から生き物にとって特別な存在だった。特に夜の闇の中では、火があるかないかで生死が決まることもある。

「……どうやら、この世界にもそういう法則はあるらしい」

 俺は炎の温もりを感じながら、静かに夜を迎えることにした。

 その夜、俺は火のそばで丸まって眠った。

 ──遠くで、風が鳴る音がした。

 森の奥で、何かが蠢く気配を感じた。

 だが、火の光があるかぎり、それらが近づいてくることはなかった。

 異世界転生、無人島サバイバル──そんな冗談のような状況で、俺はようやく初めての夜を乗り切ったのだった。
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