無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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36 エルフの少女

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 女というものは、まことに謎めいた生き物である。

 考えてもみてほしい。彼女たちは平然と感情を翻し、己の気分一つで世界を天国にも地獄にも変えてしまう。理屈よりも直感を重んじ、時には猫のように気まぐれで、時には冬の湖面のごとく冷たくなる。かと思えば、ひとたび微笑まれれば、こちらは馬鹿のように舞い上がってしまうのだから、まったくもって厄介極まりない。

 さて、そんな難解な生き物であるところの「女」だが、この異世界に来てからというもの、俺は奇妙な縁で次々と彼女たちと出会ってしまっている。

 まずは獣人の少女リュナ。意地っ張りで実直、狩猟の腕は確かだが、やたらとこちらを睨んでくる。次に魔素暴走系魔法使いセリア。頭脳明晰で、感情を表に出さないタイプかと思いきや、たまに困ったような顔をする。その顔がまた妙に絵になるものだから、俺は余計に面倒くさい気持ちになる。

 そして今、俺の目の前には──

 またしても女が倒れていた。

 エルフである。

 俺はすでに確信している。この異世界には、何かしらの「女難の法則」があるのではないか。なぜこうも、放っておけない少女が目の前に現れ続けるのか。俺は別に、異世界ハーレムを作るつもりはないのだ。俺のやりたいことはもっとこう、文明の発展とか、技術革新とか、そういう方向にあるはずなのだが。

 「……あなたは、誰?」

 エルフの少女はか細い声でそう呟いた。

 長い銀髪が温泉の湯気に揺れる。彼女は驚くほど整った顔立ちをしており、森の精霊そのもののような神秘的な雰囲気を漂わせていた。長い耳が特徴的で、瞳はどこか憂いを帯びている。

 俺はしばらくの間、黙って彼女を見つめていた。

 エルフといえば、長命で、弓を得意とし、自然と調和した暮らしをする幻想的な種族であるというのが、俺の知るファンタジーの常識だ。しかし、目の前の彼女は、そんなエルフらしさを超えて、ただならぬ疲労と寂寥をその身にまとっていた。

 「……異世界から召喚されたのか?」

 俺の問いに、彼女はかすかに目を見開いた。

 「……どうして、それを?」

 「まあ、俺も異世界から来たもんでな」

 俺は苦笑する。異世界の漂流者同士、妙な共感を覚える瞬間だった。

 エルフの少女は、しばらく逡巡した後、ぽつりぽつりと語り始めた。

 「……私の名前は、エリス。元いた世界では……精霊使いだったの。でも、ある日突然、見知らぬ存在によって召喚されて……気づいたら、この世界にいた」

 「召喚主は?」

 俺の問いに、彼女は悲しげに首を振った。

 「わからないの。召喚された時、すでに誰もいなかった……」

 これは、ますます妙な話だ。

 召喚魔法というのは、「誰かが意図的に」行うものだろう。だが、彼女は召喚された後、召喚主を見つけることができなかったという。それはつまり、召喚者がすでに死んでいたか、あるいは「最初から召喚主などいなかった」可能性がある。

 俺は腕を組み、考え込んだ。

 「……で、お前は今までどうやって生き延びてきたんだ?」

 「精霊の声を頼りに……」

 俺は眉をひそめる。

 「精霊?」

 「ええ。私は、精霊と交信できるの」

 さらっと言ってのけたが、それはなかなかすごい能力ではないか。

 俺はこの世界の魔素について、まだ完全に理解していない。ただ、魔素は「生命を変化させ、進化を促し、自己増殖すらさせる」力を持つことは確かだ。そして、エリスの言葉が正しければ、その魔素は「精霊を通じてコントロールできる」可能性がある。

 これは大発見かもしれない。

 「おい、ちょっと試してみろ」

 俺は目の前の温泉の湯気を指さす。

 「この温泉の魔素を、お前の精霊交信で操ることはできるか?」

 エリスは少し戸惑ったように俺を見た。

 「試したことはないけど……やってみる」

 彼女は静かに目を閉じ、両手を組む。そして、そっと囁いた。

 ──風よ、聞こえていますか?

 その瞬間。

 空気が、わずかに震えた。

 温泉の湯気がゆっくりと渦を巻き、まるで意思を持ったかのように揺らめく。俺は思わず息をのんだ。

 「おいおい、マジかよ……」

 魔素が、確かに彼女の言葉に反応している。

 エリスは目を開け、俺の方を見た。

 「……できるみたい」

 俺は驚愕と興奮の入り混じった表情で、彼女を見返した。

 これは、もしかすると「魔素を制御する方法」の手がかりになるかもしれない。

 異世界の理を解明する、新たな扉が開かれようとしていた。
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