無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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48 魔素補充係

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 異世界において、「足」とは人間にとって不可欠な器官である。

 歩く、走る、跳ぶ、蹴る──この世界における移動手段のほとんどは、足というシステムに依存している。しかし、人魚という種族はこの概念を持たない。彼女たちは流れに乗り、推進力を生み出し、海の中を滑るように進む。彼女たちにとって、足とはただの飾りに過ぎないのだ。

 ──そう、理屈の上では。

 「陸を歩くために、どうしても足がほしいのです!」

 海の王女・レイヴィアは真剣だった。

 「いや、お前……歩けなくても困らないだろ?」

 「困ります!」

 「どこが?」

 「私は陸の暮らしを学びたいんです! あなたたちがどうやって暮らしているのか、自分の目で見て、肌で感じて、体験してみたいのです!」

 俺は腕を組んで唸る。

 ──なるほど、人魚のくせに陸の文化に興味津々なのはわかった。だが、問題はそこではない。

 「そもそも、どうやって足を生やすつもりだ?」

 「それなら、魔素変換技術を使えば可能よ」

 魔素暴走系魔法使いセリアがすかさず口を挟む。

 「魔素変換?」

 「ええ。魔素の流れを操作すれば、一時的に尾を足に変えることはできるわ。でも、持続時間には限界があるし、魔素を補充しないと元に戻るでしょうね」

 レイヴィアの目が輝いた。

 「やります!」

 「お前、簡単に決めるな……」

 「だって、歩きたいんです!」

 ──どうやら、この人魚姫は「やりたい」と思ったことを止められないタイプらしい。

 こうして、「人魚を人間化する魔素変換実験」が始まった。

 セリアの魔法によって、レイヴィアの尾に魔素が流し込まれる。光が彼女の体を包み込み、滑らかな鱗が変化し始めた。

 「……成功、か?」

 俺が思わず前のめりになると、レイヴィアはゆっくりと水面から姿を現した。

 ──そこには、確かに「足」があった。

 「わあああ!」

 レイヴィアは感動したように、自分の足をじっと見つめた。そして、興奮した様子で砂浜に足をつける。

 「すごい……これが陸の感触……!」

 「よかったな」

 「はい! さっそく歩いて──」

 ──バタン。

 「……?」

 レイヴィアは見事に前のめりに転倒した。

 「おいおい、大丈夫か?」

 「……足って、こんなに難しいのですか?」

 俺は溜息をつきながら手を差し伸べた。

 「歩くのには慣れが必要だ。まずはゆっくり動かせ」

 「わかりました!」

 こうして、王女レイヴィアの「歩行訓練」が始まった。

 それから数日。

 レイヴィアは完全に歩けるようになった……と言いたいところだが、実際にはまだフラフラしている。それでも、彼女は陸の生活を満喫していた。

 「すごいです! 陸の食べ物って、こんなに味が豊かなんですね!」

 「お前、魚しか食べてなかったんだろ」

 「はい! でも、焼いた肉って……素晴らしいですね!」

 リュナがそれを聞き、鼻を鳴らす。

 「肉の良さがわかったなら、悪くないわね」

 そんなわけで、レイヴィアは完全に陸に馴染みつつあった。

 ──だが、問題がひとつある。

 「……そろそろ魔素が切れそうね」

 セリアがぼそっと呟いた。

 レイヴィアの体に再び魔素が流れ込み、彼女の足はゆっくりと尾に戻っていく。

 「ええええ!」

 レイヴィアは泣きそうな顔をする。

 「私の足が……!」

 「だから言っただろ、魔素が持続しないって」

 「うぅぅ……」

 レイヴィアは悲しそうにうなだれた。そして、次の瞬間、何かを思いついたように俺の手を握った。

 「では、定期的に魔素を補充すればいいのですね!」

 「まあ、そうなるな」

 「それなら、私があなたのそばにいれば解決します!」

 「……は?」

 「魔素補充係です!」

 レイヴィアはきらきらした目で俺を見つめる。

 ──嫌な予感がする。

 「つまり、私があなたの近くにいれば、魔素をもらってずっと陸にいられます!」

 ──とんでもない話である。

 俺は頭を抱えた。
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