無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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54 寒冷期への備え

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 寒い。いや、寒いを通り越して痛い。異世界の気候というものは、まったくもって信用ならない。つい昨日まではぽかぽか陽気の下でウサギたちが浮かれ騒ぎ、レイヴィアが「陸の陽射しっていいですね!」などと無邪気に喜んでいたというのに、今朝起きたら村全体が霜に覆われ、地面は硬く凍てつき、吹きすさぶ風はあまりに冷たい。こんな調子では六本足のウサギたちが一斉に冬眠してしまうのではないか。それどころか、俺が冬眠したくなる。

 「寒いですね!」

 元気いっぱいの声でそんなことを言い放ったのは、よりによって人魚の王女・レイヴィアである。

 「いや、お前……寒いって分かってるのか?」

 「もちろんです! ですが、海の寒さとは違って面白いですね!」

 何が面白いのか分からないが、彼女は本当に楽しそうにしている。そもそもこの女、海底都市が魔素の暴走で崩壊の危機にあるという理由で村に居座ることになったわけだが、どう見ても陸の生活を満喫しすぎである。たまには故郷のことを思い出したらどうなのか。

 「レイヴィア、今この村で最も切実な問題は何か分かるか?」

 「えーっと……温泉ですか?」

 「違う」

 「では、食料?」

 「それも違う」

 「分かりました! 寒さですね!」

 「そうだ!」

 「でも、寒いって楽しくないですか?」

 俺は頭を抱えた。寒いというのは切実な問題なのだ。朝起きたら水が凍っていて顔も洗えず、夜には寝床の上で凍死しかねない。何より、寒さというのは人の心を蝕む。たとえば俺は今、寒さに震えながらレイヴィアの能天気な顔を見ているだけで、どこか遠くへ旅に出たくなっている。

 「とにかく、暖房設備を作る必要がある」

 「なら、魔素を使えばいいんじゃないですか?」

 不意に割り込んできたのはセリアだった。セリアは魔素の専門家であり、過去には魔素の暴走で自己増殖しかけたという驚異的な経歴を持つ。つまり、こいつの「魔素を使えば簡単よ」という言葉は、「ちょっとした実験で大爆発が起きても気にしないわ」という意味でもある。俺は彼女の提案を聞くたびに警戒せざるを得ない。

 「具体的にどうするんだ?」

 「蓄熱石を魔素の流れに組み込めば、長時間暖かさを維持できるわ」

 俺は腕を組んで考えた。蓄熱石は、この世界で発見した特殊な鉱石で、熱を吸収し、ゆっくりと放出する性質がある。ただし、ただの石なので普通に置いておくとすぐに冷えてしまう。そこに魔素を循環させれば、熱を長持ちさせることができるという理屈だ。理屈の上では素晴らしいが、実際にやるとなると不安が残る。

 「問題は、どうやってそれを設置するかだな……」

 「床下に埋めるのはどうでしょう?」

 レイヴィアが提案した。

 「魔素の流れをうまく調整すれば、村全体を暖かくすることができるかもしれません!」

 俺は彼女を見つめた。どうやらこの王女、時々妙に冴えたことを言う。

 「お前、こういうの得意なのか?」

 「ええ! 海の中でも温暖な潮流を利用することがあるんですよ!」

 ……なるほど、それは納得できる。俺はすぐにこの案を採用し、蓄熱石を利用した暖房設備の設計に取り掛かった。

 数時間後、俺たちは村の中央に蓄熱装置の試作品を設置した。地面に掘った溝に蓄熱石を並べ、そこに魔素を通すための管を埋め込む。セリアが魔素の流れを調整し、レイヴィアが流れの向きを細かく指示する。俺は手をかざして蓄熱石を確かめた。

 「お、暖かいな……」

 足元からじんわりとした熱が伝わってくる。これは成功かもしれない。

 「すごい! まるで温泉みたいですね!」

 レイヴィアが感動している。

 「温泉とまではいかなくても、寒さをしのぐには十分だな」

 俺は満足げに頷いた。
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