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55 家畜の増加
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食糧問題は深刻である。
いや、正確には俺が深刻に受け止めているのであって、村の住人たちは案外呑気なものである。
「六本足ウサギの肉、飽きてきましたね!」
これが人魚の王女・レイヴィアの第一声であった。
──お前、昨日は「やっぱり陸の肉は最高ですね!」とか言っていたじゃないか。
「でも、毎日だとさすがに単調ですよ! お魚が恋しいです!」
「だったら川にでも潜ってこいよ」
「それは嫌です!」
俺は頭を抱えた。こういう時、俺の経験上 「女性という生き物は、わがままを言うもの」 という極めて重要な教訓が活きてくる。特に、レイヴィアのような「好奇心旺盛なお姫様」タイプは、一度何かに飽きるともう元には戻らない。つまり、「ウサギ肉飽きた」というこの一言が、これからの食糧事情を根底から覆す可能性があるのだ。
「まあでも、確かに新しい食料源は必要よね」
そう言い出したのはセリアである。
──お前も乗っかるのか。
この女も信用ならない。魔素の研究者としては優秀なのだが、食事に関しては「実験台」という概念が先行しがちである。以前、「魔素を注入した肉はどうなるか?」という実験を勝手に行い、その結果「しばらく宙に浮く肉」が誕生したことがあった。あの時の恐怖は忘れない。
「それで、何か案はあるのか?」
「新しい家畜を探しましょう!」
──そんな簡単に言うな。
異世界というのは、やたらと個性的な生き物が多い世界である。「ちょっと捕まえて、育てれば家畜になる!」なんてことはまずない。
だが、案の定この二人は「じゃあ、探索しましょう!」と満面の笑みで言い出し、俺の意見など聞かずに森へと繰り出したのであった。
その日、村の入り口に 「謎の獣」 が連れ帰られた。
「新しい家畜です!」
──いや、そんな誇らしげに言われても困る。
俺の目の前にいるのは、羊のように毛むくじゃらでありながら、なぜか牛の角を生やし、さらに四対の目を持つという「なんとも言えない生き物」である。おそらく、この世界の生態系においては何らかの役割を果たしているのだろうが、俺にはさっぱり分からない。
「……お前ら、これが何の生き物か知ってるのか?」
「知りません!」
──おい、知らないのかよ。
レイヴィアとセリアは実に堂々とした顔で即答した。
「でも、すごくおとなしいですし、草を食べていました!」
レイヴィアは「これはイケる!」と言わんばかりの表情で、例の獣の毛を撫で回している。そのせいか、獣のほうもなんだかうっとりした顔をしているではないか。
「試しに飼ってみましょう!」
──お前らなあ……。
こうして、異世界家畜プロジェクトが開始された。
まず、この獣、やたらと賢い。
囲いの中に入れると、じっとこちらを見つめるのである。それも、なんというか 「深い理解のあるまなざし」 というやつだ。まるで「お前たちは何をしたいのか」と問われているような視線である。
「……お前、本当に動物か?」
「もふもふでかわいいですよ!」
レイヴィアが無邪気に抱きつくが、獣は微動だにしない。
そして、次の問題。
「乳が出ない」
家畜として考えた場合、乳が取れれば栄養源として大きい。俺たちはそれを期待したのだが、いくら待っても何も出ない。
「どういうことだ?」
「ええっと、もしかしてこれはオス個体じゃないかしら?」
セリアの冷静な分析が飛び出す。
──お前ら、そこからか。
しかし、そこは冷静に対処しなければならない。俺たちは急いで新たな個体を探し、ついに 「乳が出る個体」 を発見した。そして、いざ絞ってみると……。
「……青い」
なぜか 青いミルク が出てきたのである。
「異世界らしくて素敵ですね!」
──お前、そういう問題じゃない。
だが、調査の結果、 この青いミルクは栄養価が高く、飲んでも問題ない ということが判明した。
「すごいですね! これで食生活が充実します!」
レイヴィアは新たな食糧に満足そうである。
……俺はまだ、信用していない。
だが、結果的に 「青いミルクを出す家畜」 の飼育は成功し、六本足ウサギに続く新たな食料源として定着していくのであった。
こうして、村はまた一歩、異世界の生態系に順応していく。
……俺の頭痛とともに。
いや、正確には俺が深刻に受け止めているのであって、村の住人たちは案外呑気なものである。
「六本足ウサギの肉、飽きてきましたね!」
これが人魚の王女・レイヴィアの第一声であった。
──お前、昨日は「やっぱり陸の肉は最高ですね!」とか言っていたじゃないか。
「でも、毎日だとさすがに単調ですよ! お魚が恋しいです!」
「だったら川にでも潜ってこいよ」
「それは嫌です!」
俺は頭を抱えた。こういう時、俺の経験上 「女性という生き物は、わがままを言うもの」 という極めて重要な教訓が活きてくる。特に、レイヴィアのような「好奇心旺盛なお姫様」タイプは、一度何かに飽きるともう元には戻らない。つまり、「ウサギ肉飽きた」というこの一言が、これからの食糧事情を根底から覆す可能性があるのだ。
「まあでも、確かに新しい食料源は必要よね」
そう言い出したのはセリアである。
──お前も乗っかるのか。
この女も信用ならない。魔素の研究者としては優秀なのだが、食事に関しては「実験台」という概念が先行しがちである。以前、「魔素を注入した肉はどうなるか?」という実験を勝手に行い、その結果「しばらく宙に浮く肉」が誕生したことがあった。あの時の恐怖は忘れない。
「それで、何か案はあるのか?」
「新しい家畜を探しましょう!」
──そんな簡単に言うな。
異世界というのは、やたらと個性的な生き物が多い世界である。「ちょっと捕まえて、育てれば家畜になる!」なんてことはまずない。
だが、案の定この二人は「じゃあ、探索しましょう!」と満面の笑みで言い出し、俺の意見など聞かずに森へと繰り出したのであった。
その日、村の入り口に 「謎の獣」 が連れ帰られた。
「新しい家畜です!」
──いや、そんな誇らしげに言われても困る。
俺の目の前にいるのは、羊のように毛むくじゃらでありながら、なぜか牛の角を生やし、さらに四対の目を持つという「なんとも言えない生き物」である。おそらく、この世界の生態系においては何らかの役割を果たしているのだろうが、俺にはさっぱり分からない。
「……お前ら、これが何の生き物か知ってるのか?」
「知りません!」
──おい、知らないのかよ。
レイヴィアとセリアは実に堂々とした顔で即答した。
「でも、すごくおとなしいですし、草を食べていました!」
レイヴィアは「これはイケる!」と言わんばかりの表情で、例の獣の毛を撫で回している。そのせいか、獣のほうもなんだかうっとりした顔をしているではないか。
「試しに飼ってみましょう!」
──お前らなあ……。
こうして、異世界家畜プロジェクトが開始された。
まず、この獣、やたらと賢い。
囲いの中に入れると、じっとこちらを見つめるのである。それも、なんというか 「深い理解のあるまなざし」 というやつだ。まるで「お前たちは何をしたいのか」と問われているような視線である。
「……お前、本当に動物か?」
「もふもふでかわいいですよ!」
レイヴィアが無邪気に抱きつくが、獣は微動だにしない。
そして、次の問題。
「乳が出ない」
家畜として考えた場合、乳が取れれば栄養源として大きい。俺たちはそれを期待したのだが、いくら待っても何も出ない。
「どういうことだ?」
「ええっと、もしかしてこれはオス個体じゃないかしら?」
セリアの冷静な分析が飛び出す。
──お前ら、そこからか。
しかし、そこは冷静に対処しなければならない。俺たちは急いで新たな個体を探し、ついに 「乳が出る個体」 を発見した。そして、いざ絞ってみると……。
「……青い」
なぜか 青いミルク が出てきたのである。
「異世界らしくて素敵ですね!」
──お前、そういう問題じゃない。
だが、調査の結果、 この青いミルクは栄養価が高く、飲んでも問題ない ということが判明した。
「すごいですね! これで食生活が充実します!」
レイヴィアは新たな食糧に満足そうである。
……俺はまだ、信用していない。
だが、結果的に 「青いミルクを出す家畜」 の飼育は成功し、六本足ウサギに続く新たな食料源として定着していくのであった。
こうして、村はまた一歩、異世界の生態系に順応していく。
……俺の頭痛とともに。
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