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58 女というもの
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女というものは、まことに謎めいた生き物である。
何度でも言おう。これは偏見ではない。偏見ではなく、厳然たる事実である。
かつて日本にいた頃、俺は何度も不可解な女性の行動に翻弄されてきた。たとえば、こちらが一生懸命プレゼントを選んでも、「うーん、微妙」と言われることがある。では、好みを聞いてみれば、「何でもいいよ」と返される。何でもいいと言ったくせに、何を贈っても満足しない。これを不可解と言わずして、何と言う?
女性とは、時に情緒の奔流であり、理不尽の化身であり、予測不能な気象現象のような存在なのだ。
そんな彼女たちに異世界の魔素などという理不尽の権化とも言うべきエネルギーが加わった時、何が起こるか──それはもはや火を見るよりも明らかである。
「んっ……な、なにこれ……っ!」
そうして俺の目の前で、セリアの服がふわりと霧散した。
服というものは、本来、人間の尊厳を守るために存在するもののはずである。いや、それだけではない。寒さをしのぎ、日差しを避け、社会的役割を示し、さらにポケットという機能的な収納スペースまで提供してくれる、偉大なる発明品である。しかし、それが突如として消え去るとなると、話は別だ。
異世界の魔素とは、まことに不可解なものである。とりわけ「生命の種」なる物質がもたらす影響は計り知れず、六本足のウサギは知性を獲得し、さも当然のごとく蔓延り、そして今、目の前のセリアは何の前触れもなく服を失った。
「こ、これは……っ!」
セリアは狼狽し、身を縮め、己の尊厳を守るべく腕を交差させる。しかし、彼女の体は未だ魔素の影響下にあり、なぜか意思に反してゆっくりと開かれていく足。
──いったい、誰がこんなことを望んだというのか?
「え、ええと……嘘でしょ……? なんで……なんで服が……?」
セリアは震える声でつぶやきながら、慌てて腕で胸元を押さえた。しかし、胸を隠せば下が無防備になり、下を隠せば胸が解放される。どこをどう押さえても完全には隠れないこの状況に、彼女はますます顔を真っ赤に染めていく。
「や、やだ……! 見ないでぇ……っ!」
彼女は切なげな声を上げると、ぎゅっと膝を寄せ合い、小さく縮こまる。しかし、もどかしげに身をよじらせるたび、滑らかな肌が無防備に露わになってしまい、彼女自身もどうしていいのかわからない様子だった。
「こ、こんなの……っ ぜ、全部まる見えじゃない…っ/// 」
なるほど、たしかにそのとおりだ。
ふわりとした柔らかな果実のような双丘も、しっとりとした桃色の小さなつぼみも、そして秘められるべき場所のふっくらとした花弁も、今まさにすべて露わになっているのである。
──いや、これは事故だ。うむ、間違いなく事故である。
「ええと、これは、つまり……」
セリアは困惑しつつ、恥じらいに染まった頬を覆いながら、なおも事態の整理を試みている。そして、なぜか己の裸の意味を理解しようと、恐る恐る体のあちこちを確認し始めた。
まずは胸元にそっと手をあて、ゆっくりと指でその感触を確かめる。指が弾むように沈み、わずかに形を変えるのを確認して、ますます顔を真っ赤にした。
「こ、こんなに……お、大きかったっけ……?」
たしかに、服というものは布という枠によって形を整える役割を持つ。ゆえに、それが消えることで、隠されていた丸みや形の繊細な変化がより浮き彫りになるのは必然である。
次いで、彼女はそろそろと手を滑らせ、腹筋のあたりを指でなぞった。薄く引き締まったそのラインに安心したのか、一瞬だけほっとした顔を見せたものの、その指先がさらに下へと向かい──
「~~~~っっ!!!」
おそらく、そこには最後の砦があった。が、すでに存在しない。
彼女は慌てて手を引っ込め、膝を擦り合わせる。しかし、その摩擦によって、かえって自らの素肌の感触を意識してしまったらしく、ますます真っ赤になって体を震わせた。
なるほど、これは極めて興味深い現象である。
しかしながら、俺は知っている。こうした不可解な事象は、決して「異世界だから」起こるものではない。
なぜならば、女とは、元来そういうものであるからだ。
彼女たちは、しばしば自身の行動に説明を求める。しかし、その説明は明確な答えをもたらさない。たとえば、「なんでそんなことするの?」と聞けば、「だってそうしたかったから」と答える。では、「本当にそうしたかったのか?」と尋ねれば、「さあ?」という曖昧な返答が返ってくる。そして、結局のところ「気分」としか言いようのない不可解なものが、彼女たちの行動のすべてを支配しているのだ。
ならば、異世界の魔素とやらが、彼女の「気分」に働きかけ、行動を左右したとして、いったい何の不思議があるだろう?
「ち、違うのよ……! これ、わたしの意思じゃ……!」
そんなことは、こちらも百も承知である。
だが、こうした状況において、必要以上に狼狽するのは愚策である。
──ゆえに、俺は静かに微笑むことにした。
「よし、なるほど。これはなかなか興味深い現象だ」
「なにが『よし』なのよぉぉぉ!!!」
セリアは涙目で叫びながら、ますます顔を真っ赤にし、しかし身を隠す術もなく途方に暮れている。
「こ、こうなったら……魔素を逆流させて、元に戻すしか……っ」
そう言いながら、彼女は震える指で魔法陣を描こうとするが、しかし、その手は明後日の方向へと動くばかり。思考が恥ずかしさに支配されていて、まともに魔法を使える状態ではないのは明らかだった。
──つまるところ、どうにもならない。
ならば、どうすべきか。
それは決まっている。
「落ち着け、セリア。まずは──」
「落ち着けるわけないでしょぉぉぉ!!!」
だろうな、と思った。
彼女はますます小さく縮こまり、涙目のまま俺を睨みつける。しかし、羞恥と混乱に呑まれた彼女が、今すぐにこの状況を打開できる可能性は限りなく低い。
つまり、結論として──
女というものは、まことに謎めいた生き物である。
何度でも言おう。これは偏見ではない。偏見ではなく、厳然たる事実である。
かつて日本にいた頃、俺は何度も不可解な女性の行動に翻弄されてきた。たとえば、こちらが一生懸命プレゼントを選んでも、「うーん、微妙」と言われることがある。では、好みを聞いてみれば、「何でもいいよ」と返される。何でもいいと言ったくせに、何を贈っても満足しない。これを不可解と言わずして、何と言う?
女性とは、時に情緒の奔流であり、理不尽の化身であり、予測不能な気象現象のような存在なのだ。
そんな彼女たちに異世界の魔素などという理不尽の権化とも言うべきエネルギーが加わった時、何が起こるか──それはもはや火を見るよりも明らかである。
「んっ……な、なにこれ……っ!」
そうして俺の目の前で、セリアの服がふわりと霧散した。
服というものは、本来、人間の尊厳を守るために存在するもののはずである。いや、それだけではない。寒さをしのぎ、日差しを避け、社会的役割を示し、さらにポケットという機能的な収納スペースまで提供してくれる、偉大なる発明品である。しかし、それが突如として消え去るとなると、話は別だ。
異世界の魔素とは、まことに不可解なものである。とりわけ「生命の種」なる物質がもたらす影響は計り知れず、六本足のウサギは知性を獲得し、さも当然のごとく蔓延り、そして今、目の前のセリアは何の前触れもなく服を失った。
「こ、これは……っ!」
セリアは狼狽し、身を縮め、己の尊厳を守るべく腕を交差させる。しかし、彼女の体は未だ魔素の影響下にあり、なぜか意思に反してゆっくりと開かれていく足。
──いったい、誰がこんなことを望んだというのか?
「え、ええと……嘘でしょ……? なんで……なんで服が……?」
セリアは震える声でつぶやきながら、慌てて腕で胸元を押さえた。しかし、胸を隠せば下が無防備になり、下を隠せば胸が解放される。どこをどう押さえても完全には隠れないこの状況に、彼女はますます顔を真っ赤に染めていく。
「や、やだ……! 見ないでぇ……っ!」
彼女は切なげな声を上げると、ぎゅっと膝を寄せ合い、小さく縮こまる。しかし、もどかしげに身をよじらせるたび、滑らかな肌が無防備に露わになってしまい、彼女自身もどうしていいのかわからない様子だった。
「こ、こんなの……っ ぜ、全部まる見えじゃない…っ/// 」
なるほど、たしかにそのとおりだ。
ふわりとした柔らかな果実のような双丘も、しっとりとした桃色の小さなつぼみも、そして秘められるべき場所のふっくらとした花弁も、今まさにすべて露わになっているのである。
──いや、これは事故だ。うむ、間違いなく事故である。
「ええと、これは、つまり……」
セリアは困惑しつつ、恥じらいに染まった頬を覆いながら、なおも事態の整理を試みている。そして、なぜか己の裸の意味を理解しようと、恐る恐る体のあちこちを確認し始めた。
まずは胸元にそっと手をあて、ゆっくりと指でその感触を確かめる。指が弾むように沈み、わずかに形を変えるのを確認して、ますます顔を真っ赤にした。
「こ、こんなに……お、大きかったっけ……?」
たしかに、服というものは布という枠によって形を整える役割を持つ。ゆえに、それが消えることで、隠されていた丸みや形の繊細な変化がより浮き彫りになるのは必然である。
次いで、彼女はそろそろと手を滑らせ、腹筋のあたりを指でなぞった。薄く引き締まったそのラインに安心したのか、一瞬だけほっとした顔を見せたものの、その指先がさらに下へと向かい──
「~~~~っっ!!!」
おそらく、そこには最後の砦があった。が、すでに存在しない。
彼女は慌てて手を引っ込め、膝を擦り合わせる。しかし、その摩擦によって、かえって自らの素肌の感触を意識してしまったらしく、ますます真っ赤になって体を震わせた。
なるほど、これは極めて興味深い現象である。
しかしながら、俺は知っている。こうした不可解な事象は、決して「異世界だから」起こるものではない。
なぜならば、女とは、元来そういうものであるからだ。
彼女たちは、しばしば自身の行動に説明を求める。しかし、その説明は明確な答えをもたらさない。たとえば、「なんでそんなことするの?」と聞けば、「だってそうしたかったから」と答える。では、「本当にそうしたかったのか?」と尋ねれば、「さあ?」という曖昧な返答が返ってくる。そして、結局のところ「気分」としか言いようのない不可解なものが、彼女たちの行動のすべてを支配しているのだ。
ならば、異世界の魔素とやらが、彼女の「気分」に働きかけ、行動を左右したとして、いったい何の不思議があるだろう?
「ち、違うのよ……! これ、わたしの意思じゃ……!」
そんなことは、こちらも百も承知である。
だが、こうした状況において、必要以上に狼狽するのは愚策である。
──ゆえに、俺は静かに微笑むことにした。
「よし、なるほど。これはなかなか興味深い現象だ」
「なにが『よし』なのよぉぉぉ!!!」
セリアは涙目で叫びながら、ますます顔を真っ赤にし、しかし身を隠す術もなく途方に暮れている。
「こ、こうなったら……魔素を逆流させて、元に戻すしか……っ」
そう言いながら、彼女は震える指で魔法陣を描こうとするが、しかし、その手は明後日の方向へと動くばかり。思考が恥ずかしさに支配されていて、まともに魔法を使える状態ではないのは明らかだった。
──つまるところ、どうにもならない。
ならば、どうすべきか。
それは決まっている。
「落ち着け、セリア。まずは──」
「落ち着けるわけないでしょぉぉぉ!!!」
だろうな、と思った。
彼女はますます小さく縮こまり、涙目のまま俺を睨みつける。しかし、羞恥と混乱に呑まれた彼女が、今すぐにこの状況を打開できる可能性は限りなく低い。
つまり、結論として──
女というものは、まことに謎めいた生き物である。
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