無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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64 市場の運営

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 村というものは、放っておくと際限なく広がっていくものらしい。

 俺が異世界に来た当初、ここはただの小さな拠点だった。それがいつの間にか、住民が増え、家が増え、畑が広がり、今や市場らしきものまでできつつある。

 「つまり、もう好き勝手に家を建てるのはやめましょうって話ね」

 エリスが腕を組みながら言う。

 たしかに、ここ最近、無計画な住居の増築が続いていた。狩人は狩人で便利な場所にテントを張り、農作業をする者は畑のそばに小屋を作り、さらに問題なのは、六本足ウサギ(仮)たちが好き勝手に住みついていることだった。

 彼らはもともとただの野生動物だったはずなのに、今では勝手に農業を始め、道具を使い、狩猟までやっている。しかも最近では「どうやら農地は広いほうが良い」とか「住む場所はまとまっていたほうが安全だ」とか、妙に社会的な発展を見せ始めていた。

 俺が何か指示をしたわけではない。彼らは勝手に発展し、勝手に秩序を作り、勝手に村の住人になっていた。

 そんな折、商人の女性――彼女は未だに「商人(仮)」と呼んでいるが――が、俺の前にすっと現れた。

 「そろそろ村の区画整理が必要ですね、統治者様」

 「いや、俺は統治者というつもりは……」

 「ですが、実際にこの村の仕組みを考えているのはあなたでしょう?」

 うっ……たしかに、放っておけば村が勝手に広がるとはいえ、そこにルールを作るのは俺の役割かもしれない。

 「……どうすればいい?」

 「まず、住居区域を決めましょう。それと、正式な市場を作ることです」

 市場。

 それは、村の中央にすでに自然発生していた。

 狩人が獲った獲物を毛皮に加工し、農民が作った作物と交換する。鍛冶職人が槍や包丁を作り、それを食料と引き換える。今まではなんとなく成立していた物々交換が、最近では「この品物なら、これくらいの価値がある」という共通認識ができつつあった。

 「これを整備すれば、もっと村の発展が進むというわけか」

 「ええ。流通が活発になれば、それだけ生活も豊かになりますから」

 商人の女性は微笑みながら、新たに市場を設置する場所を指さした。

 「ここに屋根を作り、各取引ごとに区画を分ければ、もっと効率よく交易ができます」

 俺はなるほどと頷き、早速建築に取り掛かることにした。

 木材は、以前の発展で培った技術で切り出し、加工することができる。問題は、それをどう運び、どう組み立てるかだ。

 「ここでゴーレムの出番ね」

 エリスが自信ありげに言った。

 俺は前に作ったゴーレムを呼び出し、作業を補助させることにした。

 「木材を運ぶゴーレム、石を積むゴーレム、そして作業場を整備するゴーレム。今までの単純な労働用から、少しずつ高度な作業ができるように改良している」

 「ふふ、ついにここまで来たわね」

 エリスは嬉しそうにゴーレムを観察する。

 一方、セリアは少し離れたところで、俺と目が合いそうになるたびにぎこちなく視線をそらしていた。

 ……いや、なんなんだこの微妙な空気は。

 「セリア、魔素制御のほうはどうだ?」

 俺が話を振ると、彼女は一瞬だけピクリと肩を震わせ、それからそっぽを向いたまま答えた。

 「べ、別に問題ないわ……ゴーレムの魔素の流れも安定してるし……」

 言葉とは裏腹に、どこか落ち着かない様子だった。

 やはり、あの魔素暴走事件以来、彼女の態度が妙にぎこちない。前は遠慮なくズバズバ物を言ってきたのに、最近はこうして俺と話すときだけ視線を泳がせるようになった。

 「……?」

 俺がじっと見つめると、セリアは顔を赤くしてそっぽを向く。

 いや、だから、何なんだその態度は!?

 俺は市場の整備を進めながら、少しずつ発展していく村を見渡した。

 六本足ウサギ(仮)は相変わらず勝手に働いているし、商人(仮)はさっさと市場の運営を決めてしまったし、ゴーレムはエリスとセリアが改良し続けている。

 こうして見ると、俺はもうほとんど何もしなくても村が回るようになっているのではないか?

 「……それはそれでいいのかもしれんな」

 俺は市場の完成を見つめながら、ふとそんなことを考えていた。
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