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65 謎の騎士
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また女である。
いや、正確には「また漂流者である」。
異世界に来てからというもの、漂流者というのは頻繁に発生する現象であり、何の前触れもなくポンと海岸に打ち上げられる。俺がこれまで拾ってきた漂流者のリストを思い返せば、鍛冶職人、商人、料理人、元大工、狩人……と、実にバリエーション豊かだ。性別もまちまちで、必ずしも女ばかりというわけではない。
が、問題は、女という生き物がやたらと俺の生活に干渉してくるということである。
例えば、商人(仮)は「市場を作るべきです」と言い出し、エリスは「ゴーレムを改良しましょう」と提案し、セリアは最近になって妙に俺を意識したような態度を取り始めた。どいつもこいつも好き勝手に村の発展に関わってくるが、俺としてはもう少し慎ましく、俺の静かな開拓ライフを尊重してほしいものである。
しかし、現実はそうもいかない。
そして今、またしても俺の前には鎧を着た女が転がっている。
銀色の鎧に金髪、腰には立派な剣を佩いている。打ち上げられたばかりなのか、まだ意識はないようだが、薄く開いた唇からは微かに息が漏れていた。
生きている。
……さて、どうしたものか。
助けるのは当然のこととして、問題は「この女が起きたときに、どんな面倒を持ち込むのか」ということである。
異世界転移というものは得てして予想外の事態を生む。俺はすでに経験で学んでいる。漂流者は、放っておけば大体の問題を引き起こすのだ。
商人(仮)は経済を、鍛冶職人は鉄加工を、料理人は食文化を、それぞれ発展させてくれたが、その過程では必ず俺に新たな仕事が降ってきた。「村の発展のため」と言われれば、やるしかないのだが、その「発展」が積み重なって、俺の手間は増えるばかりである。
この鎧の女も、どうせ何かを言い出すに違いない。
例えば「私は騎士だ。鍛錬する場が欲しい」とか「村の防衛を強化しなければならない」とか、果ては「ここは住み心地が悪いので城を建てよう」などと言い出しかねない。
まったく、女という生き物はなぜこうも自己主張が激しいのか。
俺はしばし空を見上げた。
薄曇りの空に、カモメのような魔獣がゆるやかに飛んでいる。街の発展に伴い、こうした魔獣の姿も増えてきた。生態系が変化しているのかもしれない。
そして、俺の生活もまた、これから変わるのだろう。
……仕方ない。
俺は鎧の女を担ぎ上げ、村へと戻った。
診療所に運び込んでしばらくすると、女はゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
落ち着いた声だった。
「お前が流れ着いた村だ」
俺がそう言うと、女はしばらく黙った後、静かに息を吐いた。
「助けてくれたのか?」
「まあな」
俺が適当に答えると、彼女はじっと俺の目を見つめた。そして、ゆっくりと身を起こし、鎧の胸元に手を当てる。
「名乗ろう。私はフィオナ。異世界の王国の騎士だ」
やはり、ただの漂流者ではなかった。
フィオナは、かつて仕えていた王国のことを語った。そこでは「大いなる災厄」と呼ばれる異変が起こり、多くの都市が消滅したという。そして彼女は、気がつけばこの世界に流れ着いていた。
俺は話を聞きながら、ひとつの疑問を抱いた。
魔素の異常、進化する六本足ウサギ(仮)、突然増える漂流者たち……これらはすべて、何か大きな流れの中にあるのではないか?
だが、それを考えるには、まだ情報が足りない。
とりあえず、フィオナを村の一員として迎えるしかないだろう。
俺は腕を組みながら彼女を見た。
「で、お前はこれからどうするつもりだ?」
フィオナはまっすぐ俺を見つめ、そして言った。
「この村の防衛を強化する。私の剣を役立てよう」
……やっぱり、そう来るのか。
翌日から、フィオナは村の防衛体制の見直しに取り掛かった。
村の柵は脆弱すぎる。見張りは少なすぎる。訓練を受けた戦士がいない。
次々と問題点を指摘し、改善案を出し、すぐに実行に移す。
六本足ウサギ(仮)には警備の基本を叩き込み、連携戦術を教え、獣人たちには防壁の強化を指示する。
さらに、魔獣の出没地点を地図に記し、襲撃の危険がある場所に罠を仕掛け、見張り塔の建設を提案する。
すべてが、驚くほど合理的で無駄がない。
フィオナが来てから一週間、村の防衛力は飛躍的に向上した。
俺は、村の入り口に立ってその光景を見渡しながら、ふと思った。
女というのは、どうしてこうも迷いがないのだろう。
俺が何かを決めるときは、まず「面倒くさくないか?」という考えが浮かぶものだ。だが、フィオナは違う。彼女は村の防衛に必要なことを、迷いなくやってのけた。
こういう女がいるからこそ、世の中は回っていくのだろう。
……が、それが俺の平穏な生活を脅かしていることは間違いない。
「さて、次は剣術訓練だ」
フィオナが鋭い目を向けてきた。
……俺の生活は、ますます騒がしくなりそうだ。
いや、正確には「また漂流者である」。
異世界に来てからというもの、漂流者というのは頻繁に発生する現象であり、何の前触れもなくポンと海岸に打ち上げられる。俺がこれまで拾ってきた漂流者のリストを思い返せば、鍛冶職人、商人、料理人、元大工、狩人……と、実にバリエーション豊かだ。性別もまちまちで、必ずしも女ばかりというわけではない。
が、問題は、女という生き物がやたらと俺の生活に干渉してくるということである。
例えば、商人(仮)は「市場を作るべきです」と言い出し、エリスは「ゴーレムを改良しましょう」と提案し、セリアは最近になって妙に俺を意識したような態度を取り始めた。どいつもこいつも好き勝手に村の発展に関わってくるが、俺としてはもう少し慎ましく、俺の静かな開拓ライフを尊重してほしいものである。
しかし、現実はそうもいかない。
そして今、またしても俺の前には鎧を着た女が転がっている。
銀色の鎧に金髪、腰には立派な剣を佩いている。打ち上げられたばかりなのか、まだ意識はないようだが、薄く開いた唇からは微かに息が漏れていた。
生きている。
……さて、どうしたものか。
助けるのは当然のこととして、問題は「この女が起きたときに、どんな面倒を持ち込むのか」ということである。
異世界転移というものは得てして予想外の事態を生む。俺はすでに経験で学んでいる。漂流者は、放っておけば大体の問題を引き起こすのだ。
商人(仮)は経済を、鍛冶職人は鉄加工を、料理人は食文化を、それぞれ発展させてくれたが、その過程では必ず俺に新たな仕事が降ってきた。「村の発展のため」と言われれば、やるしかないのだが、その「発展」が積み重なって、俺の手間は増えるばかりである。
この鎧の女も、どうせ何かを言い出すに違いない。
例えば「私は騎士だ。鍛錬する場が欲しい」とか「村の防衛を強化しなければならない」とか、果ては「ここは住み心地が悪いので城を建てよう」などと言い出しかねない。
まったく、女という生き物はなぜこうも自己主張が激しいのか。
俺はしばし空を見上げた。
薄曇りの空に、カモメのような魔獣がゆるやかに飛んでいる。街の発展に伴い、こうした魔獣の姿も増えてきた。生態系が変化しているのかもしれない。
そして、俺の生活もまた、これから変わるのだろう。
……仕方ない。
俺は鎧の女を担ぎ上げ、村へと戻った。
診療所に運び込んでしばらくすると、女はゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
落ち着いた声だった。
「お前が流れ着いた村だ」
俺がそう言うと、女はしばらく黙った後、静かに息を吐いた。
「助けてくれたのか?」
「まあな」
俺が適当に答えると、彼女はじっと俺の目を見つめた。そして、ゆっくりと身を起こし、鎧の胸元に手を当てる。
「名乗ろう。私はフィオナ。異世界の王国の騎士だ」
やはり、ただの漂流者ではなかった。
フィオナは、かつて仕えていた王国のことを語った。そこでは「大いなる災厄」と呼ばれる異変が起こり、多くの都市が消滅したという。そして彼女は、気がつけばこの世界に流れ着いていた。
俺は話を聞きながら、ひとつの疑問を抱いた。
魔素の異常、進化する六本足ウサギ(仮)、突然増える漂流者たち……これらはすべて、何か大きな流れの中にあるのではないか?
だが、それを考えるには、まだ情報が足りない。
とりあえず、フィオナを村の一員として迎えるしかないだろう。
俺は腕を組みながら彼女を見た。
「で、お前はこれからどうするつもりだ?」
フィオナはまっすぐ俺を見つめ、そして言った。
「この村の防衛を強化する。私の剣を役立てよう」
……やっぱり、そう来るのか。
翌日から、フィオナは村の防衛体制の見直しに取り掛かった。
村の柵は脆弱すぎる。見張りは少なすぎる。訓練を受けた戦士がいない。
次々と問題点を指摘し、改善案を出し、すぐに実行に移す。
六本足ウサギ(仮)には警備の基本を叩き込み、連携戦術を教え、獣人たちには防壁の強化を指示する。
さらに、魔獣の出没地点を地図に記し、襲撃の危険がある場所に罠を仕掛け、見張り塔の建設を提案する。
すべてが、驚くほど合理的で無駄がない。
フィオナが来てから一週間、村の防衛力は飛躍的に向上した。
俺は、村の入り口に立ってその光景を見渡しながら、ふと思った。
女というのは、どうしてこうも迷いがないのだろう。
俺が何かを決めるときは、まず「面倒くさくないか?」という考えが浮かぶものだ。だが、フィオナは違う。彼女は村の防衛に必要なことを、迷いなくやってのけた。
こういう女がいるからこそ、世の中は回っていくのだろう。
……が、それが俺の平穏な生活を脅かしていることは間違いない。
「さて、次は剣術訓練だ」
フィオナが鋭い目を向けてきた。
……俺の生活は、ますます騒がしくなりそうだ。
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