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2.羊or狼②
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海上
凑たちとは違うクルーザーに乗った5人、いやここは案内役である酒村も乗っている
黒パーカーを着た長髪の女がいた
私は亜久里 刹那
真っ黒な海を眺めてなんてクソみたいな景色なのかと思う
突然だけど知っておいて欲しいことがある
私は殺人犯だ
少なくとも10人は殺したな
もう5年前の話だ
あの大通りの叫びと地獄絵図は一生忘れないだろうな
私は何一つ反省していないし、殺しをなんとも思っていないけど今回の宿泊会でそれを伝えるわけもない
通報されて捕まるなんてまっぴらごめんだ
それに私の目の前にいる七三分けの男は警察らしいしな
亜久里が警察をゆっくりと見つめると気配に気づいたのかしかめっ面で睨み返される
「なんだ」
「いーや イカちぃ顔つきだと思ってな」
「お前こそ怪しい格好をしているな」
クルーザーの上に気まずさの冷気が漂い、会話していない4人の体が強ばる
「心外だ 私はオシャレに疎いだけの乙女だよ」
そう冗談を混じえると警察はさらに眉間にしわを寄せる
「長髪の20代前後の女」
おっと…
「5年前 大通りで無差別殺人を起こした奴の身なりもそんなだったらしい」
「ははっ 怖いな そんな姿した女なんていくらでもいるだろ」
「さてどうだろうな」
不敵な笑みを向けて亜久里を挑発する
「や、やめましょー!!」
酒村が空気を取り持つため2人に割り込む
「館に到着するまでに関係が悪化するのは困りますので!!」
すごく慌てている
「まるで宿泊が始まってからなら悪化するのは構わんような言いぐさだな」
酒村の言い様に警察が指摘まじりに視線を向ける
「ここには怪しい人物が多い」
警察がスーツの内ポケットから手のひらサイズで長方形の黒いものを取り出した
「本当に不審者がいると困る 牽制といったところだ」
黒いものが縦にふたつに開いた
そこには警察の肩まで写った写真と氏名がフリガナ付きで記されている
どうやら警察手帳のようだ
「捜査一課の真部 仁一だ」
先程の冷たさとは違う劈くような空気が乗船者になびく
しかし亜久里だけは余裕の笑みだ
「怪しい?誰がだよ」
「ここにいる全員がだ」
真部が1人ずつ目配せしていく
「宿泊会について詳細を提示しない案内役に俺に挑発的な態度をとる女」
千鶴や千雛と同じ制服を着た少女と隣に座っている車椅子からおりた中年男性を見る
「一言も言葉を発さない男にそれに付き添っている女子高生」
その女子高生が真部を睨む
真部はそれに気づくも無視して麦わら帽子を被った男性を見る
「俺とそこの女が会話しはじめるまで俯いて無表情だった男」
船の上の人物の怪しさを語り終える
「何かあれば貴様らは俺が拘束する 余計な真似はするなよ」
警察手帳を懐に戻した
「曖昧です」
女子高生の静かな声が真部の耳に入る
女子高生は立ち上がって真部の座るところまで行き見下げる
「警察にしては見立てに見合った根拠が無さすぎる」
「なんだと」
「あなたが怪しいとおっしゃった私と私のつく男性は娘と父の関係です 父は事故で目に障害を負ってしまっているのでそばにいる ただそれだけなので私たちに関してはご安心を」
「それが事実という証拠は」
「残念ながら今ここにはありません」
「なら信じるに値しないな 」
「なら私もあなたを信じません」
警察を信じないという発言に酒村は驚くが亜久里は鼻で笑った
その亜久里を真部は横目で睨みつける
「しかし もしも私が不審者なら戸籍は後々簡単に調べたいですよね」
今度は協力的な態度で豊かな笑みを浮かべる
「私は塩崎 詩音 父は塩崎 隆明 2日間よろしくお願いします」
自己紹介して左手を差し伸べる
「不審者の可能性のある奴に握手などするわけないだろ」
「あら残念」
その瞬間が波が起こり、クルーザーが大きく揺れた
そしてその衝撃で隆明が船の上から海上に放り出される
ドボンという音が船上に低く鳴る
船上の人物が音の方向に瞬間的に見つめる
目の見えない隆明は慌てふためいて両手を上下させて水面を何度も叩く
「父さん!!」
詩音がクルーザーから身を乗り出すが、何かを躊躇うように飛び込もうとする自分を寸前で止める
躊躇した詩音とは裏腹にクルーザーから飛び出した男がいた
被った麦わら帽子を船上に放り捨てて綺麗なフォームで海上に浮かぶ隆明に向かって飛び込んだ
「遠藤さん!」
酒村が飛び込んだ男性の姓を発する
クルーザーは急停止できないため隆明が落ちた場所から少々離れてしまっている
しかし、そんなこと関係なしに男性はクロールで隆明の所まで泳ぎ、慌てる隆明の背に手を当てる
「落ち着いてください!!」
男性の大きな声が隆明に聞こえ、水面を打つ自分の手を止めた
その後はゆっくりとクルーザーの浮かぶところまで男性が隆明を平泳ぎの要領で運んだ
クルーザーに上げられた隆明は酷く震えていたため酒村が毛布を全身に巻いた
「あ、ありがとうございます」
と片言で感謝を伝えた
「いえ、感謝ならあなたを助けた遠藤さんに」
酒村は男性に視線を向ける
「いやいや反射的に動いただけなんでお気になさらず」
と笑顔で接する
それを見た詩音が静かに「チッ」と舌打ちした音を亜久里は聞き逃さなかった
「お巡りさん」
男性が疑い深い真部を優しく見る
「これで少しは僕に対する認識を改めて下さったかな」
「ふっ さあどうだろな」
「厳しいですな まぁ良いでしょう これから信頼関係を築いていければ問題ない」
先程放り投げた麦わら帽子を拾ってゆったりと被る
「僕は遠藤 新次郎と言います 皆さんよろしく」
笑みで頭を下げる遠藤
毛布で温もった父 隆明とそばに寄り添う娘 詩音
唇をなぞるように舌を回す亜久里
疑いを隠そうとしないしかめっ面の真部
You are Merry Xmas
罪人14 処刑人 1
称呼番号
06 遠藤 新次郎
07 亜久里 刹那
08 真部 仁一
09 塩崎 隆明
10 塩崎 詩音
一方、残りの宿泊者が乗船しているクルーザーではもうすぐ到着というのに会話は何一つ起こっていなかった
1つ結びの丸眼鏡をかけた清楚な女性と白衣を着た糸目の男性はそれぞれ小説を片手にして読んでいる
ジャンルは全くの別物で女性がミステリー系、男性が哲学についての本を手にしている
肩まである髪の先端を巻いた女性はティーカップを片手に紅茶を嗜み、横に付いたやや高身長で髪は整えられているが色褪せた片眼鏡をつけた執事のような男性は女性が飲んでいるであろう紅茶のガラスポットを礼儀正しく持っている
海の上とは思えない異様な光景だ
最後に冬の海上で半袖半パンの男性が座ったまま眠っている
脚の筋肉は常人を軽く蹴り飛ばせる程に発達している
私は小説家杉沢 遥
狂気犯罪を主にしたミステリーを描いている
今読んでいるのは私の作品ではない『死人の声』
というもので私が高校生の時から大好きな友達が描いた作品
主人公の探偵は死体に触れるとその人物の今際の言葉が脳に焼き付く 真実に近づく度に今際の状況が鮮明になっていくという斬新な設定が読者を虜にさせている
そして探偵が推理を披露し、特定した犯人に言い放つ決めゼリフが
《Checkmate キミの敗因は死者を敵に回したことだ》
でこの言葉と同時に事件は幕を閉じる
『死人の声』はIからⅤまでの5巻発行されている
Ⅴを読み終えた時に私は泣いた
物語には感動したしⅠから貼られた伏線を綺麗に回収したことは快感があった
でも私が感銘を受けたのはそうではなく、これが青春時代を共にした友人の傑作なのかという私しか感じられないものに浸ったんだ
それを思い出すとまた涙が流れそうになる
頭を空に向けて涙を零れさせなかった
突然の仕草を目にして驚きと少々の軽蔑を覚えたのは紅茶を口に当てた女性だった
あのメガネ…なにをしているの?
ティーカップを高身長の男性に受け渡し、足を組む
私は三鷹 瑠愛
全国に事業を展開している三鷹グループ社長の娘という立ち位置
しくじったのよ
今日からの宿泊会には私並みの方々しか招待されていないと思っていた
でも違ったわ 私やそこで眠っているスポーツ選手を除けばあとはどこにでもいる一般人…
金持ちやイケメン目当てで来たのに本当に無駄足だったわ
「はぁ…」と呆れのため息を吐く
それが外界の空気との温度差に白くなる
付き人はそれを見逃さない
瑠愛お嬢様が呆れていらっしゃる
ここは付き人として何かをしてあげねばならぬ
しかし、、
紅茶の味が良くなかったのだろう
また違うフレーバーを試してみましょうかな
真意は的外れだった
げ…
ジィヤがまたお茶入れ始めた
私もうお腹が熱くなるところまできてしまっているというのに!
しかもまた香りが違うし!
この私 市島 一郎がお嬢様にあった紅茶を必ずしも注いで魅せますぞ!
目がキラッと光る
いーやなんか気合入ってるんだけど…やば…
怒りよりも呆れと侮蔑が勝っている
その横ではスポーツ選手らしき男がうたた寝をしている
クルーザーが波で揺れる
バタンとスポーツ選手が倒れた
「はっ!!」
お目覚めの瞬間に発せられた活気のいい声に周りが視界を寄せる
するとスポーツ選手の前の白衣を着た男が本を閉じた
「大丈夫ですか 黒木 渡選手」
と笑みで手を差し出す
「おお、俺のことを知ってるんですね」
と黒木も手を取り立ち上がる
「もちろん あなたは次期陸上界のオリンピック選手候補 知らないわけがない」
と勢いよく手を自分の方と引き、黒木の顔と自身の顔との距離を狭める
わずかな振動で唇が触れてしまいそうな超近距離である
「ちょ、ちょっと近…」
「この期に僕のことも覚えていただきたい」
黒木の言葉を打ち切り、手を離すこともせずに堂々と語る
「僕は豊代 竜司という者です 見た目の通り医者をやっています」
そして糸目が細く開き、鋭い瞳孔が突き刺さるように魅せられる
「以後お見知り置きを」
あまりの不気味さに黒木は豊代の手を振り払ってしまう
「おっと…」
「あ、すんません!」
「いえいえ 2日間よろしくお願いします」
その笑みが黒木にはもう不気味に感じてしまう
You are Merry Xmas
罪人 14 処刑人 1
称呼番号
11 杉沢 遥
12 三鷹 瑠愛
13 市島 一郎
14 黒木 渡
15 豊代 竜司
そして3つのクルーザーから目的の島が見えてきた
それを確認した千雛が口を開く
「どうやら到着のようですね」
輝人が手荷物を持った
「降りる準備をしましょう 出遅れるのはほかの方々に迷惑だと思いますので」
ほかの宿泊者もそれぞれの荷物をまとめた
そしてそれぞれのクルーザーに置かれたスピーカーから酒村の声がする
『みなさーん! もうご到着のお時間ですので各自、準備をお願いします! 降りたらすぐに人数確認をして館に向かいますのでお忘れ物がございませんようよろしくお願いします!』
クルーザーが静かに停止を始めた
welcome to this island
あなた達に最高のおでましを提供致します
By 招待者
凑たちとは違うクルーザーに乗った5人、いやここは案内役である酒村も乗っている
黒パーカーを着た長髪の女がいた
私は亜久里 刹那
真っ黒な海を眺めてなんてクソみたいな景色なのかと思う
突然だけど知っておいて欲しいことがある
私は殺人犯だ
少なくとも10人は殺したな
もう5年前の話だ
あの大通りの叫びと地獄絵図は一生忘れないだろうな
私は何一つ反省していないし、殺しをなんとも思っていないけど今回の宿泊会でそれを伝えるわけもない
通報されて捕まるなんてまっぴらごめんだ
それに私の目の前にいる七三分けの男は警察らしいしな
亜久里が警察をゆっくりと見つめると気配に気づいたのかしかめっ面で睨み返される
「なんだ」
「いーや イカちぃ顔つきだと思ってな」
「お前こそ怪しい格好をしているな」
クルーザーの上に気まずさの冷気が漂い、会話していない4人の体が強ばる
「心外だ 私はオシャレに疎いだけの乙女だよ」
そう冗談を混じえると警察はさらに眉間にしわを寄せる
「長髪の20代前後の女」
おっと…
「5年前 大通りで無差別殺人を起こした奴の身なりもそんなだったらしい」
「ははっ 怖いな そんな姿した女なんていくらでもいるだろ」
「さてどうだろうな」
不敵な笑みを向けて亜久里を挑発する
「や、やめましょー!!」
酒村が空気を取り持つため2人に割り込む
「館に到着するまでに関係が悪化するのは困りますので!!」
すごく慌てている
「まるで宿泊が始まってからなら悪化するのは構わんような言いぐさだな」
酒村の言い様に警察が指摘まじりに視線を向ける
「ここには怪しい人物が多い」
警察がスーツの内ポケットから手のひらサイズで長方形の黒いものを取り出した
「本当に不審者がいると困る 牽制といったところだ」
黒いものが縦にふたつに開いた
そこには警察の肩まで写った写真と氏名がフリガナ付きで記されている
どうやら警察手帳のようだ
「捜査一課の真部 仁一だ」
先程の冷たさとは違う劈くような空気が乗船者になびく
しかし亜久里だけは余裕の笑みだ
「怪しい?誰がだよ」
「ここにいる全員がだ」
真部が1人ずつ目配せしていく
「宿泊会について詳細を提示しない案内役に俺に挑発的な態度をとる女」
千鶴や千雛と同じ制服を着た少女と隣に座っている車椅子からおりた中年男性を見る
「一言も言葉を発さない男にそれに付き添っている女子高生」
その女子高生が真部を睨む
真部はそれに気づくも無視して麦わら帽子を被った男性を見る
「俺とそこの女が会話しはじめるまで俯いて無表情だった男」
船の上の人物の怪しさを語り終える
「何かあれば貴様らは俺が拘束する 余計な真似はするなよ」
警察手帳を懐に戻した
「曖昧です」
女子高生の静かな声が真部の耳に入る
女子高生は立ち上がって真部の座るところまで行き見下げる
「警察にしては見立てに見合った根拠が無さすぎる」
「なんだと」
「あなたが怪しいとおっしゃった私と私のつく男性は娘と父の関係です 父は事故で目に障害を負ってしまっているのでそばにいる ただそれだけなので私たちに関してはご安心を」
「それが事実という証拠は」
「残念ながら今ここにはありません」
「なら信じるに値しないな 」
「なら私もあなたを信じません」
警察を信じないという発言に酒村は驚くが亜久里は鼻で笑った
その亜久里を真部は横目で睨みつける
「しかし もしも私が不審者なら戸籍は後々簡単に調べたいですよね」
今度は協力的な態度で豊かな笑みを浮かべる
「私は塩崎 詩音 父は塩崎 隆明 2日間よろしくお願いします」
自己紹介して左手を差し伸べる
「不審者の可能性のある奴に握手などするわけないだろ」
「あら残念」
その瞬間が波が起こり、クルーザーが大きく揺れた
そしてその衝撃で隆明が船の上から海上に放り出される
ドボンという音が船上に低く鳴る
船上の人物が音の方向に瞬間的に見つめる
目の見えない隆明は慌てふためいて両手を上下させて水面を何度も叩く
「父さん!!」
詩音がクルーザーから身を乗り出すが、何かを躊躇うように飛び込もうとする自分を寸前で止める
躊躇した詩音とは裏腹にクルーザーから飛び出した男がいた
被った麦わら帽子を船上に放り捨てて綺麗なフォームで海上に浮かぶ隆明に向かって飛び込んだ
「遠藤さん!」
酒村が飛び込んだ男性の姓を発する
クルーザーは急停止できないため隆明が落ちた場所から少々離れてしまっている
しかし、そんなこと関係なしに男性はクロールで隆明の所まで泳ぎ、慌てる隆明の背に手を当てる
「落ち着いてください!!」
男性の大きな声が隆明に聞こえ、水面を打つ自分の手を止めた
その後はゆっくりとクルーザーの浮かぶところまで男性が隆明を平泳ぎの要領で運んだ
クルーザーに上げられた隆明は酷く震えていたため酒村が毛布を全身に巻いた
「あ、ありがとうございます」
と片言で感謝を伝えた
「いえ、感謝ならあなたを助けた遠藤さんに」
酒村は男性に視線を向ける
「いやいや反射的に動いただけなんでお気になさらず」
と笑顔で接する
それを見た詩音が静かに「チッ」と舌打ちした音を亜久里は聞き逃さなかった
「お巡りさん」
男性が疑い深い真部を優しく見る
「これで少しは僕に対する認識を改めて下さったかな」
「ふっ さあどうだろな」
「厳しいですな まぁ良いでしょう これから信頼関係を築いていければ問題ない」
先程放り投げた麦わら帽子を拾ってゆったりと被る
「僕は遠藤 新次郎と言います 皆さんよろしく」
笑みで頭を下げる遠藤
毛布で温もった父 隆明とそばに寄り添う娘 詩音
唇をなぞるように舌を回す亜久里
疑いを隠そうとしないしかめっ面の真部
You are Merry Xmas
罪人14 処刑人 1
称呼番号
06 遠藤 新次郎
07 亜久里 刹那
08 真部 仁一
09 塩崎 隆明
10 塩崎 詩音
一方、残りの宿泊者が乗船しているクルーザーではもうすぐ到着というのに会話は何一つ起こっていなかった
1つ結びの丸眼鏡をかけた清楚な女性と白衣を着た糸目の男性はそれぞれ小説を片手にして読んでいる
ジャンルは全くの別物で女性がミステリー系、男性が哲学についての本を手にしている
肩まである髪の先端を巻いた女性はティーカップを片手に紅茶を嗜み、横に付いたやや高身長で髪は整えられているが色褪せた片眼鏡をつけた執事のような男性は女性が飲んでいるであろう紅茶のガラスポットを礼儀正しく持っている
海の上とは思えない異様な光景だ
最後に冬の海上で半袖半パンの男性が座ったまま眠っている
脚の筋肉は常人を軽く蹴り飛ばせる程に発達している
私は小説家杉沢 遥
狂気犯罪を主にしたミステリーを描いている
今読んでいるのは私の作品ではない『死人の声』
というもので私が高校生の時から大好きな友達が描いた作品
主人公の探偵は死体に触れるとその人物の今際の言葉が脳に焼き付く 真実に近づく度に今際の状況が鮮明になっていくという斬新な設定が読者を虜にさせている
そして探偵が推理を披露し、特定した犯人に言い放つ決めゼリフが
《Checkmate キミの敗因は死者を敵に回したことだ》
でこの言葉と同時に事件は幕を閉じる
『死人の声』はIからⅤまでの5巻発行されている
Ⅴを読み終えた時に私は泣いた
物語には感動したしⅠから貼られた伏線を綺麗に回収したことは快感があった
でも私が感銘を受けたのはそうではなく、これが青春時代を共にした友人の傑作なのかという私しか感じられないものに浸ったんだ
それを思い出すとまた涙が流れそうになる
頭を空に向けて涙を零れさせなかった
突然の仕草を目にして驚きと少々の軽蔑を覚えたのは紅茶を口に当てた女性だった
あのメガネ…なにをしているの?
ティーカップを高身長の男性に受け渡し、足を組む
私は三鷹 瑠愛
全国に事業を展開している三鷹グループ社長の娘という立ち位置
しくじったのよ
今日からの宿泊会には私並みの方々しか招待されていないと思っていた
でも違ったわ 私やそこで眠っているスポーツ選手を除けばあとはどこにでもいる一般人…
金持ちやイケメン目当てで来たのに本当に無駄足だったわ
「はぁ…」と呆れのため息を吐く
それが外界の空気との温度差に白くなる
付き人はそれを見逃さない
瑠愛お嬢様が呆れていらっしゃる
ここは付き人として何かをしてあげねばならぬ
しかし、、
紅茶の味が良くなかったのだろう
また違うフレーバーを試してみましょうかな
真意は的外れだった
げ…
ジィヤがまたお茶入れ始めた
私もうお腹が熱くなるところまできてしまっているというのに!
しかもまた香りが違うし!
この私 市島 一郎がお嬢様にあった紅茶を必ずしも注いで魅せますぞ!
目がキラッと光る
いーやなんか気合入ってるんだけど…やば…
怒りよりも呆れと侮蔑が勝っている
その横ではスポーツ選手らしき男がうたた寝をしている
クルーザーが波で揺れる
バタンとスポーツ選手が倒れた
「はっ!!」
お目覚めの瞬間に発せられた活気のいい声に周りが視界を寄せる
するとスポーツ選手の前の白衣を着た男が本を閉じた
「大丈夫ですか 黒木 渡選手」
と笑みで手を差し出す
「おお、俺のことを知ってるんですね」
と黒木も手を取り立ち上がる
「もちろん あなたは次期陸上界のオリンピック選手候補 知らないわけがない」
と勢いよく手を自分の方と引き、黒木の顔と自身の顔との距離を狭める
わずかな振動で唇が触れてしまいそうな超近距離である
「ちょ、ちょっと近…」
「この期に僕のことも覚えていただきたい」
黒木の言葉を打ち切り、手を離すこともせずに堂々と語る
「僕は豊代 竜司という者です 見た目の通り医者をやっています」
そして糸目が細く開き、鋭い瞳孔が突き刺さるように魅せられる
「以後お見知り置きを」
あまりの不気味さに黒木は豊代の手を振り払ってしまう
「おっと…」
「あ、すんません!」
「いえいえ 2日間よろしくお願いします」
その笑みが黒木にはもう不気味に感じてしまう
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15 豊代 竜司
そして3つのクルーザーから目的の島が見えてきた
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「どうやら到着のようですね」
輝人が手荷物を持った
「降りる準備をしましょう 出遅れるのはほかの方々に迷惑だと思いますので」
ほかの宿泊者もそれぞれの荷物をまとめた
そしてそれぞれのクルーザーに置かれたスピーカーから酒村の声がする
『みなさーん! もうご到着のお時間ですので各自、準備をお願いします! 降りたらすぐに人数確認をして館に向かいますのでお忘れ物がございませんようよろしくお願いします!』
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