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1.羊or狼①
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僕はただの男子高校生
もうすぐで二学期も終わろうとしている
今日は12月15日の金曜日
来週に終業式を迎え、晴れて冬休みだ
正月は親戚に頭を下げてお年玉をありがたくいただき、「新年明けましておめでとうございます」とか言って来年の安念を誓い合う
青年は下校道につき、歩道に沿って建てられた民家の前をゆったりと歩き通り過ぎていく
っていうのは自分にとって嬉しいことだ
だが、冬休みに突入してからすぐに訪れる非人道的な海外の宗教的祝祭
クリスマス…
考えただけで嫌になる
外に出ればデタラメに眩しいイルミネーション、友人とはしゃぐ若者、クリスマスセールとかで通りで声を上げる商売人、なにより不純異性行為をみせつける男女
全く本当に全員、宗教の侮辱罪で投獄されてしまえ
歩道に植えられた木々の装飾を眺める
ここの通りもライトを灯すらしい
良い子はサンタにプレゼントを貰うために早い時間に眠りにつくというのに外が明るいと眠れないじゃないか
ちょっと待て…
青年は思い出して一瞬、歩みを止めた
今年のクリスマスは月曜日…
あぁ終わった 家でひとり確定だ
親は仕事だし、弟は友達と遊びにいくと言っていた
まさに聖夜に1人じゃないか…
少しの失望を胸に歩道に沿って続く民家の並びの一角にある自宅に到着した
玄関に続く扉に付属するポストに何か手紙を包装したようなものが見えた
それを抜きにくい外側から強引に引き抜く
そこには自分の名前である
最上 凑様
と書かれていた
なんだこれ…
と意味深に思いつつ鍵を使って帰宅する
履いている靴を揃えることもせず脱ぎ置き、2階にある自身の部屋に入る
制服のブレザーを脱ぎ、片手にとったハンガーに吊るし、ネクタイを解きハンガーの頭から通す
中に着たワイシャツのボタンを上から外しまた違うハンガーに吊るす
ベルトを緩めズボンを脱ぎ少し大きめのハンガーにベルトを外さずにズボンを吊るす
畳まれて床に放置された冬のズボンの体操服に素早く足を通す
そこでブレザーのポッケにスマホを入れていたことに気づきスマホを取る
ポストに入っていた紙の包装を破り、中の手紙を取り出す
内容を確認する前にスマホのシャッターを切り、SNSを開く
なんか来た~
という雑な文とともに写真を載せ、投稿する
それから内容を確認するように手紙を眺める
最上 凑 様
おめでとうございます
あなたは12月24日から25日の夜に日本海の浮かぶ島のある館で開催されるクリスマス宿泊会に当選致しました
12月24日の午前10時に金沢港を出発しますので準備をよろしくお願いします
皆さんと最高の聖夜を過ごせることを楽しみにしております
Mr.クリスマス
この内容を読み上げた時に率直に思ったのは
こーわ…
抽選に参加した覚えはないしもちろん贈り主の名前も知らない
なんだよMr.って
怪しいと感じた凑だったがある文章に目が惹かれた
皆さんと最高の聖夜をか…
先程まで危惧していた聖夜に1人を回避できるチャンスである
僕以外はどんな人達が集められているのだろうか…
同年代がいるなら仲良くなれるんじゃないか…
という浅はかな若き期待を抱いた
でもまずはお母さんに許可を取らなきゃな…
言い訳はどうするか…
こんなものに抽選していたなんて嘘ついたら叱られるだろうし…
クラスメイトと2日間に渡るクリスマス会を催すことになったってことにすれば…
そうしよう 幸いうちの親はクラスメイトの保護者との友人関係はないと言っていた
これならバレることなく宿泊会にいける
そして、母親の帰りを待った
その間に中学2年生の弟が帰ってきて
「兄ちゃんってクリスマス1人だよね」
とかほざきやがったから軽く締めて「課題やれ」と注意した
その後、両親が帰り着き、食事するため卓に着く
俺はわざと思い出したかのように言う
「なんかクラスメイトで1人の家でお泊まり会するみたいな話があるんだけど行っていいかな」
母親が味噌汁を啜ってから
「それっていつ」
「イブの朝から26日までかな」
手紙にはクリスマスの夜までとあったが、夜遅く帰宅すると伝えれば断られると考え、翌日に帰ると伝えリスクを抑える
「え、兄ちゃんがクリぼっちじゃないってこと」
という弟を横目に無視して話を続ける
「でどうかな」
「別に行ってくれば~ 青春じゃない」
思ったよりも気軽い反応だ
これは助かる
「ありがと」
と感謝すると父親から「行き帰りは1人で行くんだよな」と聞かれたので「うん」と軽く頷いて返した
食事を済ませた後、すぐに入浴をして部屋に戻りベッドに身を落とす
よっしゃーーー!!!
これでクリぼっち回避!あわよくば近い年の人と仲良くなって友達作ってやる!
かなり浮かれている
しかし、校内での人間関係に乏しい彼にとっては一大イベントに他ならない
この年頃の男児が張り切るのも仕方の無いことだ
あわよくば交際関係を築こうとさえ考えている
だが、この宿泊会は彼が思うほど甘ったるいものではない
12月24日 当日
「着いた」
彼は金沢の港に到着した
旅行用バッグに翌日と翌々日の分の着替えと日用品を詰め込んでいる
しかし、彼の心はそのバッグの中身よりも詰まりきっている
期待に期待を重ねた上に浮かれ気分も相まって緊張はなかった
島まではクルーザーで海を渡って行くようだ
いくつかそれが並んである
どうせならデカい船で行きたかったな
ま、島にある館がいいとこなら問題ないけど
そして周囲には彼の他に選ばれた人々が14人いる
かなり洒落た洋服を着ている女性、その後ろにつく片眼鏡をつけた細身の男性
麦わら帽子を被った中年男性
旅行バッグを横に置き、真っ黒なフード付きの上着のポッケに手を入れた少し怪しい女
親子だろうか30代くらいの女性、女性を見上げて会話する小学校中学年くらいの少年
丸眼鏡を人差し指でクイッと調整する1つ結びの清潔感のある女性
黒スーツ姿で前髪を七三で分けた若い男
医療関係者または科学者だと思われる白衣を着た高身長の男性
12月というのに半袖半端で短パンから伸びる脚の筋肉が上等な若い男性
車椅子に乗った中年男性にその男性の脚に「寒いでしょ」と言って膝掛けを被らせる凑と同い年くらいの制服を着た少女
さらにその少女と同じ制服を纏う瓜二つの少女が2人、双子なのだろう前髪で隠れている片目でしか判断できない
凑も自身の高校の制服を着ている
そして双子の制服を見て通っているであろう高校がわかった
女子校か…しかも偏差値高いとこだな
うちの高校の近くにあるから馬鹿な男どもが忍び込んで退学寸前にまで追い込まれたって前に担任が言ってたな
そんなことを考えていると1台のクルーザーから1人の若い女性が降りてきた
降りた瞬間にわざとらしく体制を崩し「おっとっと」と言って地に足をつけた
「皆さんおはようございます 本日は館での宿泊会に参加いただきありがとうございます」
女性が頭を下げたので凑もそれを返した
その場の15人は礼を返す人と偉そうにしている人にわかれた
「わたくしは酒村 美陽と申します」
今回の案内役か…若いな
「島まではクルーザーで移動します 冬の日本海上はとても冷えますので暖かい格好をするようにして下さい 3台のクルーザーで参りますので5人ずつ適当に別れて下さい」
凑は指示通りにテキトーなクルーザーの前に立った
彼と同じクルーザーに乗るのは双子と思われる2人、親子2人であった
参加者は酒村の「皆さんどうぞお乗り下さい」という合図でクルーザーに乗り込んだ
不安定な足場でふらついたが転ぶことはなかった
ほか4人も流れるように乗り込むとクルーザーは出発した
15分後、、
「海って割と黒いんですね」
親子と思われる内の10代くらいの男児がふと景色を眺めながら呟いた
「ちょ、ちょっとテル 恥ずかしいからやめて」
と母親が口元に人差し指を立てて静止する
親子の前に座る双子の1人から「ふふっ」と微笑が聞こえた
親子と凑がそこを向く
「いいじゃないですかお母さん 気まずい空気が晴れて」
と柔和な笑みを浮かべる右目を隠した双子に対して
「そうやって親子の会話に首を突っ込むのは良くないよ」
左目を隠した双子が肩に手を置く
「千鶴は温厚すぎよ もう少し人と関わった方がいいわ」
「千雛は場の空気を読むことを知った方がいいわ 突拍子のなさは時に周りの人を困らせてしまうわよ」
「でもこの場では初対面がほとんどでしょ?積極的な態度が功を奏すと思うわ あなたもそう思うでしょ」
突如、千雛と呼ばれる方から凑に視線が向けられた
「は、はあ」とぎこちない反応を示すと双子は構わず言い合いを再開する
「ほらみなさい」
「明らかに困ってるでしょ」
はいめちゃくちゃ困ってます…
異性関係に乏しい彼にとって同い年くらいの女子から話しかけられるのは年頃も相まって高揚してしまう
「私たちが言い争いしてもそれこそ周りが気まずいだけよ ですよね~皆さん」
さっきからこの千雛とか言うやつは他人と話すのが好きなのか…?
「なら自己紹介といきましょうか」
男児が提案した
母親が焦った表情をしているが止まる気配はない
「僕は倉宮 輝人 小学五年生の11歳です 海が見たいと考えていたのでこの会に参加できてとても嬉しいです」
自己紹介からも分かる
輝人という小学生は礼儀正しい
凑が11歳の頃は中庭を駆け回る暴君だったはずだ
「でこっちが」
と横目に振られた母親がため息をついてから紹介を始める
「母の日向美です 息子がすいません」
頭を下げた
それを見た千鶴は「いえいえそんなことないです」と頭を上げてくれと申し立てる
「私は小波 千鶴です 輝人くんよりも妹の方が迷惑をかけました どうかお気遣いなく」
優しく接すると千鶴の隣から「ふふっ」と聞こえた
妹の方だ
「千鶴の双子の妹 千雛よ 2日間仲良くしましょ」
語尾が跳ねている
本人は心から仲良くしようと思っているのだろうがその軽さからこちらを下に見ているように感じる
そして、4人の視線は凑に向いた
凑は少し緊張し気づかれない程度で声を震わせた
「最上 凑と言います 呼び方はご自由に 2日間よろしくお願いします」
堅苦しい自己紹介をしてしまった
だが場の空気は悪くなっていない
凑をそういう寡黙な人物だと捉えて納得し合わせてくれたのかもしれないが、何かおかしいことを言った訳でもないので普通の反応なのかもしれない
「呼び方はご自由に か、、」
千雛が顎に指をついた
何かを察した姉が「ちょ、まさか」と呟いたがそれもシカトして
「ミナミンって呼ぼっと」
グハッ…!
そんなあだ名をつけられるとは思わなんだな…
「失礼でしょ!」
「本人がご自由にって言ってるんだしよくない?」
「戯れに決まってるでしょそんなの」
「ならこれも戯れよ」
そんな戯れお断りだ…
「ははっ明るいですね これはいい宿泊になりそうだ」
「テルやめて…」
呆れる凑と日向美
微笑む輝人と千雛
妹の態度に申し訳ないと感じる千鶴
You are Merry Xmas
罪人14 処刑人1
称呼番号
01 最上 凑
02 小波 千鶴
03 小波 千雛
04 倉宮 日向美
05 倉宮 輝人
もうすぐで二学期も終わろうとしている
今日は12月15日の金曜日
来週に終業式を迎え、晴れて冬休みだ
正月は親戚に頭を下げてお年玉をありがたくいただき、「新年明けましておめでとうございます」とか言って来年の安念を誓い合う
青年は下校道につき、歩道に沿って建てられた民家の前をゆったりと歩き通り過ぎていく
っていうのは自分にとって嬉しいことだ
だが、冬休みに突入してからすぐに訪れる非人道的な海外の宗教的祝祭
クリスマス…
考えただけで嫌になる
外に出ればデタラメに眩しいイルミネーション、友人とはしゃぐ若者、クリスマスセールとかで通りで声を上げる商売人、なにより不純異性行為をみせつける男女
全く本当に全員、宗教の侮辱罪で投獄されてしまえ
歩道に植えられた木々の装飾を眺める
ここの通りもライトを灯すらしい
良い子はサンタにプレゼントを貰うために早い時間に眠りにつくというのに外が明るいと眠れないじゃないか
ちょっと待て…
青年は思い出して一瞬、歩みを止めた
今年のクリスマスは月曜日…
あぁ終わった 家でひとり確定だ
親は仕事だし、弟は友達と遊びにいくと言っていた
まさに聖夜に1人じゃないか…
少しの失望を胸に歩道に沿って続く民家の並びの一角にある自宅に到着した
玄関に続く扉に付属するポストに何か手紙を包装したようなものが見えた
それを抜きにくい外側から強引に引き抜く
そこには自分の名前である
最上 凑様
と書かれていた
なんだこれ…
と意味深に思いつつ鍵を使って帰宅する
履いている靴を揃えることもせず脱ぎ置き、2階にある自身の部屋に入る
制服のブレザーを脱ぎ、片手にとったハンガーに吊るし、ネクタイを解きハンガーの頭から通す
中に着たワイシャツのボタンを上から外しまた違うハンガーに吊るす
ベルトを緩めズボンを脱ぎ少し大きめのハンガーにベルトを外さずにズボンを吊るす
畳まれて床に放置された冬のズボンの体操服に素早く足を通す
そこでブレザーのポッケにスマホを入れていたことに気づきスマホを取る
ポストに入っていた紙の包装を破り、中の手紙を取り出す
内容を確認する前にスマホのシャッターを切り、SNSを開く
なんか来た~
という雑な文とともに写真を載せ、投稿する
それから内容を確認するように手紙を眺める
最上 凑 様
おめでとうございます
あなたは12月24日から25日の夜に日本海の浮かぶ島のある館で開催されるクリスマス宿泊会に当選致しました
12月24日の午前10時に金沢港を出発しますので準備をよろしくお願いします
皆さんと最高の聖夜を過ごせることを楽しみにしております
Mr.クリスマス
この内容を読み上げた時に率直に思ったのは
こーわ…
抽選に参加した覚えはないしもちろん贈り主の名前も知らない
なんだよMr.って
怪しいと感じた凑だったがある文章に目が惹かれた
皆さんと最高の聖夜をか…
先程まで危惧していた聖夜に1人を回避できるチャンスである
僕以外はどんな人達が集められているのだろうか…
同年代がいるなら仲良くなれるんじゃないか…
という浅はかな若き期待を抱いた
でもまずはお母さんに許可を取らなきゃな…
言い訳はどうするか…
こんなものに抽選していたなんて嘘ついたら叱られるだろうし…
クラスメイトと2日間に渡るクリスマス会を催すことになったってことにすれば…
そうしよう 幸いうちの親はクラスメイトの保護者との友人関係はないと言っていた
これならバレることなく宿泊会にいける
そして、母親の帰りを待った
その間に中学2年生の弟が帰ってきて
「兄ちゃんってクリスマス1人だよね」
とかほざきやがったから軽く締めて「課題やれ」と注意した
その後、両親が帰り着き、食事するため卓に着く
俺はわざと思い出したかのように言う
「なんかクラスメイトで1人の家でお泊まり会するみたいな話があるんだけど行っていいかな」
母親が味噌汁を啜ってから
「それっていつ」
「イブの朝から26日までかな」
手紙にはクリスマスの夜までとあったが、夜遅く帰宅すると伝えれば断られると考え、翌日に帰ると伝えリスクを抑える
「え、兄ちゃんがクリぼっちじゃないってこと」
という弟を横目に無視して話を続ける
「でどうかな」
「別に行ってくれば~ 青春じゃない」
思ったよりも気軽い反応だ
これは助かる
「ありがと」
と感謝すると父親から「行き帰りは1人で行くんだよな」と聞かれたので「うん」と軽く頷いて返した
食事を済ませた後、すぐに入浴をして部屋に戻りベッドに身を落とす
よっしゃーーー!!!
これでクリぼっち回避!あわよくば近い年の人と仲良くなって友達作ってやる!
かなり浮かれている
しかし、校内での人間関係に乏しい彼にとっては一大イベントに他ならない
この年頃の男児が張り切るのも仕方の無いことだ
あわよくば交際関係を築こうとさえ考えている
だが、この宿泊会は彼が思うほど甘ったるいものではない
12月24日 当日
「着いた」
彼は金沢の港に到着した
旅行用バッグに翌日と翌々日の分の着替えと日用品を詰め込んでいる
しかし、彼の心はそのバッグの中身よりも詰まりきっている
期待に期待を重ねた上に浮かれ気分も相まって緊張はなかった
島まではクルーザーで海を渡って行くようだ
いくつかそれが並んである
どうせならデカい船で行きたかったな
ま、島にある館がいいとこなら問題ないけど
そして周囲には彼の他に選ばれた人々が14人いる
かなり洒落た洋服を着ている女性、その後ろにつく片眼鏡をつけた細身の男性
麦わら帽子を被った中年男性
旅行バッグを横に置き、真っ黒なフード付きの上着のポッケに手を入れた少し怪しい女
親子だろうか30代くらいの女性、女性を見上げて会話する小学校中学年くらいの少年
丸眼鏡を人差し指でクイッと調整する1つ結びの清潔感のある女性
黒スーツ姿で前髪を七三で分けた若い男
医療関係者または科学者だと思われる白衣を着た高身長の男性
12月というのに半袖半端で短パンから伸びる脚の筋肉が上等な若い男性
車椅子に乗った中年男性にその男性の脚に「寒いでしょ」と言って膝掛けを被らせる凑と同い年くらいの制服を着た少女
さらにその少女と同じ制服を纏う瓜二つの少女が2人、双子なのだろう前髪で隠れている片目でしか判断できない
凑も自身の高校の制服を着ている
そして双子の制服を見て通っているであろう高校がわかった
女子校か…しかも偏差値高いとこだな
うちの高校の近くにあるから馬鹿な男どもが忍び込んで退学寸前にまで追い込まれたって前に担任が言ってたな
そんなことを考えていると1台のクルーザーから1人の若い女性が降りてきた
降りた瞬間にわざとらしく体制を崩し「おっとっと」と言って地に足をつけた
「皆さんおはようございます 本日は館での宿泊会に参加いただきありがとうございます」
女性が頭を下げたので凑もそれを返した
その場の15人は礼を返す人と偉そうにしている人にわかれた
「わたくしは酒村 美陽と申します」
今回の案内役か…若いな
「島まではクルーザーで移動します 冬の日本海上はとても冷えますので暖かい格好をするようにして下さい 3台のクルーザーで参りますので5人ずつ適当に別れて下さい」
凑は指示通りにテキトーなクルーザーの前に立った
彼と同じクルーザーに乗るのは双子と思われる2人、親子2人であった
参加者は酒村の「皆さんどうぞお乗り下さい」という合図でクルーザーに乗り込んだ
不安定な足場でふらついたが転ぶことはなかった
ほか4人も流れるように乗り込むとクルーザーは出発した
15分後、、
「海って割と黒いんですね」
親子と思われる内の10代くらいの男児がふと景色を眺めながら呟いた
「ちょ、ちょっとテル 恥ずかしいからやめて」
と母親が口元に人差し指を立てて静止する
親子の前に座る双子の1人から「ふふっ」と微笑が聞こえた
親子と凑がそこを向く
「いいじゃないですかお母さん 気まずい空気が晴れて」
と柔和な笑みを浮かべる右目を隠した双子に対して
「そうやって親子の会話に首を突っ込むのは良くないよ」
左目を隠した双子が肩に手を置く
「千鶴は温厚すぎよ もう少し人と関わった方がいいわ」
「千雛は場の空気を読むことを知った方がいいわ 突拍子のなさは時に周りの人を困らせてしまうわよ」
「でもこの場では初対面がほとんどでしょ?積極的な態度が功を奏すと思うわ あなたもそう思うでしょ」
突如、千雛と呼ばれる方から凑に視線が向けられた
「は、はあ」とぎこちない反応を示すと双子は構わず言い合いを再開する
「ほらみなさい」
「明らかに困ってるでしょ」
はいめちゃくちゃ困ってます…
異性関係に乏しい彼にとって同い年くらいの女子から話しかけられるのは年頃も相まって高揚してしまう
「私たちが言い争いしてもそれこそ周りが気まずいだけよ ですよね~皆さん」
さっきからこの千雛とか言うやつは他人と話すのが好きなのか…?
「なら自己紹介といきましょうか」
男児が提案した
母親が焦った表情をしているが止まる気配はない
「僕は倉宮 輝人 小学五年生の11歳です 海が見たいと考えていたのでこの会に参加できてとても嬉しいです」
自己紹介からも分かる
輝人という小学生は礼儀正しい
凑が11歳の頃は中庭を駆け回る暴君だったはずだ
「でこっちが」
と横目に振られた母親がため息をついてから紹介を始める
「母の日向美です 息子がすいません」
頭を下げた
それを見た千鶴は「いえいえそんなことないです」と頭を上げてくれと申し立てる
「私は小波 千鶴です 輝人くんよりも妹の方が迷惑をかけました どうかお気遣いなく」
優しく接すると千鶴の隣から「ふふっ」と聞こえた
妹の方だ
「千鶴の双子の妹 千雛よ 2日間仲良くしましょ」
語尾が跳ねている
本人は心から仲良くしようと思っているのだろうがその軽さからこちらを下に見ているように感じる
そして、4人の視線は凑に向いた
凑は少し緊張し気づかれない程度で声を震わせた
「最上 凑と言います 呼び方はご自由に 2日間よろしくお願いします」
堅苦しい自己紹介をしてしまった
だが場の空気は悪くなっていない
凑をそういう寡黙な人物だと捉えて納得し合わせてくれたのかもしれないが、何かおかしいことを言った訳でもないので普通の反応なのかもしれない
「呼び方はご自由に か、、」
千雛が顎に指をついた
何かを察した姉が「ちょ、まさか」と呟いたがそれもシカトして
「ミナミンって呼ぼっと」
グハッ…!
そんなあだ名をつけられるとは思わなんだな…
「失礼でしょ!」
「本人がご自由にって言ってるんだしよくない?」
「戯れに決まってるでしょそんなの」
「ならこれも戯れよ」
そんな戯れお断りだ…
「ははっ明るいですね これはいい宿泊になりそうだ」
「テルやめて…」
呆れる凑と日向美
微笑む輝人と千雛
妹の態度に申し訳ないと感じる千鶴
You are Merry Xmas
罪人14 処刑人1
称呼番号
01 最上 凑
02 小波 千鶴
03 小波 千雛
04 倉宮 日向美
05 倉宮 輝人
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