Я side The Assassin

文字の大きさ
64 / 68
赤き因縁編

63.赤き因縁

しおりを挟む
路地裏で待機していたギャングの1人が道路での惨劇に危機を覚える

「ボスが、、死んだ、、逃げねぇと俺も、、」

道路から目を離し建物の影に隠れた
再び、影から頭を出して道路の様子を確認しようとした時、既に恐怖は眼前に立っていた

「俺も、なんだ?」

「う、うわぁぁぁぁ! うっ……!」

叫んだ男をイヴィンは手刀で気を失わせた

「大丈夫だ チャンスを取り逃がすほど自暴自棄じゃない」

千一家から雇われた可能性の高いギャングから情報を得るため1人は生かして本部に連行する必要があるのだ

意識のない男の後ろ襟を掴んで地面に引きずりながら道路に戻る
そこには爆発の衝撃で気を失ったケンシが黒スーツを下敷きに横たわっておりイヴィンは彼を片手で抱きかかえた

「こっから徒歩か… めんどくせぇ~」

死体と破壊された自動車を放置して歩き始めた


一方、本部ではレナたちが昼食の列に並んでいた

レナのおぼんに白米の入った茶碗が乗せられる
それの1つ後ろに並んでいるゴウも同じものを得る

「ゴウ もう体は大丈夫なの?」

「あぁ平気だ よく寝たしな」

五本勝負の際にリュウマから受けた木刀の一撃が重傷になっていないかを心配している

「痛みが引くまでは無理しちゃだめだよ」

「お前は俺の姉ちゃんか」

「お母さんじゃないんだ…」

「別になんでもいいだろ」

他愛もない会話をしているとおぼんの上には食事が取り揃っていた
2人は席を求めて並んで歩き始める

「チキン南蛮だー 美味しそー!」

「それに汁物が豚汁って…牛だけハブられてるだろ」

「確かにだけどwそんなこと気にする?」

「差別は良くない」

「いやいやwそれ言ったらお米だけめちゃくちゃ優遇されてるじゃん」

「それもそうか」

ある程度空いている席に向かい合って座って手を合わせる

「「いただきます」」

レナが鶏肉や白米を口に詰め込んでいると2人の席の横に1人ずつ誰かがおぼんを置いた

「邪魔すんで~」 「空いてなさすぎ」

リュウマとコウマが現れたのだ

「お、少年隊最強コンビ」

「隊長に負けた俺は最強じゃないでしょw」

「任務じゃない時に隊長呼びはやめてよ」

「ごめんごめん」

「それにアンタあの時、なんか悩んでたっぽいしほんとに勝ったなんて思えない」

「そこは謙遜しないで 負けたから晴れたものがある気がするから」

レナがコウマの雰囲気が変わったことを改めて認識し屈託なく食事をしている相手に微笑ましさを感じる

「ふふっw ねえ!コウマくんって呼んでもいい?」

「急になんだよ 別にいいけど」

新たな友人関係を築いた2人の向かいではゴウが黙々と白米を口に運んでいた
すると、横からチキン南蛮一切れを皿に移された

「よだれ付いてないだろうな」

「まだ口の中に入れとらんわ」

豚汁の汁を啜って会話が続く

「どういう風の吹き回しだ」

「ほんの感謝の気持ちや」

「雑魚は嫌いなんじゃなかったか」

「アンタに諭されて考えが変わったというか気づいたんや」

「なにに」

「雑魚が嫌いな理由」

「そうか」

「それはな…」

「そっから先はどうでもいい」

「はぁ!?」

「くだらない理論を捨てたことが分かっただけで俺は充分だ」

「あーそうですかいな!」

パクッ

言いながらゴウのチキン南蛮を一切れ奪って口に入れた

「て、おいタキタツ!」

「元々は俺のもんや!」

「お前が俺にあげたんだろうが!!」

2人は小競り合いを起こし騒がしくなる
賑やかな向かいの様子を見てレナは苦笑する

「最強で思い出したんだけどさ!!」

争いを辞めさせるためレナは3人に話題を振った 予想通りゴウとリュウマの競り合いは中断され互いの席に戻った

「今日、副リーダー帰ってくるらしいよ」

「Я最強のイヴィンさん?」

「は?最強はムラカミさんやろがい」

「タキタツ それは意見が分かれる所だ あまり干渉するな」

「いーや引けへんな!器用やからってムラカミさんの刀さばきには敵わん!」

「過剰だな」

「まぁ、リュウはムラカミさん激推しだから」

「話を逸らすなーーー!!」

レナが声を上げた
乱雑に喋っていた3人はその圧に口を閉じる

「私がしたいのは最強論争じゃなくて!副リーダーの戦闘スタイルについてなの!」

「あーそれか」

ゴウが理解すると咄嗟に説明を始める

「聞いた話だと副リーダーの使う武器は定まってないらしい それは扱いが苦手なわけじゃなくてどれも一流で使いこなせるからだ
そんな人に科学班が与えたのはあらゆる武器に変化する小型機械【万能立方体キューブ】」

形状は手のひらサイズの立方体で面にあらゆる方向から規則性のある亀裂が入っている

「それは所有者権限を持つ人の声に反応し指示された武器に形を変える
形を変えて表される武器の中には隊長や副隊長の使う特殊な効果を持った物もある
相手と状況にあわせて使う武器を選択する、そういう扱うのが難しい機械だ」

ゴウの説明にキリがついたように思うとレナが付け足すように続けた

「あらゆる武器に変化するけど、ゴウがさっき言った特殊な機能は本物の半分くらいしか発揮しないみたい
中途な物でも実力は一級以上だからほんとすごいよね」

反盾パリシ烈火レッカの威力が本人たちに比べて控え目なのはそれである

武器に注目した2人の発言にコウマは本人自体の闘い方を語る

「そんな機械を使いこなす技術を持った本人はめちゃくちゃ器用で、今の若い班長、副班長が得意とする技も使えちゃう
副リーダーはムラカミさんやマチシタさんと同期だし関わりが多かったこともあると思うけど、それでも完璧に近いコピーができるのは副リーダーの強みだよ」

「ムラカミさんには負けるとはいえ、Я切手の実力者なのは確かや…せやけど俺らは副リーダーの出生についてなんも知らへん
苗字も分からんし、名前から外国人ぽいけど姿は見たことあらへんから実際はどうか分からへんな」

イヴィンについて少年たちには教えていないことが多いため強さだけが知り渡る正体不明な人物となっている

「うちの副リーダーだし良い人だと思うけどね」

会話が終わるとほぼ同時に4人が食事を終わらせ、おぼんを持って立ち上がった

「そういえば、セツナだっけ?一緒じゃなかったんだね」

「うん、アサミちゃんと話したいことがあるから今日は一緒に食べないって言われた」


一方、そのセツナはアサミとゆっくりと食事をしていた

「そうやって私は多額で買われて養子施設から出たの」

どうやらアサミはセツナに自身の経緯を伝えているようだ
セツナは相手の話が終わるまで口を開くことをせずただ静かにアサミに親身な視線を見せていた

アサミの食事をする手が止まる
体が強ばって飲み込んだ食物を詰まらせる
思い出せば泣き出してしまいそうな苦しい過去の痛みを口に出そうとすると唇が震える
その震えは全身に行き渡り、握っている箸を落としそうになる

すると、右手に温かなものが触れた
それはセツナの手のひらだった

「大丈夫、ゆっくり話そ」

セツナは友人を、友人だと思っていた少女とカフェで会話したことを思い出す

あの時、私はミツキの話をしっかり聴いてあげなかった…そのせいでカリンちゃんを守りきれずにミツキのことも何もわかんないままになった…
だから今回は、ちゃんと聴くんだ!

涙が溢れそうになっているアサミは優しい表情を向けている しかし、内側には過去の後悔を滲ませている
それを何となく察したアサミが深呼吸をしてもう一度、大きく息を吸って口を開いた

「それで私とお兄様は…!」

その瞬間、本部全体にスピーカーの音声が鳴り響いた

「「……!?」」
 
話が中断され2人、本部にいる全員が放送に耳を傾ける
声はキリマのものだがいつもの明るさはないように聞こえる

『2時間ほど前に警察に潜入していた副リーダーが戻ってきたわ
少年隊のみんなは今すぐに武道場に集まって欲しい
これから起きることに少年隊の力が必要なの
詳しいことは後で伝えるわ』

放送はそこで終了した

「アサミ 大丈夫?」

「うん、大丈夫 またあとで話すわ」

2人は食べかけの食事を一旦、放置して食堂を出た


数分後、、

武道場

迅速に集まった少年隊の面々がレナを先頭に適当に並んでいた

「全員揃いました」

レナが前に立っているキリマに点呼の完了を伝えるとキリマは頷き、大きく口を開いた

「みんな!急に集まらせてごめん!でも一刻も早く動けなきゃいけない状況なの!
もしかしたらЯから何人か死んじゃうかもしれないくらいの大きな事態が発生したの」

「「「「「………!?」」」」」

緊急事態を察した少年たちの心臓は強く引き締まった

「詳細は副リーダーから話してもらうわ」

すると、武道場の扉が勢いよく開いた

バァン!!


    「初めましてだなガキ共!!」


あまりの威圧に呆気にとられてしまい黙り込んでしまった

「私がЯ最強!!イヴィン様だ!!」

スーツからЯの文字が刻まれたスカジャンに着替えた副リーダーの姿は実に傲慢である

「何の歓声も聞こえねぇが時間がねぇ 今なにが起きているのか お前らに話さなきゃならん」

扉から歩いて少年たちの前に立ったイヴィンは威圧を放つ
少年たちもそれをひしひしと感じた
"気に触れば殺される"

それと近い感覚を浴びたことのあるシイナとランマル、リュウマとコスズは同じことを思う

ムラカミさんと同じ殺気…!

入隊試験でムラカミと相対した時の絶望感と恐怖を思い出す

「少し前、私はある警察の活動の一環で人身売買されそうになっていた子供を数人を保護した
その時の護送車に乗っていた奴が七黒シッコク 千一家の一員だった」

レナがイヴィンの発言から千一家について整理する

千一家…超大規模家族で悪徳な商法、政治家への賄賂、子供の誘拐をしてる組織…
過去に1回、Яと抗争している それ以降、音沙汰ない組織だったのに…

「そして、売られそうになっていた子供の1人をここに連れて来ることに成功した
私がその子を連れてここに来る間、ギャングに襲われたんだが、ソイツらは子供を千一家に売り飛ばした組織の雇われだったんだ
さっき拷問したらあっさりとその組織を教えてくれた」

その組織はある人物に聞き馴染みのある組織だった

「非営利組織 キンドシエスタ」

「……!」

アサミがセツナの隣で怯え始める

「アサミ…?」

アサミは全身が震え出し過去を想起する
Яに来てすぐに耳にした大人たちの会話

「やっぱりキンドシエスタは黒だったか」

「しかし、子供の人身売買とは、、」

それを思い出したアサミは恐怖よりも勝った感情があった

絶対に許さない…!

自分と同じような目にあっている子供がまだいることに腹が立っているのだ
強い想いを噛み締めながらもアサミはイヴィンの話を聞き逃さない

「Яは過去にもこの組織を睨んでいたが表向きは社会貢献している非営利組織 潰そうなんて強行的な手段は取れなかった
だが、私は今、警察だ ギャングと子供の証言から法的に行動することができる
それに私は条件下で暴力を許可された部署にいてね ある程度暴れることは許されているんだ」

しかし、イヴィンには懸念点がある

「だが、行動しようにも時間がいる
警察はこの手の捜査は慎重になる癖があってな
まず、どの部署で担当するか、情報の真偽、想定される被害者・加害者は何名か、その他諸々の手続き
そんなノロノロ動いてたら危機察知したアッチが千一家のツテで逃げてしまう
だから、警察がクソつまんねぇことをやってる間、キンドシエスタの同行を確認する必要がある」

少年たちは全てを理解した
何故、自分たちがここに呼ばれたのかを

「そのためにお前らの数人を

人身売買の対象は子供 大人たちでは潜入することは困難となる
Я の子供を内側に潜入させることでイヴィンが行動できない時間を埋めるのだ

「聞き入れて貰えない提案なのは分かってる
だが、千一家が出した尻尾を掴み損ねたくねぇんだ
アイツらがどんだけのことをしたか…」

少年たちはイヴィンにただならぬ執念があることを理解したが、危険にさらされることを躊躇っていた
しかし、そんな中1人の少女が真っ先に手をあげた

「私がやります」

並ぶセツナは目を見開いた

イヴィンはその少女を視認し驚く

「お前は、、マサルの…」

アサミは少年たちの集団を掻き分けてレナよりも前に出た

「はい 派遣班班長の妹です
知っての通りキンドシエスタに私は因縁があります
当時何もできなかったから今回でカタをつけたいのでしょう その協力を是非させて貰いたいのです!」

イヴィンに勢いよく最敬礼すると、相手はキリマとアイコンタクトをとった
するとキリマは「仕方がない」 と言わんばかりに首を縦に降った

「本当にいいのか 下手すれば死ぬぞ」

なんの脅しでもないありえる可能性を突き付ける

「わかっています しかし、ここで悪を罰することができるのであらば問題ありません」

決まりきった覚悟にイヴィンは手をアサミの頭に置いた

「任せる お前と兄貴の因縁をここで終わらせるぞ」

「ありがとうございます!!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...