Я side The Assassin

文字の大きさ
63 / 68
赤き因縁編

62.副リーダー

しおりを挟む
翌日

愛知県警本署 特捜課

ここは主に凶悪犯罪や特殊犯罪に対応する課であり、事件の危険性が著しく大きい場合、捜査一課に代わって調査、解決に勤しむ
そのため、特別な武装が許可されており殺さない程度の容疑者への暴行は良しとされている
しかし、最近の治安の安定から実務が与えられることは少なくなっており交通安全や交通整備など雑用係のような場所になりつつある

そして、ここに潜入しいち警察官として職務を全うしているЯ の刺客がいた

「ファ~~」

白シャツに黒スーツを羽織った背中の中心まである美しい黒髪を結び目を三つ編みでまとめた1つ結びの女性が欠伸をしながら部署に入室した

伊坂いさかくん おはよう」

彼女の上司が挨拶する

「おはようございまぁす」

「眠そうだね」

「そりゃそうっすよ 交通整備してたら七黒の構成員に鉢合わせる
調書に、TIKAIへの搬送、子供たちを家族の元に送るわ
昨日は珍しく1日が長く感じましたよ」

自席に着いた彼女は自身でまとめた資料を持ち上げる

「だが、久しぶりに体を動かせて良かったんじゃないか?」

「いやいや、私がナイフ1本で襲ってきた奴に運動できたと思ってるんですか?あんなの警察学校行ってれば他の人でもできましたよ」

「その通りだな 相手も特捜のエースに当たって不運だった」

「同情は容疑者じゃなくて私にしてくださいっ」

束ねた資料を机に放り投げると重ねていた書類が1枚上にずれて男の子の写真が目に止まった

その写真に上司が食いつく

「その子、引き取り手がお前になったらしいが大丈夫なのか」

「あ~ 正式には私が預かるんじゃなくて私の知り合いになりますけど、大丈夫だと思いますよ 子供好きだし、子育てにも慣れてる」

「養子施設にでも送れば良かったのに」

「いやこういう子供たちは育てられた環境がそういう雰囲気の場所だと思うんでトラウマになってると思うんすよ せっかく解放されたのに後戻りさせちゃ可哀想じゃないすか」

「それもそうだな」

会話が終了して時計を確認すると女性は勢いよく立ち上がった

「迎えの時間になる…!」

バッグを持って急いで部署の扉を開いた

「送り終わったら帰ってくるんだぞー!」

扉の閉まり際に聞こえた上司の指示に女性は「りょーかいでーす」と返し目的地に向かった


警察病院 病室

小学五年生の膨らんだ髪が耳に触れている男児が身支度を済ませてベッドの上で貧乏ゆすりをしている

看護師が引き戸を開けて中の様子を伺った

健史ケンシくん お迎えだよ」

この声と同時に入室したのは黒スーツを脱いで腕にかけた警察の女性だった

「お姉さん…」

不安にかられる少年に女性は手を頭に乗せた

「安心しろ これからは私たちがキミを守る」

その言葉でも不安を拭いきることはできなかったのかケンシの表情は変わらなかった

挨拶も束の間、2人は車に乗りこみ警察病院を後にする


数十分後、、

辺りが静けさを帯びた地域になるまでケンシは何一つ口を開かなかったが、不気味さからか不安の声を漏らす

「ど、どこに行ってるんですか、、」

「キミを守れる場所」

ほとんど皆無な情報のみで不満があったが呑み込んだ

すると前方、フロントガラスから見えた反対車線からすれ違おうとしている自動車の後部座席の人影が僅かに動いたのが見えた
直後、ウィンドウが下がり、坊主頭の巨漢の男が体をそこから乗り出した

「喰らえ!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

機関銃から銃弾が連発される

「伏せろ…!!」

隣にいたケンシに抱き飛ぶと、車体の前方が銃弾によって貫通し、何百と穴が空く

フロントの機械部に銃弾の火が着火する
収束するような音の直後、自動車は炎を上げて爆発し2人は巻き込まれる

ボォォォォン!!

攻撃をした自動車からおりてきた男3人が黒い煙を見て歓喜の声を上げた

「ひゃっふーーーー!! 流石に死んだっしょ」

「もう2、3発手榴弾ぶん投げて確実にぶっ殺す」

ピンをぬこうとした男を最後におりた機関銃の男が止める

「ガキを殺せば1、連れて帰れば5だ ガキが死んでないかを確認するのが先だ」

不貞腐れた最初に叫んだ男は「もう生きてる訳ないでしょ」と煙の中に一歩を踏み込もうとした瞬間、静かに怒る女性の声がした

反盾パリシ

「は?」

ズォォォォォオン!!

「「「………!?」」」

放たれた衝撃波は男の腹の中心を抉り抜き黒煙を晴らした

「ブホッ………」

大量の血液を吐き出して男は息絶えた

「自分の島で狙われることになるとは…」

晴らされた煙から現れた女性は左腕でケンシを抱え護り、右手首に装備された手2つ分の大きさの機械的な盾を構えていた

「テメェら千一家から雇われたギャングか?」

ただならぬ気配に怖じけた手榴弾を持った男は身を引いてしまった
女の目にそれがとまる

翔蝶チョウ

女の言葉に呼応した機械が形を変えて2丁の銃となる

バンッ!ボッ…

「え、、」

ドォォォン!!

弾丸が手榴弾を撃ち抜き男の手元で爆発させる

「うわぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」

片腕が焼き焦げ激痛にまみれる

「あれ?威力低くね」

気づけば目の前、下顎に押し付けられた銃口が死を告げる

ドンッ!ビチャッ…

頭から吹き出た血液が地面に落ちる

「クソがっ!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

危機を察知した坊主頭が機関銃を女に向けて乱発するが相手は跳び素早く回転しながら弾丸を撃つ

旋回乱砲せんかいらんぽう

弾丸がいくつか巨体の男に当たるが致命傷には至らない
しかし、機関銃が重く女の機敏な動きに対応できない

「それ重たそうだな! 雷足ライソク

機械は2丁の銃から変化し女の脚に帯のようにがしりと巻きついた

足燕返しつばめがえし

低姿勢から蹴り上げた足は男の顎を打ち上げる
浮いた頭を自らは僅かに飛んでかかと落としで蹴り下ろす

「ドハッ…!」

電撃が流れたような痺れと痛みが男を襲う

「なんの!!」

男の振った拳は女を捉えたように見えた
しかし、気づけばそこに相手の姿はなかった


烈火レッカ 陽炎かげろう

ボオッ!

「ぬぁぁあっ!」

背中に焼き切られたような痛みが走る
女は背後にいて、機械は槍に変化している

「浅かったか…やっぱオリジナルには及ばないな」

すると、止まっていた自動車が途端に発車した

「あ、1人逃げる」

女の実力に怯えた男が1人、自動車で逃亡を図っていたのだ


「こ、こんなの生きたもん勝ちだぁ、、!」

自動車の出力する最大速度を出してその場から離れる男は自身の生存を確信する
元のいた場所が気になりサイドミラーで確認すると女が男の首に脚を巻き付けている姿が見えた

「何をしてるんだ、、」


一方、坊主頭は女を振り払おうともがいていた

「離れろ!!」

しかし、強固に組まれた脚は解けず離すことはできない
それに女は自分が足場にしている男の言葉に耳を貸していない

「ライフル」

槍がライフルに変化しレンズで車内の標的を収める

「一直線上に逃げ道はない」

パァン!
バリーーン!バシュッ!ドォーン!

バックミラーを割り通った弾丸は男の後頭部を貫通し絶命させ自動車を転倒させた

「貴様ぁぁぁぁあ!!」

坊主頭はついに女を振り払い、地面に着地した相手に機関銃の引き金を引こうとした瞬間、冷たい視線を感じた

風切かざきり

振り下ろされた機械的な刀の切先は地面に向けられ、見えない斬撃は男の体は真っ二つに切り裂いた

「死体に自己紹介しておこう
私はЯ 最強、副リーダー 【全極地】イヴィン だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...