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赤き因縁編
68.red zone
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翌日、、
キンドシエスタ 3階 小学校高学年程度の部屋
「今日から友達が増えまーす」
女性従業員が机に座る数名の小学校高学年程の年齢の子供たちの前で目が星の少女を紹介していた
「イチゴちゃんでーす」
「よろしくお願いします」
と頭を下げたイチゴは内心穏やかではない
しょ、小学生の所に入れられた…もう普通なら高校生の年齢なのに…
小柄な体型で潜入するために仕方なく幼く見積もられている
イチゴは頭をあげると同時に座っている子供の手元を一瞬にして把握した
自分と同じ黒いタグが付けられているのは2人、その2人の表情は他の子供たちとは異なっている
この部屋だけで売買される子供が私を含めて3人、地下から出られたのは良しとして、昨日の二人の会話をヒイマさんに伝えなきゃ…
明日にはタグを付けられている子供が千一家へ売り出されてしまうことを早急に伝え、急ぎの対処をしなければならない
一方、そのヒイマは、1階で配達員の対応をしていた
「これが1か月分のオムツで…」
と配達員が荷物の内容をわざわざ口に出して説明しているのはヒイマが指で段ボールを不安定なリズムで叩いている音を周りから捉われないようにするためである
ヒイマの不自然の指の動き、これはモールス信号
(潜入は全員上手くいってる ベニさんの盗聴器は1回そっちに返す)
「支払いお願いします」
配達員に偽装した仲介班の仲間が手を出すとヒイマは小銭に盗聴器を混ぜて渡した
「いただきました」
班員が拳をポケットに入れ込んだ
(あと、明日は数名が里親に出される でも、私が話せる従業員は引き取り先を誰も知らなかった かなり怪しいから伝えといて)
最後にそれをかかとの音で伝えた
「失礼しましたー」
班員は頷いて、その場から去っていった
幼稚園児程度の部屋
アサミがタグの付いたゴムバングルをしている男児に寄って、目線をあわせる
「1人でなにしてーるのっ」
「…!」
驚いた男児が尻もちをついた
「あ、ごめん」
起き上がらせようとすると首を振って自分から座り直し、積み木を1つずつ積み始める
「みんなと遊んだ方が楽しいよ~」
「や、だ、」
この年頃の子供が集団を嫌うのは仲間外れにされているか、人見知りか、それとも、、
アサミがゴムバングルに手を伸ばすと男児は怒りの形相でその手を強く弾いた
「触んないで!!」
部屋全体の空気が滞る
「ごめん!嫌だったね!お姉さんを許して」
取り返しを怠らず、すぐに謝罪する
「できれば、なんでそんなに嫌なのか聞いてもいいかな?」
先程よりも静かに優しく対応すると男児は囁いた
「ぼくは、みんなとは違う、、」
その発言に疑問を持ち目を細めていると従業員から呼び出された
「アサミちゃーん ちょっとー!」
「はーい!!」
部屋の外で待つ従業員の元へ向かうと話が切り出された
「里親が決まったわ 明日にはここから出ることになるわ」
「え!あ、明日!?」
明らかに早すぎる里親発見に驚きと怪しさを覚える
「やっぱり見た目がいいとすぐ親が見つかるわね」
いやいやいや…!おかしいでしょ!私は昨日来たばっかなのに!
唐突に思い立った質問を従業員にする
「明日、ここを出るのは私だけですか!」
前のめりな勢いに従業員は戸惑いながら返す
「さっき話してたあの子も明日だけど…」
「じゃあ!私の里親ってどんな人ですか!」
「わ、わかんない!そういうのは坂野さんが管理してて!」
「坂野…」
合点がいった…!明日、少なくとも私とあの子は千一家送りになるんだ
それなら、私の里親が見つかるのが早すぎのも納得できる
この情報をヒイマさんに伝えなきゃ…!
「私!派遣さんの所に行ってきます!!」
「ちょ、ちょっと!手続きが!」
戸惑う従業員を置き去りにして走り去っていった
T.I.K.A.I愛知支部 会議室
所々に傷の手当が施されているカミラとイナミが何席もある会議室の一席で駄弁していた
「あの強盗野郎、、逃げやがって…!」
カミラがキレながら長机を足で蹴る
「そんな怒んないでくださいよ~生きてんですから~」
絆すようにイナミが返すとカミラは苛立ちが増した
「ふざけんな!アイツったらわざと生かしてんだよ!本気も出してねぇ相手にボコられてんだこちとら!」
「まあまあ…」
宥めるように手を前後させていると、カミラの席の後ろに人影が見える
「あ…」
ゴチンッ!
課長がカミラの頭に拳骨を喰らわせた
「い、痛ってぇ!!」
頭上を抑えて立ち上がる
「な!何すんすか!課長!!」
「ここは静粛にする場所だ ぺちゃくちゃと喋るんじゃない」
後ろから見ていたイヴィンがその様子を見てくすくすと笑う
それを横目で見たカミラがまたしても大きな声を上げる
「伊坂!!てめぇ何見てん…」
ゴチンッ!
二発目
「痛ぇって言ってんでしょ!!」
「うるせぇって言ってんだろ!!!」
間髪入れずして課長の怒号が部屋に響いた
空間は鎮まり自然に課長へと視線が集まった
それを感じた課長が咳払いすると部屋の前のドアが開き、ツキナギが入室した
「実にお元気で何よりですけど、公共の場ですよ」
特捜課の連中に冷たい視線を向けたとすぐに会議室の前に立ち、机を叩いた
「これより"キンドシエスタ制圧作戦" のT.I.K.A.I愛知支部、愛知県警特捜課合同による会議を開始する」
会議の始まりと同時に今回の事件の発端を話し始めるツキナギ
その内容を既に十分すぎるほど理解しているイヴィンは本来の仲間たちのことを考える
ガキ共がいつ売り飛ばされんのかが問題だな…今日中に、となると助けられなくなる
最悪、ガキ共に千一家のスパイをさせなきゃならないかもしれないな…
素人のアイツらには無理すぎる話だ…できりゃさせたくねぇな
一方、キンドシエスタではアサミが2人しかいない空間でヒイマに言伝を行っていた
「明日…か」
ヒイマがアサミから売買の情報を伝えられると焦りを覚える
「身体検査とかがあるとマズイと思って盗聴器外していたので、ヒイマさんにしか伝える方法がなくて」
「それは大丈夫なんだけど…」
焦りを飲み込んでこちらの状況も簡潔に伝える
「イチゴさんの付けてた盗聴器はもう班長のとこに届いてると思う
だから、坂野が黒確定になるのも時間の問題
あとは副リーダーがどんだけ早く動けるかにかかってて、今日からT.I.K.A.Iが本格的に話を始めたらしいから明日に間に合うかわかんない」
「そう、ですか…」
時間のなさと周囲の状況との噛み合いの悪さを歯痒く感じながらも、まだ決まっていない絶望を見るのは良くないためアサミは心を落ち着かせる
「あの!できれば今日中に私たちがを運搬する車の移動経路を教えてくれると嬉しいです」
「いいけど、なんで?」
「仲間との意思疎通のためです 経路さえわかっていればT.I.K.A.Iの動きが遅く、売買が始まってしまっても運搬自体を止めることができるかも知れません」
画期的な提案にヒイマは驚愕する
「たしかに!車の位置がわかればそこにЯの連中を配置して止めることができる!!ナイスアイディア!」
互いに頷いて決行の開始を通じ合うとアサミはそこから走り去っていった
T.I.K.A.I愛知支部 会議室
会議は容疑者の話となり坂野の写真がモニターに映しだされている
「この方が本事件の重要人物といえる 坂野です 詳細については初動を担当した特捜課の方に説明してもらいます」
ツキナギから話を振られたイヴィンが立ち上がり説明を始める
「こいつは現在キンドシエスタの組織長です
囚われていた子供たちが言うにこの人物から、脅された、誘拐されたとのことです
身元を洗ったところキンドシエスタ設立当初から所属しており、組織内では最古参と言えるでしょう また、キンドシエスタ設立前、本人の高校時代まで遡って調査しましたが以前に怪しげな情報はなく、今事件で浮上してきたのだと考えられます」
イヴィンの説明が終わったのを見て、会議に参加している1人が質疑した
「キンドシエスタは今では立派な非営利組織だが、過去の小規模な時代に何者かの襲撃を受け、組織の建物で数名の死体が見つかった という未解決事件があるがそれについては?」
14年前のマサルとアサミを人身売買の魔の手から救った際の事件、これは、当時のЯによる仕業だが、イヴィンがこの場でそれを言い放つわけもない
「その事件での唯一の生存者が坂野です ほかの従業員は全員死亡 犯人は未だ不明で捜査は時効になりつつあります 当時周囲に住んでいた民間人のお話を伺う限り、いつも違う子供を連れていて怪しく、近所でも近づかない方がいいという共通認識があったそうです
これを聞くに、恨みを買った人物が殺し屋を雇ったのだと推測できます」
「つまり、当時からキンドシエスタは児童の人身売買を行っていたと」
「予測ですが、そうではないかと」
質問に対する応答を完了するとイヴィンは書類を手にして突き出す
「これが保護した児童からの聴取を参考にして作成した資料です 私が先程まで申したことをより詳細に記載しています
これは令状を取るに相応しい証拠になると考えています」
ツキナギが手元の資料を眺めて握りしめる
「良いでしょう 今すぐにでも裁判所から令状を取りに行きましょう」
すると、カミラが課長の耳元で静かに質問した
「T.I.K.A.Iなら令状関係なく動けるっすよね なんでこんな遠回りな…」
「政府の認可があるにしても、最初から武力行使をするのは国民からの印象が悪くなるからな 警察が説得を試みたがという一言があるだけで政府に向けられる視線が変わるんだよ」
「せこいっすね 結局ぶん殴って解決するのに」
「これが政府の常套手段だ 弱音を握られている以上、それに乗るしかない」
そして、会議が終了すると特捜課の連中は即座に部屋から退出し去っていった
キンドシエスタ 組織長室
坂野が机に肘を着いて粗悪なことを考えていた
この売買が成功すれば…8年前からの汚名から抜け出せる…!必ずしも成功させ、千一家の礎にならなければ
そう意気込んでいると受話器から着信が鳴る
慌てて手に取る
「こちらキンドシエスタの組織長、坂野です」
接客の態度で自己紹介すると電話から聞こえてきたのは、匙山の声だった
『なんだ、番号見ずに出たのか』
「さ、匙山さん…!どんなご要件でしょうか」
『今、千一家から通達があってな、ガキ共を今すぐに連れてこいと』
「は…!はい!?」
『千一家は怒りを示しているんだ 連続して事件を起こしている貴様らに』
「と、言われましても…」
『お前の意見は聞いていない! これが実行出来なければ俺とお前の首は胴体とさよならを告げることになる!!
今すぐにガキ共をまとめて輸送トラックに詰めろ!』
「承知致しました!!」
ガチャンと音が鳴ると通話は終了した
そしてすぐさま、机上にある、建物全てに放送するマイクの電源を付ける
「組織長の坂野だ 明日を予定していた児童の輸送車が都合上、本日来ることになった 引き取られる子供たちを裏のガレージに集合させなさい」
この放送に潜入しているЯの人員は大きく目を見開く
まずい…!
焦りを隠せずにはいられないアサミは困惑していた
やばい…!千一家に私たちの動きが勘付かれた?明日を予定して先行動できてたはずなのに…
すると、従業員から呼び出された
「アサミちゃんとルイくん、こっち来て」
アサミの他にゴムバングルを付けた男児も呼ばれる
やっぱりあの子も売買に…?この子を抱えて逃げ出すべき?でもそんなことしたら何されるかわかんない…!
脳裏に突き刺すが如く、幼少期のマサルの姿が映った
自分がまだ物心もついていない時に聞いた言葉がよぎる
「アサミはおれがまもる」
その言葉でアサミは冷静さを取り戻す
いや…大丈夫 お兄様やЯのみんななら…私もそのためにすべきことをするのよ
ヒイマが従業員が何事かと集まって駄弁しているのに机の影に隠れて本部に連絡をつける
コールが3度鳴った後、受話器が取られる
すると気怠げな班長の声が聞こえた
『なんだ』
「あの…!そんな面倒くさそうな声してる場合じゃなくて…!」
『だからなんだ』
「運送が今日に変更されました!」
『は!?』
衝撃の発言に電話の向こうで資料が床に落ちる音がした
「うるさいです…!」
『わ、わりぃ…』
「とにかく何とかしてください」
『運搬ルートは抑えてるのか』
「アサミさんに頼まれてやってます」
『教えろ 即、アイツの兄貴を送る』
Я本部
ヒイマの伝達が終わると、カタギリは電話を切り、スマホとパソコンを同時に操作する
パソコンにはメールの文書を、スマホには片手で電話番号を打つ
電話をかけると1コールで相手が応答した
『なんすかカタギリさん』
「キンドシエスタの運搬が今日になった」
『え、えぇ!?』
「俺が今から言う所に科学班のヘリで飛べ」
『分かりました』
その通話の間にメールを打ち終わった
即座に送信すると、T.I.K.A.I愛知支部にいるイヴィンの元に届いた
T.I.K.A.I愛知支部 フロント受付前
通知音に気づいたイヴィンがスマホを開くとその内容に驚愕した
「…!」
今日に変更…!?危険を察知されたか…
ともに帰ろうとしていた課長たちが振り返って首を傾げた
「課長たちは先に帰っといてください! 用事を思い出しました!」
「ちょ、まっ!」
課長が声を出し終わる前にイヴィンは仲間たちから遠く離れてしまった
今すぐキンドシエスタに突っ走れ…!
外に出た瞬間、強い意気込みで地面を踏み飛ばし、外壁の上に着地しほかの建物の屋上に飛び移る
数十分後、、
キンドシエスタ
輸送される子供たちがガレージに集まっていた
子供たちの目は暗く、頭は地面に向いていた
アサミが少し動いてイチゴの横に来た
そして小声で話し始める
「なにかあった?」
「坂野は完全に黒 それともう1人、匙山っていう男の人が坂野に命令してた」
「え、誰 ていうか坂野が直接、千一家と繋がってたわけじゃないの?」
「多分、その間に匙山って人がいるんだと思う」
「なるほど」
すると、ヒイマが2人の前に現れる
耳を貸すように手招きすると2人は耳を傾ける
「カタギリさんに運搬ルートは伝えた どこかで止められると思うからその時は子供たちを連れて逃げて」
「「わかりました」」
「あと、私は戦闘の足手まといになるから乗らない あとは頼んだよ」
伝達が終わって2人からヒイマが離れるとガレージが開き、トラックが後進し停車した
トラックから1人の50代男性が降りてきた
児童たちの前に立つと礼をする
「お前らを運送する匙山だ わかってると思うが、これからお前らが行くのは千一家だ 車内で騒げば、その命はないと思え」
明らかな脅しに児童たちは怯えながら身を震わせる
イチゴとアサミが匙山の姿を確かに目にすると、その正体がわかった
厚生労働省に属する政治家の1人である
政治家に賄賂を使ってツテを持つ千一家ならなにもおかしなことではない
児童たちは連衡されるが如く、トラックの荷台に入っていく
途中でその列が止まると先頭の児童に拳銃が向けられた
「早く入れ」
児童は怯えて声も出ずトラックの中に乗り込んでいった
アサミとイチゴもそれに逆らうことをせず徒然になる
そして、全員が乗り込むと荷台は閉じられ、ガレージからトラックが発車した
それと同じ時間にЯの仲間たちは、屋根を走り、ヘリで移動し、同じ目的のために行動を急いでいた
この日、道路上で起きる戦闘の結果は、千一家とЯ いや、七黒と犯罪組織全体に大きな影響を及ぼすことになる
危機的状況とアカカミ兄妹の因縁から名付けられたその戦場はのちに"red zone"と呼ばれることになる
キンドシエスタ 3階 小学校高学年程度の部屋
「今日から友達が増えまーす」
女性従業員が机に座る数名の小学校高学年程の年齢の子供たちの前で目が星の少女を紹介していた
「イチゴちゃんでーす」
「よろしくお願いします」
と頭を下げたイチゴは内心穏やかではない
しょ、小学生の所に入れられた…もう普通なら高校生の年齢なのに…
小柄な体型で潜入するために仕方なく幼く見積もられている
イチゴは頭をあげると同時に座っている子供の手元を一瞬にして把握した
自分と同じ黒いタグが付けられているのは2人、その2人の表情は他の子供たちとは異なっている
この部屋だけで売買される子供が私を含めて3人、地下から出られたのは良しとして、昨日の二人の会話をヒイマさんに伝えなきゃ…
明日にはタグを付けられている子供が千一家へ売り出されてしまうことを早急に伝え、急ぎの対処をしなければならない
一方、そのヒイマは、1階で配達員の対応をしていた
「これが1か月分のオムツで…」
と配達員が荷物の内容をわざわざ口に出して説明しているのはヒイマが指で段ボールを不安定なリズムで叩いている音を周りから捉われないようにするためである
ヒイマの不自然の指の動き、これはモールス信号
(潜入は全員上手くいってる ベニさんの盗聴器は1回そっちに返す)
「支払いお願いします」
配達員に偽装した仲介班の仲間が手を出すとヒイマは小銭に盗聴器を混ぜて渡した
「いただきました」
班員が拳をポケットに入れ込んだ
(あと、明日は数名が里親に出される でも、私が話せる従業員は引き取り先を誰も知らなかった かなり怪しいから伝えといて)
最後にそれをかかとの音で伝えた
「失礼しましたー」
班員は頷いて、その場から去っていった
幼稚園児程度の部屋
アサミがタグの付いたゴムバングルをしている男児に寄って、目線をあわせる
「1人でなにしてーるのっ」
「…!」
驚いた男児が尻もちをついた
「あ、ごめん」
起き上がらせようとすると首を振って自分から座り直し、積み木を1つずつ積み始める
「みんなと遊んだ方が楽しいよ~」
「や、だ、」
この年頃の子供が集団を嫌うのは仲間外れにされているか、人見知りか、それとも、、
アサミがゴムバングルに手を伸ばすと男児は怒りの形相でその手を強く弾いた
「触んないで!!」
部屋全体の空気が滞る
「ごめん!嫌だったね!お姉さんを許して」
取り返しを怠らず、すぐに謝罪する
「できれば、なんでそんなに嫌なのか聞いてもいいかな?」
先程よりも静かに優しく対応すると男児は囁いた
「ぼくは、みんなとは違う、、」
その発言に疑問を持ち目を細めていると従業員から呼び出された
「アサミちゃーん ちょっとー!」
「はーい!!」
部屋の外で待つ従業員の元へ向かうと話が切り出された
「里親が決まったわ 明日にはここから出ることになるわ」
「え!あ、明日!?」
明らかに早すぎる里親発見に驚きと怪しさを覚える
「やっぱり見た目がいいとすぐ親が見つかるわね」
いやいやいや…!おかしいでしょ!私は昨日来たばっかなのに!
唐突に思い立った質問を従業員にする
「明日、ここを出るのは私だけですか!」
前のめりな勢いに従業員は戸惑いながら返す
「さっき話してたあの子も明日だけど…」
「じゃあ!私の里親ってどんな人ですか!」
「わ、わかんない!そういうのは坂野さんが管理してて!」
「坂野…」
合点がいった…!明日、少なくとも私とあの子は千一家送りになるんだ
それなら、私の里親が見つかるのが早すぎのも納得できる
この情報をヒイマさんに伝えなきゃ…!
「私!派遣さんの所に行ってきます!!」
「ちょ、ちょっと!手続きが!」
戸惑う従業員を置き去りにして走り去っていった
T.I.K.A.I愛知支部 会議室
所々に傷の手当が施されているカミラとイナミが何席もある会議室の一席で駄弁していた
「あの強盗野郎、、逃げやがって…!」
カミラがキレながら長机を足で蹴る
「そんな怒んないでくださいよ~生きてんですから~」
絆すようにイナミが返すとカミラは苛立ちが増した
「ふざけんな!アイツったらわざと生かしてんだよ!本気も出してねぇ相手にボコられてんだこちとら!」
「まあまあ…」
宥めるように手を前後させていると、カミラの席の後ろに人影が見える
「あ…」
ゴチンッ!
課長がカミラの頭に拳骨を喰らわせた
「い、痛ってぇ!!」
頭上を抑えて立ち上がる
「な!何すんすか!課長!!」
「ここは静粛にする場所だ ぺちゃくちゃと喋るんじゃない」
後ろから見ていたイヴィンがその様子を見てくすくすと笑う
それを横目で見たカミラがまたしても大きな声を上げる
「伊坂!!てめぇ何見てん…」
ゴチンッ!
二発目
「痛ぇって言ってんでしょ!!」
「うるせぇって言ってんだろ!!!」
間髪入れずして課長の怒号が部屋に響いた
空間は鎮まり自然に課長へと視線が集まった
それを感じた課長が咳払いすると部屋の前のドアが開き、ツキナギが入室した
「実にお元気で何よりですけど、公共の場ですよ」
特捜課の連中に冷たい視線を向けたとすぐに会議室の前に立ち、机を叩いた
「これより"キンドシエスタ制圧作戦" のT.I.K.A.I愛知支部、愛知県警特捜課合同による会議を開始する」
会議の始まりと同時に今回の事件の発端を話し始めるツキナギ
その内容を既に十分すぎるほど理解しているイヴィンは本来の仲間たちのことを考える
ガキ共がいつ売り飛ばされんのかが問題だな…今日中に、となると助けられなくなる
最悪、ガキ共に千一家のスパイをさせなきゃならないかもしれないな…
素人のアイツらには無理すぎる話だ…できりゃさせたくねぇな
一方、キンドシエスタではアサミが2人しかいない空間でヒイマに言伝を行っていた
「明日…か」
ヒイマがアサミから売買の情報を伝えられると焦りを覚える
「身体検査とかがあるとマズイと思って盗聴器外していたので、ヒイマさんにしか伝える方法がなくて」
「それは大丈夫なんだけど…」
焦りを飲み込んでこちらの状況も簡潔に伝える
「イチゴさんの付けてた盗聴器はもう班長のとこに届いてると思う
だから、坂野が黒確定になるのも時間の問題
あとは副リーダーがどんだけ早く動けるかにかかってて、今日からT.I.K.A.Iが本格的に話を始めたらしいから明日に間に合うかわかんない」
「そう、ですか…」
時間のなさと周囲の状況との噛み合いの悪さを歯痒く感じながらも、まだ決まっていない絶望を見るのは良くないためアサミは心を落ち着かせる
「あの!できれば今日中に私たちがを運搬する車の移動経路を教えてくれると嬉しいです」
「いいけど、なんで?」
「仲間との意思疎通のためです 経路さえわかっていればT.I.K.A.Iの動きが遅く、売買が始まってしまっても運搬自体を止めることができるかも知れません」
画期的な提案にヒイマは驚愕する
「たしかに!車の位置がわかればそこにЯの連中を配置して止めることができる!!ナイスアイディア!」
互いに頷いて決行の開始を通じ合うとアサミはそこから走り去っていった
T.I.K.A.I愛知支部 会議室
会議は容疑者の話となり坂野の写真がモニターに映しだされている
「この方が本事件の重要人物といえる 坂野です 詳細については初動を担当した特捜課の方に説明してもらいます」
ツキナギから話を振られたイヴィンが立ち上がり説明を始める
「こいつは現在キンドシエスタの組織長です
囚われていた子供たちが言うにこの人物から、脅された、誘拐されたとのことです
身元を洗ったところキンドシエスタ設立当初から所属しており、組織内では最古参と言えるでしょう また、キンドシエスタ設立前、本人の高校時代まで遡って調査しましたが以前に怪しげな情報はなく、今事件で浮上してきたのだと考えられます」
イヴィンの説明が終わったのを見て、会議に参加している1人が質疑した
「キンドシエスタは今では立派な非営利組織だが、過去の小規模な時代に何者かの襲撃を受け、組織の建物で数名の死体が見つかった という未解決事件があるがそれについては?」
14年前のマサルとアサミを人身売買の魔の手から救った際の事件、これは、当時のЯによる仕業だが、イヴィンがこの場でそれを言い放つわけもない
「その事件での唯一の生存者が坂野です ほかの従業員は全員死亡 犯人は未だ不明で捜査は時効になりつつあります 当時周囲に住んでいた民間人のお話を伺う限り、いつも違う子供を連れていて怪しく、近所でも近づかない方がいいという共通認識があったそうです
これを聞くに、恨みを買った人物が殺し屋を雇ったのだと推測できます」
「つまり、当時からキンドシエスタは児童の人身売買を行っていたと」
「予測ですが、そうではないかと」
質問に対する応答を完了するとイヴィンは書類を手にして突き出す
「これが保護した児童からの聴取を参考にして作成した資料です 私が先程まで申したことをより詳細に記載しています
これは令状を取るに相応しい証拠になると考えています」
ツキナギが手元の資料を眺めて握りしめる
「良いでしょう 今すぐにでも裁判所から令状を取りに行きましょう」
すると、カミラが課長の耳元で静かに質問した
「T.I.K.A.Iなら令状関係なく動けるっすよね なんでこんな遠回りな…」
「政府の認可があるにしても、最初から武力行使をするのは国民からの印象が悪くなるからな 警察が説得を試みたがという一言があるだけで政府に向けられる視線が変わるんだよ」
「せこいっすね 結局ぶん殴って解決するのに」
「これが政府の常套手段だ 弱音を握られている以上、それに乗るしかない」
そして、会議が終了すると特捜課の連中は即座に部屋から退出し去っていった
キンドシエスタ 組織長室
坂野が机に肘を着いて粗悪なことを考えていた
この売買が成功すれば…8年前からの汚名から抜け出せる…!必ずしも成功させ、千一家の礎にならなければ
そう意気込んでいると受話器から着信が鳴る
慌てて手に取る
「こちらキンドシエスタの組織長、坂野です」
接客の態度で自己紹介すると電話から聞こえてきたのは、匙山の声だった
『なんだ、番号見ずに出たのか』
「さ、匙山さん…!どんなご要件でしょうか」
『今、千一家から通達があってな、ガキ共を今すぐに連れてこいと』
「は…!はい!?」
『千一家は怒りを示しているんだ 連続して事件を起こしている貴様らに』
「と、言われましても…」
『お前の意見は聞いていない! これが実行出来なければ俺とお前の首は胴体とさよならを告げることになる!!
今すぐにガキ共をまとめて輸送トラックに詰めろ!』
「承知致しました!!」
ガチャンと音が鳴ると通話は終了した
そしてすぐさま、机上にある、建物全てに放送するマイクの電源を付ける
「組織長の坂野だ 明日を予定していた児童の輸送車が都合上、本日来ることになった 引き取られる子供たちを裏のガレージに集合させなさい」
この放送に潜入しているЯの人員は大きく目を見開く
まずい…!
焦りを隠せずにはいられないアサミは困惑していた
やばい…!千一家に私たちの動きが勘付かれた?明日を予定して先行動できてたはずなのに…
すると、従業員から呼び出された
「アサミちゃんとルイくん、こっち来て」
アサミの他にゴムバングルを付けた男児も呼ばれる
やっぱりあの子も売買に…?この子を抱えて逃げ出すべき?でもそんなことしたら何されるかわかんない…!
脳裏に突き刺すが如く、幼少期のマサルの姿が映った
自分がまだ物心もついていない時に聞いた言葉がよぎる
「アサミはおれがまもる」
その言葉でアサミは冷静さを取り戻す
いや…大丈夫 お兄様やЯのみんななら…私もそのためにすべきことをするのよ
ヒイマが従業員が何事かと集まって駄弁しているのに机の影に隠れて本部に連絡をつける
コールが3度鳴った後、受話器が取られる
すると気怠げな班長の声が聞こえた
『なんだ』
「あの…!そんな面倒くさそうな声してる場合じゃなくて…!」
『だからなんだ』
「運送が今日に変更されました!」
『は!?』
衝撃の発言に電話の向こうで資料が床に落ちる音がした
「うるさいです…!」
『わ、わりぃ…』
「とにかく何とかしてください」
『運搬ルートは抑えてるのか』
「アサミさんに頼まれてやってます」
『教えろ 即、アイツの兄貴を送る』
Я本部
ヒイマの伝達が終わると、カタギリは電話を切り、スマホとパソコンを同時に操作する
パソコンにはメールの文書を、スマホには片手で電話番号を打つ
電話をかけると1コールで相手が応答した
『なんすかカタギリさん』
「キンドシエスタの運搬が今日になった」
『え、えぇ!?』
「俺が今から言う所に科学班のヘリで飛べ」
『分かりました』
その通話の間にメールを打ち終わった
即座に送信すると、T.I.K.A.I愛知支部にいるイヴィンの元に届いた
T.I.K.A.I愛知支部 フロント受付前
通知音に気づいたイヴィンがスマホを開くとその内容に驚愕した
「…!」
今日に変更…!?危険を察知されたか…
ともに帰ろうとしていた課長たちが振り返って首を傾げた
「課長たちは先に帰っといてください! 用事を思い出しました!」
「ちょ、まっ!」
課長が声を出し終わる前にイヴィンは仲間たちから遠く離れてしまった
今すぐキンドシエスタに突っ走れ…!
外に出た瞬間、強い意気込みで地面を踏み飛ばし、外壁の上に着地しほかの建物の屋上に飛び移る
数十分後、、
キンドシエスタ
輸送される子供たちがガレージに集まっていた
子供たちの目は暗く、頭は地面に向いていた
アサミが少し動いてイチゴの横に来た
そして小声で話し始める
「なにかあった?」
「坂野は完全に黒 それともう1人、匙山っていう男の人が坂野に命令してた」
「え、誰 ていうか坂野が直接、千一家と繋がってたわけじゃないの?」
「多分、その間に匙山って人がいるんだと思う」
「なるほど」
すると、ヒイマが2人の前に現れる
耳を貸すように手招きすると2人は耳を傾ける
「カタギリさんに運搬ルートは伝えた どこかで止められると思うからその時は子供たちを連れて逃げて」
「「わかりました」」
「あと、私は戦闘の足手まといになるから乗らない あとは頼んだよ」
伝達が終わって2人からヒイマが離れるとガレージが開き、トラックが後進し停車した
トラックから1人の50代男性が降りてきた
児童たちの前に立つと礼をする
「お前らを運送する匙山だ わかってると思うが、これからお前らが行くのは千一家だ 車内で騒げば、その命はないと思え」
明らかな脅しに児童たちは怯えながら身を震わせる
イチゴとアサミが匙山の姿を確かに目にすると、その正体がわかった
厚生労働省に属する政治家の1人である
政治家に賄賂を使ってツテを持つ千一家ならなにもおかしなことではない
児童たちは連衡されるが如く、トラックの荷台に入っていく
途中でその列が止まると先頭の児童に拳銃が向けられた
「早く入れ」
児童は怯えて声も出ずトラックの中に乗り込んでいった
アサミとイチゴもそれに逆らうことをせず徒然になる
そして、全員が乗り込むと荷台は閉じられ、ガレージからトラックが発車した
それと同じ時間にЯの仲間たちは、屋根を走り、ヘリで移動し、同じ目的のために行動を急いでいた
この日、道路上で起きる戦闘の結果は、千一家とЯ いや、七黒と犯罪組織全体に大きな影響を及ぼすことになる
危機的状況とアカカミ兄妹の因縁から名付けられたその戦場はのちに"red zone"と呼ばれることになる
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