Я side The Assassin

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4.動体視力

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6月16日 約15:00

レナの放つ拳がセツナに迫る

「……!」

それをまたもや寸前でかわす

や、やばい……!
同い年とは思えないくらい強い…!
かわすので精一杯だし…!殴れったってどうやればいいかわかんない!!

思考が戸惑っている間もレナは拳を撃つことをやめることはない

「ちょっと乱暴にいこう!!」

反撃をしてこない相手をしていると攻撃している側のボルテージは上がり続ける
それが校長に達したレナが動きを変える

一旦、距離をとり、駆け出す

なんかくる…!

セツナの数歩前で高く跳んで体重を右にかけ、空中で左脚の半回し蹴りを繰り出す
セツナはそれを間一髪、頭を右腕で守るが衝撃で体が揺らぐ
その隙を逃すことなくレナが着地すると同時にセツナの顎に拳を打ち上げた

「ブハッ…!」


観戦しているツーブロックの男子が口を開く

「レナの得意が決まった」

「力の籠った強い一撃で仕留めるんじゃなくてそれで隙を作ってその隙をつくやつだな」

「相変わらず普段とは違って試合の時は頭フル回転だな」


セツナの体は後ろに倒れようとしていた

やっぱ無理だぁ
経験の差がありすぎ…

このまま、倒れてしまおう 
そう思って身を任せていたが、本人の意志がそれを許さなかった

ダンッ!!

柔らかい床から鳴る音ではなかった
それほどまで強く、セツナは足を床に踏みつけたのだ

「強く、、なるんだ、、」

その一言にリンドウは口角を上げた


「やるねぇ セツナちゃん!!」

レナのボルテージも最高潮に達し、何とか踏みとどまったセツナに拳を放つ
しかし、それを今までよりも速くかわし、背後に回ったセツナに驚く

「わお!!」

セツナは右脚を大きく回した
まだ、体制の整っていないレナの右腰に右脚が食い込む

しかし、それで揺らぐほどレナも甘くはない
振り返りざまに拳を伸ばす
それも頭の横でかわし拳を顎に打ち返した

「なっ…!」


観戦している子供たちがザワつく

「おいおい マジか」

「相手はレナだぞ…」

ツーブロックの男子がその疑問に回答する

「動体視力だ」

「え?」

「セツナとかいう奴は試合中、まともに食らった攻撃は2つしかない」

序盤に受けた腹への一撃とレナの得意から放たれた拳のみ

「特にレナの拳の打つ速さは俺らの中で1番秀でている だが、セツナとかいう奴はそれを何度もかわしていた」

「だから動体視力…!」

「少しの動作で相手の動きに勘づき、回避行動をとれる」

セツナは逃亡生活の中で動体視力が自然に鍛えられていた
自分を捕まえようとする大人の手を滑らかにかわすために
地面を素早く逃げ回るネズミを捕まえるために
そうやって生き抜くために手に入れた能力が今ここでセツナにも可視化される


分かる…!相手が何をしようとしているのか…!動ける…!相手のちょっとした隙を着けば!勝てる!!

拳や蹴りの一個一個に威力はあんまりないのに数でそれを補われ始めた…!
なんで拳が当たらないのかわかんなかった…!でもそれは回避に集中しているからだと思ってた…!でも!でも違った…!この子は…!!

自分の小さな隙を逃されることはなく腹に蹴りを食らう

「見えてるよね!私のパンチ!!」

「見えてるよ!」

近距離での取っ組み合いをしながら会話する

「同い年の女子にドキドキさせられるのは初めてだよ!!」

「それは!こっちもいっしょ!!」

言葉と同時に放たれた右拳をレナはかわせず、左頬に強く打ち付けられる

相手から距離をとり睨み合う


高みの見物をしているリンドウとセツナが心配なキリマが試合を見ながら話す

「セツナちゃんすごい」

「だから言ったんですよ いい試合が観れるって」

キリマが心配が和らいでほっとするとリンドウは付け足した

「でも、まだキヤマには勝てないかな」


試合に没頭しているレナが細く深呼吸をした

「セツナちゃん」

「…?」

「本気出すね」

え、本気じゃなかったんですか…

腰を深く下ろし床に手を着ける

な、なんかくる…

嫌な予感を察して、また相手の微動を読み取ろうと目を凝らす

レナは膝をバネにしてウサギのように跳躍すると先程の空中半回し蹴りをまたしてきた
しかし、先程と違うのが、、

「速い……!」

数段上の速さから打ち込まれる脚を回避はできず、腕で頭を守った
となるとやはり体が揺れる
レナの得意が来る

着地した瞬間に右拳を顎に打ち付けた

「また…!」

同じものを食らったのだが今度は地面から足が浮いてしまう程の威力でこのまま後ろに倒れる
しかし、倒れさせてはくれなかった

足が浮いて体制の整えようのないセツナの無防備な腹に右足の裏で蹴りつけるようにするミドルキックをキメる

「ボハッ!」

セツナの体が勢いのままに吹き飛んで床に落ち転がった

室内の空気が凍てついた
この中の誰1人としてレナのあの攻撃を見たことはなく、唖然としている

「そこまで!」

リンドウが試合の終わりを命ずると一瞬、気を失っていたセツナが立ち上がってレナと向かい合う

「「ありがとうございました」」

レナとセツナがお互いに握手するとレナが笑った

「久しぶりに楽しかった!これからいっしょにがんばろうね!!」

「う、うん」

部屋の中央から2人が掃けるとリンドウが解散の指示を出し、本日の訓練が終わった
部屋から出て階段に向かっている途中でツーブロックの男子に話しかけられる

「おい」

「え、私?」

セツナが自分を指さして首を傾げる

「セツナとか言ったよな」

「う、うん」

「俺は広沼 剛ヒロヌマ ゴウだ」

太く低い声をしている

「次の実践訓練の時は俺とやろう」

「わ、わかった」

それだけを言い残して廊下を進んでいった


2階の食事処に入ると既に訓練生全員分の料理が5つの長机にズラリと並べられていた

レナから誘われたセツナは隣に座って料理を前にした
オムライスとコンソメスープがセツナの食欲を唆る

「セツナちゃん ヨダレ出てるよ」

「あ、」

何事もなかったかのように腕でヨダレを擦って拭き取る

「あはは~ セツナちゃんって食べ物に目がないんだね」

「いや、普通に久しぶりにまともなもの食べれるなって」

レナはなんのことか分からなかったが、セツナにもそれなりの理由があってここに来たことは分かった


セツナとレナがオムライスを頬張っているとリンドウが着ていたものと同じ服で前のジャンパーを開けて胸に包帯を巻いてへそを出したスタイルのいい女性が来た

「よく食うね~子供は」

声を聞いて顔をあげるとレナが反応した

鬼堂 キドウさん!」

目つきはつり上がっており赤紫色の腰まである長髪をポニーテールにしている

「隣の子は初めて見んね」

「あー!セツナちゃんだよ!今日から訓練参加なの!」

セツナの紹介を端的に済ませて今度はこちらに女性を紹介する

「親衛班 副班長 鬼堂 美香キドウ ミカさんだよ」

奇抜な服装が強さを際立たせる

「よろしくな~ セツナ」

副班長…って言われるくらいなんだから、、強いんだろうなぁ

なんて脳筋のような思考をしているとレナが疑問をキドウに投げた

「今日、キリマさんはどこに?」

「あー 班長は班長会議だ」

「班長会議?なんのための?」

「それを訓練生に教えるわけにゃいかねーな」

「えー」

不満そうに頬を膨らませるレナを見て笑う

ま、私らも教えられてねんだけどな…


一方、その班長会議が1階の会議室で行われていた

班長と思われる人物たちが長机の席についている

キリマが笑顔で会議を開始する

「で、今回の要件はなにかなー ラーイちゃん」

髪のはねが外に向いた金色の短髪だが、付け根の色は少し抜けて茶色が見える

「キリマさん そろそろ名前で呼んでくれませんかね」

派遣班 班長 柴木 雷蔵シバキ ライゾウ

「だって私はライちゃんの小学生時代を知ってるんだもん!」

「はぁ まぁいいっすけど… 今回、集まってもらったのは北海道支部からの応援要請だ」

派遣班

Я リサイドの組織規模は広大で、関東、関西、福岡を除いた日本全国に支部を配置している
その支部に務めるのが派遣班の班員だ
なにかあれば名古屋の本部に連絡をつけ、要求かあれば依頼を出す


「シバキ その要請はもちろん戦闘員だな」

セツナをここまで連れてくる際に刀を所持していた和服で黒髪の男性が確認をする

特攻班 班長 村上 信二ムラカミ シンジ

「その通りだ 街を襲うやからがいるんだと」

「たが、最近は他の七黒シッコクの動きも頻繁だ そう何人もホイホイと送れない そこで…」

視線がタバコを吸う最も年齢の高そうな男性に集まる

「傘下の組織に頼み込めって言いたいわけだろ」

仲介班 班長 片桐 哲人カタギリ ノリト

「いーぜ百数人は引っ張ってこれる」

1本のタバコを吸い終わり灰柄を灰皿に落とすと確認をとる

「それで人数は足りるか」

ムラカミがその質問に付け足しをするように答える

「特攻班からも何人か精鋭を預ける」

「派遣班への配慮 本当に感謝する」

シバキが頭を下ろして上げる

「あとは武器の発注の問題なんだが、、」

全員がため息をついた

「あの丸メガネはまた遅刻か」

カタギリが呆れたようにいうとキリマは少し楽しそうに反応する

「なははっ いつもどーり」

その瞬間、会議室の扉が勢いよく開いた

「あ、来た」

そこには髪の毛がボサボサで丸メガネをかけた天然そうな女性が白衣を着て立っていた

「チィちゃん またなんか爆発したでしょ」

キリマのツッコミで髪型の異変に気づいたのか両手で頭をワシャワシャする
すると、すぐに茶髪のおかっぱになった

「武器の用意はできてるんでそこら辺は心配なくぅ」

全員が思った

話、、聞こえてたんだ、、

「それじゃあ特攻班と仲介班は頼んだ」

シバキのその言葉で会議は終わった


そして、その北海道支部は、、

小さな建物の中を薙刀を担いで歩き回る長身の男がいた

口元は髭で完全に口が隠れており、茶色の動物の皮を服にしたようなものを着用し、薙刀からは血が滴っていた

背中に左右反転したRが描かれている服をきた人々が床に倒れ込んでおり、その人たちを男は踏み台にするがピクリとも動かない

踏み台にしている人の頭にその薙刀を突き刺すと男は極悪な笑顔を見せる

七黒シッコクもこんなもんか!」

「ハッハッハッ!」と高笑いしながらその建物から出ていった



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