Я side The Assassin

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雪王編

7.雪王

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6月20日 午前 8:00

梅雨時の北海道の気温は低くはなく、25度という記録も出る
北海道にしては猛暑だが、本州から訪れたものからすれば涼しいものだ

北海道支部

ここに特攻班の副班長 町下  寛太マチシタ カンタ、派遣班の副班長 赤上  勝アカカミ マサルを含めた約60名が応援に駆けつけた

マチシタは頭の縁がわにある髪の毛を剃り落として残った髪を後頭部で団子にしてまとめており、アカカミは赤髪の短髪を外側にはねさせ、左目に眼帯をしている
2人は同じ背中に左右反転されたRが刻まれたジャージを羽織っている

「なにがあった、、」

アカカミの反応もそのはずで支部は血があちらこちらに飛び散っており、何人かの仲間の死体が血を流して転がっている

マチシタは仲間の死体につけられた大きな切りつけ痕を見ながら答える

「直近3日の間、連絡がこないわけだね~」

この傷、、刀か、、

肩から背中にかけてつけられた大きな切り傷から凶器を推測する

「最悪、暴れてるヤツらにここがバレたんだろ」

「だとしても、それなりに強い派遣班員を配置していたはずなんだがな、」

「それよりも強くて人を殺すことに躊躇がないヤツがいるってことだろ」

少しの沈黙のあとアカカミが部下たちに指示する

「死体を回収しろ 親衛班のトラックに乗せるんだ」

北海道支部にいた派遣班員14名の死体を回収し、本部に連れ帰る親衛班の出した人員移動用のトラックに乗せる
死体だからといって放置は絶対にしないのもЯ リサイドの良いところだと感じらせる

死体の回収に20人を割り振って他を現地探索および調査にあてる

しかし、マチシタはこう言った

「特攻班は戦闘準備するから~ 派遣班と土俵坂どひょうざかの人たちがんばって~」

土俵坂とは岩手県にある小規模の組織でЯ リサイドの配下組織で名前の通り、己の怪力と正面から勝負で闘う
土俵坂のリーダーは力士ほどの怪力を持っているが、今回派遣されているのは仲介班からの要請で10人程度であるため、リーダーの参加はない
しかし、正面勝負の面からいえば、他のもの達も決して弱くはない
また、土俵坂以外の様々な配下組織からも合計100人程度の人数に協力してもらっている

「はいはい 相変わらずマチシタはめんどくさがり屋だな」

それを言い残してアカカミは調査を始める
特服を着た格好で動くのは怪しまれやすいと思い、変装用の白シャツに紺色の羽織を羽織って現地に出る

さすがの北海道、日本で唯一気候帯を冷帯とされている都道府県
吹いた風にじめったさや熱さはなく、ただ単に涼しい
その風がアカカミの羽織をたなびかせ、紺色と赤髪の対比を鮮やかにする

すると、ちょうど学校に向かっているのか制服を着た女子高生が2人いたので接近する

接近されることに気づいた2人は目を合わせて小さな声で言う

「イケメンだ」

アカカミにそれは聞こえていたが何食わぬ顔で微笑んで話しかける

「キミたち 最近ここら辺で頻繁に起きてる事件とかないかな」
 
「事件……?」

2人合わせて首を傾げたので鎌をかけるように質問を叩き込んでみる

「人が死んだ とか」

一瞬静まり返ったが、女子高生の1人は何も戸惑うことなく答えた

「そんなこと聞いたことありません」

「そう……なんだ、、ありがとう」

そう言って2人に背を向けて離れていくアカカミは疑問を浮かべていた

支部の報告からすれば、街が荒らされているはずなんだけどな…死人は出てないのか…

納得のいかない解釈をしたのも束の間、女子高生から十分に離れたアカカミの耳に静かに聞こえたのは女子高生の小声だ

氷蘭ヒョウラン様…おそらくですが、Я リサイドと思われる人物が…」

その声で振り向くと女子高生2人は何かを隠すように背中を向けて腰を曲げている

「ねぇキミたち…」

「……!」

聞こえるはずのない距離で小さな声で話していたのにも関わらずアカカミから声をかけられたことに驚き、体が固まる

「ヒョウランって誰」

「お、教えない…!」

と振り返って手を上げるが表情は焦っているように見える

「じゃあ力づくだ」

女子高生に飛びかかり、体を地面に押さえつけ、スマホを持っている手をはたいてスマホを転がす

「ちょっと!!」

倒されていないもう1人の女子高生が不慣れな手つきで何かを向けてきた
それが頭に向けられていると分かってアカカミは地面に女子高生を押さえた状態で動きを止める

「そんな物 人に向けるもんじゃないよ」

自分に向けられた拳銃の先端が震えているのを見ずとも感じとり、優しくも少し憐れむ言葉をかける

「う、うるさい!!撃つぞ!!」

明らかに声が震えている
望んで行っているものではないことが分かる

「じゃあいいよ 撃って」

そう言いながら押し倒した女子高生からも手を離し、銃口を自分の額に当てる

「ヒッ……!」

「それでキミたちが助かって解放されるなら俺は死んでもいい」

【子供絶対防御】の組織信念を全うするアカカミ
自身よりも子供の安全を最優先する
それで自分が命絶えたとしても未来ある子供を守る

女子高生はその信念を知るはずもない
だが、女子高生はそのアカカミの真剣さと優しさから涙が溢れてくる
拳銃を握る力も失って拳銃を手から離してしまった

「う、うぅ……」

泣き崩れて膝を地面につける少女、地面に倒している少女も仰向けで涙を流し始めた
倒した少女を優しく起き上がらせて2人にハンカチを手渡す

そこに転がったスマホからかなりゆっくりな拍手がすると太い大人の男の声も聞こえた

『素晴らしい さすがだЯ リサイド ガキの過保護を得意にしてるだけある』

アカカミは少々の怒りを含んだ顔で転がったスマホを手に取る

「ヒョウランってのはお前か…」

静けさの中に怒りがこもった声だ

『その通り!!俺が白縄 氷蘭シロナワ ヒョウランだ よろしくなЯ リサイドの男よ』

「よろしくするつもりはない 支部を襲ったのもお前だな」

『そうだ!提案するが、力を分散するならお仲間の力は十分につけるべきだぞ!!俺の遊び相手にもならなかったからなは』

仲間のことを無様と表現したのに付け加え、大笑いするシロナワにアカカミは明らかに怒りを示す表情と声を隠しきれなかった

「何が目的か知らんが、子供を恐怖で支配する奴に慈悲なんてやらねぇ 会ったらぶっ殺してやる」

『ひゃー こわいこわい』

思ってもない言葉を棒読みに吐く

『にしても目的を知らないとは意外だったな しゃーない教えてやるよ』

何故か前向きに話をしてくる相手
こういう時は突き返すよりも黙って言葉を待つ

七黒シッコクの一角をもらう』

…!

『一番身近だったのがお前らでな 支部を潰せば本部が出張って来ると思ってたんだが予想通りだな』

「俺たちを潰して本格的に本州進出をしようとしているわけだ」

『そう!!だから俺、いや俺たちは応援に来たお前らも殺す』

突っかかった言葉があった

「俺たち?」

アカカミの疑問にシロナワは機嫌よく応える

『俺はお前らを落とすために軍団を作ったんだ 雪王スノーズキング それがお前らを潰す俺たちの名前だ』

「そうか…なら互いに手加減無用だな」

Я リサイドは自分たちの信念に反する上に仲間を殺された無念を晴らすため、雪王スノーズキング七黒シッコクの一角を手にするため、ここ冷帯の地で衝突が起こる

『日は明日の午後0時!俺たちは街で騒動を起こす!それが嫌なら止めに来い!!』

その豪語で電話は切断される

スマホを泣き止んで落ち着いた女子高生の手元に返す

「キミたちは俺に着いてきて不安だろ?」

「あ、ええと、、」

「ん?」

「いいんですか、、殺そうとしたのに、、」

「問題ない 俺たちは子供に殺されても何も言わないし、悔いもない」

「でも、、」

「いい キミたちは何も悪くない 明らかにシロナワに脅されて起こしたことだと分かってる だからキミたちが俺に遠慮する必要はない」

「分かりました、、ありがとうございます」

2人が頭を下げた

そうだ…子供の弱音に漬け込んだ雪王スノーズキングとかいう奴らが全て悪い
子供を道具として使うクソ野郎どもは俺たちが殺す

2人には見えないよう背を向けたアカカミは静かな怒りを燃やした表情をしていた
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