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雪王編
8.衝突
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6月20日 9:10
北海道支部
仲間の血液で染まっていた室内も完全に清掃され、血の匂いもし無くなった支部のソファにマチシタが肘をついて寝っ転がっていた
「はぁ~暇だ」
バァン!!
「ぎゃー!」
勢いよく開いた背後のドアに振り向くとアカカミが女子高生二人を連れて入ってきた
「ビビらせんなよセキジョー」
「お前が勝手にビビったんだろ」
マチシタの座るソファの向かいにあるもうひとつのソファを手ではたく
「2人ともここに座ってくれ」
2人は遠慮がちにゆっくりと腰かける
目の前にいるマチシタの着ている紫色のジャケットに悪者感を感じて緊張する
「形相がこえーよマチシタ」
「爽やかな顔したお前が羨ましい」
それは関係ないだろと思いながらアカカミはお茶を2人の前に置いてマチシタの隣に座る
「傘下はどこ行ったんだ」
アカカミの質問にマチシタが答える
「調査だよ調査 土俵坂の奴らはなんもないとこで取っ組み合いしてくるってよ」
「そうか なら2人もあんまり緊張しなくて済むな」
もう既に緊張している女子高生2人に話を始める
「何があったか 自分の言葉で話して欲しい」
恐れがあるのか口を開くのに時間がかかったが1人の女子高生が説明を始めた
「あの、、3日前くらいから街が雪王に襲われ始めて、」
少女の中で襲われている様子がフラッシュバックする
街の建物の窓ガラスを石で破壊し、車の走る道路に手榴弾を投げ落として何台もの車を爆発させる
街歩く人々をナイフや拳銃で容赦なく殺害する
人々を襲っている者たちは動物の毛皮を羽織っており、支部を襲った男、シロナワも道路の真ん中で薙刀を担いで堂々としている
「テメェら暴れまくれ!!俺たちが新世代になるんだぁあ!!」
そう叫ぶシロナワの両隣に、身長2mを超えている大柄で肌黒いスキンヘッドの男と160cmくらいの白に近い水色の髪を肩まで伸ばした小柄な女が立っている
「ヒョウランさん 声大きい…」
「まぁそう言うな冬美!」
小柄な女は白山 冬美
弓矢の名手 離れた的を的確に射抜く実力と多彩な方法で弓矢を扱う
「オデ…トップが言うこと…絶対」
大柄な男は熊川 熊
褐色でスキンヘッド、上半身はクマの毛皮を両肩にぶら下げているくらいでほぼ上裸
武器は何も手にしていない
だが、剥き出しの筋肉が身の頑丈さを表し、まさに熊のようだ
「俺たちは今から!!全国に名を轟かせる軍団になる!!庶民ども!!喚け!!」
女子高生はその時の様子をより詳細にアカカミとマチシタに伝えた
「なるほど~ で、キミらはなんで従ってたわけ?」
身も心もない軽薄なマチシタの質問に「何聞いてんだよ」という表情を向ける
マチシタは左手を前に出して謝るような素振りを見せる
「それは、、従わないと、、殺されるから、」
何となくそんな気はしていたが、そこまでして七黒の座を狙うのは何故だ、、
そんなことを考えても仕方ないので思考をやめてアカカミは立ち上がる
「わかった 話してくれてありがとう キミたちはここで匿おう その方が安全だ」
2人が頷くとアカカミは変装用の服を脱ぎ捨て、特服であるジャケットを羽織った
「マチシタ 傘下も全員集めて戦闘準備だ 科学班から武器を調達する」
「へーい」
テキトーな返事をマチシタが返すと再び、部屋のドアが勢いよく開いた
そこには土俵坂の一員が息を荒くして立っていた
「はぁ…はぁ…」
「どうした…!」
「敵襲です!!訓練中に大柄な男に襲われました!」
「「なに…!?」」
一方、拓けた場所で訓練をしていた土俵坂のメンバーは1人以外が地面に転がって気絶、いや死んでいる
首が反対に向いている死体や顔面が潰れた死体
惨劇があったことが一目でわかる
「オデ…邪魔するヤツ…ころす…」
クマヤマだ2mの大柄が残り1人になった土俵坂 千島 大和に大きな拳が迫る
それを左に跳んでかわすと拳が地面に打ち付けられる
大きな拳が砂を巻き起こし、チシマを吹き飛ばす
「ドワッ!!」
拳当たるだけで…地面揺れるとか、おかしいだろ…
「オデ…お前…ころす」
吹き飛んで腰を地面に落としたチシマにのしりのしりとゆっくり近づくクマガワ
構えられた右拳にチシマは恐れ、庇う格好をとるが、拳は振り下ろされる
そこにチシマとクマガワの拳の間に割って入った男がいた
チシマの目の前にある足、そこから視点をあげると短髪の赤い髪があった
「せきじょーさん!!」
アカカミが2人に割って入って細い水道管の鉄パイプでクマヤマの拳を止めた
「お前も…邪魔するのか…」
「もちろんだ!」
パイプで拳を弾き、できた隙にもう片方で持った拳銃で銃弾を二、三発くらわせる
「……!」
が、がら空きの胴体に銃弾は貫通しなかった
硬すぎだろ…!
「なら…ころす」
また右拳が迫るが、それを鉄パイプを地面に突き立て棒跳びの要領で背後に回ってかわす
先程よりもさらに近距離な上、今度は頭を狙って銃口を向ける
「死ね」
しかし、次の瞬間、拳銃が矢に射抜かれアカカミの手から抜ける
「矢…!」
遠方、離れた建物の屋上で悠長に矢を引いているのは雪王のシロヤマだ
「次は頭…」
常人なら見えるはずのない蟻サイズのアカカミの頭を矢の先端を合わせる
勢いよく放った矢がまっすぐに進む
しかし、それをなにかに撃ち落とされる
「……!?」
シロヤマから北西、なにかが光った
次の瞬間、シロヤマが左に頭を傾けると銃弾が頭の横を過ぎった
「狙撃手…?」
その北西でうつ伏せになってレンズを覗き込んでいるのはマチシタでシロヤマに標準をまた、あわせる
「あの距離で矢を当てるのはすごいが、有効射程は俺が勝ってる」
楽しそうな笑みで引き金を引くと強い空気抵抗を受ける細長い弾丸がシロヤマの目の前に落ち、屋上の床を削る
「チッ…」
舌打ちしてその場から退散する
それをレンズ越しに把握したマチシタは追い打ちはせず、標準をクマガワに合わせる
アカカミはクマガワの豪快な拳の連撃をパイプと回避技術でいなし続けていた
動きが単純だな…
これだけの体格があって殴ることしかしてこない上に、俺の攻撃を避けようともしない…
自分のフィジカルに自信があるのか…?
「オデ…お前…ころす」
右拳を勢いよく地面に縦に振り落とす
また、砂が舞い上がるとアカカミは不意打ちを警戒して後ろにさがる
クマガワを狙撃で狙っていたマチシタも舞い上がった砂のせいでクマガワの姿が見えなくなる
「気づかれた…?」
2人の認識は被った
狙撃手であるマチシタの存在に気づいたのかと
だが、違った
相手の狙いは、、いや狙いなどなかった
砂煙の中から飛び出してきたのはその巨体だった
突進…!
気づいた時にはもうその巨体の突進に飛ばされていた
反射でパイプを前に構えたおかげで体に支障はないが背中から地面に落ち、受け身を疎かにしてしまった
「トドメ……」
拳が振り落とされる瞬間、長物の刃がクマガワの前に横から現れる
「……!」
拳を止め、その方向に目をやると薙刀を持ったシロナワがいた
「クマ~ 明日だって言ったのによぉ やめてくれよ」
自身のトップの言葉に拳を下ろす
「わりぃなЯ 」
「お前に謝られる筋合いはない それにもうこっちは何人も死人が出てる 俺は今ここで始めても構わん」
「おぉ顔がこわいことこわいこと」
その言葉でさらに苛立ちが増す
「遠慮しとくよ 俺が望んでのは大人数の合戦だからな」
薙刀を担いで背中を向けると「クマ~帰るぞ」と退散指示を出す
アカカミが立ち上がって去っていく2人に向かって言葉を放つ
「シロナワ お前は俺が殺す」
シロナワは背中を向けたまま鼻で笑った
「俺が勝つ」
互いに勝利宣言を交わしてこの場を収めた
数時間後、、
北海道支部
いざこざで殺された土俵坂のメンバーを配送用トラックに乗せて見送り、生き残った2人に事情を聞く
チシマは口を抑えてあの時の話を始める
「俺らが普通に訓練していたらあいつが突然現れたんです」
あいつとはクマガワのことだろう
チシマが状況を思い浮かべながら話す
「あいつは俺たちを一撃で沈めてきました」
小規模とはいえ、真っ向勝負は彼らの土俵のはずで純粋な筋力勝負で負ける程度の実力ではない
それでもクマガワはそんな彼らを一人一人、一撃で殺したのだと
一髪ブローすれば頭が反対方向に回り、掴まれた部位は皮の上から肉や骨を粉砕する
「体格が良いからなんてレベルじゃありませんでした…バケモンです…」
応援要請で集めた土俵坂のメンバーを一蹴したバケモノ
それを相手にしたアカカミも異常さは強く共感できる、拳銃の弾丸が効かず、地面を殴れば砂煙が舞い、振動を起こす
「そいつだけじゃないなぁ」
マチシタが口を挟む
「弓手も警戒した方がいい レンズなしであの距離、それも正確にせきじょーが持ってた拳銃に当ててる ありゃ狙われれば即射抜かれるな」
弓手はシロヤマのことだ
彼女も警戒すべき人物であることを確認する
「明日はここに10人残して闘いにいく その10人にお前らも入れ」
「「はい!」」
土俵坂の返事をしっかり聞くとドアが開いた
「科学班でーす 武器を届けに来ましたー」
依頼しておいた武器の補給だ
ダンボールの拳銃や手榴弾、閃光弾が大量に、ゴルフバッグの中に刀、そしてアカカミが待っていたものがあった
「俺の烈火!」
アカカミの持ち武器である槍の烈火
アカカミの身長よりも少し長い烈火の刃は赤く、持ち手の先端には赤い帯が持ち上げても床に着くほど長く結ばれている
「マチシタさんにはこれですね」
それで手渡されたのは武器ではなく手持ちサイズの小さな工具箱のようなものだった
それを開けると全く同じ弾丸が5弾、等間隔に並べられている
「星の弾丸まで持ってきたのか」
「はい しかし、その箱の分しかないので使いすぎには注意してください」
「りょーかーい せんきゅ」
また違う科学班の班員がダンボールを持ってきた
「一応、もうひとつ特殊武器持ってきたんですけど、、」
「おぉ そりゃこの部屋に置いといて~ 俺ら宛てじゃないってことは俺とアカカミには使えないってことでしょ」
それもそうなので班員はこの部屋の空いたところにそのダンボールを置いた
「それじゃあ失礼します」
科学班が支部から出ていった
「マチシタ」
「んー?」
2人が自身の武器の手入れをしながら会話を始める
「明日は闘いだ」
「そんなの知ってるけど?」
「子供を弄ぶクソ野郎どもをぶっ潰すぞ」
「もちのろーん」
テキトーな返事だ
それでもマチシタはやる奴だとアカカミは知っている
だから、追い討ちをするように言葉を掛けはしない
バケモノ クマガワ、弓手シロヤマ、雪王トップ シロナワ
この3人とまだ、出てきていない人物も警戒しつつ明日の戦闘に望む
翌日 6月21日 12:00
誰もいない街、正確には暴走で誰も立ち入りできなくなった土地で2つのチームは相対する
Я と雪王
信念に反する者たちを倒すため、七黒の一角に立つため
互いの想いが衝突する
北海道支部
仲間の血液で染まっていた室内も完全に清掃され、血の匂いもし無くなった支部のソファにマチシタが肘をついて寝っ転がっていた
「はぁ~暇だ」
バァン!!
「ぎゃー!」
勢いよく開いた背後のドアに振り向くとアカカミが女子高生二人を連れて入ってきた
「ビビらせんなよセキジョー」
「お前が勝手にビビったんだろ」
マチシタの座るソファの向かいにあるもうひとつのソファを手ではたく
「2人ともここに座ってくれ」
2人は遠慮がちにゆっくりと腰かける
目の前にいるマチシタの着ている紫色のジャケットに悪者感を感じて緊張する
「形相がこえーよマチシタ」
「爽やかな顔したお前が羨ましい」
それは関係ないだろと思いながらアカカミはお茶を2人の前に置いてマチシタの隣に座る
「傘下はどこ行ったんだ」
アカカミの質問にマチシタが答える
「調査だよ調査 土俵坂の奴らはなんもないとこで取っ組み合いしてくるってよ」
「そうか なら2人もあんまり緊張しなくて済むな」
もう既に緊張している女子高生2人に話を始める
「何があったか 自分の言葉で話して欲しい」
恐れがあるのか口を開くのに時間がかかったが1人の女子高生が説明を始めた
「あの、、3日前くらいから街が雪王に襲われ始めて、」
少女の中で襲われている様子がフラッシュバックする
街の建物の窓ガラスを石で破壊し、車の走る道路に手榴弾を投げ落として何台もの車を爆発させる
街歩く人々をナイフや拳銃で容赦なく殺害する
人々を襲っている者たちは動物の毛皮を羽織っており、支部を襲った男、シロナワも道路の真ん中で薙刀を担いで堂々としている
「テメェら暴れまくれ!!俺たちが新世代になるんだぁあ!!」
そう叫ぶシロナワの両隣に、身長2mを超えている大柄で肌黒いスキンヘッドの男と160cmくらいの白に近い水色の髪を肩まで伸ばした小柄な女が立っている
「ヒョウランさん 声大きい…」
「まぁそう言うな冬美!」
小柄な女は白山 冬美
弓矢の名手 離れた的を的確に射抜く実力と多彩な方法で弓矢を扱う
「オデ…トップが言うこと…絶対」
大柄な男は熊川 熊
褐色でスキンヘッド、上半身はクマの毛皮を両肩にぶら下げているくらいでほぼ上裸
武器は何も手にしていない
だが、剥き出しの筋肉が身の頑丈さを表し、まさに熊のようだ
「俺たちは今から!!全国に名を轟かせる軍団になる!!庶民ども!!喚け!!」
女子高生はその時の様子をより詳細にアカカミとマチシタに伝えた
「なるほど~ で、キミらはなんで従ってたわけ?」
身も心もない軽薄なマチシタの質問に「何聞いてんだよ」という表情を向ける
マチシタは左手を前に出して謝るような素振りを見せる
「それは、、従わないと、、殺されるから、」
何となくそんな気はしていたが、そこまでして七黒の座を狙うのは何故だ、、
そんなことを考えても仕方ないので思考をやめてアカカミは立ち上がる
「わかった 話してくれてありがとう キミたちはここで匿おう その方が安全だ」
2人が頷くとアカカミは変装用の服を脱ぎ捨て、特服であるジャケットを羽織った
「マチシタ 傘下も全員集めて戦闘準備だ 科学班から武器を調達する」
「へーい」
テキトーな返事をマチシタが返すと再び、部屋のドアが勢いよく開いた
そこには土俵坂の一員が息を荒くして立っていた
「はぁ…はぁ…」
「どうした…!」
「敵襲です!!訓練中に大柄な男に襲われました!」
「「なに…!?」」
一方、拓けた場所で訓練をしていた土俵坂のメンバーは1人以外が地面に転がって気絶、いや死んでいる
首が反対に向いている死体や顔面が潰れた死体
惨劇があったことが一目でわかる
「オデ…邪魔するヤツ…ころす…」
クマヤマだ2mの大柄が残り1人になった土俵坂 千島 大和に大きな拳が迫る
それを左に跳んでかわすと拳が地面に打ち付けられる
大きな拳が砂を巻き起こし、チシマを吹き飛ばす
「ドワッ!!」
拳当たるだけで…地面揺れるとか、おかしいだろ…
「オデ…お前…ころす」
吹き飛んで腰を地面に落としたチシマにのしりのしりとゆっくり近づくクマガワ
構えられた右拳にチシマは恐れ、庇う格好をとるが、拳は振り下ろされる
そこにチシマとクマガワの拳の間に割って入った男がいた
チシマの目の前にある足、そこから視点をあげると短髪の赤い髪があった
「せきじょーさん!!」
アカカミが2人に割って入って細い水道管の鉄パイプでクマヤマの拳を止めた
「お前も…邪魔するのか…」
「もちろんだ!」
パイプで拳を弾き、できた隙にもう片方で持った拳銃で銃弾を二、三発くらわせる
「……!」
が、がら空きの胴体に銃弾は貫通しなかった
硬すぎだろ…!
「なら…ころす」
また右拳が迫るが、それを鉄パイプを地面に突き立て棒跳びの要領で背後に回ってかわす
先程よりもさらに近距離な上、今度は頭を狙って銃口を向ける
「死ね」
しかし、次の瞬間、拳銃が矢に射抜かれアカカミの手から抜ける
「矢…!」
遠方、離れた建物の屋上で悠長に矢を引いているのは雪王のシロヤマだ
「次は頭…」
常人なら見えるはずのない蟻サイズのアカカミの頭を矢の先端を合わせる
勢いよく放った矢がまっすぐに進む
しかし、それをなにかに撃ち落とされる
「……!?」
シロヤマから北西、なにかが光った
次の瞬間、シロヤマが左に頭を傾けると銃弾が頭の横を過ぎった
「狙撃手…?」
その北西でうつ伏せになってレンズを覗き込んでいるのはマチシタでシロヤマに標準をまた、あわせる
「あの距離で矢を当てるのはすごいが、有効射程は俺が勝ってる」
楽しそうな笑みで引き金を引くと強い空気抵抗を受ける細長い弾丸がシロヤマの目の前に落ち、屋上の床を削る
「チッ…」
舌打ちしてその場から退散する
それをレンズ越しに把握したマチシタは追い打ちはせず、標準をクマガワに合わせる
アカカミはクマガワの豪快な拳の連撃をパイプと回避技術でいなし続けていた
動きが単純だな…
これだけの体格があって殴ることしかしてこない上に、俺の攻撃を避けようともしない…
自分のフィジカルに自信があるのか…?
「オデ…お前…ころす」
右拳を勢いよく地面に縦に振り落とす
また、砂が舞い上がるとアカカミは不意打ちを警戒して後ろにさがる
クマガワを狙撃で狙っていたマチシタも舞い上がった砂のせいでクマガワの姿が見えなくなる
「気づかれた…?」
2人の認識は被った
狙撃手であるマチシタの存在に気づいたのかと
だが、違った
相手の狙いは、、いや狙いなどなかった
砂煙の中から飛び出してきたのはその巨体だった
突進…!
気づいた時にはもうその巨体の突進に飛ばされていた
反射でパイプを前に構えたおかげで体に支障はないが背中から地面に落ち、受け身を疎かにしてしまった
「トドメ……」
拳が振り落とされる瞬間、長物の刃がクマガワの前に横から現れる
「……!」
拳を止め、その方向に目をやると薙刀を持ったシロナワがいた
「クマ~ 明日だって言ったのによぉ やめてくれよ」
自身のトップの言葉に拳を下ろす
「わりぃなЯ 」
「お前に謝られる筋合いはない それにもうこっちは何人も死人が出てる 俺は今ここで始めても構わん」
「おぉ顔がこわいことこわいこと」
その言葉でさらに苛立ちが増す
「遠慮しとくよ 俺が望んでのは大人数の合戦だからな」
薙刀を担いで背中を向けると「クマ~帰るぞ」と退散指示を出す
アカカミが立ち上がって去っていく2人に向かって言葉を放つ
「シロナワ お前は俺が殺す」
シロナワは背中を向けたまま鼻で笑った
「俺が勝つ」
互いに勝利宣言を交わしてこの場を収めた
数時間後、、
北海道支部
いざこざで殺された土俵坂のメンバーを配送用トラックに乗せて見送り、生き残った2人に事情を聞く
チシマは口を抑えてあの時の話を始める
「俺らが普通に訓練していたらあいつが突然現れたんです」
あいつとはクマガワのことだろう
チシマが状況を思い浮かべながら話す
「あいつは俺たちを一撃で沈めてきました」
小規模とはいえ、真っ向勝負は彼らの土俵のはずで純粋な筋力勝負で負ける程度の実力ではない
それでもクマガワはそんな彼らを一人一人、一撃で殺したのだと
一髪ブローすれば頭が反対方向に回り、掴まれた部位は皮の上から肉や骨を粉砕する
「体格が良いからなんてレベルじゃありませんでした…バケモンです…」
応援要請で集めた土俵坂のメンバーを一蹴したバケモノ
それを相手にしたアカカミも異常さは強く共感できる、拳銃の弾丸が効かず、地面を殴れば砂煙が舞い、振動を起こす
「そいつだけじゃないなぁ」
マチシタが口を挟む
「弓手も警戒した方がいい レンズなしであの距離、それも正確にせきじょーが持ってた拳銃に当ててる ありゃ狙われれば即射抜かれるな」
弓手はシロヤマのことだ
彼女も警戒すべき人物であることを確認する
「明日はここに10人残して闘いにいく その10人にお前らも入れ」
「「はい!」」
土俵坂の返事をしっかり聞くとドアが開いた
「科学班でーす 武器を届けに来ましたー」
依頼しておいた武器の補給だ
ダンボールの拳銃や手榴弾、閃光弾が大量に、ゴルフバッグの中に刀、そしてアカカミが待っていたものがあった
「俺の烈火!」
アカカミの持ち武器である槍の烈火
アカカミの身長よりも少し長い烈火の刃は赤く、持ち手の先端には赤い帯が持ち上げても床に着くほど長く結ばれている
「マチシタさんにはこれですね」
それで手渡されたのは武器ではなく手持ちサイズの小さな工具箱のようなものだった
それを開けると全く同じ弾丸が5弾、等間隔に並べられている
「星の弾丸まで持ってきたのか」
「はい しかし、その箱の分しかないので使いすぎには注意してください」
「りょーかーい せんきゅ」
また違う科学班の班員がダンボールを持ってきた
「一応、もうひとつ特殊武器持ってきたんですけど、、」
「おぉ そりゃこの部屋に置いといて~ 俺ら宛てじゃないってことは俺とアカカミには使えないってことでしょ」
それもそうなので班員はこの部屋の空いたところにそのダンボールを置いた
「それじゃあ失礼します」
科学班が支部から出ていった
「マチシタ」
「んー?」
2人が自身の武器の手入れをしながら会話を始める
「明日は闘いだ」
「そんなの知ってるけど?」
「子供を弄ぶクソ野郎どもをぶっ潰すぞ」
「もちのろーん」
テキトーな返事だ
それでもマチシタはやる奴だとアカカミは知っている
だから、追い討ちをするように言葉を掛けはしない
バケモノ クマガワ、弓手シロヤマ、雪王トップ シロナワ
この3人とまだ、出てきていない人物も警戒しつつ明日の戦闘に望む
翌日 6月21日 12:00
誰もいない街、正確には暴走で誰も立ち入りできなくなった土地で2つのチームは相対する
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互いの想いが衝突する
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