Я side The Assassin

文字の大きさ
20 / 68
少年隊入隊試験編

19.怪盗

しおりを挟む
終了まで 9:00

水辺

いくつかの深いプールが設置されているこの水辺では総合1位のリュウマと7位のガオがほとんどの灰色の試験者を倒していた

リュウマが深くため息をついた

「おもんないわぁ 目的のランマルとか言うやつもおらへんし、周りは雑魚やし」

呑気にスクワットをしながらガオが口を開く

「しゃあないんとちゃうかぁ てかそもそも試験内容的にゃ闘う必要のない相手やんけ」

「まあそうなんやが癪に触れるもんは早々にして片付けとおなんねん」

「そうか?俺はそういう奴との闘いはドシッとしたとこで決着つけとうなるけどな」

「ワイはお前みたいな脳筋と違うからな」

すると1つのプールから灰色の試験者がずぶ濡れになって上がってきた

その試験者は2人に気づくと一目散に背を向けて逃げていった

「追わんでええんか?」

「雑魚の死体蹴るようなマネはせん」


沼地

リクトが服に着いた泥を落としていると気を失っていた数名が目を覚ました

その数名はリクトを見て「ひぃっ!」とおののいたが、リクトは眼鏡の位置を整えて冷静に返した

「僕はそっちから来ない限り襲うつもりはない 逃げたいなら好きにしろ」

その言葉に甘えて数名は泥に汚れた姿のままその場から去る

イチゴとコウマ、出会えたのか…?

もうそんなどうでもいいことを考えられるほどに暇になってしまった


工業地帯

工場に囲まれた道でシイナと灰色の試験者が戦闘していた

「おりゃ!」

シイナが蹴り落としで灰色の試験者を地面にノした

「ふぅー…試験も後半だし襲ってくる人も減るかな」

そう言いながら手を叩いて砂を落とす
ぶらつくように歩き出すと工場同士の間でちょうど影になってしまっている細い場所に紫色の試験者の誰かが座り込んでいるのが見えた

「え、ちょっと!大丈夫!?」

慌てて駆け寄るとそれがゴウであることに気づいた
ゴウもその声で目を覚まし目を擦る

「あ?なんだ、シイナか」

「アンタなんでそんなボロボロなの」

コウマとの戦闘の汚れやかすり傷が分かりやすく目立っている

「あぁこれはちょっとなんかあっただけだ」

「なんかってなによ」

「どうでもいいだろ!」

その声の勢いで立ち上がって腰を叩く

「あ、そうだ…ちょうどいいな…」

何かを思い出したかのようにシイナに話しかける

「お前なんでレナのこと毛嫌ってんだよ」

「はぁ?それこそどうでもいいじゃない」

確かに試験自体にどうでもいいことだ

「レナは身に覚えがなさそうだったぞ」

「でしょうね…てかアイツが私になんかしたってことじゃないし」

「あぁレナの性格的に嫌われるような行動したわけじゃないのは大方予想ついてたけどやっぱそっか」

勝手に自分の中で納得してうなづいた

「やっぱ性分的な?」

「そうね…私が単純にアイツが苦手ってだけ」

「それで嫌われてんのかわいそすぎる」

「仕方ないでしょ!」

「ま、そゆことにしとくか」

会話に一段落つき、2人が息を着いたところに誰かが話しかけた

「あ、あの!!」

「「……!」」

2人は少女の声がした工場の間を抜けた日に照らされている道を向いて戦闘態勢をとった

「誰だ!」

日と影で相手の姿がよく見えず警戒を緩めることはしない

「え、えと!ちがいます!御二方を狙っている訳ではなくて!」

この声…

シイナが聞き覚えのある声に目を細める

ゆっくりと近づいてくる少女の歩幅に戦闘の意思はないように見える
それでも近づくごとに構えを締めるが十分な距離で相手を視認するとそれが紫色の試験者であることがわかりカードを狙っているわけではないことが明確になったことで構えを解いた
その少女は総合10位のミマタ コスズであった

「あ、やっぱり…北海道支部のミマタだっけ」

「あ、えと、はい…お久しぶりです」

ゴウはシイナと小柄な少女が顔見知りであることに疑問をもつ

「知り合いか」

「うん 支部の連中が本部に来た時知り合ったの」

「よろしくお願いします!」

シイナの紹介に続くように勢いよく頭を下げた

「ミマタ コスズと申します!」

「俺はヒロヌマ ゴウ だ」

手を伸ばすとコスズも手を出して互いに握手する

「そう言えば私 名前教えてなかったわね」

「お前、他人には聞いといて自分は名乗ってなかったのかよ」

失礼極まりないことをしたと思いつつも反省の意はあまり見せずシイナも自身を紹介する

「キッタカ シイナ よ ご自由に呼んで」

「じゃあキッタカさんで、」

「俺はゴウと呼んでくれ」

「じゃあゴウさん、」

「呼び捨てでいい」

「いえ!おこがましいです!」

さん付けにムズムズしながらも勢いよく首を振るコスズに強要することはできないと思い、これ以上呼び名について触れないようにした

「あとはタイムアップ待ちだな」

「そうね…ここで静かにしとけば安定して合格できるでしょう」

コスズも首を縦にふって共感を示した


高層ビル地帯

太陽光がビルのガラスに反射して道路で戦っている試験者にあたる

「お前のカードは俺がもらう!」

「あげてたまるか!!」

各地で戦闘が終わりを迎え、紫色の試験者が時間が過ぎるのを待つだけなのに対し、ここ高層ビル地帯では未だに戦闘が続いている
それは構造上、建物内にも入ることができるため序盤に試験者同士が出会う可能性が低くなり、終盤になって他の区域から来た灰色の試験者が増え、人との鉢合わせが増加し、戦闘が勃発している


試験終了まで残りわずか2:00を切る

ランマルはこの数分間、ミドリとの追いかけっこを続けていたのだが、ミドリから逃げ始めてから状況が変化している

ランマルがミドリに追われているのではなく、30名ほどの灰色の試験者が2人の間に入ってランマルを追っている状況になっている
ミドリは前にある灰色の試験者の集団に苛立っていた

邪魔ぁぁぁあ…!!
ランマルアイツ、急に逃げ始めたと思うたら灰色の奴らがいるとこわざわざ通りよって

「みんな~鬼ごっこで俺にタッチできたら俺のカードやるよー!これガチね!!」

とか叫びながら人寄せ集めよってからにぃ!
何を企んでんねんやろ


「そろそろか」

ランマルは1人で呟くと1つのビルに入り込んだ

「「追うぞぉぉぉお!!」」

灰色の試験者が躍起になってランマルを追ってビルに入る
その集団に続いてミドリ後を追う

試験終了まで1:30

ランマルは非常階段の入口の扉を蹴り飛ばして階段を1段ずつ素早く上る
それに集団は勢いよく突進していき、かなり狭い非常階段は大混雑する
ミドリはそれを扉の前で目視して「最悪や」と呆れる

混雑しながらも1階1階あがっていくランマルを集団は追う

「待てやぁ!」「カードは俺が!」「いや私が!」
「お前ら下がれよ!」「下がったら取られちまうだろうがよ!」

集団の中でも言い争いが絶えない

ランマルは後ろからものすごい勢いで追われながらも壁に張り付いた28の数字を確認し上ることを続ける

もう少しだな…

階段を上ることと戦闘の疲れで速度が落ちてきたが30の数字を確認して目の前のドアが蹴り飛ばした

終了まで0:45

「着いた……」

そこは屋上で他のビルよりも高く、風がよく吹き、日もよく当たっている

後ろから大量の灰色の試験者が流れ出る
ランマルは広い屋上の手すりに追い込まれた

「おらぁ!よこせぇ!!」

もう逃げ場はないと襲ってきた集団を見てランマルはありえない行動をする
胸ポケットから合格カードを抜き出したのだ

終了まで0:20

ミドリも追いつき「ランマル!!」とその集団の後ろから走ってくる

合格カードを屋上の地面に滑らせるようにして投げた
カードは集団の中に紛れるように落ちた
同時にランマルの紫色の服は灰色に変わる
まさかの行動に驚いた集団だったがそのカードを拾うため大混戦が始まる

「どこだ!どこに落ちた!」「あった!」「よこせあほんだら!」「俺のもんだボケ!!」

そんな混戦の中にランマルも突入する

終了まで0:10

集団の最後尾でランマルを見失ったミドリは足を止めて目の前でカードの取り合いをしている集団から何とか探し出そうと背伸びをする

「どこ…!」

7、6、

「どこや!ランマル!」

服の色が灰色に変わったことで集団のどこにいるのか全く分からない

5、4、

私がアイツを潰してリュウマとのゲームに勝つんや…!

その焦りから集団に飛び込もうとしたが、

いや…あかん…!そんなことしたら私のカードがこの集団の誰かから掻っ攫われてまう

3、2、

冷静になって試験合格を優先し、ミドリはランマルを倒せなったことを悔やみつつもその集団から後ずさりする

1、

ヒュンッ

影がミドリの横を走った

「……!」


ブゥゥゥゥゥウン!!

甲高い音がドーム内に響いた

その後、すぐキリマのアナウンスが流れる

「これにて一次試験を終了します!現段階で合格カードを持っている100名を合格とします!」


各地で合格者が各々の反応を見せる中、このビルの屋上では未だに空気が張りつめていた

「な、なにが、、」

ミドリが目の前の状況を整理できずにいた

「……!」

自身の試験服が灰色に変色していることに気づき焦る

「まさか…!」

影が過ぎた方向に振り向くとそこに紫色に変色していく服を着た背の高い後ろ姿があった

「オレが得意なのはでね」

服が完全に紫色に変色し、その男はミドリの方を向いた

瞬奪シュンダツ 人のものを一瞬で盗る技なんだけど…」

その男の表情にミドリは怒りと悔やみを孕んだ表情をした

「効いちゃったかな…?」

ランマル怪盗は煽り笑みを浮かべてミドリ被害者を嘲笑った
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...