Я side The Assassin

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少年隊入隊試験編

28.木刀と殺斬と関西人

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終了まで、、00:12:00

高層ビル地帯

手錠を掛けられたシバキが傷を負った部位を手当している
煙幕は晴れてコウマとイチゴは狙撃を警戒して気を失ったリクトを連れて建物へ入っていった

「あの鈍感野郎…容赦なくぶっ刺しやがって」

訓練生時代にアカカミと本気で斬り合い、殴り合いをしている光景を思い出す
互いに服を破けさせ、顔に傷を負ってでもコイツに負けるかという思いで食いついて競っていた日々だ

あんときはよくキドウさんに叱られてたな…

仰向けに倒れて水色の空を見つめる

「よし…寝よう」

青空を見つめながら目を閉じた


シバキと仙台支部の受験生たちの闘いが始まる5分前、、

終了まで、、00:25:00

沼地

「ヤバい…」

何かを振って発生した風圧がランマルとシイナ、コスズを煽って後退させた

泥が風圧で弾かれ、うち飛ばされた受験生4人の全身に飛び散る
その4人は完全に気を失って倒れてしまった

3人は同じ方を向いて同じ人物を警戒強くして見つめている

「あ、あ、あの、、あの人ってぇ…」

コスズが怯えながら2人に確認をとる

「ええ…間違いないわ…」

その人物を紛れもなく彼であり、何も脅威とせん立ち姿だ

「ムラカミさんだね」

ランマルが冷え汗をかきながら言った

男は手に持つ木刀を左腰に納め、3人を睨む
放たれる圧力に3人は身を固めてしまう

特攻班班長 殺斬サツジン 村上 信二ムラカミ シンジ

約17年前に当時、結成されたばかりのЯ リサイドが巻き起こした抗争で逢えなく孤児になった3人
マチシタ、キリマ、そしてムラカミはシジマによって保護され17年間、彼の信念についてきた
Я リサイド七黒シッコクに成り上がるまでの道のり、その後も彼ら3人は常に最前線に立って部下を引っ張ってきた

死線は幾度となく彼らを襲ったが、己を磨くことを忘れず醜く抗ってきた
今や彼は台頭し、裏の世界でムラカミに狙われた者は問答無用で斬り捨てられる

あの刀は血に濡れている まさに殺斬サツジン

と悪名高く畏怖される存在となった


その男の冷たい視線が訓練生3人を劈く
息を呑む子供を前にしても表情一つ変えず、静かな一歩を大地に置こうとする

3人は恐怖しながらも思考は重なっている

くる……!

静かで小さな一歩だ だが、その瞬間、空気は一蹴される

「え……」

コスズは視覚よりも触覚が強く働いた
強い追い風を受けたような感覚が前面に走った

しかし、彼女らの十数歩先にいた男の姿はない
いや、彼は既に彼女らの数歩後ろで木刀を腰に納めている

ボコォン!!

「オ"ッ"…!」

コスズは腹に木刀を打ち付けられた衝撃に見舞われ思わず反吐を吐いた

「とろいな」

シイナとランマルは即、攻撃態勢に入る

瞬奪しゅんだつ…!」

気配を消すように背後に回り込む

「蝶のワルツ

ワルツのように静かに跳ね、空気に乗るように宙を舞う

ランマルが木刀に触れる瞬間、ムラカミは刀を大きく振り、ランマルの腹に打ちつけて振り回し、空中にいるシイナも巻き込んで地面に叩きつける

「キャッ…!」「ドハッ…!」

木刀の風圧で泥の飛沫が起こり、叩きつけられた2人に泥が染みる

ムラカミの上方、素早く回転して迫る円形の物あり

「ん…?」

そのカッターブーメランをよそ見したまま打ち飛ばす

コスズの手元に戻ったカッターブーメランは再び、ムラカミに向かって投げられ、もうひとつのブーメランは下方から迫り上がるように投げられる
同時にランマルの足裏についた短い刃が下から首を狙う
さらに、靴を脱いだシイナの空中での舞技が前方から襲う

下から伸ばされた脚を左手で掴んで刃を止め、木刀をシイナの足裏にあわせてシイナを弾く
下方から迫るブーメランを体を後ろに反ることでかわし、上方から迫るブーメランと衝突させる

畳み掛けるようにシイナが突っ込み、コスズも残り1つのカッターブーメランを持って迫る

ムラカミは前方から迫るシイナに木刀を勢いよく投げつけ、側方から来るコスズを掴んだランマルの脚を振り回してランマルを投げつける

「「……!」」

コスズは投げられたランマルと衝突し、お互いの体重や体格の差で大きく後ろから倒れる

シイナは辛うじて勢い着いた木刀をかわしたが、木刀を追うように襲ってきたムラカミに対応が遅れる

「う"ッ……!」

力の籠った拳がシイナの腹に食い込み、一瞬、窒息する
腹を押さえながら膝をつけて咳込む

ムラカミはため息を吐きながら投げた木刀が落ちている場所まで歩きながら身を沼で汚している者たちに語り始める

「厳しい言葉を浴びてもらおうか」

落ちた木刀を拾いながら口を動かすムラカミにさえ、隙が伺えない

「期待外れだ…」

木刀を納めたムラカミの目が鋭く恐ろしい

「ムナから聞いた話では今年の訓練生は優秀だと…だがそれはあくまで相対的な話だったらしい」

過去の訓練生と比較して優秀 つまりは、という認識をしたようだ

「闘いを挑んでくるヤツらは皆無策、だからと言って自力で俺を倒せる訳でもない…そんな無象を十数人は気絶させてきた」

投げられたブーメランが高速でムラカミの頬を横切り、急旋回してムラカミを背後から狙う
バレエを踊るように宙に舞ったシイナが空中で数回転し、回転の度に脚に力を込める
側方から迫るブーメランにシイナの後方から走ってくるランマルを認知しながら語りを続ける

「これよりも弱い者が特攻班直属の少年隊にいると考えると末恐ろしい」

連続する回転蹴りを両腕でいなす
シイナは距離をとり、ランマルとスイッチする背後と側方のブーメランを振り向しさまに弾き飛ばすとランマルの方に背を向けることとなる

好機と見たコスズはランマルの後を追わせるように3つ目のブーメランを投げた

ランマルがムラカミの背を捕らえたと見えた瞬間、ムラカミは力のまま背後に木刀を振った

しかし、それはランマルには打たれなかった

これを予測していたランマルは瞬時にムラカミの背後をとった
さらには同時にブーメランも正面から襲う形、傷を負わせるのに絶好のチャンス

足裏についた隠し刃が回し蹴りでうなじを切りつけるが、ムラカミはそれをしゃがんで回避し、逆にカッターブーメランがランマルの上げた右脚を沿うように切り流した

ジャバババッ…!

「……!」

すね辺りから太ももまで鮮血が真っ直ぐ飛び散る

「畳み掛けや挟み撃ちが俺に効かないことはさっきまでに分かってたことだろ」

ランマルよりも低い位置で言う男の言葉は影を増している

横ぶりされた木刀はランマルの左足をすくい上げ、仰向けに倒させる
背を打った衝撃ではねた泥水の雫、それを地面に落とさないがために更なる衝撃を与えようとする木刀

ボゴッ…!

「ン"ッ……!」

晒された腹につき降ろされた木刀はランマルを吐血させ、同時にはねた泥の雫を増やした
痙攣で脱力し、力なくして体を地に落とす

「しぶといお前らにはじっくり教えこんでやるよ」

シイナとコスズの息がさらに荒くなり、冷静さを掻き乱していく

「戦場での生存がどれほど困難なことなのか」

2人に向けられた木刀が風圧をうみ、ムラカミに付着した泥を散らした

喉が揺れるほどの息を呑む

その瞬間、2人の後方から駆け込んでくる足音がした

「そこどかんかい!!」

3人の視界と意識がその声に向けられる
そこには意気揚々と刀を光らせた高身長関西人がいる

「えらい探したで!!ムラカミさぁん!!」

飛びかかって刀を振り下ろした

「……」

それを冷静に木刀で受け止める

鍔迫り合いの中、リュウマの憧れの目とムラカミの蔑むような目があった

刀の鋭さが木刀をかけさせる
ムラカミはリュウマを弾き飛ばし、その全身を捉える

「威勢がいい子供だ 少しは警戒心を持て」

「はっはー!そりゃ関西人わかっとらんなぁ!やりたいこと見つけたら幼児退行してでもやりに行くんが俺らや」

「そうか…なら勝手にしろ 戦場で真っ先に死ぬだけだ」

リュウマは憧れていた人物との対面、そして戦闘に胸が躍っていた

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