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少年隊入隊試験編
29.刀と高みと初心
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7年前、、
初めて刀を手に取った
幼少期のリュウマがアスファルトで出来た倉庫の種類様々なものがある中で見つけ、持ったものに目を輝かせている
その刀の刀身は橙色で仄かな温かさを感じさせていた
想像よりも重かったことを覚えている
そのオレンジ色の輝きに俺はトリコになって昔の人はこれを持って戦っていたんだと思うと身が震えた
倉庫の扉を開いて現れた大人の男が慌てて声を上げた
「リュウマ!何をやっているんだ!」
「お父さん…」
刀を取り上げられると察しがついてリュウマの声が縮まる
「これは大事な売りもんなんだ! 容易く触るんじゃない!」
「……!」
怒った父親は振り払うようにして刀を取り上げた
父親はリュウマを連行するように倉庫から追い出した
それからというもの、俺は刀が気になって仕方がなかった
だがあれは売り物で子供の俺が簡単に欲しいなんて言ってはいけない代物なんだと思っていた俺は欲心を抑えてその刀を諦めた
そして、事件は起きた
父親が捕まった
倉庫の中にあった武器や様々な物は盗んで手に入れた物で、それを悪徳に売り物として売買していたらしい
捕まったことを知って母親は自暴自棄になって俺を全く視野に入れなかった
だから俺は家出した
すぐに滋賀支部の人たちに引き取られて訓練生としてミドリやガオと共に切磋琢磨してきた
刀を握ってただひたすらに…
でも俺はあの刀の行方を考えずにはいられなかった
そんな時、支部にムラカミさんがやってきた
その人が刀を振る音は静かで、それでいて鋭く、激しかった
今の俺では到底敵わない領域、高みにこの人はいると直感で理解した
俺もいつかは絶対にこの境地に達して魅せる
そうすればあの刀に辿り着くかもしれないという期待も秘めて…
だから俺は……
終了まで、、00:07:00
「はぁ…はぁ…」
十数秒の斬り合いでリュウマは満身創痍になっている
しかし、ムラカミは微動だにせず冷たい目で彼を見ていた
今は試し斬りといったところや…自分の位置を知るために…この人と相見えなあかんねん…
「どうした?もうギブアップか?」
「冗談キツイで!ムラカミさん!」
リュウマは再び取っ付き、斬り合いになるが、終始ムラカミがリュウマの斬撃を容易くいなす
そんな劣勢でも不安な顔ひとつせず格上の相手に食らいつく活発なリュウマは綺麗な汗を散らす
ここまで…笑顔とはな…
ムラカミも相手の爽やかな笑顔に充てられて口角をあげた
「相手に弱音を見せないのは評価する!」
木刀で打ち払うがリュウマは退くことはせず斬り合いの距離を保つ
「そりゃ!どうも!!」
木刀の打撃を何度も食らっているが、怯みを全く見せず、打撲を増やしながらも憧れの相手に引きを取らず食いつき続ける
なにか…違和感が…
ムラカミの違和感もそのはず、リュウマの頭は過去最高に働いていた
次は右、それやった後はデカいのがくる…やから…
コンッ…!
「……!」
リュウマは手首を内側に曲げて刀身を右腰の盾にして木刀を受け止めた
ここに来て初めてムラカミの剣術が勢いを留めた
「見切った!」
シャキンッ…! プシュッ…
リュウマは木刀を払って刀を振り下ろし、ムラカミの左肩から左胸を浅く切り裂いた
「あっさッ!」
「ちっ…」
思わず刀を振った隙をつくように腹を蹴りつけた
リュウマは距離を取られ、顎の汗を拭く
体を動かしていた間、感じなかった打撲傷の痛みがきて少し怯んだが、確かに成果を見出して笑う
俺が斬り合いで…
ムラカミは肩から流れた血を指につけて見つめ、斬撃の感触と痛みを思い出す
そして相手に向き直った
ハンデありとはいえ、、これは、、
「焦ってんとちゃいますぅ?」
「ふっw」
わ、笑った…?
さっきまではありえなかった表情に目が点になる
「調子に乗るなよ 少しハードルを上げてやるからな」
「あら?本気やなかったんかい」
ムラカミは刀を腰に納め、足を一歩前に出し、腰を低めた
居合やな…やがこの距離や…当てるには接近が必須やろ…なんとかそこにあわせる
自身の周囲に神経を研ぎ澄ませて刀を強く握る
だが、ムラカミはいち訓練生である青年の思考を遥かに超えてきた
「居合・風切」
静かに素早く抜かれた木刀、しかしそれはリュウマには全く届いていない
否、それは間もなくしてリュウマの元に届いた
バシュッ…!
「ア"……!」
ジュバァァ!
何もなかったはずだが、突如としてリュウマの腹が横一閃に斬られた
「う"……!」
リュウマは腹を抑えて地面に膝をつけた
なんや…何が起こったんや…ッ!
不可視の斬撃がリュウマを襲ったのだ
それは勢いよく抜かれた木刀によって空気が鋭く凝縮し、そのまま直進する
言わば、見えない斬撃である
口から血を垂らして頭をあげるとそこには期待の笑みを浮かべるムラカミが見下げていた
「一撃目だから加減はした さて お前の限度はここか?」
「ほんまに…高いとこにおるなぁ…」
そんな切羽詰まったリュウマと、別次元のムラカミの闘いを横目にシイナとコスズは倒れたランマルの手当をしていた
気を失って動かないランマルの服をはだけさせて腹に着いた木刀の突き痕にガーゼを当てる
「シイナさん…結構食い込んじゃってます…」
傷痕から木刀とはいえかなり深いところまで突き立てられていたことがわかる
「そんなの分かってる…!」
コスズを強い言葉で非難したのでなく、ランマルを強く心配しているからこそ言葉がキツくなっている
手当の全てを尽くしてランマルの右手を強く握る
「おねがい…起きて…!」
これは試験だ
訓練生が死ぬことのないように配慮されているのは当然であり、ランマルも命を落としてはいない
しかし、それがわかっていてもシイナには思い返されるものがある
10年前、、
小さな少女が公園の砂場でステップを踏んで片足立ちで回転して静かに足を砂に着けた
「ねぇ!どうだった!」
座って砂山を作っている小さな少年に問いかけた
少年は砂から手を離して応える
「良かった」
その素っ気ない返事に少女は頬を膨らませた
「むぅ~もうちょっとなんかあるでしょ!」
「だっておれダンスとかわかんないし」
「ダンスじゃなくてバレエッ!何回言えばわかるのぉ」
「そんなこと言われても…」
「も~」
少女も膝を曲げて少年と同じ目線になる
砂を集めて山を大きくしながら話を続ける
「ランマルってばほんとーに興味無いことには耳もかたむけてくれないよね」
「面白くないことに真剣になれないし」
バレエには面白くないと同意の言葉を投げられて、また少女は不貞腐れた顔になる
「でもシイナが踊ってるのは好きだよ」
「え!」
シイナは子供らしい反応を見せて顔を赤くする
「もー!ランマルのバカ!!」
バチンッ!
「う"っ!」
シンプルなビンタがランマルの頬にうち当てられた
「もう!こうなったら意地でもバレエに興味示してやる!これから私が踊る姿を見続けるのよ!」
「えぇ~」
「えぇ~じゃない!」
なぜシイナがランマルに自分が好きなバレエをこんなにも見せて、興味を向けさせようとしているのか
それは初心な恋心だ
自分の好きなことを全力で伝えるのは小さな子らしいアピールだと思う
自分はこんなこと好きなんだからこっちを向いてと言わんばかりの行動で正しく可愛らしい少女だが、やはりまだ10に満たない年齢、相手の気持ちを汲み取るのは中々に難しい
だからこの時のシイナにランマルが本当に嫌がっているのか自分を好いていることからくる照れ隠しなのか、はたまたただの天然なのか、分からなかった
それでもシイナは信じていた
このままランマルとずっと一緒に居よっ
少女の心は本当に初心でこれから何があるかも分からないのに想い人と恒久に生きていけると思っていた
そう思っていたんだ
ある日の公園の帰り道、シイナとランマルの家路は横断歩道で分かれることになる
横断歩道を渡るのはシイナで毎回、この白い線を踏むとランマルがいなくなると思ってしまう
隣に並ぶランマルが赤信号を見つめている
それの横顔を見て今日も離れたくないなと思いながら勇気を振り絞って青信号を向かえる
毎回のごとく、現実から目を背けるように目を瞑って白い線に一歩を刻んだその時、ランマルの慌てふためいた声が反響するように聞こえた
「シイナ!!」
目を開こうとすると時間はゆっくりになり、焦って自分に手を伸ばすランマルを横目で確認する
側方から大きな影がシイナを脅かしていた
その存在をシイナが視認した瞬間、自身は背後から勢いよく押し飛ばされた
バァンッ!
白線に手をつけたシイナが目を開くと空気は一変としており、車のブザーが全ての音を支配している
自分に何が起こったのか、押し出したのは誰なのかを確認するためシイナは倒れたまま背後を確認するとそこにはガードレールを押し潰し歩道を超えた建物に衝突したトラックと大きなタイヤ痕があったがそれよりも刺激を受ける光景がシイナの目に突き刺さった
「………!」
横断歩道から外れた道路で倒れた小さな少年は頭部と全身から大量の血を流していた
動く素振りはなく、道路に野垂れ倒れている
そうランマルは死んだ
その事実だけがシイナの脳内を支配し、何一つ考えることがてきなくなった
叫びも涙もこぼれず思考に神経を全て奪われてしまった
だが、彼は奇跡的な生命再起を果たす
数日後、、
ランマルは見た目変わらずしてシイナの目の前に現れた 知らない白衣を着た50代くらいの小柄な男性を横に…
その男の頭に髪の毛は生えておらず、口元に髭を蓄えている
「シイナくんでよいのかね」
いつもの公園で呆気にとられているシイナに気安く話しかける
「う、うん おじさん、、だれ、、隣にいるのは、、」
「ジジイの話を聴きなさい」
男は医者であり、ランマルは多額の手術で息を吹き返したらしい
後遺症は前髪の緑色のメッシュのみで生活に悪影響はない
体型や顔も何一つ違わずランマルは生命を維持したようだ
「じゃがな…体には異常はないが、、記憶が…」
この後は話さなくとも分かるだろう
それでもシイナはランマルから離れることはしなかった
自分を初めて見たような反応するランマルに自己紹介してこれから友達になるような接し方をした
それからランマルの家が手術の借金を返金できず、ランマルを孤児院に送りだして、私は親元を離れてランマルと同じ孤児院に入り込んだ
私は、またランマルにバレエを教えて、また興味ないような反応を取られてムキになって私を見ろなんて言っちゃう日々を繰り返すことを許された
私が今まで見せてきたもの全部をもう一度、彼に見せつけて、そうしたら彼はこう言った
「シイナが踊ってるの好きだな」
少し成長した姿であの時と同じ言葉を言う記憶のないはずのキミが本当にキミであることに感動してしまったのか私は頬を赤らめて涙を流してしまった
「え、なんで、、」
「なんで?」とかわかんないけど、私もあの時の言葉を泣いて震える口で返すよ
「もー…!ランマルの…!バカ!」
現在、、
私はもう離れないと決めた
死なないで欲しい だって…キミが私を忘れるなんて…寂しくて仕方なかったから…
痣となった傷痕を抑えながら、涙がこぼれ落ちる
その一滴が傷痕を抑えるシイナの手に落ちると彼は目を開けた
「シイナ…」
「……!」
目を赤くして透明な涙をこぼしながら気がついたランマルに驚く
「手当てしてくれたのか…さんきゅ」
起き上がるランマルの背中にコスズが腕を回して体制を安定させる
防戦一方となっているリュウマの姿を見て、すぐに立ち上がろうとする
「ダメだよランマル!」
「そ、そうです、、まだ安静にしてないと」
「いやいい…オレは行く」
2人の反対を押し切って立ち上がったランマルは傷を諸共せず、軽くジャンプして体の動きを確かめる
「2人は逃げた方がいい 最悪の場合、全滅する
それだけは避けたい」
踏み出して戦闘に加わろうとするランマルをシイナが止める
「じゃあランマルも!」
「できない…アイツの腹の傷もだいぶのもんだし…加勢がいる」
「なんで!アイツはランマルを倒すって言ってるヤツなんだよ!」
離れたくない存在を引き止めるために言葉を掛ける
また彼が死の間際を彷徨うのを避けたかった
「それは関係ない」
戦闘体制になったランマルを止める言葉は浮かばず、涙を流し続ける
ランマルはそれを見ながらも闘っている2人へ駆け出した
「待っ…!」
いやだ…いや!アンタが死ぬのは…!イヤだ…
力なく伸ばした手を下ろしてまた過去を思い出す
それは自分が言った宣戦布告であり、初心から出たアピール
「これから私が踊る姿を見続けるのよ!」
自身の言葉を思い出し、シイナは涙を止めて静かに立ち上がる
「シイナさん?」
意味深に立ち上がったシイナにコスズが不思議に思う
「私も行ってくる」
そう言って踏み出した一歩は本当に大きかった
そうよ…アンタは私の踊る姿を見続けなくちゃいけないの…だから…行くなら私も連れていきな!
キミが離れるなら私はそれを離さないために後を追う
初めて刀を手に取った
幼少期のリュウマがアスファルトで出来た倉庫の種類様々なものがある中で見つけ、持ったものに目を輝かせている
その刀の刀身は橙色で仄かな温かさを感じさせていた
想像よりも重かったことを覚えている
そのオレンジ色の輝きに俺はトリコになって昔の人はこれを持って戦っていたんだと思うと身が震えた
倉庫の扉を開いて現れた大人の男が慌てて声を上げた
「リュウマ!何をやっているんだ!」
「お父さん…」
刀を取り上げられると察しがついてリュウマの声が縮まる
「これは大事な売りもんなんだ! 容易く触るんじゃない!」
「……!」
怒った父親は振り払うようにして刀を取り上げた
父親はリュウマを連行するように倉庫から追い出した
それからというもの、俺は刀が気になって仕方がなかった
だがあれは売り物で子供の俺が簡単に欲しいなんて言ってはいけない代物なんだと思っていた俺は欲心を抑えてその刀を諦めた
そして、事件は起きた
父親が捕まった
倉庫の中にあった武器や様々な物は盗んで手に入れた物で、それを悪徳に売り物として売買していたらしい
捕まったことを知って母親は自暴自棄になって俺を全く視野に入れなかった
だから俺は家出した
すぐに滋賀支部の人たちに引き取られて訓練生としてミドリやガオと共に切磋琢磨してきた
刀を握ってただひたすらに…
でも俺はあの刀の行方を考えずにはいられなかった
そんな時、支部にムラカミさんがやってきた
その人が刀を振る音は静かで、それでいて鋭く、激しかった
今の俺では到底敵わない領域、高みにこの人はいると直感で理解した
俺もいつかは絶対にこの境地に達して魅せる
そうすればあの刀に辿り着くかもしれないという期待も秘めて…
だから俺は……
終了まで、、00:07:00
「はぁ…はぁ…」
十数秒の斬り合いでリュウマは満身創痍になっている
しかし、ムラカミは微動だにせず冷たい目で彼を見ていた
今は試し斬りといったところや…自分の位置を知るために…この人と相見えなあかんねん…
「どうした?もうギブアップか?」
「冗談キツイで!ムラカミさん!」
リュウマは再び取っ付き、斬り合いになるが、終始ムラカミがリュウマの斬撃を容易くいなす
そんな劣勢でも不安な顔ひとつせず格上の相手に食らいつく活発なリュウマは綺麗な汗を散らす
ここまで…笑顔とはな…
ムラカミも相手の爽やかな笑顔に充てられて口角をあげた
「相手に弱音を見せないのは評価する!」
木刀で打ち払うがリュウマは退くことはせず斬り合いの距離を保つ
「そりゃ!どうも!!」
木刀の打撃を何度も食らっているが、怯みを全く見せず、打撲を増やしながらも憧れの相手に引きを取らず食いつき続ける
なにか…違和感が…
ムラカミの違和感もそのはず、リュウマの頭は過去最高に働いていた
次は右、それやった後はデカいのがくる…やから…
コンッ…!
「……!」
リュウマは手首を内側に曲げて刀身を右腰の盾にして木刀を受け止めた
ここに来て初めてムラカミの剣術が勢いを留めた
「見切った!」
シャキンッ…! プシュッ…
リュウマは木刀を払って刀を振り下ろし、ムラカミの左肩から左胸を浅く切り裂いた
「あっさッ!」
「ちっ…」
思わず刀を振った隙をつくように腹を蹴りつけた
リュウマは距離を取られ、顎の汗を拭く
体を動かしていた間、感じなかった打撲傷の痛みがきて少し怯んだが、確かに成果を見出して笑う
俺が斬り合いで…
ムラカミは肩から流れた血を指につけて見つめ、斬撃の感触と痛みを思い出す
そして相手に向き直った
ハンデありとはいえ、、これは、、
「焦ってんとちゃいますぅ?」
「ふっw」
わ、笑った…?
さっきまではありえなかった表情に目が点になる
「調子に乗るなよ 少しハードルを上げてやるからな」
「あら?本気やなかったんかい」
ムラカミは刀を腰に納め、足を一歩前に出し、腰を低めた
居合やな…やがこの距離や…当てるには接近が必須やろ…なんとかそこにあわせる
自身の周囲に神経を研ぎ澄ませて刀を強く握る
だが、ムラカミはいち訓練生である青年の思考を遥かに超えてきた
「居合・風切」
静かに素早く抜かれた木刀、しかしそれはリュウマには全く届いていない
否、それは間もなくしてリュウマの元に届いた
バシュッ…!
「ア"……!」
ジュバァァ!
何もなかったはずだが、突如としてリュウマの腹が横一閃に斬られた
「う"……!」
リュウマは腹を抑えて地面に膝をつけた
なんや…何が起こったんや…ッ!
不可視の斬撃がリュウマを襲ったのだ
それは勢いよく抜かれた木刀によって空気が鋭く凝縮し、そのまま直進する
言わば、見えない斬撃である
口から血を垂らして頭をあげるとそこには期待の笑みを浮かべるムラカミが見下げていた
「一撃目だから加減はした さて お前の限度はここか?」
「ほんまに…高いとこにおるなぁ…」
そんな切羽詰まったリュウマと、別次元のムラカミの闘いを横目にシイナとコスズは倒れたランマルの手当をしていた
気を失って動かないランマルの服をはだけさせて腹に着いた木刀の突き痕にガーゼを当てる
「シイナさん…結構食い込んじゃってます…」
傷痕から木刀とはいえかなり深いところまで突き立てられていたことがわかる
「そんなの分かってる…!」
コスズを強い言葉で非難したのでなく、ランマルを強く心配しているからこそ言葉がキツくなっている
手当の全てを尽くしてランマルの右手を強く握る
「おねがい…起きて…!」
これは試験だ
訓練生が死ぬことのないように配慮されているのは当然であり、ランマルも命を落としてはいない
しかし、それがわかっていてもシイナには思い返されるものがある
10年前、、
小さな少女が公園の砂場でステップを踏んで片足立ちで回転して静かに足を砂に着けた
「ねぇ!どうだった!」
座って砂山を作っている小さな少年に問いかけた
少年は砂から手を離して応える
「良かった」
その素っ気ない返事に少女は頬を膨らませた
「むぅ~もうちょっとなんかあるでしょ!」
「だっておれダンスとかわかんないし」
「ダンスじゃなくてバレエッ!何回言えばわかるのぉ」
「そんなこと言われても…」
「も~」
少女も膝を曲げて少年と同じ目線になる
砂を集めて山を大きくしながら話を続ける
「ランマルってばほんとーに興味無いことには耳もかたむけてくれないよね」
「面白くないことに真剣になれないし」
バレエには面白くないと同意の言葉を投げられて、また少女は不貞腐れた顔になる
「でもシイナが踊ってるのは好きだよ」
「え!」
シイナは子供らしい反応を見せて顔を赤くする
「もー!ランマルのバカ!!」
バチンッ!
「う"っ!」
シンプルなビンタがランマルの頬にうち当てられた
「もう!こうなったら意地でもバレエに興味示してやる!これから私が踊る姿を見続けるのよ!」
「えぇ~」
「えぇ~じゃない!」
なぜシイナがランマルに自分が好きなバレエをこんなにも見せて、興味を向けさせようとしているのか
それは初心な恋心だ
自分の好きなことを全力で伝えるのは小さな子らしいアピールだと思う
自分はこんなこと好きなんだからこっちを向いてと言わんばかりの行動で正しく可愛らしい少女だが、やはりまだ10に満たない年齢、相手の気持ちを汲み取るのは中々に難しい
だからこの時のシイナにランマルが本当に嫌がっているのか自分を好いていることからくる照れ隠しなのか、はたまたただの天然なのか、分からなかった
それでもシイナは信じていた
このままランマルとずっと一緒に居よっ
少女の心は本当に初心でこれから何があるかも分からないのに想い人と恒久に生きていけると思っていた
そう思っていたんだ
ある日の公園の帰り道、シイナとランマルの家路は横断歩道で分かれることになる
横断歩道を渡るのはシイナで毎回、この白い線を踏むとランマルがいなくなると思ってしまう
隣に並ぶランマルが赤信号を見つめている
それの横顔を見て今日も離れたくないなと思いながら勇気を振り絞って青信号を向かえる
毎回のごとく、現実から目を背けるように目を瞑って白い線に一歩を刻んだその時、ランマルの慌てふためいた声が反響するように聞こえた
「シイナ!!」
目を開こうとすると時間はゆっくりになり、焦って自分に手を伸ばすランマルを横目で確認する
側方から大きな影がシイナを脅かしていた
その存在をシイナが視認した瞬間、自身は背後から勢いよく押し飛ばされた
バァンッ!
白線に手をつけたシイナが目を開くと空気は一変としており、車のブザーが全ての音を支配している
自分に何が起こったのか、押し出したのは誰なのかを確認するためシイナは倒れたまま背後を確認するとそこにはガードレールを押し潰し歩道を超えた建物に衝突したトラックと大きなタイヤ痕があったがそれよりも刺激を受ける光景がシイナの目に突き刺さった
「………!」
横断歩道から外れた道路で倒れた小さな少年は頭部と全身から大量の血を流していた
動く素振りはなく、道路に野垂れ倒れている
そうランマルは死んだ
その事実だけがシイナの脳内を支配し、何一つ考えることがてきなくなった
叫びも涙もこぼれず思考に神経を全て奪われてしまった
だが、彼は奇跡的な生命再起を果たす
数日後、、
ランマルは見た目変わらずしてシイナの目の前に現れた 知らない白衣を着た50代くらいの小柄な男性を横に…
その男の頭に髪の毛は生えておらず、口元に髭を蓄えている
「シイナくんでよいのかね」
いつもの公園で呆気にとられているシイナに気安く話しかける
「う、うん おじさん、、だれ、、隣にいるのは、、」
「ジジイの話を聴きなさい」
男は医者であり、ランマルは多額の手術で息を吹き返したらしい
後遺症は前髪の緑色のメッシュのみで生活に悪影響はない
体型や顔も何一つ違わずランマルは生命を維持したようだ
「じゃがな…体には異常はないが、、記憶が…」
この後は話さなくとも分かるだろう
それでもシイナはランマルから離れることはしなかった
自分を初めて見たような反応するランマルに自己紹介してこれから友達になるような接し方をした
それからランマルの家が手術の借金を返金できず、ランマルを孤児院に送りだして、私は親元を離れてランマルと同じ孤児院に入り込んだ
私は、またランマルにバレエを教えて、また興味ないような反応を取られてムキになって私を見ろなんて言っちゃう日々を繰り返すことを許された
私が今まで見せてきたもの全部をもう一度、彼に見せつけて、そうしたら彼はこう言った
「シイナが踊ってるの好きだな」
少し成長した姿であの時と同じ言葉を言う記憶のないはずのキミが本当にキミであることに感動してしまったのか私は頬を赤らめて涙を流してしまった
「え、なんで、、」
「なんで?」とかわかんないけど、私もあの時の言葉を泣いて震える口で返すよ
「もー…!ランマルの…!バカ!」
現在、、
私はもう離れないと決めた
死なないで欲しい だって…キミが私を忘れるなんて…寂しくて仕方なかったから…
痣となった傷痕を抑えながら、涙がこぼれ落ちる
その一滴が傷痕を抑えるシイナの手に落ちると彼は目を開けた
「シイナ…」
「……!」
目を赤くして透明な涙をこぼしながら気がついたランマルに驚く
「手当てしてくれたのか…さんきゅ」
起き上がるランマルの背中にコスズが腕を回して体制を安定させる
防戦一方となっているリュウマの姿を見て、すぐに立ち上がろうとする
「ダメだよランマル!」
「そ、そうです、、まだ安静にしてないと」
「いやいい…オレは行く」
2人の反対を押し切って立ち上がったランマルは傷を諸共せず、軽くジャンプして体の動きを確かめる
「2人は逃げた方がいい 最悪の場合、全滅する
それだけは避けたい」
踏み出して戦闘に加わろうとするランマルをシイナが止める
「じゃあランマルも!」
「できない…アイツの腹の傷もだいぶのもんだし…加勢がいる」
「なんで!アイツはランマルを倒すって言ってるヤツなんだよ!」
離れたくない存在を引き止めるために言葉を掛ける
また彼が死の間際を彷徨うのを避けたかった
「それは関係ない」
戦闘体制になったランマルを止める言葉は浮かばず、涙を流し続ける
ランマルはそれを見ながらも闘っている2人へ駆け出した
「待っ…!」
いやだ…いや!アンタが死ぬのは…!イヤだ…
力なく伸ばした手を下ろしてまた過去を思い出す
それは自分が言った宣戦布告であり、初心から出たアピール
「これから私が踊る姿を見続けるのよ!」
自身の言葉を思い出し、シイナは涙を止めて静かに立ち上がる
「シイナさん?」
意味深に立ち上がったシイナにコスズが不思議に思う
「私も行ってくる」
そう言って踏み出した一歩は本当に大きかった
そうよ…アンタは私の踊る姿を見続けなくちゃいけないの…だから…行くなら私も連れていきな!
キミが離れるなら私はそれを離さないために後を追う
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