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社長令嬢護衛編
36.あの事件の事実
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午後1時15分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで58:45:00
病院内 病室
セツナが窓から下の様子を確認する
シイナとランマルがスーツの男の交戦しており、加勢しようと思い窓枠に足をかけたが踏みとどまる
カリンさんの安全が優先…
「ハヤテくん!下でランマルとシイナが戦闘中!加勢よろしく!」
「うぃー」
軽すぎる返事をした後、すぐに窓から外に飛び降りた
「ガイはカリンさん背負って私と一緒に逃げるよ!」
「うっしゃあ!」
ガイが戸惑うカリンを強引に抱える
「待って待って!なになに!」
「知っとるやろがい!アンタ命狙われてんだ!」
父から見せられた殺人予告が思い出された
「あれって詐欺じゃなかったの…」
やっと状況に少々、整理がつきガイに思うがまま抱えられる
ガイとセツナが病室を飛び出すと廊下にいた看護師や他の患者が驚く
「キタザワさん!どこにいくの!」
担当の看護師と思われる人物が声をかけたが、2人は止まらなかった
セツナは走りながらスマホを開き、カタギリに電話を繋げる
「もしもし!カタギリ班長!」
『なんだ』
「私たち今!護衛対象を連れて病院から抜け出しました」
『は?』
「対応お願いします!」
『ちょ!待て…ピッ!
カタギリの有無も聞かずに通話を切断した
本部の喫煙室で一息ついていたカタギリも呆れる
「仕事増やしやがって…」
階段をジャンプで飛び降りて一気に1階まで降りる
「アナタたち!私の護衛なの!?」
「そう!」
「私!護衛はいらないと言ったはずよ!」
「それは無理な話!アナタのお父さんがそれを認められなかったの!」
「お父様が…」
ロビーの自動ドアから外に逃げ出した3人はそこから更に離れるため、走り続ける
その様子をまた、双眼鏡で視認している白衣の人物がニヤつく
「そうだ走れ走れっwそして疲れろ~」
自分は何もしていないと言うのに楽しそうである
歩道を曲がることなく真っ直ぐ走り抜けていると歩道に寄って止まっていたトラックの助手席から鉄パイプが伸びてきた
「えっ!」
セツナはそれを間一髪で跳んでかわした
助手席からおりてきたチンピラが悪い顔でこちらを睨む
「うそでしょ…」
すると、トラックの荷台が開き、そこから大勢のチンピラが溢れ出した
その大人数が一気に3人を囲んむ
「この女攫って大儲けだああ!」
「「「うぉーーーー!!!」」」
金の誘惑でこんなにも人は集まれるのだと関心する訳もなく、襲いかかってきたチンピラを一人一人、着実に倒していく
「いゃーー!」
カリンはガイの肩に担がれて移り変わる視界で叫び声をあげていた
「あ、アンタ!もうちょっと慎重に!」
「そんなこと言ってる暇ねぇよ!」
すると、背後から肩から飛び出したカリンの足を引っ張られた
「ぬおっ!」「なにっ!」
路地裏に引っ張られていった2人を見てセツナもそこに向かおうとするが路地を人数で埋められる
「こっから先は行かせねぇよお嬢さん」
「じゃっま!!」
セツナがチンピラに殴りかかった時、病院裏ではシイナが男に払い倒された
「なっ!」
「もらったぁ!!」
倒れたシイナに針金が迫ったが、ハヤテがそれを蹴って最悪を阻止する
「どしたんや!動き鈍ないか!」
「部分麻酔が…」
足に刺さった針から肉体に流れた部分麻酔が右脚の感覚を薄めており、上手く踊れなくなっている
「しゃーないやっちゃのぉー」
ハヤテはアキレス腱を伸ばしながら競り合いをしているランマルに声をかける
「ランマル!」
「な、なに…!」
「シイナ連れて逃げいや」
「えっ!ハヤテ1人でやるつもりかよ!」
一旦、相手から距離をとる
「勝てるとかは置いといて誰も死なせんためや 乗ってくれるんやろな!」
「心配だけど頼むよ」
ランマルは手に握った物を背中からハヤテに渡した
ハヤテはそれが何なのかすぐに察して高揚する
「アンタ意外とオモロいやんけ!」
言葉と同時に飛び出したハヤテは真正面から相手の頭部を狙う回し蹴りを見せる
丸見えだ…この速度ならよっぽどあの女の踊りの方が…
ボスッ!
「は…?」
ブシャッ!!
その瞬間、男の右鼻から鼻血が吹き出した
「ナメとっから!!」
更に反対側の足から放たれる回し蹴り
これは油断せずに腕を立てて防御、したかのように思えたが、腕で盾を作った時には頭が強く揺れていた
「ボヘッ!」
なんだコイツ…!脚の振りが異常に速い…!
「チンたらしとったら瞬で頭吹っ飛ぶで!!」
架橋 疾風
今期の少年隊入隊試験の受験者の中では最も足が速い
しかし、それは至ってシンプルな話であり、他の受験者よりも少々、50m走のタイムが早いだけである
ハヤテの強さの真骨頂は足の速さではなく、蹴り、つまりは足を振る速さである
それは膝からの下の筋肉を鍛え上げた結果、身についたものであり、蹴りのために足をあげた瞬間は他の者と大して速度は変わらないが、膝を伸ばしきるまでの速さが他とは一線を画している
構えから攻撃の速度が速く、関西的なユーモアも含めて彼自身はこう名付けた
「居合蹴!」
「クッ……!」
その戦闘スタイルを見てランマルとシイナは口を開く
「す、すげぇ」
「……!」
ランマルは見惚れている場合ではないと、シイナに肩を貸してそこから離れる
ハヤテは2人が十分離れたこたを確認して相手から距離をとった
スーツの男は頭や腰、腹が砂や擦り傷だらけである
「やってくれたな…」
「兄ちゃん何歳か知らへんけど子供やと思て油断しとったら足元掬わされるで」
意気揚々とした発言の直後、ハヤテは何かを感じて歯を食いしばる
「ぬ……!」
右脚が小刻みに揺れていた
「ひぃーやっぱ連続は効くわぁ~~」
居合蹴は膝から下の筋肉及びアキレス腱を強く刺激するため、何度も行うとそこを酷使され、痛みをぶり返す
「はっwざまぁみろ!」
スーツの男は今がチャンスと言わんばかりに襲いかかってきたが、両手に持った針金を呆気もなく落としてしまった
「!?」
「やっぱ気づいとらんかったんかい」
ハヤテが握った手のひらの中から1本の針金を現した
「それは…!俺の…!」
「さっき仲間からもろたんや」
ランマルから相手に見えないように背中から渡されたのが相手からくすめた針金1本だった
ハヤテが無理をして足を酷使したのはこれがあったからである
「あの泥棒が…!」
「ははっwそりゃ仲間にとっちゃ褒め言葉やな」
両手に力が入らず、針金を握ることができなくなったスーツの男はそこから背を向けて逃げ出した
「ちょ!まてや!」
ズキッ!
ハヤテの足の痛みも激しく、1歩を踏み出せずスーツの男を逃がしてしまった
「クソッ!」
街道
セツナがチンピラを倒しているが、人数が減ったように見えず、疲れが出ていた
「ふぅー はぁぁあ!」
一方、路地裏に連れていかれた2人は影に潜む何者かと対峙する
「誰かいんだろ!」
ガイが声を上げると影から出てきたのは身長が190cmはある肩幅の大きな、スーツを着たリーゼントの男だった
「その女を渡せ」
男らしい重みのある低い声だ
「やなこった…この子は俺が守んなきゃ行けねぇ」
「そうか…俺の名前は仙洞 篤志だ それでも俺に楯突くか?」
「どうでもいいなぁ お前の名前とか」
警戒を強めてドリルを回し始める
「大勢じゃなきゃ勝てねぇ奴に負ける気もしねぇしな」
挑発的な態度で相手を煽るとセンドウもその気になったのか首を鳴らして前に出た
「良いだろう こっからは俺とお前のタイマンだ 周りにいる部下どもは一歩も手を出させねぇ」
「ほう?」
「俺が勝ちゃあ 女をもらう それでいいな」
「意地でも渡さねぇよ」
ガイは肩に担いだカリンを下ろして自分の後ろに立たせる
「ぜってぇ勝つ 安心しろ」
その一言でカリンの心配を和らげる
「準備はいいか」
「おうよ」
2人はそれぞれの構えを魅せる
互いに睨み合って2者は一斉に1歩を踏み出した
「ぶっ崩す!!」
ドリルを突き出して相手の頬をえぐる
直撃は避けられたが相手の重心が片側によったことを狙い目として左拳を強く握って相手の腹に強撃をいれた
確かに強い衝撃だった、、しかし、この大型の男にそれは通用しなかった
「……!」
「なんだ 男のくせに軟弱だな」
拳を受けたにしては微動だにしていない
センドウはガイの左腕を強く掴んだ
「なぁっ……!」
ゴキッ…!
「ア"ッ!」
鍛えられている腕から鈍い音が聞こえ、力が抜ける
ガイの体は引き寄せられた
「崩れるのはお前だ」
ボゴッ…!!
「おえ"ぇ"ッ!!」
腹に打ち付けられた拳で大量の血を吐いた
地面に項垂れるように倒れて這い蹲る
ボゴッ!ボゴッ!…
ガイを踏みつけ続ける音がカリンの目を赤く染め、涙を浮かばせる
血まみれになった頭部とアスファルトの地面に垂れた血液がガイの状態を表す
「もう死ね」
最後に頭を踏みつけようとするセンドウだったが、
「やめてッ!!」
カリンが間に入ったことでその足を止めた
「私が目的なら!これ以上!この人たちに何もしないで!!」
涙を振り飛ばしながら叫ぶ少女にセンドウら足を引いた
「やめろ……かり…ん…ころ…される…ぞ」
ガラガラで言葉が読み取れない声を出す
「フッ 良いだろう この女の勇姿に免じてここは何もせず下がってやる」
センドウは2人を避けて路地裏から歩道に抜け出る
そこではセツナがほとんどのチンピラの気を失わせていた
「なんだよテメェら女ひとりにノされてんじゃねぇよ」
倒れたチンピラ一人の頭を地面に押し付けて言うとセンドウは立ち上がった
「撤収だ」
その指示で立っているチンピラ全員がその場から離れる
「おいゴラァ…待ちやがれ…」
カリンの肩を借りたガイがセンドウを引き止める
「そうだちょうどいい 聞いときたいことがあったんだ」
ついでにと言わんばかりにセンドウが質問する
「お前らЯ とかいう奴らだろ」
「「……!」」
セツナとガイが疲れきった表情で驚く
「な、なんで、それを、知ってるの…!」
荒い息をつきながらセツナが聞き返す
「そんなことはどうでもいいが、シロナワを殺した奴は誰だ」
「「……!」」
2人はさらに驚愕する
その名前が今ここで出てくることなど予想をしていなかったからだ
白縄 氷蘭
2年前の6月に北海道で暴れ回った雪王のリーダーで、当時の訓練生を除いた北海道支部の人物を全員殺した張本人
彼は涼しい戦争で赤上 勝に敗北し、死亡している
「なぜ…お前…が…シロ…ナワ…を知っている…」
ガイは弱りきってはいたが、確かに怒りを感じる声で聞いた
「なぜかって そうか お前らは知らないな」
センドウは伝わっていない事実を思い出し、今、その口で最もその事件に悔いや憎しみを残す人物に言い渡す
「シロナワに北海道支部を破壊するように命令したのは 俺だ」
「な………」
ガイの脳内に自分を救った師匠とそれを失った真実、さらには強くなろうとコスズと誓ったあの光景が周り流れる
背を向けて退散する集団にガイは叫ぶ
「待ち…やがれ…!ぜってぇ…ぜってぇ…許さねぇ…お前ら…ぜん…いん…!!蹴散らしてッ…」
言葉尽きて、気を失った
セツナとカリンがガイに駆け寄るのを横目にセンドウは呆れた
「あの程度の野郎が俺を蹴散らす?はっw無理な話だ」
あの事件の事実が今、この時になってまた、彼の心の火をに油を注いだ
ガイは薄れていく意識の中で然と、センドウの後ろ姿を見る
ぜってぇ俺がぶっ倒す…
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで58:45:00
病院内 病室
セツナが窓から下の様子を確認する
シイナとランマルがスーツの男の交戦しており、加勢しようと思い窓枠に足をかけたが踏みとどまる
カリンさんの安全が優先…
「ハヤテくん!下でランマルとシイナが戦闘中!加勢よろしく!」
「うぃー」
軽すぎる返事をした後、すぐに窓から外に飛び降りた
「ガイはカリンさん背負って私と一緒に逃げるよ!」
「うっしゃあ!」
ガイが戸惑うカリンを強引に抱える
「待って待って!なになに!」
「知っとるやろがい!アンタ命狙われてんだ!」
父から見せられた殺人予告が思い出された
「あれって詐欺じゃなかったの…」
やっと状況に少々、整理がつきガイに思うがまま抱えられる
ガイとセツナが病室を飛び出すと廊下にいた看護師や他の患者が驚く
「キタザワさん!どこにいくの!」
担当の看護師と思われる人物が声をかけたが、2人は止まらなかった
セツナは走りながらスマホを開き、カタギリに電話を繋げる
「もしもし!カタギリ班長!」
『なんだ』
「私たち今!護衛対象を連れて病院から抜け出しました」
『は?』
「対応お願いします!」
『ちょ!待て…ピッ!
カタギリの有無も聞かずに通話を切断した
本部の喫煙室で一息ついていたカタギリも呆れる
「仕事増やしやがって…」
階段をジャンプで飛び降りて一気に1階まで降りる
「アナタたち!私の護衛なの!?」
「そう!」
「私!護衛はいらないと言ったはずよ!」
「それは無理な話!アナタのお父さんがそれを認められなかったの!」
「お父様が…」
ロビーの自動ドアから外に逃げ出した3人はそこから更に離れるため、走り続ける
その様子をまた、双眼鏡で視認している白衣の人物がニヤつく
「そうだ走れ走れっwそして疲れろ~」
自分は何もしていないと言うのに楽しそうである
歩道を曲がることなく真っ直ぐ走り抜けていると歩道に寄って止まっていたトラックの助手席から鉄パイプが伸びてきた
「えっ!」
セツナはそれを間一髪で跳んでかわした
助手席からおりてきたチンピラが悪い顔でこちらを睨む
「うそでしょ…」
すると、トラックの荷台が開き、そこから大勢のチンピラが溢れ出した
その大人数が一気に3人を囲んむ
「この女攫って大儲けだああ!」
「「「うぉーーーー!!!」」」
金の誘惑でこんなにも人は集まれるのだと関心する訳もなく、襲いかかってきたチンピラを一人一人、着実に倒していく
「いゃーー!」
カリンはガイの肩に担がれて移り変わる視界で叫び声をあげていた
「あ、アンタ!もうちょっと慎重に!」
「そんなこと言ってる暇ねぇよ!」
すると、背後から肩から飛び出したカリンの足を引っ張られた
「ぬおっ!」「なにっ!」
路地裏に引っ張られていった2人を見てセツナもそこに向かおうとするが路地を人数で埋められる
「こっから先は行かせねぇよお嬢さん」
「じゃっま!!」
セツナがチンピラに殴りかかった時、病院裏ではシイナが男に払い倒された
「なっ!」
「もらったぁ!!」
倒れたシイナに針金が迫ったが、ハヤテがそれを蹴って最悪を阻止する
「どしたんや!動き鈍ないか!」
「部分麻酔が…」
足に刺さった針から肉体に流れた部分麻酔が右脚の感覚を薄めており、上手く踊れなくなっている
「しゃーないやっちゃのぉー」
ハヤテはアキレス腱を伸ばしながら競り合いをしているランマルに声をかける
「ランマル!」
「な、なに…!」
「シイナ連れて逃げいや」
「えっ!ハヤテ1人でやるつもりかよ!」
一旦、相手から距離をとる
「勝てるとかは置いといて誰も死なせんためや 乗ってくれるんやろな!」
「心配だけど頼むよ」
ランマルは手に握った物を背中からハヤテに渡した
ハヤテはそれが何なのかすぐに察して高揚する
「アンタ意外とオモロいやんけ!」
言葉と同時に飛び出したハヤテは真正面から相手の頭部を狙う回し蹴りを見せる
丸見えだ…この速度ならよっぽどあの女の踊りの方が…
ボスッ!
「は…?」
ブシャッ!!
その瞬間、男の右鼻から鼻血が吹き出した
「ナメとっから!!」
更に反対側の足から放たれる回し蹴り
これは油断せずに腕を立てて防御、したかのように思えたが、腕で盾を作った時には頭が強く揺れていた
「ボヘッ!」
なんだコイツ…!脚の振りが異常に速い…!
「チンたらしとったら瞬で頭吹っ飛ぶで!!」
架橋 疾風
今期の少年隊入隊試験の受験者の中では最も足が速い
しかし、それは至ってシンプルな話であり、他の受験者よりも少々、50m走のタイムが早いだけである
ハヤテの強さの真骨頂は足の速さではなく、蹴り、つまりは足を振る速さである
それは膝からの下の筋肉を鍛え上げた結果、身についたものであり、蹴りのために足をあげた瞬間は他の者と大して速度は変わらないが、膝を伸ばしきるまでの速さが他とは一線を画している
構えから攻撃の速度が速く、関西的なユーモアも含めて彼自身はこう名付けた
「居合蹴!」
「クッ……!」
その戦闘スタイルを見てランマルとシイナは口を開く
「す、すげぇ」
「……!」
ランマルは見惚れている場合ではないと、シイナに肩を貸してそこから離れる
ハヤテは2人が十分離れたこたを確認して相手から距離をとった
スーツの男は頭や腰、腹が砂や擦り傷だらけである
「やってくれたな…」
「兄ちゃん何歳か知らへんけど子供やと思て油断しとったら足元掬わされるで」
意気揚々とした発言の直後、ハヤテは何かを感じて歯を食いしばる
「ぬ……!」
右脚が小刻みに揺れていた
「ひぃーやっぱ連続は効くわぁ~~」
居合蹴は膝から下の筋肉及びアキレス腱を強く刺激するため、何度も行うとそこを酷使され、痛みをぶり返す
「はっwざまぁみろ!」
スーツの男は今がチャンスと言わんばかりに襲いかかってきたが、両手に持った針金を呆気もなく落としてしまった
「!?」
「やっぱ気づいとらんかったんかい」
ハヤテが握った手のひらの中から1本の針金を現した
「それは…!俺の…!」
「さっき仲間からもろたんや」
ランマルから相手に見えないように背中から渡されたのが相手からくすめた針金1本だった
ハヤテが無理をして足を酷使したのはこれがあったからである
「あの泥棒が…!」
「ははっwそりゃ仲間にとっちゃ褒め言葉やな」
両手に力が入らず、針金を握ることができなくなったスーツの男はそこから背を向けて逃げ出した
「ちょ!まてや!」
ズキッ!
ハヤテの足の痛みも激しく、1歩を踏み出せずスーツの男を逃がしてしまった
「クソッ!」
街道
セツナがチンピラを倒しているが、人数が減ったように見えず、疲れが出ていた
「ふぅー はぁぁあ!」
一方、路地裏に連れていかれた2人は影に潜む何者かと対峙する
「誰かいんだろ!」
ガイが声を上げると影から出てきたのは身長が190cmはある肩幅の大きな、スーツを着たリーゼントの男だった
「その女を渡せ」
男らしい重みのある低い声だ
「やなこった…この子は俺が守んなきゃ行けねぇ」
「そうか…俺の名前は仙洞 篤志だ それでも俺に楯突くか?」
「どうでもいいなぁ お前の名前とか」
警戒を強めてドリルを回し始める
「大勢じゃなきゃ勝てねぇ奴に負ける気もしねぇしな」
挑発的な態度で相手を煽るとセンドウもその気になったのか首を鳴らして前に出た
「良いだろう こっからは俺とお前のタイマンだ 周りにいる部下どもは一歩も手を出させねぇ」
「ほう?」
「俺が勝ちゃあ 女をもらう それでいいな」
「意地でも渡さねぇよ」
ガイは肩に担いだカリンを下ろして自分の後ろに立たせる
「ぜってぇ勝つ 安心しろ」
その一言でカリンの心配を和らげる
「準備はいいか」
「おうよ」
2人はそれぞれの構えを魅せる
互いに睨み合って2者は一斉に1歩を踏み出した
「ぶっ崩す!!」
ドリルを突き出して相手の頬をえぐる
直撃は避けられたが相手の重心が片側によったことを狙い目として左拳を強く握って相手の腹に強撃をいれた
確かに強い衝撃だった、、しかし、この大型の男にそれは通用しなかった
「……!」
「なんだ 男のくせに軟弱だな」
拳を受けたにしては微動だにしていない
センドウはガイの左腕を強く掴んだ
「なぁっ……!」
ゴキッ…!
「ア"ッ!」
鍛えられている腕から鈍い音が聞こえ、力が抜ける
ガイの体は引き寄せられた
「崩れるのはお前だ」
ボゴッ…!!
「おえ"ぇ"ッ!!」
腹に打ち付けられた拳で大量の血を吐いた
地面に項垂れるように倒れて這い蹲る
ボゴッ!ボゴッ!…
ガイを踏みつけ続ける音がカリンの目を赤く染め、涙を浮かばせる
血まみれになった頭部とアスファルトの地面に垂れた血液がガイの状態を表す
「もう死ね」
最後に頭を踏みつけようとするセンドウだったが、
「やめてッ!!」
カリンが間に入ったことでその足を止めた
「私が目的なら!これ以上!この人たちに何もしないで!!」
涙を振り飛ばしながら叫ぶ少女にセンドウら足を引いた
「やめろ……かり…ん…ころ…される…ぞ」
ガラガラで言葉が読み取れない声を出す
「フッ 良いだろう この女の勇姿に免じてここは何もせず下がってやる」
センドウは2人を避けて路地裏から歩道に抜け出る
そこではセツナがほとんどのチンピラの気を失わせていた
「なんだよテメェら女ひとりにノされてんじゃねぇよ」
倒れたチンピラ一人の頭を地面に押し付けて言うとセンドウは立ち上がった
「撤収だ」
その指示で立っているチンピラ全員がその場から離れる
「おいゴラァ…待ちやがれ…」
カリンの肩を借りたガイがセンドウを引き止める
「そうだちょうどいい 聞いときたいことがあったんだ」
ついでにと言わんばかりにセンドウが質問する
「お前らЯ とかいう奴らだろ」
「「……!」」
セツナとガイが疲れきった表情で驚く
「な、なんで、それを、知ってるの…!」
荒い息をつきながらセツナが聞き返す
「そんなことはどうでもいいが、シロナワを殺した奴は誰だ」
「「……!」」
2人はさらに驚愕する
その名前が今ここで出てくることなど予想をしていなかったからだ
白縄 氷蘭
2年前の6月に北海道で暴れ回った雪王のリーダーで、当時の訓練生を除いた北海道支部の人物を全員殺した張本人
彼は涼しい戦争で赤上 勝に敗北し、死亡している
「なぜ…お前…が…シロ…ナワ…を知っている…」
ガイは弱りきってはいたが、確かに怒りを感じる声で聞いた
「なぜかって そうか お前らは知らないな」
センドウは伝わっていない事実を思い出し、今、その口で最もその事件に悔いや憎しみを残す人物に言い渡す
「シロナワに北海道支部を破壊するように命令したのは 俺だ」
「な………」
ガイの脳内に自分を救った師匠とそれを失った真実、さらには強くなろうとコスズと誓ったあの光景が周り流れる
背を向けて退散する集団にガイは叫ぶ
「待ち…やがれ…!ぜってぇ…ぜってぇ…許さねぇ…お前ら…ぜん…いん…!!蹴散らしてッ…」
言葉尽きて、気を失った
セツナとカリンがガイに駆け寄るのを横目にセンドウは呆れた
「あの程度の野郎が俺を蹴散らす?はっw無理な話だ」
あの事件の事実が今、この時になってまた、彼の心の火をに油を注いだ
ガイは薄れていく意識の中で然と、センドウの後ろ姿を見る
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