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社長令嬢護衛編
39.白衣
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午後4時30分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで残り31:30:00
校庭
ミツキがハヤテの脚に垂れる血液を遠目で見て目を見開く
「なにあの人!自分で蹴って自分で怪我してるよ!」
「……」
セツナはその隣で黙って見るばかりだが、過去、本部の食堂で卓を共にして夕飯を食べていた時の会話を思い出す
「じゃあハヤテは足の速さっていうより蹴りの速度って感じなんだね」
とカレーを呑み込みながら話すレナにゴウが「汚ぇなぁ」と顰める
「せやなー 俺は膝から下の筋肉が他のやつより発達してるからできるんやけど…」
一旦、カレーを口に含んで飲み込む
「長く同じことしたり、力込め過ぎたりしたら脚が衝撃に耐えられんではち切れんねん」
「え!それだいじょぶなの!!」
レナが机を叩いた反動でスプーンが床に落ちる
「もーレナ何やってんの」
セツナが床に落ちたスプーンを拾うため姿勢を低くすると座るハヤテの足首に目が止まる
巻かれた包帯と補強機が目立つ
それを目にしながらハヤテの軽々しい話を聞き続ける
「よゆーやで~ 実際今まで、使えんくなることなんてなかったからな」
その時のハヤテの笑顔とセンドウを相手にしている今のハヤテの表情の違いにセツナは心配の目を向けている
「脚ぶっ壊してでもアンタを倒すで」
「焦り顔でよくほざくガキだ」
ひと息の時間が流れる
その間に2人に視線が集まった 全員が拳を止めて睨み合い、そしてこれから始まる闘いに目を奪われる
2者が同時に踏み出した
一瞬の判断、ハヤテの回し蹴りを腕で受け止めた
蹴りの威力を殺して脚が止まる
ビキッ…!
「イ"ッ"…!」
チッ…やっぱ負担重いな
「止まってんぞ!」
拳が左横腹に突き当たる瞬間、距離をとる
「ふぅー…」
右脚から伝って垂れる血液にセンドウの目が移る
「血圧を上げているのか」
ハヤテが焦り顔で冷え汗を垂らして微妙に笑う
「よぉわかるなぁ 元々、体ん中操作すんのは得意やねん!」
太くなる血管が血流を早め、体温を上昇させることによって身体機能を増強する
脚の血管が皮膚を超えて赤紫に筋を通す
また右振りか…
センドウが同一の動きに呆れた
「とか思ってんねんか脳筋!!」
「……!」
右脚を自身の右手で持つ
脚を手で持ち上げ、頭よりも上へ
「脚脳天かち割り」
落とされた右脚がセンドウの頭に衝撃を走らせた
「グハッ…!」
タイミングと打点をズラしやがった…!
ゴガッ…!
「痛っ…!」
右脚の負荷えっぐッ!
ガシッ!
「……!」
センドウが頭に乗せられたハヤテの脚を左手で強く掴む
「右脚は限界じゃないか?」
ゴキッ!
「ナ""ッ!離さんかい!!」
「断る!」
脚を持ったまま腰を上げて、ハヤテを掴みあげる
「やばっ!」
「オラァ!!」
ドォン!
ハヤテを地面に叩きつけると砂埃が起こり、背中に激痛を走らせる
「フンッ!」
センドウの巨大な足がハヤテの腹に強い衝撃を与えた
「オ"エ"ッ…!」
臓物を破壊されるような激痛で血液を吐き吹く
「死ね!!」
頭を破壊する足底がハヤテの眼前に現れた瞬間、センドウの頭は弾かれた
ハヤテが目を開くとヒュウがセンドウの頭を蹴り飛ばした光景があった
「ソイツは俺がサッカーでねじ伏せたい相手だ
ここで死なれちゃ困る」
ハヤテにシュートを止められたことで怒りを覚えているヒュウが巨漢に牙を向ける
「どけぇ!!!」
ヒュウの背後から聞こえる大声、呼応したヒュウがそこから退ける
すると、猛進するアバレが一直線に駆け抜け、センドウの腹に突進した
「グッ…!」
まともに突進を食らって息が止まる
「闘牛かお前は…!」
「いや!!俺は暴れ牛だ!!ハグでもしようぜヤクザ!!」
腕を背中に巻き付かせて強く引き寄せる
「離せ!!」
しかし、縛りが強く引き剥がすことができない
「そんまま抑えとけよアバレ!!」
ヒュウの飛び回し蹴りがまたもや頭を振り抜く
「そろそろ脳震盪でも起こんじゃねぇのお前」
「ほざいてろガキ共!!」
ボォン!!
強烈な膝蹴りが自らを縛るアバレの腹に突き当たる
「オォォォッ!!」
今にも吐瀉物を吐きそうになるが、力を緩めず相手を拘束し続ける
「もういっちょ」
ヒュウのジャンピングミドルキックが顔面を捉えたように思った時、センドウは額に力を込めた
ゴンッ!
「硬った!!」
勢いの乗ったミドルキックを強固な額で受けた
「そろそろ離せ 牛ガキ」
ボゴンッ!
「オエッ!」
もう一度、繰り出された膝蹴りでアバレは腕を離してしまった
「3人まとめて殺してやる」
倒れているハヤテ、空中から着地できていないヒュウ、振りほどかれて体制の整わないアバレ
3人が隙だらけのピンチに現れたのは、、
「お前ら…」
優しくも僅かな怒りを持った声
「キャプテンを立たせろ」
センドウに飛びついたガクトは空中でセンドウの頭を手に収めるとそのまま、膝蹴りを顔面に喰らわせた
「「「うーすっ」」」
3人が気だるげに答えるとガクトは部員を後ろに相手の前に立ちはだかった
「タイマン張ろうぜ センドウくん」
「生意気なやつしかいねぇのかこの学園は」
グラウンド
羽斑の襲撃を受けて一時的な避難場所となったここでは部活動や補習で残った生徒たちが集まっていた
教頭が集団の前に立ち、生徒全員の安全把握を待っていた
すると、1人の女教師が教頭の前に現れて話す
「サッカー部の子たちとあと色々いません!」
「またかアイツら!元不良集団は本当に困るな!」
怒りで怒鳴っていると携帯が鳴った
勢いよく受信ボタンをタップし、耳に当てる
「こちら井上!」
「私だ」
「こ、校長!!」
怒り声が焦り声に変わった
「今すぐ、北澤 夏鈴の安否を確認しろ」
「き、きたざわ?」
携帯を耳から離し、女教師に確認をとる
「北澤 夏鈴という生徒はここにいるか」
「北澤さんもまだ、確認できていないです…」
「なに!?」
電話越しで聞いていた校長が深いため息をついた
体育館
「ア"ッ…!」
バスケットコートの中心でシイナが白衣を着た仮面の何者かに首を掴まれていた
「シイナ!!」
カリン、ランマル、シイナが残った体育館で危機的状況を迎えていた
「アンタ何者だ!」
ランマルがナイフを振るうと白衣はシイナを離して後ろに下がった
「あーそれは言えないな~」
仮面の中からこもっているが悠長な声が聞こえる
「キミらも知ってるでしょー 同じ七黒じゃん」
仮面に彫り塗りされた『N』という一文字が表している
シイナが首を押えながら思い出す
隊長が遭遇したのは本当らしいわね…
「キタザワさん」
「……!」
横に腰を抜かして座り、呆気にとられているカリンに注意する
「逃げなさい 狙いはあなたよ」
「わ、わかったわ…」
オドオドしく背を向けて走る姿を見て、白衣は飛び出した
「逃がさないよ」
「行かせないわ!!」
シイナの美しいフォームから放たれた二弾蹴りに腕の動きを合わせて受ける
「へぇ~綺麗な蹴りだ 戦いに美しさをプラスするのは美化的精神が強すぎる人か、、」
白衣はシイナの耳元に口を寄せた
「好きな人が近くにいて、はしたない姿を魅せたくない人だね」
「……!黙れ!!」
至近距離の白衣を弾き飛ばして荒々しく蹴りを連発する
白衣はそれをのらりくらりとかわす
「あ~あ~ はしたなーい はしたなーい」
白衣の背後、うなじを狙う影あり
「子供の命狙うとか、どっちがはしたないだかな!」
ナイフの刃がうなじを切断する瞬間、白衣は華麗に舞った
ランマルの背後に着地する時、懐から取り出した何も入っていない試験官の栓を抜く
しかし、ランマルは何かに触れたような冷たい感覚を帯びる
「はいはーい 払わないと大変なことになるよー」
さらに取り出されたのスプレー缶には『酸素』とゴシック体で書かれていた
それを目視したランマルが近くにいるシイナに声を上げる
「離れろシイナ!!」
「え、」
戸惑った
「おっそぉーい」
スプレーが発射され、ランマルが見えない物質を直に浴びる
ボォーーン!!
爆発が起こり、ランマルが吹き飛ばされる
「ランマル!!」
舞台の上に背中を打ちつける
灰を浴び、服も焼き破れ、頬が黒く染まる
何とか意識を保って立ち上がるとランマルを火がついた服を脱ぎ捨てる
「水素爆発かよ、、」
「ごめいとーう!!」
水素爆発
水素の濃度が4%を超えることで酸素と急激に反応し、爆発を起こす
何も入っていなかったように見えた試験官には濃度を4%寸前にした水素であり、それが酸素に触れることで爆発を起こした
極悪な攻撃手段である
「アンタ…ランマルになんてことを!!」
「怒った 怒ったー」
怒りに身を任せて攻撃し続けるシイナの単純な動きに煽りながら避けていると思えば、急激に接近し腕に何かを刺した
「はいあげる」
ビリッ…!
「クッ……!」
この感覚……あの時の、、
病院で戦闘した黒スーツの男の針から与えられた麻酔の感覚
いや…!あの時より速効性が…!
左腕が完全に麻痺し、伝って全身へ
足の感覚を失いバタリと倒れてしまった
「はい!おしまい!!」
白衣が振り下ろすナイフがシイナの肉に突き刺さる瞬間、ナイフは手元からなくなる
「ありゃ?」
視線を横にそらすとそこには息を荒くして弱々しく立つランマルがナイフを持っていた
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「おいおーい動きすぎると死ぬよ~?」
「うる、、ナッ……!」
手のひらの痛みでナイフを手放す
確認すると皮膚が爛れ始めていた
「あーごめんごめん忘れてたー それ持ち手に硫酸塗ってんの気をつけてね☆」
白衣の手元をよく見るとゴム手袋をしていることに気づく
「チェッ…」
この白衣仮面マジか…全力でオレたちを殺しにきてやがる
改めて危機感を増させ、相手を警戒する
「そんなに女の子が死ぬのが見たくないか」
右手にナイフ、左手におそらく水素が入っているだろう試験官を持つ
「だったらキミから殺してあげるよ」
ナイフ攻撃の接近戦が始まるも、爆発の影響と利き手が負傷していることで相手の物を奪う戦闘ができず、回避に徹することしかできなくなる
「クソッ…!」
勢いよく足を上げて蹴り離そうとした時、白衣はまとも口を開く
「私の服の中には大量の水素が入った試験官があるよ」
「……!」
爆発を恐れ、足が止まる
「はい怯んだ!」
ブスッ!
「クッ…!」
止まった足にナイフを突き刺す
何とか動いて相手から距離をとる
「ねぇアンタ今、躊躇したでしょ」
「はぁ?」
「自分が死ぬのが怖かった?それとも自分の手で誰かが死ぬのが嫌だった? まぁどっちでもいいけどさ」
仮面に手を当てて、左目のみを影から覗かせる
「そんなにぬるかったら私に殺されるよ」
「……!」
「ていうかここで生き残れたとして、すぐ死ぬよアンタもそこで声も出せず動けなくなったアイツも…」
この裏世界で生きていく心理を奇しくも倒さなければならない相手に説かれる
「敵を、時には自分を殺すことになっても目的を果たさなきゃ この世界じゃ存在しないのといっしょだ」
話しながら移動し、シイナを仮面の影で見下ろす
「だから教えてあげるよ キミが今、躊躇したせいで大事なものがなくなるっていう真実を」
「……!やめ…!ナッ…!」
痛みが感情に勝り、その場に倒れてしまう
試験官の栓が抜かれ、麻痺して動けないシイナの体に水素が巻かれる
「や…だ…」
怯えるシイナを、感情を読み取らせない仮面が威圧する
「やめろぉぉお!!」
ランマルの叫びも虚しく酸素のスプレー缶が噴射されるその時、、
ビュンッ!ドォン!
高速で駆けつけた男が白衣の頭部を背後から蹴り飛ばした
「下がれ雑魚共、コイツの相手は俺がする」
シイナとランマルが我に返ったように身を見開く
白衣の仮面から確かな笑い声がした
「なはははっ!ちょっと来るのが遅いんじゃないかな!キヤマくん!!」
「安心しろ こっからは瞬だ」
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで残り31:30:00
校庭
ミツキがハヤテの脚に垂れる血液を遠目で見て目を見開く
「なにあの人!自分で蹴って自分で怪我してるよ!」
「……」
セツナはその隣で黙って見るばかりだが、過去、本部の食堂で卓を共にして夕飯を食べていた時の会話を思い出す
「じゃあハヤテは足の速さっていうより蹴りの速度って感じなんだね」
とカレーを呑み込みながら話すレナにゴウが「汚ぇなぁ」と顰める
「せやなー 俺は膝から下の筋肉が他のやつより発達してるからできるんやけど…」
一旦、カレーを口に含んで飲み込む
「長く同じことしたり、力込め過ぎたりしたら脚が衝撃に耐えられんではち切れんねん」
「え!それだいじょぶなの!!」
レナが机を叩いた反動でスプーンが床に落ちる
「もーレナ何やってんの」
セツナが床に落ちたスプーンを拾うため姿勢を低くすると座るハヤテの足首に目が止まる
巻かれた包帯と補強機が目立つ
それを目にしながらハヤテの軽々しい話を聞き続ける
「よゆーやで~ 実際今まで、使えんくなることなんてなかったからな」
その時のハヤテの笑顔とセンドウを相手にしている今のハヤテの表情の違いにセツナは心配の目を向けている
「脚ぶっ壊してでもアンタを倒すで」
「焦り顔でよくほざくガキだ」
ひと息の時間が流れる
その間に2人に視線が集まった 全員が拳を止めて睨み合い、そしてこれから始まる闘いに目を奪われる
2者が同時に踏み出した
一瞬の判断、ハヤテの回し蹴りを腕で受け止めた
蹴りの威力を殺して脚が止まる
ビキッ…!
「イ"ッ"…!」
チッ…やっぱ負担重いな
「止まってんぞ!」
拳が左横腹に突き当たる瞬間、距離をとる
「ふぅー…」
右脚から伝って垂れる血液にセンドウの目が移る
「血圧を上げているのか」
ハヤテが焦り顔で冷え汗を垂らして微妙に笑う
「よぉわかるなぁ 元々、体ん中操作すんのは得意やねん!」
太くなる血管が血流を早め、体温を上昇させることによって身体機能を増強する
脚の血管が皮膚を超えて赤紫に筋を通す
また右振りか…
センドウが同一の動きに呆れた
「とか思ってんねんか脳筋!!」
「……!」
右脚を自身の右手で持つ
脚を手で持ち上げ、頭よりも上へ
「脚脳天かち割り」
落とされた右脚がセンドウの頭に衝撃を走らせた
「グハッ…!」
タイミングと打点をズラしやがった…!
ゴガッ…!
「痛っ…!」
右脚の負荷えっぐッ!
ガシッ!
「……!」
センドウが頭に乗せられたハヤテの脚を左手で強く掴む
「右脚は限界じゃないか?」
ゴキッ!
「ナ""ッ!離さんかい!!」
「断る!」
脚を持ったまま腰を上げて、ハヤテを掴みあげる
「やばっ!」
「オラァ!!」
ドォン!
ハヤテを地面に叩きつけると砂埃が起こり、背中に激痛を走らせる
「フンッ!」
センドウの巨大な足がハヤテの腹に強い衝撃を与えた
「オ"エ"ッ…!」
臓物を破壊されるような激痛で血液を吐き吹く
「死ね!!」
頭を破壊する足底がハヤテの眼前に現れた瞬間、センドウの頭は弾かれた
ハヤテが目を開くとヒュウがセンドウの頭を蹴り飛ばした光景があった
「ソイツは俺がサッカーでねじ伏せたい相手だ
ここで死なれちゃ困る」
ハヤテにシュートを止められたことで怒りを覚えているヒュウが巨漢に牙を向ける
「どけぇ!!!」
ヒュウの背後から聞こえる大声、呼応したヒュウがそこから退ける
すると、猛進するアバレが一直線に駆け抜け、センドウの腹に突進した
「グッ…!」
まともに突進を食らって息が止まる
「闘牛かお前は…!」
「いや!!俺は暴れ牛だ!!ハグでもしようぜヤクザ!!」
腕を背中に巻き付かせて強く引き寄せる
「離せ!!」
しかし、縛りが強く引き剥がすことができない
「そんまま抑えとけよアバレ!!」
ヒュウの飛び回し蹴りがまたもや頭を振り抜く
「そろそろ脳震盪でも起こんじゃねぇのお前」
「ほざいてろガキ共!!」
ボォン!!
強烈な膝蹴りが自らを縛るアバレの腹に突き当たる
「オォォォッ!!」
今にも吐瀉物を吐きそうになるが、力を緩めず相手を拘束し続ける
「もういっちょ」
ヒュウのジャンピングミドルキックが顔面を捉えたように思った時、センドウは額に力を込めた
ゴンッ!
「硬った!!」
勢いの乗ったミドルキックを強固な額で受けた
「そろそろ離せ 牛ガキ」
ボゴンッ!
「オエッ!」
もう一度、繰り出された膝蹴りでアバレは腕を離してしまった
「3人まとめて殺してやる」
倒れているハヤテ、空中から着地できていないヒュウ、振りほどかれて体制の整わないアバレ
3人が隙だらけのピンチに現れたのは、、
「お前ら…」
優しくも僅かな怒りを持った声
「キャプテンを立たせろ」
センドウに飛びついたガクトは空中でセンドウの頭を手に収めるとそのまま、膝蹴りを顔面に喰らわせた
「「「うーすっ」」」
3人が気だるげに答えるとガクトは部員を後ろに相手の前に立ちはだかった
「タイマン張ろうぜ センドウくん」
「生意気なやつしかいねぇのかこの学園は」
グラウンド
羽斑の襲撃を受けて一時的な避難場所となったここでは部活動や補習で残った生徒たちが集まっていた
教頭が集団の前に立ち、生徒全員の安全把握を待っていた
すると、1人の女教師が教頭の前に現れて話す
「サッカー部の子たちとあと色々いません!」
「またかアイツら!元不良集団は本当に困るな!」
怒りで怒鳴っていると携帯が鳴った
勢いよく受信ボタンをタップし、耳に当てる
「こちら井上!」
「私だ」
「こ、校長!!」
怒り声が焦り声に変わった
「今すぐ、北澤 夏鈴の安否を確認しろ」
「き、きたざわ?」
携帯を耳から離し、女教師に確認をとる
「北澤 夏鈴という生徒はここにいるか」
「北澤さんもまだ、確認できていないです…」
「なに!?」
電話越しで聞いていた校長が深いため息をついた
体育館
「ア"ッ…!」
バスケットコートの中心でシイナが白衣を着た仮面の何者かに首を掴まれていた
「シイナ!!」
カリン、ランマル、シイナが残った体育館で危機的状況を迎えていた
「アンタ何者だ!」
ランマルがナイフを振るうと白衣はシイナを離して後ろに下がった
「あーそれは言えないな~」
仮面の中からこもっているが悠長な声が聞こえる
「キミらも知ってるでしょー 同じ七黒じゃん」
仮面に彫り塗りされた『N』という一文字が表している
シイナが首を押えながら思い出す
隊長が遭遇したのは本当らしいわね…
「キタザワさん」
「……!」
横に腰を抜かして座り、呆気にとられているカリンに注意する
「逃げなさい 狙いはあなたよ」
「わ、わかったわ…」
オドオドしく背を向けて走る姿を見て、白衣は飛び出した
「逃がさないよ」
「行かせないわ!!」
シイナの美しいフォームから放たれた二弾蹴りに腕の動きを合わせて受ける
「へぇ~綺麗な蹴りだ 戦いに美しさをプラスするのは美化的精神が強すぎる人か、、」
白衣はシイナの耳元に口を寄せた
「好きな人が近くにいて、はしたない姿を魅せたくない人だね」
「……!黙れ!!」
至近距離の白衣を弾き飛ばして荒々しく蹴りを連発する
白衣はそれをのらりくらりとかわす
「あ~あ~ はしたなーい はしたなーい」
白衣の背後、うなじを狙う影あり
「子供の命狙うとか、どっちがはしたないだかな!」
ナイフの刃がうなじを切断する瞬間、白衣は華麗に舞った
ランマルの背後に着地する時、懐から取り出した何も入っていない試験官の栓を抜く
しかし、ランマルは何かに触れたような冷たい感覚を帯びる
「はいはーい 払わないと大変なことになるよー」
さらに取り出されたのスプレー缶には『酸素』とゴシック体で書かれていた
それを目視したランマルが近くにいるシイナに声を上げる
「離れろシイナ!!」
「え、」
戸惑った
「おっそぉーい」
スプレーが発射され、ランマルが見えない物質を直に浴びる
ボォーーン!!
爆発が起こり、ランマルが吹き飛ばされる
「ランマル!!」
舞台の上に背中を打ちつける
灰を浴び、服も焼き破れ、頬が黒く染まる
何とか意識を保って立ち上がるとランマルを火がついた服を脱ぎ捨てる
「水素爆発かよ、、」
「ごめいとーう!!」
水素爆発
水素の濃度が4%を超えることで酸素と急激に反応し、爆発を起こす
何も入っていなかったように見えた試験官には濃度を4%寸前にした水素であり、それが酸素に触れることで爆発を起こした
極悪な攻撃手段である
「アンタ…ランマルになんてことを!!」
「怒った 怒ったー」
怒りに身を任せて攻撃し続けるシイナの単純な動きに煽りながら避けていると思えば、急激に接近し腕に何かを刺した
「はいあげる」
ビリッ…!
「クッ……!」
この感覚……あの時の、、
病院で戦闘した黒スーツの男の針から与えられた麻酔の感覚
いや…!あの時より速効性が…!
左腕が完全に麻痺し、伝って全身へ
足の感覚を失いバタリと倒れてしまった
「はい!おしまい!!」
白衣が振り下ろすナイフがシイナの肉に突き刺さる瞬間、ナイフは手元からなくなる
「ありゃ?」
視線を横にそらすとそこには息を荒くして弱々しく立つランマルがナイフを持っていた
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「おいおーい動きすぎると死ぬよ~?」
「うる、、ナッ……!」
手のひらの痛みでナイフを手放す
確認すると皮膚が爛れ始めていた
「あーごめんごめん忘れてたー それ持ち手に硫酸塗ってんの気をつけてね☆」
白衣の手元をよく見るとゴム手袋をしていることに気づく
「チェッ…」
この白衣仮面マジか…全力でオレたちを殺しにきてやがる
改めて危機感を増させ、相手を警戒する
「そんなに女の子が死ぬのが見たくないか」
右手にナイフ、左手におそらく水素が入っているだろう試験官を持つ
「だったらキミから殺してあげるよ」
ナイフ攻撃の接近戦が始まるも、爆発の影響と利き手が負傷していることで相手の物を奪う戦闘ができず、回避に徹することしかできなくなる
「クソッ…!」
勢いよく足を上げて蹴り離そうとした時、白衣はまとも口を開く
「私の服の中には大量の水素が入った試験官があるよ」
「……!」
爆発を恐れ、足が止まる
「はい怯んだ!」
ブスッ!
「クッ…!」
止まった足にナイフを突き刺す
何とか動いて相手から距離をとる
「ねぇアンタ今、躊躇したでしょ」
「はぁ?」
「自分が死ぬのが怖かった?それとも自分の手で誰かが死ぬのが嫌だった? まぁどっちでもいいけどさ」
仮面に手を当てて、左目のみを影から覗かせる
「そんなにぬるかったら私に殺されるよ」
「……!」
「ていうかここで生き残れたとして、すぐ死ぬよアンタもそこで声も出せず動けなくなったアイツも…」
この裏世界で生きていく心理を奇しくも倒さなければならない相手に説かれる
「敵を、時には自分を殺すことになっても目的を果たさなきゃ この世界じゃ存在しないのといっしょだ」
話しながら移動し、シイナを仮面の影で見下ろす
「だから教えてあげるよ キミが今、躊躇したせいで大事なものがなくなるっていう真実を」
「……!やめ…!ナッ…!」
痛みが感情に勝り、その場に倒れてしまう
試験官の栓が抜かれ、麻痺して動けないシイナの体に水素が巻かれる
「や…だ…」
怯えるシイナを、感情を読み取らせない仮面が威圧する
「やめろぉぉお!!」
ランマルの叫びも虚しく酸素のスプレー缶が噴射されるその時、、
ビュンッ!ドォン!
高速で駆けつけた男が白衣の頭部を背後から蹴り飛ばした
「下がれ雑魚共、コイツの相手は俺がする」
シイナとランマルが我に返ったように身を見開く
白衣の仮面から確かな笑い声がした
「なはははっ!ちょっと来るのが遅いんじゃないかな!キヤマくん!!」
「安心しろ こっからは瞬だ」
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