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社長令嬢護衛編
44.護られるか攫われるか
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午前11時45分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:45:00
特別棟前自然芝
シイナは相手の目的であるカリンを背後に仮面と睨み合っていた
5分くらいたったかしら…攻めてこないわね…いっそ逃げる?いや、背中を見せたら殺されるわね…
さっきからガラス割れる音とか、悲鳴とか、まばらに聞こえてくるってことはここ以外でも何かが起きてる…仲間の助けは望み薄め…
でも、ランマルと一緒に闘って勝てなかった相手に私1人、それに今はカリンがいる…
いや、やるしかない カリンを護れるのは私だけだから
硬い決意を胸にした時、白衣も痺れを切らしたのか口を開いた
「ねぇ?交渉なんだけどさぁ」
「は?」
「私あんまり動きたくないわけ だからその娘受け渡してくんないかなぁ」
「何言っ…」
「あーわかるよわかるわかる そう簡単にするわけないよねぇ でもさぁ」
白衣は言葉を少し溜めて言い放った
「死ぬことにビビってるキミじゃ私に勝てないでしょ」
昨日の話、体育館でまだ正体も分からなかった相手と対峙したとき、麻酔を受けた自分は死に恐れるしかなかった その時点で自分は相手に殺されているも同然であり、あの時、サトシが駆けつけなければ確実に死んでいたであろう
そんな自分が同じ相手に勝つことなどできるのだろうか
しかし、一瞬の迷い、葛藤、それも戦いの中では命取りだった
「ぼんっ!」
白衣が球体を地面に叩きつけると球体ら破裂し、薄紫色の煙を充満させた
「なに…!」
シイナが目くらましかと思い、視界を凝らすが相手の姿は影もなく見えなくなる すると、背後に座っていたカリンがバタリと倒れた
「カリン…!?」
振り向くとカリンは気を失って倒れており、シイナはあることに気づいた
弱性の有色毒ガス…!?
自分は吸ってもなんともないガスだが、何一つ毒への耐性をつける訓練も受けていないカリンは影響を受けてしまった
すぐにカリンをここから離すため抱きかかえようとした瞬間、左腰が鈍く痛んだ
「はーいおつかれぇ」
姿を眩ませた白衣が不意打ちでナイフを刺した
そして、そのナイフには全身を硬直させる即効性のある麻酔毒が塗られている
一瞬で力が抜け膝から崩れ落ちる
「……ッ!」
最初からこれが狙い…?私に言葉で迷いを産ませて自分の行動への対応を遅らせて、私には気づかないレベルの毒でカリンに気を失わせ、そこで生まれた隙に攻撃する、、手練すぎるでしょ…
戦闘経験の差が如実に出たと見るべきだ
「本当は殺してもいいんだけど出来るだけ殺すなって言われてるし、毒ガスの中で目標が死なれても困る だからキミは置いていくよぉ」
そう言いながらカリンを両腕の上に乗せる
「待ちなさい…」
苦しく弱々しい声で微かに残った感覚で腕を伸ばしたがそれは相手の背中に全く届かずミスミス逃がしてしまった
紫色の煙から抜け出した白衣は仮面をはずし、わざとらしく自身の長い爪で力強く腕を裂いた
「痛ッ」
あくまで私は被害者…爆発の中でこの子だけしか救えなかったってことで避難所のグラウンドに向かいますかねぇ
ウツノミヤ先生として何事も無かったかのように避難している教師や生徒たちの前に現れようとしている
体育館に続く通路を横切り最短でグラウンドを目指す
予定通りだと、、他の2人が足止めとかしてると思う、、でもそんなレベルじゃないくらい戦闘音が聞こえるなぁ
やはりNのみが引き起こした戦闘ではないようで異常状況である近況はNにとっても迅速に任務を達成しなければならなかった
グラウンド
人が多く集まっているグラウンドが見えた
ウツノミヤは故意に付けた腕の傷を抑え、気を失っているカリンの腕を肩に回してあたかも被害に巻き込まれたかのように振る舞う
「誰かぁぁぁあ!!」
偽善者が強く声を上げると避難していた生徒や教師の視界が集まる
「あれはウツノミヤ先生か!」
気づいた男性教師が心配して3名の目配せして力添えをするためそこに向かって走り出す
その姿が見えて自分は上手くいったと思い、その男性教師3人が駆けつけるまでそこにとどまった
「大丈夫ですか!」
駆けつけた3人のうち1人が声をかける
「私は、、軽傷なんですけど、北澤さん、あと!まだ特別棟に生徒が何人も…」
迫真の演技を続けようとした瞬間、
バリンッ!
上からガラスの破片が落ちてきて1人の男子教師の首を深く切りつけた
吹き出た血液とそれと反対側に落ちる男子教師の体
それを目の当たりにしたウツノミヤが上を見上げると1人の男子生徒が2階の第二教室棟2年6組の窓ガラスから落ちてくるのが見えた
ほんとにどこもかしこも闘いしかやってないのぉ…?
呆れと同時に痺れをきらして目の前の生き残っている男性教師2人の首をナイフで切り裂いてしまった
グラウンドから悲鳴が聞こえると同時に落下してきた男子生徒からの直撃を避けるため回避すると男子生徒は見事に着地した
ウツノミヤはすぐに仮面をつけて正体を隠す
落下してきたのはやはりランマルで体勢を立て直すと白衣が目に入った それと同時に担いでいるのがカリンであることも把握する
「おい昨日の白衣 その娘返せ」
矛先を白衣に向けた瞬間、2階の教室の割れた窓から細長い腕が伸び、ランマルの腕を掴んだ
「「は!?」」
それを目の当たりにした白衣も異常に伸びる腕に驚愕せざる負えなかった
「もど、ってこい」
引きづり込まれるように2階へ吊り戻される様子を白衣は不思議に見つめる
「連れてかれてたまるかよっ!」
全身を巧みに捻って腕を手中から離すと上から白衣を襲う
「カリンを返せ」
落ちてくるランマルの刃をカリンを抱えたまま回避し片手を白衣の内側へ入れる
「全くめんどくさいなぁ」
懐からそれが取り出されるより先にランマルが相手の手首を足底に隠していた刃で浅く蹴り切り裂いた
「うっ…!」
痛みで手を離し、透明な試験管を地面に落としかけるがランマルは股をくぐるよう滑り寸前で手に収めた
「あっぶねー これ爆発するやつでしょ」
「ちっ…」
やっぱJK1人抱えて闘うのは難しいなぁ
すると腕の中が何かに引っ張られる
「は?」
校舎に背中を向けている隙に抱えていたカリンの脚を2階にいるヘビナガに掴まれた
「こ、こいつ、、あいつの目的、、攫えば、、あいつ、、着いてくる、、」
あいつとはランマルのことだろう
ランマルの目的を察してこちらに仕向けるようカリンを白衣から強引に引き剥がし、2階へ吊り上げた
「「ふざけんな!!」」
護衛目的の人間と誘拐目的の人間の言葉が奇しくも被る
ヘビナガは着いてこいと言わんばかりに2階の内側へ入り行く
「待て!!」
ランマルは追いかけるため1階の1年6組の窓ガラスへ飛び込もうとするが、それを白衣が立ちはだかって止める
「行かせない」
「なんで!お前も追いかけなきゃなんねーだろ」
「いやぁ?こっちには頼もしい味方もいるから」
白衣の襟を仮面の前に引っ張り何か喋る
「こちら白ぉ 目標が見た目人間じゃないやつに連れてかれたぁ 第二教室棟2階廊下にいると思う 誰か応援よろぉ~」
その声は中庭にいる黒マントと体育館にいる水色マントの耳元できこえた
「じゃっ これでアンタを足止めできる」
「仲間がいんのか…用意周到だな」
お互い静かな構えをとった
中庭
黒マントがヒュウの足技とアバレの突撃からなる猛攻を華麗にいなしていた
すると突如、2人から距離を取り足に強く力を入れて膝を曲げた
「なんだ」
「わからん」
何が起こるかわからず、2人は先程よりも警戒を強める
しかし、黒マントは2人に襲いかかることはせず高く跳んで2階の第二教室棟廊下の窓ガラスに飛び込んだ
「「はぁ!?」」
「逃げたぞ!」
「いやぜってぇ逃がさねぇ アバレ!俺を打ち上げろ!!」
「んな無茶な!!」
「やるしかねぇ!キャプテンにボコられた時誓ったろ!!」
2人はガクトの背を思い出す
「今度からその力 人助けるために使え」
グレていた生活から脱却させた人物の言葉を胸に2人はここの人間を守ろうとしているのだ
「あぁそうだな!!ちょっと雑でも許せよ!!」
ヒュウがアバレの方に走って向かうとアバレはバレーのレシーブの要領でヒュウの足を手首に乗せて打ち上げた
ヒュウは勢いよく打ち上がり、黒マントが飛び込んだ窓ガラスよりも手前から第二教室棟2階廊下へ侵入する
すると、そこには黒マントのみならず人間とは思えないほど細身な者がおり、その2人に挟まれてしまっていた
「うぇーいマジか」
呆れることしかできず立ち上がって2者と睨み合う
「お、おお前たち、じゃじゃ邪魔」
「………」
黒マントは無言を貫いている間にいるヒュウを巻き込んでヘビナガが手首の関節を勢いよく伸ばした
「「……!」」
2人は異様な伸びように驚愕し、硬直したが拳を受ける直前に何とか跳んで回避する
「おい細長野郎 左脇に抱えてんのはうちの生徒だな 返してもらうぜ」
ヒュウは誘拐でも護衛でもなく1人の生徒としてカリンを取り返そうと戦闘を始めた
中庭
「さて!俺も追いかけ…」
ドォン!!
アバレがヒュウを追おうとした瞬間、1階第一第二教室棟間 通路の壁が破壊され、ハヤテとトカゲが並んで飛び出してきた
「クッソなんやねんコイツ…!距離縮めれんやんけ!」
トカゲとの戦闘に苦戦するのも当然、トカゲはとても長い八又の鋭利な舌を伸ばして乱雑に自身の周囲を攻撃しており、近距離での戦闘がとても難しくなっていた
「ベェェエ!!」
トカゲが舌を素早く直線的に伸ばすとハヤテは一瞬、判断が遅れた
「まっず…!」
喉を貫かれると思ったその時、肉の抉れる音が聞こえた
「……!」
ハヤテの目の前にアバレが立ち塞がり、その屈強な肉体の腹で鋭い舌を受け止めたのだ
「先輩…!?」
「生意気な後輩…テメェ…ほんとにやるな」
アバレが痛みに耐えながら舌を握り潰す
「ウベェ…!」
八又のうちの一本の機能が潰されたことで停止し鋭さと勢いを失う
痛みを感じてトカゲは舌を口元に戻す
その際に出血がアバレの手の中から零れる
「おい後輩…近づけりゃ勝てるんだな」
「え、まぁたぶん…」
「しゃあわかった! 俺がアイツの攻撃を一身に受ける!その隙にやっちまえ!!」
「でもそれは…!」
「うるせぇ!時間がねぇんだやるぞ!!」
「う、うっす!!」
トカゲは一本の舌から流れる血液を流しきって、その手に地面を付けた異様な体勢のまま2人を睨んだ
体育館
一方、セツナは慣れない槍使いとの戦闘に苦戦していた
やりずらい…!
肘を引いて右手に持ったナイフで槍の突きを受け流すことしかできない防戦一方となっていた
「………」
何も言わずただ槍突きをしていた水色マントが攻撃を一度止めた
なに……
セツナは動揺したが防御体制を緩めることなく相手と向き合う
なにか…来…… ドスンッ!!
「ウ"ッ…!」
予想した瞬間、右腰に槍の刺突を深く喰らった
「はやい……!」
勢いよく突かれ、抜かれた右腰から大量の血液が流れ体育館の滑りやすい床を赤く染める
さっきの連撃よりももっとはやい…私が…見えないくらい…
セツナの動体視力を上回る突き速度、部位が悪ければ死んでいた攻撃だった
思わず右腰を抑えて体勢を崩してしまう
それを相手も見逃さず連撃をまた始める
セツナは弱々しくも受けを続けるが先程よりも動きが鈍速で浅い切り傷を各所に受けてしまう
「クソッ……!」
後退して息を整える
腰の痛みを深呼吸で緩めながら相手を見つめる
七黒ってこんなに…
焦る気持ちを抑えながら格上の相手から殺される恐怖を感じた
午前11時55分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:35:00
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特別棟前自然芝
シイナは相手の目的であるカリンを背後に仮面と睨み合っていた
5分くらいたったかしら…攻めてこないわね…いっそ逃げる?いや、背中を見せたら殺されるわね…
さっきからガラス割れる音とか、悲鳴とか、まばらに聞こえてくるってことはここ以外でも何かが起きてる…仲間の助けは望み薄め…
でも、ランマルと一緒に闘って勝てなかった相手に私1人、それに今はカリンがいる…
いや、やるしかない カリンを護れるのは私だけだから
硬い決意を胸にした時、白衣も痺れを切らしたのか口を開いた
「ねぇ?交渉なんだけどさぁ」
「は?」
「私あんまり動きたくないわけ だからその娘受け渡してくんないかなぁ」
「何言っ…」
「あーわかるよわかるわかる そう簡単にするわけないよねぇ でもさぁ」
白衣は言葉を少し溜めて言い放った
「死ぬことにビビってるキミじゃ私に勝てないでしょ」
昨日の話、体育館でまだ正体も分からなかった相手と対峙したとき、麻酔を受けた自分は死に恐れるしかなかった その時点で自分は相手に殺されているも同然であり、あの時、サトシが駆けつけなければ確実に死んでいたであろう
そんな自分が同じ相手に勝つことなどできるのだろうか
しかし、一瞬の迷い、葛藤、それも戦いの中では命取りだった
「ぼんっ!」
白衣が球体を地面に叩きつけると球体ら破裂し、薄紫色の煙を充満させた
「なに…!」
シイナが目くらましかと思い、視界を凝らすが相手の姿は影もなく見えなくなる すると、背後に座っていたカリンがバタリと倒れた
「カリン…!?」
振り向くとカリンは気を失って倒れており、シイナはあることに気づいた
弱性の有色毒ガス…!?
自分は吸ってもなんともないガスだが、何一つ毒への耐性をつける訓練も受けていないカリンは影響を受けてしまった
すぐにカリンをここから離すため抱きかかえようとした瞬間、左腰が鈍く痛んだ
「はーいおつかれぇ」
姿を眩ませた白衣が不意打ちでナイフを刺した
そして、そのナイフには全身を硬直させる即効性のある麻酔毒が塗られている
一瞬で力が抜け膝から崩れ落ちる
「……ッ!」
最初からこれが狙い…?私に言葉で迷いを産ませて自分の行動への対応を遅らせて、私には気づかないレベルの毒でカリンに気を失わせ、そこで生まれた隙に攻撃する、、手練すぎるでしょ…
戦闘経験の差が如実に出たと見るべきだ
「本当は殺してもいいんだけど出来るだけ殺すなって言われてるし、毒ガスの中で目標が死なれても困る だからキミは置いていくよぉ」
そう言いながらカリンを両腕の上に乗せる
「待ちなさい…」
苦しく弱々しい声で微かに残った感覚で腕を伸ばしたがそれは相手の背中に全く届かずミスミス逃がしてしまった
紫色の煙から抜け出した白衣は仮面をはずし、わざとらしく自身の長い爪で力強く腕を裂いた
「痛ッ」
あくまで私は被害者…爆発の中でこの子だけしか救えなかったってことで避難所のグラウンドに向かいますかねぇ
ウツノミヤ先生として何事も無かったかのように避難している教師や生徒たちの前に現れようとしている
体育館に続く通路を横切り最短でグラウンドを目指す
予定通りだと、、他の2人が足止めとかしてると思う、、でもそんなレベルじゃないくらい戦闘音が聞こえるなぁ
やはりNのみが引き起こした戦闘ではないようで異常状況である近況はNにとっても迅速に任務を達成しなければならなかった
グラウンド
人が多く集まっているグラウンドが見えた
ウツノミヤは故意に付けた腕の傷を抑え、気を失っているカリンの腕を肩に回してあたかも被害に巻き込まれたかのように振る舞う
「誰かぁぁぁあ!!」
偽善者が強く声を上げると避難していた生徒や教師の視界が集まる
「あれはウツノミヤ先生か!」
気づいた男性教師が心配して3名の目配せして力添えをするためそこに向かって走り出す
その姿が見えて自分は上手くいったと思い、その男性教師3人が駆けつけるまでそこにとどまった
「大丈夫ですか!」
駆けつけた3人のうち1人が声をかける
「私は、、軽傷なんですけど、北澤さん、あと!まだ特別棟に生徒が何人も…」
迫真の演技を続けようとした瞬間、
バリンッ!
上からガラスの破片が落ちてきて1人の男子教師の首を深く切りつけた
吹き出た血液とそれと反対側に落ちる男子教師の体
それを目の当たりにしたウツノミヤが上を見上げると1人の男子生徒が2階の第二教室棟2年6組の窓ガラスから落ちてくるのが見えた
ほんとにどこもかしこも闘いしかやってないのぉ…?
呆れと同時に痺れをきらして目の前の生き残っている男性教師2人の首をナイフで切り裂いてしまった
グラウンドから悲鳴が聞こえると同時に落下してきた男子生徒からの直撃を避けるため回避すると男子生徒は見事に着地した
ウツノミヤはすぐに仮面をつけて正体を隠す
落下してきたのはやはりランマルで体勢を立て直すと白衣が目に入った それと同時に担いでいるのがカリンであることも把握する
「おい昨日の白衣 その娘返せ」
矛先を白衣に向けた瞬間、2階の教室の割れた窓から細長い腕が伸び、ランマルの腕を掴んだ
「「は!?」」
それを目の当たりにした白衣も異常に伸びる腕に驚愕せざる負えなかった
「もど、ってこい」
引きづり込まれるように2階へ吊り戻される様子を白衣は不思議に見つめる
「連れてかれてたまるかよっ!」
全身を巧みに捻って腕を手中から離すと上から白衣を襲う
「カリンを返せ」
落ちてくるランマルの刃をカリンを抱えたまま回避し片手を白衣の内側へ入れる
「全くめんどくさいなぁ」
懐からそれが取り出されるより先にランマルが相手の手首を足底に隠していた刃で浅く蹴り切り裂いた
「うっ…!」
痛みで手を離し、透明な試験管を地面に落としかけるがランマルは股をくぐるよう滑り寸前で手に収めた
「あっぶねー これ爆発するやつでしょ」
「ちっ…」
やっぱJK1人抱えて闘うのは難しいなぁ
すると腕の中が何かに引っ張られる
「は?」
校舎に背中を向けている隙に抱えていたカリンの脚を2階にいるヘビナガに掴まれた
「こ、こいつ、、あいつの目的、、攫えば、、あいつ、、着いてくる、、」
あいつとはランマルのことだろう
ランマルの目的を察してこちらに仕向けるようカリンを白衣から強引に引き剥がし、2階へ吊り上げた
「「ふざけんな!!」」
護衛目的の人間と誘拐目的の人間の言葉が奇しくも被る
ヘビナガは着いてこいと言わんばかりに2階の内側へ入り行く
「待て!!」
ランマルは追いかけるため1階の1年6組の窓ガラスへ飛び込もうとするが、それを白衣が立ちはだかって止める
「行かせない」
「なんで!お前も追いかけなきゃなんねーだろ」
「いやぁ?こっちには頼もしい味方もいるから」
白衣の襟を仮面の前に引っ張り何か喋る
「こちら白ぉ 目標が見た目人間じゃないやつに連れてかれたぁ 第二教室棟2階廊下にいると思う 誰か応援よろぉ~」
その声は中庭にいる黒マントと体育館にいる水色マントの耳元できこえた
「じゃっ これでアンタを足止めできる」
「仲間がいんのか…用意周到だな」
お互い静かな構えをとった
中庭
黒マントがヒュウの足技とアバレの突撃からなる猛攻を華麗にいなしていた
すると突如、2人から距離を取り足に強く力を入れて膝を曲げた
「なんだ」
「わからん」
何が起こるかわからず、2人は先程よりも警戒を強める
しかし、黒マントは2人に襲いかかることはせず高く跳んで2階の第二教室棟廊下の窓ガラスに飛び込んだ
「「はぁ!?」」
「逃げたぞ!」
「いやぜってぇ逃がさねぇ アバレ!俺を打ち上げろ!!」
「んな無茶な!!」
「やるしかねぇ!キャプテンにボコられた時誓ったろ!!」
2人はガクトの背を思い出す
「今度からその力 人助けるために使え」
グレていた生活から脱却させた人物の言葉を胸に2人はここの人間を守ろうとしているのだ
「あぁそうだな!!ちょっと雑でも許せよ!!」
ヒュウがアバレの方に走って向かうとアバレはバレーのレシーブの要領でヒュウの足を手首に乗せて打ち上げた
ヒュウは勢いよく打ち上がり、黒マントが飛び込んだ窓ガラスよりも手前から第二教室棟2階廊下へ侵入する
すると、そこには黒マントのみならず人間とは思えないほど細身な者がおり、その2人に挟まれてしまっていた
「うぇーいマジか」
呆れることしかできず立ち上がって2者と睨み合う
「お、おお前たち、じゃじゃ邪魔」
「………」
黒マントは無言を貫いている間にいるヒュウを巻き込んでヘビナガが手首の関節を勢いよく伸ばした
「「……!」」
2人は異様な伸びように驚愕し、硬直したが拳を受ける直前に何とか跳んで回避する
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「さて!俺も追いかけ…」
ドォン!!
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「ベェェエ!!」
トカゲが舌を素早く直線的に伸ばすとハヤテは一瞬、判断が遅れた
「まっず…!」
喉を貫かれると思ったその時、肉の抉れる音が聞こえた
「……!」
ハヤテの目の前にアバレが立ち塞がり、その屈強な肉体の腹で鋭い舌を受け止めたのだ
「先輩…!?」
「生意気な後輩…テメェ…ほんとにやるな」
アバレが痛みに耐えながら舌を握り潰す
「ウベェ…!」
八又のうちの一本の機能が潰されたことで停止し鋭さと勢いを失う
痛みを感じてトカゲは舌を口元に戻す
その際に出血がアバレの手の中から零れる
「おい後輩…近づけりゃ勝てるんだな」
「え、まぁたぶん…」
「しゃあわかった! 俺がアイツの攻撃を一身に受ける!その隙にやっちまえ!!」
「でもそれは…!」
「うるせぇ!時間がねぇんだやるぞ!!」
「う、うっす!!」
トカゲは一本の舌から流れる血液を流しきって、その手に地面を付けた異様な体勢のまま2人を睨んだ
体育館
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思わず右腰を抑えて体勢を崩してしまう
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