Я side The Assassin

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社長令嬢護衛編

45.トカゲ

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午前11時55分

北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:35:00

Я リサイド本部 リーダー室

シジマが吸殻を透明な灰皿に落とすと扉がノックされた

「入れ」
 
扉を開いて現れたのは仲介班の女性副班長 ヒイマだった

「失礼します ただいま太刀城たちしろ学園に潜入している仲介班の一員から連絡が」

「なに…!」

「2種の爆発と同時に黒スーツの集団 おそらく羽斑と思われる者たちが大勢で襲撃してきたそうです いかが致しましょう」

「あそこには新人の少年隊がいる…なんとかせねば 今動ける奴は」

「マンツーマン指導中の特攻班長と派遣班長はそれぞれ指導している少年帯の人員と共に一時的に外出中であり、特攻副班長は仲介班うちの班長と任務、派遣副班長は今、仙台支部に派遣しています」

見事な人員不足

「いかがしましょう 残っている派遣班を全員動員しましょうか」

「いや、羽斑ということはセンドウがいてもおかしくない 班長副班長レベルでなければいとも簡単に殺されてしまう…」

センドウの戦闘力を考慮した途端、シジマの脳裏に特攻班の1人が浮かんだ

「リンドウだ」

「はい?」

「リンドウを特攻班50人と出撃させろ」

「いいんですか?本日分の訓練生指導がなくなってしまいますが」

「構わん それで子供たちが生き残ることができるならば問題ない それに、ヤツなら実力も申し分ない」

「わかりました 直ちに出撃命令を出します」

他でもないセツナたちの訓練指導者が戦場に派遣されることが確定した


太刀城たちしろ学園 体育館

抉れた右腰の痛みで防戦一方が加速し、ますます戦況が悪化してしまっている

水色マントの槍から繰り出される高速の連続刺突を辛うじて回避することで精一杯

私の動体視力でギリギリかわせる連撃…!動きは単純、引いては押してを続けてやってるだけ…でも…!!

ジャグッ…

左肩に槍の穂擦れて薄皮を裁った
滲み出る少量の血液が白色の体操服の左肩部分を赤黒く染める

その動きに完璧に対応することは身体能力的に無理…!

その後も刺突は続き、セツナも回避を続けるも何度も身を浅く切断される
全身の各所から少量の血液が垂れ出すがそんなこと一切気にせず目の前の相手の微かな動きを研ぎ澄まされた動体視力で観察する

水色マントが肘を引くのが分かる、穂先が自身の胸あたりに向けられているのが分かる、そして、肘を突き出すのを捉えた
左肩を後ろに引いて回避しようとした時、そのまままっすぐ突き出されると思った穂先が止まった

「え、、」

水色マントは一歩前に足を出し、持ち手の手首を捻って横持ちし穂先を回避したセツナの方向へ向けて振り抜いた

グサッ…

「ウ"ッ…」

「………」

槍はセツナの右上腕を貫き、抜かれた穂先が赤く染る
体勢を崩して床に落ちたセツナを水色マントは仮面の中から冷たく睨み、セツナに向かって槍を突く
セツナは寸前で床を蹴り相手から距離をとって患部を抑える

寸止め…投げ、連撃、強烈な一撃からまた…

相手の攻撃のバリエーションの多さに驚きと戸惑いを覚え危機感をより一層感じる

なにか…なにか対策…相手の攻撃は見えるのに捉えられない…見え…

その瞬間、セツナはなにかに至った

「見ることはできる…」

微かに声がこぼれ、立ち尽くしている水色マントも首を少し傾げた
セツナはそんな相手を見て僅かな希望に笑みを魅せる

「あなたの倒し方、わかったかも」


中庭

ドスッ…!

アバレの腹筋にトカゲの舌の一本が刺さる
しかし、大した外傷は見えず難なく耐えているようだ

「隙やり!」

ハヤテが間合いを詰めようと接近するも裂けている舌の数本がのたうち回ってハヤテを拒む

「クソッ…」

積極的に迫ってきた一本の舌を蹴り弾いてまたアバレの横へ戻る

「やっぱアカンすわ あのベロ人間のベロとは思えんくらい伸びるし柔軟に動きよる」

「なら全部潰すか」

「それしかないかもっすね」

「だが、一発目とは違って舌の攻撃は勢いがあるし、握り潰せなくなった」

「何とか削りたいんやが…」

ハヤテはかなり強引な想定を立てた

「先輩 これやれたらたぶん勝てまっせ」

「なに…!」

アバレはハヤテに耳を寄せて小声でその内容を伝え始められる

「おお、おまえらを待つ、義理はない」

トカゲは首をカクカクと曲げながらそう言うと2人に向かって一本の舌を勢いよく伸ばす

それに気づいた2人が反対方向に跳んでかわす

「それ面白い!!」

提案に共感したアバレが回避中に声を上げる

「ほな!やりましょか!!」

ハヤテが着地すると伸ばしていた舌ともう一本の舌がハヤテを狙った

「ワン…ツー…」

攻撃を回避することはせず後追いさせるように後ろに連れて走る
時に追いつく舌を蹴り弾きながら広い中庭を縦横無尽に駆ける

トカゲに苛立ちが募る

「おまえ、、ちょこまかと、、」

また違う2本の舌を既に追いかけさせている舌2本とでハヤテを挟むように伸ばす

「スリー…フォー」

と呟きながら挟んできた舌4本を寸前でしゃがんでかわす
しかし、それに合わせる形で伸ばした舌2本に素早く巻き付こうとした
それを頭上に伸ばされ、交差している舌2本を掴んで鉄棒の勢いで回転し、空中に跳ぶ

「ファイブ、シックス… あと一本どこだ」

ハヤテの狙いは機能する全ての舌を自身のところに集めることにあった
だが、視点を高くしても動かすことができるはずの一本が見当たらない
滞空することはできず地面に着地しようと足底をつけたとき、足首が強く締め付けられた

「なんや!!」

なんと地面から飛び出した最後の一本の舌が左足首に巻きついていたのだ
その部位にとどまらずもう2本を全身に巻き付かせる

「し、ね、」

鋭い4本の舌がハヤテの頭部に突き刺さろうと迫る

「しもうた」

失敗を口にして敗北を受け止めた、、



「って思たやろ」


全身を拘束されながらもハヤテはやんちゃに勝利の煽りを魅せる

「………!!」

ドォーン!

その瞬間、トカゲ本体が横からの衝撃に耐えられず校舎の外壁に当たり飛ばされ、ひび割れたアスファルトに身を埋めた

「しゃおらぁ!!」

アバレの雄叫びが響く
ハヤテが舌を自身に集中させたことによりアバレがトカゲ本体に直接、強靭な突進を食らわせることができた

衝撃でハヤテから舌を離し、垂れ落とす
解き放たれたハヤテは即座に吹き飛ばされた方向へ地面を蹴った

足に集中を注げ…

勢いで加速したことによる遠心力、力を全て右足へ注入、相手を蹴り倒すのにベストな体勢

瞬間的高威力蹴ダイレクトクイック

ドォォォン!!

「ボエェエッ!!」

ハヤテの筋力を凝縮した一撃がトカゲの腹に食い込む
トカゲの舌は完全に萎え落ちし、気力を失った
それと同時にハヤテも脚への強烈な負荷で右脚から血液が吹き出て倒れる

「大丈夫かぁぁあ!!」

叫びながら駆け寄ってくるアバレをめんどくさいと思いながら寝転がる

「アカーン こりゃ1週間は動けへんわ~」

見た目よりも遥かに元気そうな一言にアバレも安心し駆け寄る足を少し遅めた

「はぁ…お前、ほんとに馬鹿でヤベェ奴だったんだな」

「先輩に言われたくないですね」

そう言ってハヤテは汚れた制服をもっと汚すように転がって大きく深呼吸した

外壁に埋め込まれたトカゲはアバレの突進とハヤテの渾身の一撃で気を失ったのかピクリともせず頭を下に向けて力を失っていた


ハヤテ&アバレvs トカゲ 

ハヤテ&アバレの勝利


午前12時10分

北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:20:00
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