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社長令嬢護衛編
47.正体
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午前12時25分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:05:00
爆発が起こる5分前、
太刀城学園 体育館
水色マントの連続刺突がセツナを襲っていた
しかし、セツナは先程とは違い至って冷静にその攻撃を凌いでいる
まだ…まだ連続突き、、
瞬きひとつせず目の前の相手と槍の動きに集中し、最小限の動作で回避する 僅かな切り傷を諸共せず相手を視る
まだ、まだ、、
そして、セツナの視界の中で確かだが極わずかな違いが起こる
相手の無駄のない連続突きから一変、数ミリ数秒にも満たない乱れを彼女は捉えた
ここ、、
刺突は彼女の胸の前数センチで止まった
「やっぱりね!!」
「……ッ!」
まさかの対応に水色マントは動揺し隙を生んだ
槍より低位置に体を落とし、相手の懐に滑り込む
「逆立ち兎!」
逆立ちの勢いで足を上部に押し上げ、顎を蹴り飛ばす
「クッ……!」
「やっと一髪目!!」
捉えた!やっぱり寸止めする時は毎回の刺突よりも後ろに肘を引く!でも突きの速さは一定だからこっちが回避してるのに合わせて攻撃の方向をかえる!分かりゃシンプルだけど初見無理っしょ!!
「つーか!!」
勢いよく地面を押して宙を舞う
「私じゃなきゃ分かんねぇだろその違いは!!」
全身を縦回転させたかかと落としが頭部に振り落とされる
「縦回転兎!!」
食らった水色マントは痛みを耐えながら後退し、槍を強く握る
瞬間、セツナの懐に槍の穂先が急接近し腹を貫通せんと突き出された
カチンッ…!
左手に持っているナイフで槍の強烈な突きを受けた
「……!」
「残念!!」
衝撃が互いに伝わり体の内部が揺れる
「アンタの攻撃方法は完全暗記してんだよ!!」
槍を弾くと槍の重みで相手の体が右方向に寄れる 体勢は崩れ無防備な全身をセツナに晒してしまう
「えいっ!!」
ナイフを投げて仮面に突き刺す
「前見えにくいんじゃない!!」
右脚を曲げて勢いよく伸ばす
「邪魔なお面取ってあげるよ!!」
ボゴッ!ドォン!
突き刺さったナイフを蹴り押し込むようにミドルキックを仮面に食らわせると相手は吹き飛びステージの壁に打ち付けられる
確立した!これが私の闘い方!相手の動きを視て、覚えて、次その攻撃が来る時は小さな相手の動きを捉えて覚えたパターンに当てはめて、相手より先に対応する
視覚情報暗記闘型…!
ドォーーーン!
相手を一時的に圧倒して思考整理をしていると校舎の方向から爆発音が聞こえた
外激しいな 早く決着を…
「……!」
すると、ステージから軽飛び降りた水色マントのフードが頭から落ちる
さらに仮面がナイフが刺さっていたところからひび割れて砕け落ちた
仮面の裏の正体にセツナは驚愕し目を見開いた
「あなたは…!」
マントと仮面で隠されていたNの一員の正体は、、
一方、中庭でも黒マントの正体が爆発の影響でヒュウとアバレに露わにされた、、
異なる場所でセツナとヒュウの言葉が同時に発せられる
「「金松 千咲先輩…!
松竹 岳斗…!」」
この学園に迫る恐怖の対象から生徒たちを守ってきた学園最強カップルの金松 千咲と松竹 岳斗がNの一員だったのだ
中庭
「キャプテン…どういうこった!!」
ヒュウは驚きと怒りが混ざった感情を剥き出しにして声を上げた
「アンタは何をやってんだ!生徒守るために力を使えって言ったのはアンタだ!!その言葉のおかげで俺たちヤンキーは少しはまともになれた!!なのに……!」
怒りの中にある悲しみも涙として現れる
「校舎壊して!!生徒攫おうとして!!なにをしてんだ!!」
声を張り上げたせいか喉が痛み乾燥し唾と息を呑み込んだ
刹那的な沈黙のあと、ガクトは話すための息を吸った
「知るか」
放たれた第一声が真剣に発言した部員を突き放す3文字だった
「俺に大義名分はないんだヒュウ 転校した時からこの女を連れ去るっていうボスの命令でここにいた 今日がその決着日だ」
淡々と説明するガクトに苛立ったヒュウがまた声を荒らげる
「なんだよそれ!!ボス?命令?よく分かんねぇけどな!!やってる事がやべぇってことは分かる!!そんなことやっていいのかって聞いてんだ!!」
「あぁいいと思ってる」
怒鳴り声よりも冷たく響く声で言葉を放つ
「俺は、いや俺たちはそれしか生き方を知らない だから…」
体育館
似た言い合いがここでも起こっていた
「アンタはさっき人を殺したんだよ!!」
「だから?目的のための犠牲は問わないって言われてるし」
「それで…心が痛まないわけ?」
「もちろん 私たちはそうやって生きてきた だから…」
裏切り者に2人の言葉が重なる
「「邪魔をするなら殺す」」
中庭
ガクトが飛びかかった瞬間、ヒュウの左上腕とアバレの右上腕が鮮やかに切り裂かれ、血を吹き出す
「「……ッ!」」
気づけばガクトは2人の背後にいて余裕の表情でこちらを向いていた
「ほら 来ねぇと死ぬぞ」
アバレは迷いなく突進した
しかし、そのチャージも逆手にとられ突っ込んできた胴体の上を飛び通り、背中に二線の切り傷をいれる
突進を追うように飛びかかったヒュウの飛び蹴りが迫ったがそれも横一線の切り裂きで右足裏を深く傷つけられる
「「イッ……!」」
「あぁそうか、お前ら」
着地して2本の鎌を逆手に持つ
「素手の俺にも勝てないんだったな」
ジュバッ!!
「旋裂」
その場で回転し囲んでいた2人を同時に切り裂く 間髪いれずに宙に飛び、ヒュウに鎌を突き刺すように振り落ちる
「危ねぇ!!」
アバレがヒュウを屈強な肉体で囲み、防護するがアバレの背中に鎌が突き刺さる
「ヌ"ッ!!」
「……!」
背筋に力を込めて刺さった鎌が抜けないように固定する
「相変わらず筋肉バカだな」
その瞬間、アバレの影から飛び出したヒュウが飛び回し蹴りを繰り出すが、それをガクトは胸で受け、腕で脚を縛った
「……!」
「肉体も鍛えてるに決まってんだろ」
ガクトの目にヒュウの怒りと悲しみが混在した表情が映り、不愉快に陥る
「まだ夢見てんのか!!」
ヒュウを声を上げると同時に反対方向へ投げ捨てると背中を向けたアバレに抱き締められそうになるが、跳んでかわしアバレの背後に回って刺したままの鎌を抜きとる
「十字切断」
バツ印を着けるように2つの刃を交差させ背中を切り裂く
「ウ"ア"ッ!!」
「痛そうだな!!」
語尾と同時に傷の交差した部分を蹴りつけてヒュウの方向へ飛ばした
ボォンッ!
投げられて転がっていたヒュウを地面に押し付けるようにアバレがのしかかる
「おらよ!!」
倒れている2人を蹴り飛ばす
2人は地面を転がって外壁にぶつかる
すると、ガクトの声で気を失っていたカリンが手を覚ます
目の先でガクトの背中が2人に徐々に迫っていき、立ち上がっていない相手に鎌を振り下ろすのが見える
「やめなさい!!」
勢いよく立ち上がりそう叫ぶとガクトの手が止まった
ガクトが後ろを振り向くと立っているカリンが自身の首に瓦礫の破片から取れでた太い針金を当てている
「それ以上 その人たちを攻撃するなら自殺してやるわ!!」
その宣言に危機感を覚えたガクトが鎌を下ろして彼女に向き合った
チッ…めんどくせぇ女だ
体育館
「どしたどした!!私の動きは暗記したんじゃなかったっけ!!」
チサキの攻撃は勢いを増しており、セツナが暗記した動きよりも速くなっていた
繰り返し放たれる刺突を再び、回避することに精一杯になる
ジャクッ!
「ウ"ッ!」
しかし、相手の動きをインプットし直す前にこちらがやられてしまう傷を先程までの戦闘で受けてしまっている
思わず退避し、息を整える
「私から距離取っていいんだっけ!!」
強烈な刺突が今までよりも素早く繰り出される
「やばっ!」
間一髪で回避するが、自身の背後に通り抜けていったチサキもそれで止まらない
「高速強行刺突」
ビュンッ
再び強烈な刺突
それをまたも寸前で回避
「まだまだぁ!!」
ビュンッ
「……!」
高速で強烈な刺突が何度も繰り返され、立ち止まることがない セツナは交差する刺突の中で見動きをとれず相手を視認したと思えば次の刺突に襲われる
それを回避するために体を大きく捻ってしまった
「ウ"ッ…!」
最も重症である右腰から全身へ激痛が駆け抜ける 思わず足を開き手を地面に着ける
「隙あり!!」
動きの止まったセツナをチサキも見逃さず高速刺突が迫る
落ちた汗、荒くなる息、流れた血、自身の影、目先にある限界
だから…!なんだ!!諦める理由なんてない…新しいこと覚えたからって自惚れんなよ自分!進化を止めるな!
槍の穂先がセツナの頭部に突き刺さらんとした時、彼女はチサキの視界から消えた
「なに…!? どこ行…ボゴンッ!!
飛び蹴りがチサキの頬をとらえた
「パクらせてもらうよ!先輩!!」
通り過ぎた所で着地し動きを止めたように思えたがセツナはチサキの周囲を不規則に走り飛び回る
ボゴッ!ボゴッ!!
「ブハッ…!グハッ…!」
この動き方…!私の…!
チサキは正解に辿り着く
暗記された…!
セツナはこの短時間で相手の敵の周りを動き回り、高速刺突を繰り返し続ける攻撃を暗記し、自身の攻撃に併せて取り込んだ
「撹乱兎」
肉食獣を翻弄するウサギのように周囲を不規則に飛び回り狙いを定めさせず、不規則なタイミングで攻撃をしかける
こちらが何度移動して、いつ攻撃をしかけるかを完全にランダムにし、それを素早く行う
それが相手の動揺と小さなミスを生む
「ここでしょ!!」
正面にきたセツナに槍を伸ばしたが、予想は的中せずセツナは襲いかかってこない
槍を伸ばしたことによる数秒の隙を彼女は逃さない
「オリャッ!」
背後から背中を蹴り飛ばすと相手は無様に床に転がる
「追撃!!」
立ち上がりかけた相手の顎を蹴り上げる
「ブエッ!!」
「私はね これ以上、私みたいな子供を増やさないために力をつけてんの だから…」
右脚を引いて力を込める
「人攫いしようとしてるヤツに負けるわけないでしょ!!」
振り抜かれた右脚はチサキの腹を凹ませた
勢いよく吹き飛び、外壁に設置された野外に出るためのドアを打ち破ってグラウンドとの間の通路に転がりでる
「オ"エ"ッ!!」
思わず吐血し槍を離す 立ち上がる気力もなく地面に手をついているとゆっくりと追ってきたセツナが彼女にナイフを向けた
「……!」
殺される!いや、これも受け入れよう…私が死んでNの情報がコイツらЯ にバレずに済むなら
チサキは運命と組織の秘密を背負って死のうと目を瞑る
振り下ろされたナイフはカチンッと音を立てた
「え…」
目を開けてセツナの暗い表情を見る
ナイフは自分に刺さることはなく地面に突き打たれたことがわかった
「なんで…」
セツナがナイフを手放してチサキの胸ぐらを掴んだ
「アンタには聞きたいことが山ほどあるんだよ!殺して溜まるか!殺したいけどな!!」
言うだけ言ってチサキを突き放すとチサキは呆気に取られて口を開けた
「あと!槍だけは回収するから大人しくしとけ!」
地面にしりを着けたチサキにそう言い放ちながら手放したナイフと槍を両手に持ってグラウンドの中へ駆け出して行った
取り残されたチサキは空を見上げながら相方の顔を思い浮かべていた
「あ~負けた~」
ねぇ黒…殺したくても殺さない時ってあるらしいよ…普通に生きてきた人間が考えることは分かんないね…
任務上、都合がいいように恋人同士の設定にして…学園最強カップルって呼ばれてた時、アンタはなに考えてたんだろうな~
感傷に浸りながらチサキは所々破れているマントの懐に手を入れる
私たち産まれた瞬間から負け組で、自分の本名も分からず組織に尽くすだけのゴミみたいな人生だったけどアンタに会えて良かった
首筋に冷たいものが触れる
このまま捕まって白状させられるよりもこっちの方が組織的には良いよね…
手に強く力を入れてその冷たさを横へ持っていった
「好きだったよ 名前もわからない黒マントさん」
眩む視界を静かに閉じる
落ちたナイフの刃先が赤黒く染まっているのが分かると彼女の体は無気力に地面に倒れ落ちた
セツナ vs チサキ
セツナの勝利
チサキ死亡
午前12時45分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:45:00
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで12:05:00
爆発が起こる5分前、
太刀城学園 体育館
水色マントの連続刺突がセツナを襲っていた
しかし、セツナは先程とは違い至って冷静にその攻撃を凌いでいる
まだ…まだ連続突き、、
瞬きひとつせず目の前の相手と槍の動きに集中し、最小限の動作で回避する 僅かな切り傷を諸共せず相手を視る
まだ、まだ、、
そして、セツナの視界の中で確かだが極わずかな違いが起こる
相手の無駄のない連続突きから一変、数ミリ数秒にも満たない乱れを彼女は捉えた
ここ、、
刺突は彼女の胸の前数センチで止まった
「やっぱりね!!」
「……ッ!」
まさかの対応に水色マントは動揺し隙を生んだ
槍より低位置に体を落とし、相手の懐に滑り込む
「逆立ち兎!」
逆立ちの勢いで足を上部に押し上げ、顎を蹴り飛ばす
「クッ……!」
「やっと一髪目!!」
捉えた!やっぱり寸止めする時は毎回の刺突よりも後ろに肘を引く!でも突きの速さは一定だからこっちが回避してるのに合わせて攻撃の方向をかえる!分かりゃシンプルだけど初見無理っしょ!!
「つーか!!」
勢いよく地面を押して宙を舞う
「私じゃなきゃ分かんねぇだろその違いは!!」
全身を縦回転させたかかと落としが頭部に振り落とされる
「縦回転兎!!」
食らった水色マントは痛みを耐えながら後退し、槍を強く握る
瞬間、セツナの懐に槍の穂先が急接近し腹を貫通せんと突き出された
カチンッ…!
左手に持っているナイフで槍の強烈な突きを受けた
「……!」
「残念!!」
衝撃が互いに伝わり体の内部が揺れる
「アンタの攻撃方法は完全暗記してんだよ!!」
槍を弾くと槍の重みで相手の体が右方向に寄れる 体勢は崩れ無防備な全身をセツナに晒してしまう
「えいっ!!」
ナイフを投げて仮面に突き刺す
「前見えにくいんじゃない!!」
右脚を曲げて勢いよく伸ばす
「邪魔なお面取ってあげるよ!!」
ボゴッ!ドォン!
突き刺さったナイフを蹴り押し込むようにミドルキックを仮面に食らわせると相手は吹き飛びステージの壁に打ち付けられる
確立した!これが私の闘い方!相手の動きを視て、覚えて、次その攻撃が来る時は小さな相手の動きを捉えて覚えたパターンに当てはめて、相手より先に対応する
視覚情報暗記闘型…!
ドォーーーン!
相手を一時的に圧倒して思考整理をしていると校舎の方向から爆発音が聞こえた
外激しいな 早く決着を…
「……!」
すると、ステージから軽飛び降りた水色マントのフードが頭から落ちる
さらに仮面がナイフが刺さっていたところからひび割れて砕け落ちた
仮面の裏の正体にセツナは驚愕し目を見開いた
「あなたは…!」
マントと仮面で隠されていたNの一員の正体は、、
一方、中庭でも黒マントの正体が爆発の影響でヒュウとアバレに露わにされた、、
異なる場所でセツナとヒュウの言葉が同時に発せられる
「「金松 千咲先輩…!
松竹 岳斗…!」」
この学園に迫る恐怖の対象から生徒たちを守ってきた学園最強カップルの金松 千咲と松竹 岳斗がNの一員だったのだ
中庭
「キャプテン…どういうこった!!」
ヒュウは驚きと怒りが混ざった感情を剥き出しにして声を上げた
「アンタは何をやってんだ!生徒守るために力を使えって言ったのはアンタだ!!その言葉のおかげで俺たちヤンキーは少しはまともになれた!!なのに……!」
怒りの中にある悲しみも涙として現れる
「校舎壊して!!生徒攫おうとして!!なにをしてんだ!!」
声を張り上げたせいか喉が痛み乾燥し唾と息を呑み込んだ
刹那的な沈黙のあと、ガクトは話すための息を吸った
「知るか」
放たれた第一声が真剣に発言した部員を突き放す3文字だった
「俺に大義名分はないんだヒュウ 転校した時からこの女を連れ去るっていうボスの命令でここにいた 今日がその決着日だ」
淡々と説明するガクトに苛立ったヒュウがまた声を荒らげる
「なんだよそれ!!ボス?命令?よく分かんねぇけどな!!やってる事がやべぇってことは分かる!!そんなことやっていいのかって聞いてんだ!!」
「あぁいいと思ってる」
怒鳴り声よりも冷たく響く声で言葉を放つ
「俺は、いや俺たちはそれしか生き方を知らない だから…」
体育館
似た言い合いがここでも起こっていた
「アンタはさっき人を殺したんだよ!!」
「だから?目的のための犠牲は問わないって言われてるし」
「それで…心が痛まないわけ?」
「もちろん 私たちはそうやって生きてきた だから…」
裏切り者に2人の言葉が重なる
「「邪魔をするなら殺す」」
中庭
ガクトが飛びかかった瞬間、ヒュウの左上腕とアバレの右上腕が鮮やかに切り裂かれ、血を吹き出す
「「……ッ!」」
気づけばガクトは2人の背後にいて余裕の表情でこちらを向いていた
「ほら 来ねぇと死ぬぞ」
アバレは迷いなく突進した
しかし、そのチャージも逆手にとられ突っ込んできた胴体の上を飛び通り、背中に二線の切り傷をいれる
突進を追うように飛びかかったヒュウの飛び蹴りが迫ったがそれも横一線の切り裂きで右足裏を深く傷つけられる
「「イッ……!」」
「あぁそうか、お前ら」
着地して2本の鎌を逆手に持つ
「素手の俺にも勝てないんだったな」
ジュバッ!!
「旋裂」
その場で回転し囲んでいた2人を同時に切り裂く 間髪いれずに宙に飛び、ヒュウに鎌を突き刺すように振り落ちる
「危ねぇ!!」
アバレがヒュウを屈強な肉体で囲み、防護するがアバレの背中に鎌が突き刺さる
「ヌ"ッ!!」
「……!」
背筋に力を込めて刺さった鎌が抜けないように固定する
「相変わらず筋肉バカだな」
その瞬間、アバレの影から飛び出したヒュウが飛び回し蹴りを繰り出すが、それをガクトは胸で受け、腕で脚を縛った
「……!」
「肉体も鍛えてるに決まってんだろ」
ガクトの目にヒュウの怒りと悲しみが混在した表情が映り、不愉快に陥る
「まだ夢見てんのか!!」
ヒュウを声を上げると同時に反対方向へ投げ捨てると背中を向けたアバレに抱き締められそうになるが、跳んでかわしアバレの背後に回って刺したままの鎌を抜きとる
「十字切断」
バツ印を着けるように2つの刃を交差させ背中を切り裂く
「ウ"ア"ッ!!」
「痛そうだな!!」
語尾と同時に傷の交差した部分を蹴りつけてヒュウの方向へ飛ばした
ボォンッ!
投げられて転がっていたヒュウを地面に押し付けるようにアバレがのしかかる
「おらよ!!」
倒れている2人を蹴り飛ばす
2人は地面を転がって外壁にぶつかる
すると、ガクトの声で気を失っていたカリンが手を覚ます
目の先でガクトの背中が2人に徐々に迫っていき、立ち上がっていない相手に鎌を振り下ろすのが見える
「やめなさい!!」
勢いよく立ち上がりそう叫ぶとガクトの手が止まった
ガクトが後ろを振り向くと立っているカリンが自身の首に瓦礫の破片から取れでた太い針金を当てている
「それ以上 その人たちを攻撃するなら自殺してやるわ!!」
その宣言に危機感を覚えたガクトが鎌を下ろして彼女に向き合った
チッ…めんどくせぇ女だ
体育館
「どしたどした!!私の動きは暗記したんじゃなかったっけ!!」
チサキの攻撃は勢いを増しており、セツナが暗記した動きよりも速くなっていた
繰り返し放たれる刺突を再び、回避することに精一杯になる
ジャクッ!
「ウ"ッ!」
しかし、相手の動きをインプットし直す前にこちらがやられてしまう傷を先程までの戦闘で受けてしまっている
思わず退避し、息を整える
「私から距離取っていいんだっけ!!」
強烈な刺突が今までよりも素早く繰り出される
「やばっ!」
間一髪で回避するが、自身の背後に通り抜けていったチサキもそれで止まらない
「高速強行刺突」
ビュンッ
再び強烈な刺突
それをまたも寸前で回避
「まだまだぁ!!」
ビュンッ
「……!」
高速で強烈な刺突が何度も繰り返され、立ち止まることがない セツナは交差する刺突の中で見動きをとれず相手を視認したと思えば次の刺突に襲われる
それを回避するために体を大きく捻ってしまった
「ウ"ッ…!」
最も重症である右腰から全身へ激痛が駆け抜ける 思わず足を開き手を地面に着ける
「隙あり!!」
動きの止まったセツナをチサキも見逃さず高速刺突が迫る
落ちた汗、荒くなる息、流れた血、自身の影、目先にある限界
だから…!なんだ!!諦める理由なんてない…新しいこと覚えたからって自惚れんなよ自分!進化を止めるな!
槍の穂先がセツナの頭部に突き刺さらんとした時、彼女はチサキの視界から消えた
「なに…!? どこ行…ボゴンッ!!
飛び蹴りがチサキの頬をとらえた
「パクらせてもらうよ!先輩!!」
通り過ぎた所で着地し動きを止めたように思えたがセツナはチサキの周囲を不規則に走り飛び回る
ボゴッ!ボゴッ!!
「ブハッ…!グハッ…!」
この動き方…!私の…!
チサキは正解に辿り着く
暗記された…!
セツナはこの短時間で相手の敵の周りを動き回り、高速刺突を繰り返し続ける攻撃を暗記し、自身の攻撃に併せて取り込んだ
「撹乱兎」
肉食獣を翻弄するウサギのように周囲を不規則に飛び回り狙いを定めさせず、不規則なタイミングで攻撃をしかける
こちらが何度移動して、いつ攻撃をしかけるかを完全にランダムにし、それを素早く行う
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「ここでしょ!!」
正面にきたセツナに槍を伸ばしたが、予想は的中せずセツナは襲いかかってこない
槍を伸ばしたことによる数秒の隙を彼女は逃さない
「オリャッ!」
背後から背中を蹴り飛ばすと相手は無様に床に転がる
「追撃!!」
立ち上がりかけた相手の顎を蹴り上げる
「ブエッ!!」
「私はね これ以上、私みたいな子供を増やさないために力をつけてんの だから…」
右脚を引いて力を込める
「人攫いしようとしてるヤツに負けるわけないでしょ!!」
振り抜かれた右脚はチサキの腹を凹ませた
勢いよく吹き飛び、外壁に設置された野外に出るためのドアを打ち破ってグラウンドとの間の通路に転がりでる
「オ"エ"ッ!!」
思わず吐血し槍を離す 立ち上がる気力もなく地面に手をついているとゆっくりと追ってきたセツナが彼女にナイフを向けた
「……!」
殺される!いや、これも受け入れよう…私が死んでNの情報がコイツらЯ にバレずに済むなら
チサキは運命と組織の秘密を背負って死のうと目を瞑る
振り下ろされたナイフはカチンッと音を立てた
「え…」
目を開けてセツナの暗い表情を見る
ナイフは自分に刺さることはなく地面に突き打たれたことがわかった
「なんで…」
セツナがナイフを手放してチサキの胸ぐらを掴んだ
「アンタには聞きたいことが山ほどあるんだよ!殺して溜まるか!殺したいけどな!!」
言うだけ言ってチサキを突き放すとチサキは呆気に取られて口を開けた
「あと!槍だけは回収するから大人しくしとけ!」
地面にしりを着けたチサキにそう言い放ちながら手放したナイフと槍を両手に持ってグラウンドの中へ駆け出して行った
取り残されたチサキは空を見上げながら相方の顔を思い浮かべていた
「あ~負けた~」
ねぇ黒…殺したくても殺さない時ってあるらしいよ…普通に生きてきた人間が考えることは分かんないね…
任務上、都合がいいように恋人同士の設定にして…学園最強カップルって呼ばれてた時、アンタはなに考えてたんだろうな~
感傷に浸りながらチサキは所々破れているマントの懐に手を入れる
私たち産まれた瞬間から負け組で、自分の本名も分からず組織に尽くすだけのゴミみたいな人生だったけどアンタに会えて良かった
首筋に冷たいものが触れる
このまま捕まって白状させられるよりもこっちの方が組織的には良いよね…
手に強く力を入れてその冷たさを横へ持っていった
「好きだったよ 名前もわからない黒マントさん」
眩む視界を静かに閉じる
落ちたナイフの刃先が赤黒く染まっているのが分かると彼女の体は無気力に地面に倒れ落ちた
セツナ vs チサキ
セツナの勝利
チサキ死亡
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