Я side The Assassin

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社長令嬢護衛編

48.N

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俺たちは最悪な場所で産声をあげた

「よくやったぞブラック これで組織を存続させることができる」

俺はどうやらNエヌとかいう組織の一員から産まれたらしい
この組織はメンバーを色で呼んでいて俺にも名前を与えず親の後継として"ブラック"と呼ばれる

物を手で掴むことができるようになった時から凶器を握らされて、ただを人を殺す訓練

もちろん、物心ついた時からこうだったしこれが異常だってことは分からなかった

組織の存続とか言ってるがバブル崩壊後の荒れた社会を忘れられない犯罪繁栄期の崇拝者が言葉のあやで取り繕ってるだけの集団だって今は思う

なに、無理にメンバー同士を交配セックスさせて今後の組織を担う子供を強引に量産するとんでもない組織だ とっくに手遅れなことは知ってる 一体、俺の腹違いの兄弟は何人いるのやら とか言っても父親の顔も母親の顔も見た事あるのか見た事ないのかもわかんねぇし

組織の中では素顔を晒すことはあれど身分は隠されてる 全員の身分を知ってるのはボスだけ
だから全員の素顔を知っててもそれが親なのか親じゃないのかは定かじゃないわけだ
多分だけど、親側も俺を自分の息子だとは分からないだろう 産まれた瞬間から別の場所に隔離されて、ある程度成長したら顔出しになるわけだし

そんな形だけ人間の俺にも信頼できる同い年の女がいた
そいつは"水色ブルー"と呼ばれてて、おそらく俺と同じで名前はないのだろう
腹違いの兄弟かもしれないし、全く違う女と男から産まれたヤツかもしれない
そんな血縁関係も定かじゃない組織で俺たちはコンビとしてよく同じ任務につかされた

初任務の時なんてアイツが依頼人の前で素顔晒しちまったから、その依頼人殺す羽目になった
とんだ使えない人間だと思ったけど、水色ブルーは学習能力が高かった

「うわぁ!」

放った弾丸は的を全く撃ち抜いていない

「はぁ…お前なぁこんなんチビの頃から使ってんだろ なんで使えねんだよ」

「えへへ~訓練サボってたし~」

バカだ…

そんなことを思いながらアドバイスする

「いいか銃の胴に視界をそらせるんだ そしたら弾がどういう方向に飛ぶかおおよそわかる」

ブラックの放った弾丸が的の中央を撃ち抜いた

「おお~」

「やってみろ」

水色ブルーも真似て真剣な目で的を見つめる

まぁ到底一髪で上手くいくわけ…

その瞬間、彼女が放った弾丸は的の中央を撃ち抜いた

「まじか」

「やったーー!!」

俺はこの時思った「こいつは信頼できる」って

こんなゴミみたいな環境で育った俺の感性が正しいなんて思わないが、少なくともこの世界で生きるためには十分すぎる能力だと確信した

それ以来、俺たちは隣同士で任務を人殺しをやってきた
そしてある時、思って水色ブルーに話してみたことがあった

「もし、俺たちが普通の親から普通に産まれて、普通に出会ってたらなんか違ったのかな」

表社会では中学生と呼ばれる時期にその話をした

「そりゃ違うでしょ ここやばいし」

「いやそういうことじゃなくて」

「は?」

「そのなんつーか 任務とかで恋人とかいんじゃん アイツらみたいになれんのかなーって」

「知らん 表で生きてる奴らの恋と私たちの恋って絶対違うからわかんない」

「まぁ誰が誰の親で、誰が誰産んだかもわかんねーからな俺ら」

「そうそう 好きでもないやつとSEXして赤ん坊の大量生産してるのが私たちだし」

「表現キモすぎ」

「私は別にそれでいいけど~表の奴らってそうじゃないわけじゃん?」

「うん、やっぱよくわかんねぇわ!悪ぃな変な質問して」

「ううん!全然いいよ!あ!でもこれだけは言える!」

水色ブルーが立ち上がってその笑顔を見せる

「私はブラックのこと好きだよ!!」

「はぁ!?」

顔面崩壊させて驚きの口を開ける

「まぁこの好きが表の奴らと一緒なのかわかんないけど!」

その無邪気な笑顔に呆れてため息をついた



現在

午前12時45分

北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:45:00

太刀城学園 中庭

「その針金を捨てろ」

ブラックは目標の自害を警戒しヒュウとアバレへの攻撃をやめ、カリンと目を合わせる

「さきにそっちが鎌を捨てなさい」

「それはできない そうすれば後ろにいるコイツらに…」

言いかけたところでカリンが首の皮膚に針金を刺して少量の血を垂らした

「わかった 従おう」

両手から鎌を左右反対に投げ捨てた

「オラァ!!」

ドンッ!

アバレがブラックの頭を背後から地面に押しつけた 彼は気を失って目を閉じた
ヒュウも立ち上がってアバレに近寄る

「キャプテン…」

アバレが首根っこを掴んでブラックを引きずる

すると、カリンも針金を離した
近づいてくるヒュウとアバレに深く礼をする

「ありがとうございました!!」

自分を守ってくれたことへの敬意を示す

「いや!俺らの方が助かった!根性ある姉ちゃんだな!!」

アバレが勢いよく背中を叩いた

「えと、あの!!もう1人金髪の娘見ませんでしたか!」

カリンは気を失う前まで一緒にいたシイナを心配して行方を聞いた

「いや、見てねぇな」

ヒュウが答えるとカリンは下を向いて心配を増す

「そうですか、、」

また私のせいでこんなこと…

3年前のように自身の存在で大きな事件が起きてしまっていることに罪悪感を強く抱く

「ひとまずコイツを縛っておかねぇとな」

アバレが気を失っているブラックを持ち上げる

「だな…」

呼応したヒュウが隣で持ち上げられている人物を見て目を見開いた

「アバレ!手を離せ!!」

「は?」

バッ!グサッ!

気を失っていたはずのブラックが身を捻ってアバレの手から離れると隠し持ったナイフでアバレの頸動脈を刺した

「ウ"…」

「死んだフリは得意なんだ」

カリンは瞬時にしゃがんで手放した針金を手に取ろうとしたがそれよりも先に首に腕を回されナイフを突きつけられる
怒りを露わにしたヒュウが歯を食いしばる

「テメェ!!」

「残念だったなヒュウ」

バタリと倒れたアバレの血液が地面を赤く染める

「こちとら殺しのプロなんだ 所詮ケンカ程度の闘いしかしたことない奴に負けるわけにゃいかない」

アバレの目から光が消えた
それを見たヒュウは怒りが増すあまり口が粗くなる

「もういい!テメェを許さねぇ!!」

蹴りかかろうとすると、ブラックはカリンの首にナイフをつけた

「……!」

殺されることが目に見えたヒュウは踏みとどまった

「生徒は殺せないよな」

「クソが…」

カリンという人質を取られた今、生徒を守るために力を振るうと決めたヒュウは身動きが取れない
躊躇っているヒュウを見てカリンが声を上げる

「私はいい!!」

張り上がった声がヒュウの元に届くも、それより目の前で女子生徒にナイフを向けている人物の今や虚像になってしまった言葉が脳内で反響する

「その力は人を守るために使え」

新たな道を示してくれた言葉は最早、自身の行動を抑制する呪いになってしまった

ヒュウは、目の前にある実像が起こした悪業と虚像とかした人物の呪いで葛藤に苛まれた

「無理だ…俺はできない…」

呪いに屈したヒュウは膝を地につけてうずくまってしまった

守る対象の命が相手の手中にあるのであれば容易に行動はできない
それをわかった上でブラックはこの行動を起こした 自分が施した十分すぎる呪いを最大限活用するに尽きる

「そんな…」

失望したカリンが弱々しく呟くと後ろ首を強く叩かれ、気を失う

「それじゃあ 俺は退場させてもらう」

落とした仮面と鎌を歩き拾いながらカリンを両腕で担ぎ、うずくまるヒュウを下目に見ながらそこから去る

「次会う時があればくだらん言葉を忘れているといいな」

その一言を投げ捨てて向きを変えて仮面を装備し、走り出した


ヒュウ&アバレ vs ガクト改めブラック

ヒュウ&アバレ 敗北

アバレ 死亡


午前12時55分

北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:35:00


グラウンド

数分前、、

ホワイトの攻撃を受けて視覚を負傷したランマルが徐々に回復を果たしていた

「そろそろ行くか」

シイナが敵と闘っているのが分かっているため、すぐに駆けつけようと立ち上がる
すると、体育館方向から声が聞こえた

「ランマル~!」

目を向けると傷だらけで見慣れない槍を持っているセツナが走ってきた

「セツナその怪我」

「うん、ちょっとあってね!でも今はそれどころじゃないでしょ」

「だな」

手持ち無沙汰そうなランマルに槍を与える

「こんなの使えない」

「あ、ごめん」

すぐに槍をそこに落とすとランマルは相手の情報を開示する

「昨日、報告したことに加えて目にダメージを与えるスプレーと俺はまだ食らってないけど電気攻撃があるっぽい」

「りょーかい」

「ちなみに中身は物理の教師だった」

「え!ウツノミヤ先生!?」

やっぱり学校関係者の中にNエヌが忍び込んでたってことか…

水色マントの正体がチサキだったことも含めて考えたセツナの思考は正しい

「事情はとっ捕まえてから聞こう」

「そうだね 今はとりあえず勝つこととカリンちゃんを助けることを優先!!」

戦闘態勢に入りシイナの元に走る


戦闘中のホワイトは苛立っていた

「なぁんで電気効いてないの!!」

「最近、体麻痺させられすぎて痺れるのに慣れたわ!!」

うぇ~悪手だったかぁ

思わず距離を取りながらの受けに徹する
すると耳につけた極小スピーカーからブラックの声がする

「目標を確保した 撤退するぞ」

「お、やったぁ」

白衣の襟を伸ばして話す

ホワイト承知 今すぐ撤退…」

言いかけると背後に冷たい予感をとった
振り切られたナイフをしゃがんでかわした

「マジか…」

ランマルの不意打ちを回避される
シイナも動きが止まったところを透かさず蹴りかかる

ホワイトは迷わず地面に試験管を叩きつけた

「ボォーン」

ボォーーン!!

ホワイトが口にした何倍もの騒音がグラウンドに渡る
自身を巻き添えに爆発を起こした

やはり小規模の爆発にすぎず3人は煙の中で若干のやけど傷を負うだけとなる
しかし、白い煙の中で視界が悪い
見えにくくはあるが確かに物陰を捉えたランマルがナイフを切りつけてみるもそこには脱がされた白衣のみだった

爆発の衝撃にのって煙の外に…?

「セツナ!!」

瞬時に察して煙の外にいるセツナに警戒の声を上げる

「ドンピシャッ!!!」

煙から抜け出したホワイトの着地地点を的中させて回し蹴りするが、足裏から何かを噴射して背後に回られた

「え!?」

「油断してんなぁ!」

発射された小針がセツナの背中に刺さる

「ビリビリターイム」

電撃が避雷針に向かって走る

ビリリリリッ!!

「ァァァア"!」

水色ブルーとの闘いで負った傷が特に痛み、激痛を催す

「あーあ 白衣丸焦げじゃーん どうしてくれんのぉ」

3人はそういうホワイトを見るとその姿に驚愕する

全身に機械的な装備を装着している
両手首には白衣の袖から見えていた避雷針とスプレーの発射口、背中には数本のトゲのまとまりが三箇所につけられ、足裏には空気を噴射する噴射口、そして彼女は今、口元を鋼鉄のマスクで覆った

マスクで籠った声がおぞましさを表現する

「さぁて本気で行こうか」





13時00分

北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:30:00

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