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社長令嬢護衛編
50.あの日の景色
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ことは数分前に遡る
13時00分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:30:00
「さぁて本気で行こうか」
全身に装備した機械的な装備、しかし、見た目から重量はあまり感じられず、着けられている機械は重たくなさそうである
だが、相手が手練であることには変わりなく、セツナ、シイナ、ランマルの3人は既に傷だらけの状態でも強く構える
すると、背後からの異変に気づいたランマルが突如として振り返り迫ってきた何かをナイフで弾いた
弾かれた鎌は持ち主の元へ回転して戻っていく
「なんだ…」
ランマルが鎌を視線で追うとその先に仮面をつけた黒マントがいた
ランマルはその者がカリンを抱えていることに即座に気づく
「カリン!」
「「……!?」」
2人も思わず振り返ると3人が白に背を向けてしまう
その隙に打たれた避雷針がセツナに迫る
横目で気づいたシイナがそれを蹴り弾く
「危なかった!」
セツナとシイナが向き直る
その2人にランマルが背を向けたまま小声で提案する
「2人とも オレはカリンを取り戻しに行く」
シイナが反発の口を開ける
「ダメ 3対2がベストよ それにあの黒マントもウツノミヤと同じくらい強いかもしれない」
「カリンを護衛することがオレたちの任務だ けど、カリンが相手の手の中にいる これは不利すぎる 不利要素から距離を離す」
「それをランマル1人がするの…!? 私も…」
「ダメだ 逆にあの変身したヤバい奴を確実に抑えられなくなる」
シイナはランマルを守りたいがために離れることを躊躇うが、ランマルはそれを拒否する なにより任務成功と人命が優先であると
そこまで何も話さなかったセツナも口を開く
「ランマル 私は大丈夫 2人でカリンちゃんを…」
「無理だ セツナはこん中で1番負傷してる 1人にするのは危険すぎる」
「あぁもう!わかったわよ!!ランマルの提案を飲むわ!」
シイナが自分の意思を曲げて賛成した
「ありがと 死ぬなよ」
「「そっちこそね!!」」
ランマルは黒の方へ駆け出して行った
「ご親切に待ってくれるなんて余裕ね」
シイナが白を煽った
「まぁ?私はあなた達なんて余裕だしぃ」
言葉を発した隙に飛び上がったセツナが頭部を狙って足を振り下ろす
それを腕で受け止めると背後でシイナが回し蹴りをする
「ビュンッ!」
すると、白の背中に付着している棘のまとまりが突起しシイナの攻撃を引かせる
「「……!」」
驚いた2人は相手を挟むように離れる
「ヤバいでしょそれ」
「だからぁ余裕なんだってぇ」
セツナが正面から滑り込むと足を引っ掛けるように素早く回す
しかし、その瞬間白は宙に浮いてしまう
「……!」
「はいおつぅ」
足裏の噴射口の装備から空気を噴出し、背後に回られる
即座に振り返ったが、それがアダとなりスプレーを吹きかけられる
「イッ…!」
目に直に触れることを避けるため、目を瞑ると腹あたりに微かな痛みを感じる
ビリリリリリッ!
「うわァァァァ!」
体内を走る電撃が傷を内部から抉る
「離れなさい!!」
シイナが蹴りこんで宙に浮く白を落とす
膝をついて苦しそうなセツナをシイナが心配する
「アナタ、、大丈夫なの?」
「うん、まだ平気」
見た目と態度から感じられない一言である
「でも!」
「シイナ!!」
「……!」
反対の声を上げようとするとを遮ってセツナが提案する
「相手の動きを暗記する時間が欲しい」
「は?」
一方、ランマルはカリンを抱えて片手間な相手を翻弄していた
もうちょい隙があれば…
カリンを奪取して闘えると思っているがそれを黒が許すはずもない
コイツ…隙あらば女に手を伸ばしやがる…それに少し触られただけで回収されそうだ
物を奪うことに突出したランマルを警戒している
シイナのみが白に接近し、近接戦闘をしている
しかし、装備を巧みに使いこなす相手に苦戦していた
それを離れたところからセツナは凝視していた
捉えたと思えば足から空気を噴射して背後を取られる それに即座に反応しなければスプレーや電撃の餌食になる
逆にこちらが背後をとると背中の棘が伸びて攻撃を阻む
まさに攻防一体の装備に穴はなく、攻撃方法を暗記してもその予備動作に対応することはできそうにない
覚えた…覚えたけど…
隙を作ることはできない
おそらく背中の棘はセンサーか何かで動いている それの対処はかなり難しい
1人じゃ無理…でも…私の動体視力をシイナが持ってるわけがないし…
そこでセツナは思いついた 卑劣な科学者を倒す方法を
「シイナ!!」
「……!」
セツナが2人に飛び込むと白はそれを後ろに飛んで回避し、シイナは隣にくる
「どう!?」
期待を寄せたシイナの言葉が刺さる
「うん、、無理!!!」
「はぁ!?」
思わずピキった
瞬間、2人の間を通り抜ける避雷針
「あっぶない!」
「よそ見厳禁だよぉ」
避雷針の連発をかわしながら2人は話す
「なにそれ!!ひどくない!!」
「ごめん!!でも!私1人じゃ無理ってだけで!」
「それってどういうこと!!」
針の連発をくぐり抜けてセツナが耳元で囁いた
「……」
「マジで言ってんのそれ!!」
「これしか思いつかない!!」
「やってみるけど!」
2人は反対方向へ走り出し、白を囲むように走り回る
「おっとぉ?この動き…」
水色のやり方に似てるな…
白は同じ組織の人間の攻撃手段だとすぐに察知する
私の周囲を素早く走り回り不規則なタイミングで真ん中にいる私を攻撃する…水色ならそんな感じだけど…2人か
どうせ挟み込んで仕掛けるだけでしょ
背中の棘は自動で出るし後ろのカバーはいいね…正面からの攻撃に注意…
白の予想通りセツナとシイナは挟むように同時に襲いかかってきた
ほらね…
予想的中とばかりに正面から来たセツナに避雷針を撃つ
しかし、それをしゃがんでかわした
「ありゃっ」
それと同時に背中の棘が突出したのがわかる
はずした…まいっか…どうせ後ろから攻撃される心配は…
ん?なんだこの子…手を地面に着けて…
ボゴッ!!!
「ボヘッ!!」
背後から頭部を蹴り付けられた
は!?どういうこと!!
「逆立ち兎!」
逆立ちする勢いで腹を蹴りつけて宙に浮かす
「オエッ!!」
棘が出る瞬間に寸止めしたのね…!まっず…!
不利な戦況を打破するため足裏から空気を大量に噴射し、2人がいるところに落ちないようにはずれるが、それは仇である
「その空気!もらったわ!!」
噴射された空気を足に纏うように回転し、足に空圧を帯びる
「やばいかも!!」
危機感を覚えるがそれを受ける体勢は整っていない
舞姫跳ぶ
「空踏」
その空圧を地面に叩きたつけて自身を爆発的に浮かし、その衝撃波に足を乗せる
シイナは勢いよく飛び出し、次の瞬間には右足を白の腹に吸い込ませていた
「ランマルとカリンのお返しよ」
ボォン!ドンッ!!
背中から地面に打ち付けられた身体からスプレーと棘の装置が黒い煙を上げて破壊され、破片が転がる
それを遠目から見ていた黒が驚く
「白!?」
動きが瞬間的に止まる
「瞬奪」
ランマルは片手に持っていた鎌を奪い、カリンを締めている左腕を切り裂いた
ジャグッ!!
「しまっ…!」
鎌をそこに放り捨てて地面に倒れかけるカリンを受け止める
「クソがっ!」
取り返そうと手を伸ばすとランマルは足を上げて回転する 足裏から刃が突出する
「隠し刃ッ!?」
手のひらを深く切りつけて手を引かせる
「チッ…」
思わず距離をとる
ランマルはそこにカリンをゆっくりと寝転ばせる
「やっと取り返したぜ…」
安心と警戒を含んだ顔で黒を見る
「形勢逆転かよ…」
シイナが地面に手をつけて這い蹲る白を睨む
「目的はなに…」
「目的ね…は、ははは」
不気味に笑い始める
その笑いを徐々に大きくなり、その場にいる全員の動きを止める
「あーハッハッハッ!!」
その笑い声で目を覚ましたカリンがその状況を目の当たりにする
「なにが、そんなにおかしいの、」
セツナがシイナの後ろから戸惑いながら聞いた
「いやぁ~wそんなこと考えたことないなぁって思ってさぁw!」
気がおかしくなったかのように笑いながら話す
目覚めて座っているカリンに鋭く指を指した
「私たちはね!そこにいる女を連れてこいって言われてるだけなの!!」
目を見開いて驚くカリン
「なんでカリンなのかって聞いてるんだけど!」
「知らないよそんなのぉw!!私たちは言われたことだけ忠実にこなしてきた人間だからさぁw!」
その場にいる者が狂気じみていると蔑んだ目で彼女を見ていたが、黒は共感と哀れみの視線を向けていた
「まぁ!あの子に心当たりあるんじゃない?狙われてる張本人なんだし!!」
カリンは体を縮ませて自身にある呪いを身に染みる
それを見るや否や、白は急に落ち着きを取り戻し静かに話す
「図星っぽいよぉ~ てかもうどうでもいいや」
その発言を聞いて黒は哀れみを驚愕に変える
「おい!!まさかお前!!」
一瞬、黒へと視線が集まったその瞬間、電流を発生させる棒の先端を押した
ドクンッ!!
心臓が強く振動した
「ボエッ!!」
その場に大量の血液を吐き出す
「「「……!?」」」
セツナ、シイナ、ランマルは警戒を全て彼女に向ける
「大量の違法薬物ってサイコー!!」
勢いよく立ち上がると白は更に血液を吐き出す それを両手で受け止めると体に塗りたくる
「吸血装備ちゃーん ぜーんぶのんでぇ♡」
装備が呼応するように塗りたくられた血液を吸収する
「いいねぇ♡!!私の血ちゅっちゅっして私の体ぶっこわすまでやっちゃえ♡」
ビュンッ
「え、、」
シイナとセツナの間をなにが走った
その瞬間、2人の全身になにかが刺さった
ビリッビリリリリリリリリリリッ!
「「ァァァァァァァア!!」」
全身に刺さった避雷針から電撃が流れ込み気を失いかけるほどに2人の体内を焦がす
白は一瞬で2人の間を駆け抜け、全身に避雷針を打ったのだ
その衝撃で避雷針を噴射する装置は破壊され地面に落ちた
それを見たカリンが3年前の悲劇をフラッシュバックする
「やだ、、」
狙いはランマルに変わり狂ったようになった目を向ける
ランマルも構えるが、それをいとも簡単に高速で蹴り飛ばし校舎の外壁にとばす
「オエッ!」
速すぎッ!
「エヘへ~ッ」
不気味に笑う相手に動きを止めたランマルにナイフを向ける
振り下ろされる瞬間、ランマルはそのナイフをかすめ取り、刺し殺そうとしたが、その手首を掴まれる
「ヌアッ…!」
「エイッ!!」
ランマルをグラウンドに投げ返す
地面に転がり落ちるランマルがセツナとシイナの元まで届く
地面に這い蹲る3人は何もできず徐々に迫ってくる狂気に怯える
その恐ろしく卑劣な様子を見ているカリンの感情は高ぶる
ダメ…ダメ!落ち着いて…わたし…!感情的になったら…!あの時みたいに…!!
感情を押し殺して涙を弾き流しながら顔を上げると3人が倒れて悶えている姿を見た
それが彼女の感情に最悪な王手をかける
「冬華…」
あの日瓦礫に潰れた妹の景色と重なってしまった
「はぁはぁはぁ……!!」
そして、グラウンドは血赤く染まる
「イヤァァァァァア!!」
強い想いの籠った叫びがグラウンド全体に劈く
その叫びはその場にいる全員の耳を破壊するほどに刺す
耳を抑えるが、強く心臓が揺らぐ
「なに…これ…!?」
人間の瞳が赤黒く点滅し、奇妙な興奮を覚え始める
カリンはそこに倒れ、それと同時に赤黒い瞳も色落ちたように思われた
ただの1人の少女を除いて、、
"朱色の呪"の発動、無意識下でセツナの殺人衝動を呼び起こす
殺したい奴がいた…だから殺した…
ゆらりと立ち上がったセツナの刃は敵に向けられることはなく、そこに這い蹲る仲間に向かった
「セツナ…?」
赤い眼光が血走るとセツナの持ったナイフがシイナの体に突き刺さった
グサッ…
目を瞑ったシイナが目を開くと視線の先にあったのは大きな右手だった
その右手がセツナの刃を受け止めている
ランマルとシイナの目に希望が映った
「「リンドウさん!!!」」
13時10分
特攻班 林道 千秋 現着
リンドウは真剣な趣きでセツナという教え子を見つめる
冷静にナイフ手放させて抜く
「どうしたんだセツナ」
「………」
無言で赤く睨んでいたその瞬間、腹に強く拳を打ち付けられた
「……!」
「よく分からんが、頑張ったなあとは俺に任せろ」
気を失ったセツナはリンドウの手の中に落ちる
セツナをそこに寝転ばせると喜び涙を流すシイナを横目に気の狂った相手を睨む
「この子達の怪我はお前がしたってことでいいんだな」
「だったらぁ~なんなのぉー」
「いや?殺す理由ができただけだ」
「ほぉざぁけぇ!!」
先程のように高速で突進してくる
「遅せぇ」
ゴンッ!!
「は?」
目に見えないほどの速度で打たれた蹴りを左手首に装備した片手盾で防ぐ
「盾?」
「どうした?お手上げか?」
「死ねぇぇぇえ!!」
歪で高速の拳と脚の連撃がおびただしい量で繰り出されている
シイナやランマルが捉えられないほどに速い攻撃である
リンドウさんは大丈夫なのか…
その心配は杞憂であり、リンドウは連撃を全て盾で防ぎきっている
「ふっ…力も弱いな」
ランマルを蹴り飛ばすことのできる身体能力から繰り出される攻撃を腕でいとも簡単に受け止めることができている
「むゥかぁつゥくぅ!!」
地面を殴って砂埃を起こしてリンドウの視線を塞ぐ
その隙に足裏から空気を噴射して背後をとる
「喰らえぇえ!!」
ゴォンッ!
鈍い音が響いた
「はぁ???」
視界を塞いだはずのリンドウの片腕が後ろにあり、盾で受け止められる
「もう十分だろ 死ね」
振り向いて両手に装備した盾の縁をあわせる
「衝撃解放」
「へっ?」
ブオォォォオン!!
「ナァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」
盾から強い衝撃波が放たれ白を襲う
グチャブチャッ!!
疲労した肉が引き千切れ、両腕を肉片に変える
右目が吹きちぎれ、完全防備に見えた装備も一部が破れ散る
大量の血液を吐き散らし気を失って頭から地面に落ちた
舞った砂埃を払い無傷で立っているリンドウを見た教え子たちは実感する
これがЯ の本気…!
自分たちが苦戦した相手を完膚なきまでに倒したリンドウの姿は確かに彼らの目に焼き付けられた
「科学班を呼べ 回収と手当をする 生徒教師達がまだ残っているのをさっき見た すぐに避難させろ」
13時12分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:18:00
13時00分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:30:00
「さぁて本気で行こうか」
全身に装備した機械的な装備、しかし、見た目から重量はあまり感じられず、着けられている機械は重たくなさそうである
だが、相手が手練であることには変わりなく、セツナ、シイナ、ランマルの3人は既に傷だらけの状態でも強く構える
すると、背後からの異変に気づいたランマルが突如として振り返り迫ってきた何かをナイフで弾いた
弾かれた鎌は持ち主の元へ回転して戻っていく
「なんだ…」
ランマルが鎌を視線で追うとその先に仮面をつけた黒マントがいた
ランマルはその者がカリンを抱えていることに即座に気づく
「カリン!」
「「……!?」」
2人も思わず振り返ると3人が白に背を向けてしまう
その隙に打たれた避雷針がセツナに迫る
横目で気づいたシイナがそれを蹴り弾く
「危なかった!」
セツナとシイナが向き直る
その2人にランマルが背を向けたまま小声で提案する
「2人とも オレはカリンを取り戻しに行く」
シイナが反発の口を開ける
「ダメ 3対2がベストよ それにあの黒マントもウツノミヤと同じくらい強いかもしれない」
「カリンを護衛することがオレたちの任務だ けど、カリンが相手の手の中にいる これは不利すぎる 不利要素から距離を離す」
「それをランマル1人がするの…!? 私も…」
「ダメだ 逆にあの変身したヤバい奴を確実に抑えられなくなる」
シイナはランマルを守りたいがために離れることを躊躇うが、ランマルはそれを拒否する なにより任務成功と人命が優先であると
そこまで何も話さなかったセツナも口を開く
「ランマル 私は大丈夫 2人でカリンちゃんを…」
「無理だ セツナはこん中で1番負傷してる 1人にするのは危険すぎる」
「あぁもう!わかったわよ!!ランマルの提案を飲むわ!」
シイナが自分の意思を曲げて賛成した
「ありがと 死ぬなよ」
「「そっちこそね!!」」
ランマルは黒の方へ駆け出して行った
「ご親切に待ってくれるなんて余裕ね」
シイナが白を煽った
「まぁ?私はあなた達なんて余裕だしぃ」
言葉を発した隙に飛び上がったセツナが頭部を狙って足を振り下ろす
それを腕で受け止めると背後でシイナが回し蹴りをする
「ビュンッ!」
すると、白の背中に付着している棘のまとまりが突起しシイナの攻撃を引かせる
「「……!」」
驚いた2人は相手を挟むように離れる
「ヤバいでしょそれ」
「だからぁ余裕なんだってぇ」
セツナが正面から滑り込むと足を引っ掛けるように素早く回す
しかし、その瞬間白は宙に浮いてしまう
「……!」
「はいおつぅ」
足裏の噴射口の装備から空気を噴出し、背後に回られる
即座に振り返ったが、それがアダとなりスプレーを吹きかけられる
「イッ…!」
目に直に触れることを避けるため、目を瞑ると腹あたりに微かな痛みを感じる
ビリリリリリッ!
「うわァァァァ!」
体内を走る電撃が傷を内部から抉る
「離れなさい!!」
シイナが蹴りこんで宙に浮く白を落とす
膝をついて苦しそうなセツナをシイナが心配する
「アナタ、、大丈夫なの?」
「うん、まだ平気」
見た目と態度から感じられない一言である
「でも!」
「シイナ!!」
「……!」
反対の声を上げようとするとを遮ってセツナが提案する
「相手の動きを暗記する時間が欲しい」
「は?」
一方、ランマルはカリンを抱えて片手間な相手を翻弄していた
もうちょい隙があれば…
カリンを奪取して闘えると思っているがそれを黒が許すはずもない
コイツ…隙あらば女に手を伸ばしやがる…それに少し触られただけで回収されそうだ
物を奪うことに突出したランマルを警戒している
シイナのみが白に接近し、近接戦闘をしている
しかし、装備を巧みに使いこなす相手に苦戦していた
それを離れたところからセツナは凝視していた
捉えたと思えば足から空気を噴射して背後を取られる それに即座に反応しなければスプレーや電撃の餌食になる
逆にこちらが背後をとると背中の棘が伸びて攻撃を阻む
まさに攻防一体の装備に穴はなく、攻撃方法を暗記してもその予備動作に対応することはできそうにない
覚えた…覚えたけど…
隙を作ることはできない
おそらく背中の棘はセンサーか何かで動いている それの対処はかなり難しい
1人じゃ無理…でも…私の動体視力をシイナが持ってるわけがないし…
そこでセツナは思いついた 卑劣な科学者を倒す方法を
「シイナ!!」
「……!」
セツナが2人に飛び込むと白はそれを後ろに飛んで回避し、シイナは隣にくる
「どう!?」
期待を寄せたシイナの言葉が刺さる
「うん、、無理!!!」
「はぁ!?」
思わずピキった
瞬間、2人の間を通り抜ける避雷針
「あっぶない!」
「よそ見厳禁だよぉ」
避雷針の連発をかわしながら2人は話す
「なにそれ!!ひどくない!!」
「ごめん!!でも!私1人じゃ無理ってだけで!」
「それってどういうこと!!」
針の連発をくぐり抜けてセツナが耳元で囁いた
「……」
「マジで言ってんのそれ!!」
「これしか思いつかない!!」
「やってみるけど!」
2人は反対方向へ走り出し、白を囲むように走り回る
「おっとぉ?この動き…」
水色のやり方に似てるな…
白は同じ組織の人間の攻撃手段だとすぐに察知する
私の周囲を素早く走り回り不規則なタイミングで真ん中にいる私を攻撃する…水色ならそんな感じだけど…2人か
どうせ挟み込んで仕掛けるだけでしょ
背中の棘は自動で出るし後ろのカバーはいいね…正面からの攻撃に注意…
白の予想通りセツナとシイナは挟むように同時に襲いかかってきた
ほらね…
予想的中とばかりに正面から来たセツナに避雷針を撃つ
しかし、それをしゃがんでかわした
「ありゃっ」
それと同時に背中の棘が突出したのがわかる
はずした…まいっか…どうせ後ろから攻撃される心配は…
ん?なんだこの子…手を地面に着けて…
ボゴッ!!!
「ボヘッ!!」
背後から頭部を蹴り付けられた
は!?どういうこと!!
「逆立ち兎!」
逆立ちする勢いで腹を蹴りつけて宙に浮かす
「オエッ!!」
棘が出る瞬間に寸止めしたのね…!まっず…!
不利な戦況を打破するため足裏から空気を大量に噴射し、2人がいるところに落ちないようにはずれるが、それは仇である
「その空気!もらったわ!!」
噴射された空気を足に纏うように回転し、足に空圧を帯びる
「やばいかも!!」
危機感を覚えるがそれを受ける体勢は整っていない
舞姫跳ぶ
「空踏」
その空圧を地面に叩きたつけて自身を爆発的に浮かし、その衝撃波に足を乗せる
シイナは勢いよく飛び出し、次の瞬間には右足を白の腹に吸い込ませていた
「ランマルとカリンのお返しよ」
ボォン!ドンッ!!
背中から地面に打ち付けられた身体からスプレーと棘の装置が黒い煙を上げて破壊され、破片が転がる
それを遠目から見ていた黒が驚く
「白!?」
動きが瞬間的に止まる
「瞬奪」
ランマルは片手に持っていた鎌を奪い、カリンを締めている左腕を切り裂いた
ジャグッ!!
「しまっ…!」
鎌をそこに放り捨てて地面に倒れかけるカリンを受け止める
「クソがっ!」
取り返そうと手を伸ばすとランマルは足を上げて回転する 足裏から刃が突出する
「隠し刃ッ!?」
手のひらを深く切りつけて手を引かせる
「チッ…」
思わず距離をとる
ランマルはそこにカリンをゆっくりと寝転ばせる
「やっと取り返したぜ…」
安心と警戒を含んだ顔で黒を見る
「形勢逆転かよ…」
シイナが地面に手をつけて這い蹲る白を睨む
「目的はなに…」
「目的ね…は、ははは」
不気味に笑い始める
その笑いを徐々に大きくなり、その場にいる全員の動きを止める
「あーハッハッハッ!!」
その笑い声で目を覚ましたカリンがその状況を目の当たりにする
「なにが、そんなにおかしいの、」
セツナがシイナの後ろから戸惑いながら聞いた
「いやぁ~wそんなこと考えたことないなぁって思ってさぁw!」
気がおかしくなったかのように笑いながら話す
目覚めて座っているカリンに鋭く指を指した
「私たちはね!そこにいる女を連れてこいって言われてるだけなの!!」
目を見開いて驚くカリン
「なんでカリンなのかって聞いてるんだけど!」
「知らないよそんなのぉw!!私たちは言われたことだけ忠実にこなしてきた人間だからさぁw!」
その場にいる者が狂気じみていると蔑んだ目で彼女を見ていたが、黒は共感と哀れみの視線を向けていた
「まぁ!あの子に心当たりあるんじゃない?狙われてる張本人なんだし!!」
カリンは体を縮ませて自身にある呪いを身に染みる
それを見るや否や、白は急に落ち着きを取り戻し静かに話す
「図星っぽいよぉ~ てかもうどうでもいいや」
その発言を聞いて黒は哀れみを驚愕に変える
「おい!!まさかお前!!」
一瞬、黒へと視線が集まったその瞬間、電流を発生させる棒の先端を押した
ドクンッ!!
心臓が強く振動した
「ボエッ!!」
その場に大量の血液を吐き出す
「「「……!?」」」
セツナ、シイナ、ランマルは警戒を全て彼女に向ける
「大量の違法薬物ってサイコー!!」
勢いよく立ち上がると白は更に血液を吐き出す それを両手で受け止めると体に塗りたくる
「吸血装備ちゃーん ぜーんぶのんでぇ♡」
装備が呼応するように塗りたくられた血液を吸収する
「いいねぇ♡!!私の血ちゅっちゅっして私の体ぶっこわすまでやっちゃえ♡」
ビュンッ
「え、、」
シイナとセツナの間をなにが走った
その瞬間、2人の全身になにかが刺さった
ビリッビリリリリリリリリリリッ!
「「ァァァァァァァア!!」」
全身に刺さった避雷針から電撃が流れ込み気を失いかけるほどに2人の体内を焦がす
白は一瞬で2人の間を駆け抜け、全身に避雷針を打ったのだ
その衝撃で避雷針を噴射する装置は破壊され地面に落ちた
それを見たカリンが3年前の悲劇をフラッシュバックする
「やだ、、」
狙いはランマルに変わり狂ったようになった目を向ける
ランマルも構えるが、それをいとも簡単に高速で蹴り飛ばし校舎の外壁にとばす
「オエッ!」
速すぎッ!
「エヘへ~ッ」
不気味に笑う相手に動きを止めたランマルにナイフを向ける
振り下ろされる瞬間、ランマルはそのナイフをかすめ取り、刺し殺そうとしたが、その手首を掴まれる
「ヌアッ…!」
「エイッ!!」
ランマルをグラウンドに投げ返す
地面に転がり落ちるランマルがセツナとシイナの元まで届く
地面に這い蹲る3人は何もできず徐々に迫ってくる狂気に怯える
その恐ろしく卑劣な様子を見ているカリンの感情は高ぶる
ダメ…ダメ!落ち着いて…わたし…!感情的になったら…!あの時みたいに…!!
感情を押し殺して涙を弾き流しながら顔を上げると3人が倒れて悶えている姿を見た
それが彼女の感情に最悪な王手をかける
「冬華…」
あの日瓦礫に潰れた妹の景色と重なってしまった
「はぁはぁはぁ……!!」
そして、グラウンドは血赤く染まる
「イヤァァァァァア!!」
強い想いの籠った叫びがグラウンド全体に劈く
その叫びはその場にいる全員の耳を破壊するほどに刺す
耳を抑えるが、強く心臓が揺らぐ
「なに…これ…!?」
人間の瞳が赤黒く点滅し、奇妙な興奮を覚え始める
カリンはそこに倒れ、それと同時に赤黒い瞳も色落ちたように思われた
ただの1人の少女を除いて、、
"朱色の呪"の発動、無意識下でセツナの殺人衝動を呼び起こす
殺したい奴がいた…だから殺した…
ゆらりと立ち上がったセツナの刃は敵に向けられることはなく、そこに這い蹲る仲間に向かった
「セツナ…?」
赤い眼光が血走るとセツナの持ったナイフがシイナの体に突き刺さった
グサッ…
目を瞑ったシイナが目を開くと視線の先にあったのは大きな右手だった
その右手がセツナの刃を受け止めている
ランマルとシイナの目に希望が映った
「「リンドウさん!!!」」
13時10分
特攻班 林道 千秋 現着
リンドウは真剣な趣きでセツナという教え子を見つめる
冷静にナイフ手放させて抜く
「どうしたんだセツナ」
「………」
無言で赤く睨んでいたその瞬間、腹に強く拳を打ち付けられた
「……!」
「よく分からんが、頑張ったなあとは俺に任せろ」
気を失ったセツナはリンドウの手の中に落ちる
セツナをそこに寝転ばせると喜び涙を流すシイナを横目に気の狂った相手を睨む
「この子達の怪我はお前がしたってことでいいんだな」
「だったらぁ~なんなのぉー」
「いや?殺す理由ができただけだ」
「ほぉざぁけぇ!!」
先程のように高速で突進してくる
「遅せぇ」
ゴンッ!!
「は?」
目に見えないほどの速度で打たれた蹴りを左手首に装備した片手盾で防ぐ
「盾?」
「どうした?お手上げか?」
「死ねぇぇぇえ!!」
歪で高速の拳と脚の連撃がおびただしい量で繰り出されている
シイナやランマルが捉えられないほどに速い攻撃である
リンドウさんは大丈夫なのか…
その心配は杞憂であり、リンドウは連撃を全て盾で防ぎきっている
「ふっ…力も弱いな」
ランマルを蹴り飛ばすことのできる身体能力から繰り出される攻撃を腕でいとも簡単に受け止めることができている
「むゥかぁつゥくぅ!!」
地面を殴って砂埃を起こしてリンドウの視線を塞ぐ
その隙に足裏から空気を噴射して背後をとる
「喰らえぇえ!!」
ゴォンッ!
鈍い音が響いた
「はぁ???」
視界を塞いだはずのリンドウの片腕が後ろにあり、盾で受け止められる
「もう十分だろ 死ね」
振り向いて両手に装備した盾の縁をあわせる
「衝撃解放」
「へっ?」
ブオォォォオン!!
「ナァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」
盾から強い衝撃波が放たれ白を襲う
グチャブチャッ!!
疲労した肉が引き千切れ、両腕を肉片に変える
右目が吹きちぎれ、完全防備に見えた装備も一部が破れ散る
大量の血液を吐き散らし気を失って頭から地面に落ちた
舞った砂埃を払い無傷で立っているリンドウを見た教え子たちは実感する
これがЯ の本気…!
自分たちが苦戦した相手を完膚なきまでに倒したリンドウの姿は確かに彼らの目に焼き付けられた
「科学班を呼べ 回収と手当をする 生徒教師達がまだ残っているのをさっき見た すぐに避難させろ」
13時12分
北澤 夏鈴の賞金取り下げまで11:18:00
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