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社長令嬢護衛編
53.信念③
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数時間後、、
???
「はっ!!」
カリンが目を覚ますとアスファルトの天井があった
起き上がると自分はベッドに横たわっていたことに気づく
「なにが…」
「目が覚めたか」
聞き覚えのある男の声が横からした
「あなたはセツナさんたちと一緒にいた」
「キヤマ サトシだ」
サトシは足と腕を拘束されて身動きを取れなくなっている
「なぜ、そんなことに」
「知るか 起きたらこうなってたんだ」
状況を理解できていない2人は自分たちと同じようにベッドに寝込んでいる人たちを見渡す
「この方たちは…」
すると、部屋の扉が開き小柄な老人が現れた
「起きておったか」
サトシは目をしかめ、カリンは布団で口元を隠す
「誰だ ちびジジィ」
「それが応急手当をしてやった恩人に対する口かね」
「関係ねぇ 俺とコイツはお前らに連れ去られてんだ 理由を教えてもらう あと、ここにいる奴らは一体何もんだ」
「質問が多いぞ」
言いながらこちらを見ることはせず、2人の向かいで眠っている女性の腕をまくる
「名前は教えられないし、理由ならそこのお嬢さんがよく分かっているだろう」
サトシがカリンを見るとカリンは目を逸らす
「ここにいる者たちがなんなのか それは今から見せてやろうぞ」
その女性の腕に赤色の液体の入った注射器を刺した 徐々に注入される液体を入れ終わると老男は注射器を抜いた
その瞬間、女性は開眼しもがき始める
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
その姿を見て2人は目を見開く
「イヤだ!!イヤダァァァア!!」
瞳が赤く点滅し全身も徐々に赤くなる
皮膚が破裂し血液を所々から発射する
目からも血涙が垂れ流れ、口から吐瀉物と同時に血液を吐く
「ヤダァァァァ…し"に"は"…く"な"い"」
声は爛れたように潰れ、発音ができなくなっている
彼女の叫び声は静まり全身から力が抜けたように動きが止まった
「なにしてやがる……」
その非論理的光景にこの言葉しか出なかった
「実験、、というより人物厳選だ」
女性の亡き骸に冷たい目を向けて注射器を片付ける
「人物厳選だと…」
「あぁお前も受けたと聞いたぞ 青年からな」
サトシにはウルフカットから何かされた記憶が確かにあった
「ここに連れてこられたということはお前はアレに耐えられたのだろう? 今度はコレと言うだけだ」
「コレが何になる」
「言ったでろう人物厳選だと コレはあの青年から受けた者の中で耐えることができた者、その中からさらに人を選ぶための行為だ」
「つまり、それに耐えることができる人間がいると…」
「その通りぞ クリアできれば見事に我らの仲間入りだ」
「お断りだ そんな人体実験付き合ってられるか」
「そんなは言い草はないな~」
ドアからウルフカットの青年が部屋に入ってきた
「少年隊長くん」
見たことのある顔に警戒をする
「テメェ…!」
「おいおいそんなキレるな 歯向かったとて勝てないことくらい分かるだろ」
手で余裕を表現しサトシの拘束を緩める
「解いてやるよ 身の程知らずじゃないだろうし」
足と両手の拘束を外されるとサトシはベッドから下りる
「こっからが話し合いだ 俺に目ん玉見つめられた時、なんか高揚感的な何かを…
ドォン!!
サトシが唐突に回し蹴りした
ウルフカットはそれを容易に片腕で受け止めていた
「……!」
「怪我治してやったのに」
受け止めた腕の反対の手で脚を掴む
「やめなさい青年」
老男が止めに口を入れる
「安心しろ博士 どうせすぐ治せる」
ボキッ…!
鈍い音が脚の中で鳴った
「う"あ"ッ!」
カリンがそれを見て息を止めて口を塞ぐ
「やっぱりЯ は無謀な正義馬鹿なんだな」
ウルフカットはサトシの首をまたあの時のように掴む
「実力差を一目で判断できるようになれよ クソガキ」
血赤く染まった瞳でサトシを見つめる
「……!?」
まただ…!またあの感覚…
サトシは何をしても許されるような感覚に陥り、またしても瞳が徐々に赤くなる
すると、みるみるうちに脚の中の痛みがなくなっていった
なんだ…!治ってる…?
「お前さ 強い奴とやりたいって思ってるだろ」
「……!」
「けど現状、お前はそれができない」
「なんだ…と…」
「Я とかいう軍団は戦力が多い だから、任務に、適した人材をあてる より確実に犠牲がないようにな」
組織としてごく当然の事だ しかし、サトシが求めているものは違う
「上に強い奴がいるせいで敵の強い奴とやれる機会がない そうだろ」
「………」
その通りの言葉に口答えできない
「お前にとってあの組織は不適切だ だから俺が拾ってやるって言ってるんだ」
「そんなこと…」
「ここには強い奴が結構いるぞ 少なくともお前クラスならいくらでもな」
「………」
「お前がやりたいことはここでならできる」
心臓がより赤くなっていくような感覚、高揚感、好奇心が彼を襲う
「"子供を守る"なんてくだらない信念を捨てろ お前はここにいるべきだ」
ウルフカットは明らかにサトシから抵抗力が無くなったことがわかる
首から手を離してベッドの上に落とす
「ノるか?」
サトシは下を向いて、静かに口を開いた
「ああ お前らと組む」
ウルフカットはニヤりと笑った
一方、カリンは信じられない表情で絶望を示している
「おお!そりゃどうも まぁ組織に入るわけだし俺たちの野望にも付き合ってもらうよ」
「構わん 強い奴とやれるなら」
その返答を聞いてウルフカットは手を勢いよく叩きながらカリンの方へ歩みよる
「……!」
引け目をとったカリンの瞳を至近距離で見る
「自分がなんで捕まったか だいたい察し着くよね」
口を震わせながら怯える
「ハハハ…まぁいいや 見せたい物があるんだ」
ウルフカットは老男の方に向く
「あそこに連れていく 縄持ちして」
「了解じゃ」
ウルフカットはカリンの縄を持つ老男と共に部屋から出ていった
埼玉県 某所地下
黒が階段から降りるとそこには鉄網柵で囲まれた闘技場がいくつも並んでいた
その闘技場を一つ一つ過ぎて行くと、ある闘技場から機械のアナウンスが聞こえた
『第78試合 終了』
その音が鳴った闘技場へと足を運ぶとそこでは、天然パーマのかかった黒髪に緑の瞳をした男とやや身長が高く腹に脂肪を蓄えた男が息を荒らげていた
天然パーマが先に口を開く
「そろそろギブなんじゃないの」
「そっちの方こそ」
また、アナウンスが鳴る
『第79試合 開始』
天然パーマが床を踏んで相手の腹を蹴る
しかし、足は腹に吸収される
脂肪の男が腹筋に力を入れると足が抜けなくなる
「まじデブ!!」
「黙れ」
振り下ろされた拳が天然パーマの頬を打ち抜き飛ばす
勢いよくとばされる天然パーマは白線数ミリ手前で床に手をつけて勢いよく跳びあがる
「てりゃあ!」
ふざけた声を上げながら急降下し飛び蹴りを脂肪の男の肩に喰らわせる
しかし、ビクともせず、反撃で殴りかかろうとするが、空中で身を捻って回避され脚を首に巻き付かれる
「肩車だー!」
「離れろ…!」
「やなこった」
天然パーマがチョップを頭部に打ち付けようとすると脂肪の男は巻き付かれいている脚を掴んで振り飛ばす
「うあ~!」
瞬時に立ち上がりまたも急接近する
「フンッ!!」
脂肪の男が勢いよく伸ばした拳は片手で力を逸らされ空を切る
「僕の勝ち」
天然パーマから振られたチョップは首に打ち付けられ脂肪の男は衝撃に耐えられず倒れてしまった
『第79試合 終了 2ポイント差 緑の勝利』
そのアナウンスと同時に天然パーマは息をついた
「やっと勝てた」
そう言いながら倒した相手に手を伸ばす
脂肪の男はその手を取って立ち上がる
「試合の最長記録だな」
「やっぱ2連勝するまで終われないのはいい訓練になる」
すると柵越しかり黒が声をかける
「緑!橙!こっちこい!」
「お、黒だ」
「なにかの報告か」
2人に任務の失敗と今後の方針を伝えた
「水色ちゃん 死んじゃったの!?」
報告を受けた緑が驚きの目をする
橙も便乗するように頷く
「誰にやられたんだ」
「わからない 死体は見た 首切ってたから自害だろう」
「負けて捕まらないためにってことか~」
「だろうな」
黒は悔しそうに拳を握る
それを見た緑が肩を掴んである提案をした
「僕とOne試合やんない?」
Я 本部 科学室
頭に包帯を巻いたリンドウが丸眼鏡をかけた天然そうな女性と話している
「直せますか 須磨 知彩さん」
破壊された反盾を置いた台を挟んで話しているのは、
科学班 班長 須磨 千彩
班長副班長格が扱っている武器の開発者であり、烈火や星、反盾もその一部である
「これは新しく作った方がいいね」
欠片を一つまみして確認する
「1週間ちょいでできるかな」
「そうですか ありがとうございます」
「……」
スマはじっと相手を見た
「あのさ 同期なんだし敬語やめようよ」
「いや、立場は上ですから」
「意味わかんないんだけど、シバっちにはタメ語のクセに」
「なんで知ってるんだ」
シバキ、アカカミ、リンドウ、スマは同時期にЯ に入属した同輩であり敬語を使うような関係ではない
「ていうかビックリしたよ リンドっちが負けちゃうなんて」
「無様にもな 油断したわけじゃない 相手が予想以上に強かった」
「ふーん まぁ負けることなんて今までも何回もあったんだし凹むなよ」
「負けたことに落ち込んでるんじゃない サトシを守れなかったことが悔しいんだ」
「そっか」
Я の信念である"子供絶対防御"を体現することができず最愛の仲間を1人失った
それがリンドウにとって大きな後悔になっているのだ
少年隊棟
そのひとつの部屋に北海道支部から入隊した2人が話していた
任務を途中離脱したガイが深刻にコスズと向き合う
「今回の任務で分かったことがある」
「なに?」
コスズが首を傾げると、ガイはより繊細な表情で事を伝えた
「北海道支部を潰した元凶がわかったんだ」
「え……」
ガイがセンドウに惨敗した時のことを思い出す
センドウが言ったあの言葉、、
「シロナワに北海道支部を破壊するよう言ったのは 俺だ」
cool warを引き起こしたシロナワはセンドウの部下だったこと
シロナワの仲間の1人であったオオクマは今回の事件のトカゲやヘビナガのように感情が無頓であったこと
これらを踏まえて至る結論がガイにはあった
「センドウの周りはЯ にわざと何か仕掛けてきている可能性がある」
「…… 私も、今回の報告をアバウトに聞いてちょっと思った」
「だが、俺はそんなことより、センドウに負けた…!」
悔しく拳を膝に打つ
「勝たなきゃいけなかった 師匠を報いなきゃならなかったのに…」
言葉が詰まるのを振り切るため声を大きくする
「クソ!!」
後悔の涙を一滴落とすとそこには一つの手があった その手は悔しさをろ過せねばと相手の手に触れる
「ガイくん 焦ることないよ」
cool warが決着後の光景が重なる
「言ったでしょ 一緒に強くなるって」
コスズの優しさにガイの手は包まれて静かに涙を吸う
「あの人たちが私達にちょっかいを掛けてくるならその度にセンドウにリベンジできる」
手を強く握る
「いつか絶対に勝とう 師匠たちのためにも!私たちが!」
"恩人のために強くなる"という信念を互いに再起させ、悔しさを今後の活力に変えた
病室
本部内にある病室に緊急的に差し戻された任務に出た少年隊の面々、その中で思いに深けているセツナは学校で初めての友達の辛辣な言葉を繰り返していた
「今!その行動が本当に、妹に導くべきことなの!?」
「何も知らない癖に味方みたいな顔しないで」
きっとミツキは、妹のことで何かあったんだ…それなのに私は…
安易に妹を語ってしまったことで自分を憎む
思えばカフェで話したあの時、なにか虚ろになっているような彼女を見ていた それなのに何も声をかけなかった
身勝手なくせに勇気のない自分に本当に嫌気がさす…
「"私みたいな子供を少しでも救う"…」
自分の信念を口にして自分の行動と重ねてみる
「できてない…」
私が…!ミツキに早く手を伸ばさなきゃいけなかった…!目の前に救うべき人がいたのに…気づかないで…!挙句の果てには自分の間違った主張を押し付けようとした…!
「私って!!最低最悪だ!」
大粒の涙が真っ白の掛け布団を灰色に変える
喉が涸れても泣く少女を月明かりは静かに照らした
埼玉県 某所地下
緑が黒を弾き飛ばした
「ぬあっ!!」
白線をまたぐ寸前で滑り止まる
「力入ってないじゃん!!」
黒は飛びかかってくる相手の下を滑って反対側に抜ける
「大して疲れてもないのに!!何してんだ!」
拳と手刀の連撃を繰り返す緑に防戦一方となる
「任務が完了できなかった!!それだけのことだ!」
回し蹴りで相手を離れさせようとしたが逆に上げた脚を手刀で打たれる
「そんなことで狼狽える人じゃないじゃん!!」
伸ばした足が黒の顎を蹴る
「なんか思ってることあるでしょ!!」
振り下ろされた手刀を背バク転で回避する
「何もない!!」
「嘘も大概にしろ!誤魔化しは任務に支障を来たすんだ!!ここで吐け!!」
強烈な右足のミドルキックが黒の腹に直撃し苦しくなるが、緑は手をゆるめることなく、回転する流れで右手のチョップを首に当てる
「ナ"ッ!」
首と腹を抑えて黒は膝を着く
「強がりは子供にしか見えないよ!」
胸ぐらを掴んで持ち上げ体を強引に揺らす
「何を考えてる!何がお前を苦しめてる!!吐け!!」
そう強く問いかけられた黒は口を開いた
「水色が死んだってわかった時、なんか胸に熱いものを感じたんだ それがなんなのか分からないけど今まで感じたことのないものなんだ」
緑、そして闘技場の外で聞いている橙も何もせずに見つめる
「別にキレたわけでもなければ、憎悪が湧いたわけじゃない、、それと違った何かが俺の胸にある これがなんなのか、本当にわかんねぇんだ」
何度も脳裏によぎるのは「私は黒のこと 好きだよ!」という明るい水色の鮮やかな姿だ
「そっか…」
緑は納得したのか黒を手放す そして、膝を着く相手を背中に置いて語る
「それは多分、変な環境で育った僕たちには分からない感情なんでしょ でも、、」
尻目に強く睨む
「分からないまま引きずるくらいならいっそ憎しみに変えた方がいい そういう教えだろ」
緑が白線を跨いだことでアナウンスが鳴る
『第80試合 終了』
そのアナウンスも聞こえないほど心に何かを抱えてしまった黒はまた、水色の言葉を思い出す
「私は黒のこと 好きだよ!!」
あの鮮やかな笑顔が脳内にある限り、彼女を忘れることはできないのだろう
だから彼は狂気的だと分かっている教訓に従うことにした
この熱いものが何なのかは分からない…だが、仲間が殺された この点で感情を操作する方法を知っている
「ぶち殺す…」
黒は立ち上がって上を向いた
眩しいほど照明が光る
「水色を死に追い込んだ奴を俺が殺す!!」
分からない感情を憎しみに変えて、それが亡くなった仲間への唯一の手向けだという間違いを信じて
???
カリンは連れてこられた場所で驚くべきものを目にする
「これって…」
そこには大量のカメラ映像が流れており、その真ん中にある大きな画面に映されていたのは手術台に寝転んだ窶れた女性の姿だった
そしてウルフカットの一声にカリンの息が止まる
「北澤 涼香」
「……!」
「お前の母親だ」
3年前に自分が初めて呪いを発動した事故から行方不明になっていた母親が変わり果てた姿でそこにいた
???
「はっ!!」
カリンが目を覚ますとアスファルトの天井があった
起き上がると自分はベッドに横たわっていたことに気づく
「なにが…」
「目が覚めたか」
聞き覚えのある男の声が横からした
「あなたはセツナさんたちと一緒にいた」
「キヤマ サトシだ」
サトシは足と腕を拘束されて身動きを取れなくなっている
「なぜ、そんなことに」
「知るか 起きたらこうなってたんだ」
状況を理解できていない2人は自分たちと同じようにベッドに寝込んでいる人たちを見渡す
「この方たちは…」
すると、部屋の扉が開き小柄な老人が現れた
「起きておったか」
サトシは目をしかめ、カリンは布団で口元を隠す
「誰だ ちびジジィ」
「それが応急手当をしてやった恩人に対する口かね」
「関係ねぇ 俺とコイツはお前らに連れ去られてんだ 理由を教えてもらう あと、ここにいる奴らは一体何もんだ」
「質問が多いぞ」
言いながらこちらを見ることはせず、2人の向かいで眠っている女性の腕をまくる
「名前は教えられないし、理由ならそこのお嬢さんがよく分かっているだろう」
サトシがカリンを見るとカリンは目を逸らす
「ここにいる者たちがなんなのか それは今から見せてやろうぞ」
その女性の腕に赤色の液体の入った注射器を刺した 徐々に注入される液体を入れ終わると老男は注射器を抜いた
その瞬間、女性は開眼しもがき始める
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
その姿を見て2人は目を見開く
「イヤだ!!イヤダァァァア!!」
瞳が赤く点滅し全身も徐々に赤くなる
皮膚が破裂し血液を所々から発射する
目からも血涙が垂れ流れ、口から吐瀉物と同時に血液を吐く
「ヤダァァァァ…し"に"は"…く"な"い"」
声は爛れたように潰れ、発音ができなくなっている
彼女の叫び声は静まり全身から力が抜けたように動きが止まった
「なにしてやがる……」
その非論理的光景にこの言葉しか出なかった
「実験、、というより人物厳選だ」
女性の亡き骸に冷たい目を向けて注射器を片付ける
「人物厳選だと…」
「あぁお前も受けたと聞いたぞ 青年からな」
サトシにはウルフカットから何かされた記憶が確かにあった
「ここに連れてこられたということはお前はアレに耐えられたのだろう? 今度はコレと言うだけだ」
「コレが何になる」
「言ったでろう人物厳選だと コレはあの青年から受けた者の中で耐えることができた者、その中からさらに人を選ぶための行為だ」
「つまり、それに耐えることができる人間がいると…」
「その通りぞ クリアできれば見事に我らの仲間入りだ」
「お断りだ そんな人体実験付き合ってられるか」
「そんなは言い草はないな~」
ドアからウルフカットの青年が部屋に入ってきた
「少年隊長くん」
見たことのある顔に警戒をする
「テメェ…!」
「おいおいそんなキレるな 歯向かったとて勝てないことくらい分かるだろ」
手で余裕を表現しサトシの拘束を緩める
「解いてやるよ 身の程知らずじゃないだろうし」
足と両手の拘束を外されるとサトシはベッドから下りる
「こっからが話し合いだ 俺に目ん玉見つめられた時、なんか高揚感的な何かを…
ドォン!!
サトシが唐突に回し蹴りした
ウルフカットはそれを容易に片腕で受け止めていた
「……!」
「怪我治してやったのに」
受け止めた腕の反対の手で脚を掴む
「やめなさい青年」
老男が止めに口を入れる
「安心しろ博士 どうせすぐ治せる」
ボキッ…!
鈍い音が脚の中で鳴った
「う"あ"ッ!」
カリンがそれを見て息を止めて口を塞ぐ
「やっぱりЯ は無謀な正義馬鹿なんだな」
ウルフカットはサトシの首をまたあの時のように掴む
「実力差を一目で判断できるようになれよ クソガキ」
血赤く染まった瞳でサトシを見つめる
「……!?」
まただ…!またあの感覚…
サトシは何をしても許されるような感覚に陥り、またしても瞳が徐々に赤くなる
すると、みるみるうちに脚の中の痛みがなくなっていった
なんだ…!治ってる…?
「お前さ 強い奴とやりたいって思ってるだろ」
「……!」
「けど現状、お前はそれができない」
「なんだ…と…」
「Я とかいう軍団は戦力が多い だから、任務に、適した人材をあてる より確実に犠牲がないようにな」
組織としてごく当然の事だ しかし、サトシが求めているものは違う
「上に強い奴がいるせいで敵の強い奴とやれる機会がない そうだろ」
「………」
その通りの言葉に口答えできない
「お前にとってあの組織は不適切だ だから俺が拾ってやるって言ってるんだ」
「そんなこと…」
「ここには強い奴が結構いるぞ 少なくともお前クラスならいくらでもな」
「………」
「お前がやりたいことはここでならできる」
心臓がより赤くなっていくような感覚、高揚感、好奇心が彼を襲う
「"子供を守る"なんてくだらない信念を捨てろ お前はここにいるべきだ」
ウルフカットは明らかにサトシから抵抗力が無くなったことがわかる
首から手を離してベッドの上に落とす
「ノるか?」
サトシは下を向いて、静かに口を開いた
「ああ お前らと組む」
ウルフカットはニヤりと笑った
一方、カリンは信じられない表情で絶望を示している
「おお!そりゃどうも まぁ組織に入るわけだし俺たちの野望にも付き合ってもらうよ」
「構わん 強い奴とやれるなら」
その返答を聞いてウルフカットは手を勢いよく叩きながらカリンの方へ歩みよる
「……!」
引け目をとったカリンの瞳を至近距離で見る
「自分がなんで捕まったか だいたい察し着くよね」
口を震わせながら怯える
「ハハハ…まぁいいや 見せたい物があるんだ」
ウルフカットは老男の方に向く
「あそこに連れていく 縄持ちして」
「了解じゃ」
ウルフカットはカリンの縄を持つ老男と共に部屋から出ていった
埼玉県 某所地下
黒が階段から降りるとそこには鉄網柵で囲まれた闘技場がいくつも並んでいた
その闘技場を一つ一つ過ぎて行くと、ある闘技場から機械のアナウンスが聞こえた
『第78試合 終了』
その音が鳴った闘技場へと足を運ぶとそこでは、天然パーマのかかった黒髪に緑の瞳をした男とやや身長が高く腹に脂肪を蓄えた男が息を荒らげていた
天然パーマが先に口を開く
「そろそろギブなんじゃないの」
「そっちの方こそ」
また、アナウンスが鳴る
『第79試合 開始』
天然パーマが床を踏んで相手の腹を蹴る
しかし、足は腹に吸収される
脂肪の男が腹筋に力を入れると足が抜けなくなる
「まじデブ!!」
「黙れ」
振り下ろされた拳が天然パーマの頬を打ち抜き飛ばす
勢いよくとばされる天然パーマは白線数ミリ手前で床に手をつけて勢いよく跳びあがる
「てりゃあ!」
ふざけた声を上げながら急降下し飛び蹴りを脂肪の男の肩に喰らわせる
しかし、ビクともせず、反撃で殴りかかろうとするが、空中で身を捻って回避され脚を首に巻き付かれる
「肩車だー!」
「離れろ…!」
「やなこった」
天然パーマがチョップを頭部に打ち付けようとすると脂肪の男は巻き付かれいている脚を掴んで振り飛ばす
「うあ~!」
瞬時に立ち上がりまたも急接近する
「フンッ!!」
脂肪の男が勢いよく伸ばした拳は片手で力を逸らされ空を切る
「僕の勝ち」
天然パーマから振られたチョップは首に打ち付けられ脂肪の男は衝撃に耐えられず倒れてしまった
『第79試合 終了 2ポイント差 緑の勝利』
そのアナウンスと同時に天然パーマは息をついた
「やっと勝てた」
そう言いながら倒した相手に手を伸ばす
脂肪の男はその手を取って立ち上がる
「試合の最長記録だな」
「やっぱ2連勝するまで終われないのはいい訓練になる」
すると柵越しかり黒が声をかける
「緑!橙!こっちこい!」
「お、黒だ」
「なにかの報告か」
2人に任務の失敗と今後の方針を伝えた
「水色ちゃん 死んじゃったの!?」
報告を受けた緑が驚きの目をする
橙も便乗するように頷く
「誰にやられたんだ」
「わからない 死体は見た 首切ってたから自害だろう」
「負けて捕まらないためにってことか~」
「だろうな」
黒は悔しそうに拳を握る
それを見た緑が肩を掴んである提案をした
「僕とOne試合やんない?」
Я 本部 科学室
頭に包帯を巻いたリンドウが丸眼鏡をかけた天然そうな女性と話している
「直せますか 須磨 知彩さん」
破壊された反盾を置いた台を挟んで話しているのは、
科学班 班長 須磨 千彩
班長副班長格が扱っている武器の開発者であり、烈火や星、反盾もその一部である
「これは新しく作った方がいいね」
欠片を一つまみして確認する
「1週間ちょいでできるかな」
「そうですか ありがとうございます」
「……」
スマはじっと相手を見た
「あのさ 同期なんだし敬語やめようよ」
「いや、立場は上ですから」
「意味わかんないんだけど、シバっちにはタメ語のクセに」
「なんで知ってるんだ」
シバキ、アカカミ、リンドウ、スマは同時期にЯ に入属した同輩であり敬語を使うような関係ではない
「ていうかビックリしたよ リンドっちが負けちゃうなんて」
「無様にもな 油断したわけじゃない 相手が予想以上に強かった」
「ふーん まぁ負けることなんて今までも何回もあったんだし凹むなよ」
「負けたことに落ち込んでるんじゃない サトシを守れなかったことが悔しいんだ」
「そっか」
Я の信念である"子供絶対防御"を体現することができず最愛の仲間を1人失った
それがリンドウにとって大きな後悔になっているのだ
少年隊棟
そのひとつの部屋に北海道支部から入隊した2人が話していた
任務を途中離脱したガイが深刻にコスズと向き合う
「今回の任務で分かったことがある」
「なに?」
コスズが首を傾げると、ガイはより繊細な表情で事を伝えた
「北海道支部を潰した元凶がわかったんだ」
「え……」
ガイがセンドウに惨敗した時のことを思い出す
センドウが言ったあの言葉、、
「シロナワに北海道支部を破壊するよう言ったのは 俺だ」
cool warを引き起こしたシロナワはセンドウの部下だったこと
シロナワの仲間の1人であったオオクマは今回の事件のトカゲやヘビナガのように感情が無頓であったこと
これらを踏まえて至る結論がガイにはあった
「センドウの周りはЯ にわざと何か仕掛けてきている可能性がある」
「…… 私も、今回の報告をアバウトに聞いてちょっと思った」
「だが、俺はそんなことより、センドウに負けた…!」
悔しく拳を膝に打つ
「勝たなきゃいけなかった 師匠を報いなきゃならなかったのに…」
言葉が詰まるのを振り切るため声を大きくする
「クソ!!」
後悔の涙を一滴落とすとそこには一つの手があった その手は悔しさをろ過せねばと相手の手に触れる
「ガイくん 焦ることないよ」
cool warが決着後の光景が重なる
「言ったでしょ 一緒に強くなるって」
コスズの優しさにガイの手は包まれて静かに涙を吸う
「あの人たちが私達にちょっかいを掛けてくるならその度にセンドウにリベンジできる」
手を強く握る
「いつか絶対に勝とう 師匠たちのためにも!私たちが!」
"恩人のために強くなる"という信念を互いに再起させ、悔しさを今後の活力に変えた
病室
本部内にある病室に緊急的に差し戻された任務に出た少年隊の面々、その中で思いに深けているセツナは学校で初めての友達の辛辣な言葉を繰り返していた
「今!その行動が本当に、妹に導くべきことなの!?」
「何も知らない癖に味方みたいな顔しないで」
きっとミツキは、妹のことで何かあったんだ…それなのに私は…
安易に妹を語ってしまったことで自分を憎む
思えばカフェで話したあの時、なにか虚ろになっているような彼女を見ていた それなのに何も声をかけなかった
身勝手なくせに勇気のない自分に本当に嫌気がさす…
「"私みたいな子供を少しでも救う"…」
自分の信念を口にして自分の行動と重ねてみる
「できてない…」
私が…!ミツキに早く手を伸ばさなきゃいけなかった…!目の前に救うべき人がいたのに…気づかないで…!挙句の果てには自分の間違った主張を押し付けようとした…!
「私って!!最低最悪だ!」
大粒の涙が真っ白の掛け布団を灰色に変える
喉が涸れても泣く少女を月明かりは静かに照らした
埼玉県 某所地下
緑が黒を弾き飛ばした
「ぬあっ!!」
白線をまたぐ寸前で滑り止まる
「力入ってないじゃん!!」
黒は飛びかかってくる相手の下を滑って反対側に抜ける
「大して疲れてもないのに!!何してんだ!」
拳と手刀の連撃を繰り返す緑に防戦一方となる
「任務が完了できなかった!!それだけのことだ!」
回し蹴りで相手を離れさせようとしたが逆に上げた脚を手刀で打たれる
「そんなことで狼狽える人じゃないじゃん!!」
伸ばした足が黒の顎を蹴る
「なんか思ってることあるでしょ!!」
振り下ろされた手刀を背バク転で回避する
「何もない!!」
「嘘も大概にしろ!誤魔化しは任務に支障を来たすんだ!!ここで吐け!!」
強烈な右足のミドルキックが黒の腹に直撃し苦しくなるが、緑は手をゆるめることなく、回転する流れで右手のチョップを首に当てる
「ナ"ッ!」
首と腹を抑えて黒は膝を着く
「強がりは子供にしか見えないよ!」
胸ぐらを掴んで持ち上げ体を強引に揺らす
「何を考えてる!何がお前を苦しめてる!!吐け!!」
そう強く問いかけられた黒は口を開いた
「水色が死んだってわかった時、なんか胸に熱いものを感じたんだ それがなんなのか分からないけど今まで感じたことのないものなんだ」
緑、そして闘技場の外で聞いている橙も何もせずに見つめる
「別にキレたわけでもなければ、憎悪が湧いたわけじゃない、、それと違った何かが俺の胸にある これがなんなのか、本当にわかんねぇんだ」
何度も脳裏によぎるのは「私は黒のこと 好きだよ!」という明るい水色の鮮やかな姿だ
「そっか…」
緑は納得したのか黒を手放す そして、膝を着く相手を背中に置いて語る
「それは多分、変な環境で育った僕たちには分からない感情なんでしょ でも、、」
尻目に強く睨む
「分からないまま引きずるくらいならいっそ憎しみに変えた方がいい そういう教えだろ」
緑が白線を跨いだことでアナウンスが鳴る
『第80試合 終了』
そのアナウンスも聞こえないほど心に何かを抱えてしまった黒はまた、水色の言葉を思い出す
「私は黒のこと 好きだよ!!」
あの鮮やかな笑顔が脳内にある限り、彼女を忘れることはできないのだろう
だから彼は狂気的だと分かっている教訓に従うことにした
この熱いものが何なのかは分からない…だが、仲間が殺された この点で感情を操作する方法を知っている
「ぶち殺す…」
黒は立ち上がって上を向いた
眩しいほど照明が光る
「水色を死に追い込んだ奴を俺が殺す!!」
分からない感情を憎しみに変えて、それが亡くなった仲間への唯一の手向けだという間違いを信じて
???
カリンは連れてこられた場所で驚くべきものを目にする
「これって…」
そこには大量のカメラ映像が流れており、その真ん中にある大きな画面に映されていたのは手術台に寝転んだ窶れた女性の姿だった
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