Я side The Assassin

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少年たちの成長編

58.The FIST

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「ウハッ…!グハッ…!」

赤髪の清楚な少女の拳がセツナの腹に幾度も撃たれる
場内の中央でアサミがセツナを殴り押すことの硬直状態となっているがアサミはセツナから一撃ももらっておらずセツナは反撃の機会を伺うこともできていない

「よく言うじゃない?」

「……!」

拳を連続で撃ちながら真正面で苦しむ相手に話しかける

「攻撃は最大の防御って」

セツナは拳を食らった腹の痛みに耐えながら辛うじて相手の言葉を耳に捉える

「かなり強引だと思うけど、私もそうだと思う だってこの状況がまさに体現しているから」

一撃一撃が重い拳を止めることなく撃ち続けながら淡々と語る

「私の力は単純明快よ」

「ボヘッ……!」

ついにセツナの頬に拳が振り抜かれた
セツナの足は床から離れ頭から床に転倒した

拳闘法The FIST 結局これが一番強いの」


セツナは立ち上がると殴られた頬を拭う

「こちとら槍刺されたことあるんだから、これくらいじゃノびないよ」

って言っても…続けられるとしんどいし、全く暗記できてない…

今、冷静になって相手の体を眺めると、確かにスレンダーな体型ではあるが、筋肉は引き締まっている さらに両足の位置を的確に離し力が入れやすくなるように構えている

「まだ攻撃する気にならないの?どれだけMなのかしら」

「アンタを観察してるの ドS美少女さんっ!」

セツナは煽り終わりと同時に床を蹴って急接近する
真正面から突っ込んでくる相手にアサミは右拳を突き出す
しかし、直撃の直前で回避され左脚で回し蹴りされ伸ばした腕では防御できず首横に喰らう

良い蹴りが撃てたと思ったセツナだったが相手の左手で胸ぐらを掴まれた瞬間、焦りと変わる

「痛くも痒くもないわ」

腕を引き縮めてセツナの頭部を寄せるとそこに右拳を撃ち込む それもセツナの驚異的動体視力で回避されると胸ぐらを掴んでいる腕に両手で反対方向に力を押し加えて離させる
着地と同時に縦回転で飛び上がる

回転兎ラビット

右かかとがアサミの左肩に振り落とされるがピクリともせず拳を突き出してきたため跳ねるように退く

「いいマッサージだわ」

「ガチガチすぎ…w」

左肩に触れながらそういうアサミにセツナは苦笑いである

「じゃあ これならどう!」

セツナが場内を走り回る
アサミはそれを目で追いながら何をされるのか警戒し構えをとる

なにかくる…

その瞬間、セツナの飛び蹴りが背後から迫った
それを反射で回避し、着地地点に拳を伸ばしたがセツナは既にアサミの視界から消え、また視覚外から飛び蹴りし、アサミの右腰を蹴り抜ける

「ちっ…」

少々の攻撃を意に返さず立て直すがその一瞬の隙にセツナは飛び蹴りし、相手を翻弄する

私に攻撃や防御の隙を与えない…!?

飛び蹴りと駆け走り
これを瞬時に切り替えて何度も繰り返すことで相手にチャンスを与えない

撹乱兎ディスターブラビット

太刀城学園での戦闘で身につけた攻撃方法である

アサミは対応しきれずセツナの蹴りに何度も被弾する
腰や腕、腹や背中などに撃ち込まれる蹴り しかし、アサミは反撃するようには見えずそこに立ち尽くして腕で頭部を守るだけの体勢をしている

まだ…倒れないの…?

息を吐く量が増えているセツナが相手の崩れない立ち姿を見て、焦り始める

攻め倒す…!!

セツナは攻撃の頻度と走る速さを加速させ、より早く攻撃を何度も繰り出す
それでもアサミは体勢を変えることなく攻撃を受け続ける 頭部を守っている二本の腕は赤が強調されて痛々しく見える

そして、セツナの右脚が腹を振り抜いて通り抜けた瞬間、アサミの右膝が床に落ち始める

よしっ!これで終わり!!

最後の一撃をアサミの背後から打ち出そうとしたとき、セツナの膝裏、いやアキレス腱が悲鳴を上げた

「ヴッ……!」

痛みで一歩を透かしてしまい平衡が壊れる

「キタッ!」

アサミは瞬時に振り向いて拳を突き伸ばした

「F I S T!!」

右拳がセツナの腹に吸い込まれるように撃たれた
セツナは息を飲み撃ち飛ばされる

白線を超える寸前で両足でブレーキをかけるが腕を床につけて、口の中にある水分を吐き落とす

「ウエッ…!!」

狙ってた…!?私が…スタミナ切れで足が止まるのを…!!

床を見つめてぼやける視界にクラクラしていると赤髪の少女は徐々に接近し自身を見下ろす

「ミカワさん」

セツナが顔を上げると蔑むような鋭い眼光が目についた

「弱いわね」

「は…」

疑問符をつける前に胸ぐらを掴まれて持ち上げられる

「仙台支部にいたとき、お兄様に聞いたの アナタがムナさんに勝ったと」

入隊試験の際にセツナがキリマに手錠かけ勝利した時の話である

「私はそんなアナタが任務に選ばれたんだと、優秀で強い方なんだと思ってたわ でも、入ってきたのは護衛対象を連れ去られたという訃報だった」

セツナの悔やむことを口にされ歯を食いしばる

「何か予想外のことが多発したんだと思った その真偽を確かめるために今回アナタと敵対してみたの」

セツナがレナを推していることを分かってイチゴ側に着いたのである

「でも違った 今、相対してアナタは私に負けようとしている それどころか今回、闘いに出る10名の中で一番弱いわ」

「……!」

「同じことを何度もやれば私に勝てると思った? あんなヘナチョコキックじゃ無理よ カケハシさんやキッタカさんのような足を持っているなら違ったかもしれないけど」

アサミが手を離してセツナ頭が場外の床に落ちると思われた瞬間、両手が白線の上に着いていた

「オラッ!!」

「……!?」

腕をバネにした跳ね蹴りがアサミの顎を撃ち飛ばす 思わずセツナから後退したアサミが顎を拭う

「だから…そんな蹴りじゃ無理だっ…」

言葉が終わる前にドロップキックがアサミに迫るがそれを両腕で防ぐ 後ずさりして立て直したアサミが驚きの目でセツナを見る

「うるっさいなぁ…」

下を向いて影の中にある口から発された言葉に場外にいるトワカは静かに、そして怪しく微笑んだ

顔を上げたセツナは真剣な表情でアサミを睨みつける

「自分が弱いことはここ数十日で散々痛感してんだよ!!」

言葉の勢いのままアサミに襲いかかる

「お前に言われなくてもな!」

正面に撃たれると思った拳は下方向にそれる
セツナはその手を床に着けて跳び、降下と同時に反対の拳を振り落とす
拳はアサミの頭部を強烈に撃ち下を向かせる
しかし、タフな相手は怯むことなく拳を撃つ
それを顔に被弾するギリギリで回避し、逆に拳を腹に撃つ

「うっ…!」

「ヘナチョコ?ならぶっ倒れるまで撃ち通してやるよ!」

感情的な言葉が喉から出ているが脳内は至って冷静であった

コイツは師匠が言ってた私が苦手とする同じ動きでゴリ押しでくるタイプの相手…

「でっ…も!!」

跳んで振り落としたかかとがアサミの左肩に直撃する

「ッ……!」

「どうしたぁ!?私の蹴りはヘナチョコでマッサージになるんじゃなかったっけぇ!!」

師匠ほど撃つ速度は速くない…だから!

「痛くないわよ!!」

放たれた拳をまた回避し懐にミドルキックを撃ち込む

私の動体視力で見えないほどじゃない…!

気づけばアサミの防戦一方、闘いの序盤とは真逆の状況となる

「攻撃は最大の防御なんだろ!!どいつがほざいてんだよ!!」

皮肉の効いた一言
アサミの理論に乗るならば最大の防御をしているのはセツナである

苦手の克服とか今はどうでもいい…!私の動体視力はコイツに通用してる!このまま押し倒す

セツナは跳びあがり先程のように拳を降ろそうと力を込める

「兄の苗字に乗っかってデカくなってんじゃねぇよ!!」

「……!」

降り落とされた拳はアサミの頭部に直撃する
そう見えた だが、セツナの言葉が彼女の何かを滾らせてしまったのか、アサミは拳を片手で受けとめきっていた

「もう一回…言ってみろ…」

「は…ボォンッ!!

疑問符がつく前にセツナは殴り飛ばされた
アサミは怒りに満ちた表情で床に落ちていくセツナを睨んでいた

「お前に…私たちの何がわかる!!」

彼女の力を込められた拳は微かに震えていた

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