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第10話 初めての村の外
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生まれ故郷であるホグース村を出てから二日間。
街道をひたすら進み、領都ビーゼルに向かっていた。
道中はずっと村のことを考えていた。
子供だったから分からなかったというのもあるかも知れないが、気付かない……見ないふりをしていたのかも知れない。
これからずっと暮らす村を悪く考えたくない……そんな風に考えていたのかも知れない。
マリーヌと出会った頃……その時から村の人たちはおかしかった。
マリーヌを邪険な扱いをしていた。
父さんも付き合うことを凄く反対していた。
マリーヌはどう見ても普通の子供だ。
魔族の面影なんて一切ない。
それでも村長さん以外はマリーヌを見ようとしなかった。
そういえば、村長さんのことを父さんは裏切り者だと言っていたな。
あれはどう言う意味だったんだ?
村の皆が嫌うマリーヌを匿っていたから?
でも不思議だ……村長さんはマリーヌの存在を秘密にしていた。
扉を隠し、マリーヌを部屋に閉じ込めていた。
僕だって、父さんに聞かされていなければ、おそらく気付かなかった。
分からない。
父さんはどうしてマリーヌの存在を知っていたんだ?
隣に住んでいたから?
その後に鉱山長がしたマリーヌへの仕打ちを考えたら、マリーヌを村長さんの家にいることを知って放置しているだろうか?
村の誰かに通報して、マリーヌを村長さんの家から連れ出すなり、村を追放するなりをするのではないだろうか。
……どういうことだ?
もしかして、父さんは……村長さんと通じ合っていた?
父さんもマリーヌを保護することに噛んでいたとなると話を通じる。
でも、一体何のために? マリーヌ可愛さ?
分からない。
それにあの村には何か秘密がある。
それと関係しているのかも知れない。
鉱山長すら逆らえない存在……
そして、少なからず意に反するような事が行われているということ……。
分からない……父さんはもうこの世にもいない。
考えてみれば、父さんを送り出すこともしてやれなかったな……
でも素直に送り出すことがとても出来そうにない。
今は分からないことだらけだ。
だけど、領都につけば、何かしら分かるはずだ。
父さんのことも何か分かるかも知れない。
出来れば……父さんのことを暖かく送り出してやりたかったよ。
……マリーヌ。これから村を出て、うまくやっていけるだろうか?
……マリーヌ。君に酷いことをするやつをこの世から僕が消してやる。
君が笑って過ごせるように……。
そんな事をずっと……ずっと考えてしまう。
終わりがなく、ずっと。
村を出てから、今まで考えたこともないようなことを考えてしまう。
「止まれ!!」
何かに押し出されてしまい、尻餅をついてしまった。
視線を上に向けると、そこには皮鎧を身にまとった兵士の姿があった。
(こいつは……敵だ!!)
すぐに立ち上がり、戦闘態勢に入った。
兵士を睨みつけ、相手に出方を窺う。
(近づいてきたら、右手をすかさず相手の懐にいれればいいんだ……それで相手は……消える)
消える?
消えるっていうのは……殺すことだよな?
僕はいつから人を殺すことに平然としていられるようになった?
なんだよ、これ。僕はどうなってしまったん……だ?
ふいに誰かに後ろから抱きつかれた。
少し持ち上げていた右手を巻き込むように、まるで身動きが取れないように。
この匂い……とても安心する匂いだ。
「……マリーヌ」
「ロレンス様!! 冷静になってください!」
「何を言っているんだよ。マリーヌ。こいつは敵だぞ。君の敵なんだ」
「ちゃんと見てください。ここには……ロレンス様の敵はいませんよ」
槍をこちらに向ける兵士が目の前にいた。
兵士の目はこちらを警戒するものであったが、何度も目にした、決して人を殺すような目をしていなかった。
「ああ……ごめんなさい。本当にごめんなさい。僕はどうかしていて……」
「大丈夫ですよ。きっと色々なことが起きて、混乱しているだけですから」
マリーヌの優しい声が耳元で聞こえてくる。
とても安らぐ……もっと聞いていたい。
(ん? マリーヌ? 違う。こいつは)
「セフィトス。いい加減に離れてくれ。僕はもう大丈夫だ」
「えーっ。本当ですか? もうちょっとくっついていてもいいんですよ?」
「いや、もういい。本当に十分だ」
離れようとしない彼女を剥がすように手で押した。
すぐに兵士に向かって頭を下げた。
「すみませんでした」
「お前たちは何者だ? どこから来た!?」
兵士は僕の態度が変わっても、槍を戻すことはなかった。
当たり前か。
敵意を勝手に向けたのは僕なんだから。
「僕はロレンス。こっちはセフィトスです。それとワンちゃん。僕達はホグース村からやってきました」
「ホグース村、だと?」
兵士は何かを悟ったのか、すぐに槍を元の位置に戻し、肩をとんと叩いてきた。
「大変だったな。早馬で聞いている。ホグース村の事件は」
もう伝わっているのか……ちょっと驚きだな。
「坊主はその生き残りだろ? 殺気立つのは仕方がないことだ。だが、気をつけろよ」
「はい。すみませんでした」
「で? これからどこにいくつもりだ?」
「領都へ向かうつもりです」
「そうか。まぁ頑張れよ。とりあえず、テリンデに入るだろ?」
テリンデ?
ああ、ここはテリンデ街の入り口だったんだ。
そうか。この人は衛兵だったんだ。
そんな人に殺気を向けてしまったのか……なんという迂闊。
考え事をして、こんなに周りが見えていなかったなんて。
「どうした? 入っていくだろ? もう陽が落ちそうだから、今入らないと朝まで入れなくなるぞ。なんだったら、宿屋も紹介してやるぞ。実はな、俺の妹がやっている宿屋が……」
この人、すごくいい人そうだ。そんな人に……本当にすみません!!
「お願いします。……宿屋を」
「お? おう。まぁ、うまい飯でも食えば、元気が出るってもんだ。とりあえず、入った入った。さっさと門を閉めちまいたいんだ」
衛兵はそそくさと門の中に入り、僕達を誘導していく。
入り終えると同時に、衛兵が合図を出すと、他の衛兵が門を閉ざしていく。
「これで今日の仕事は終わりだ。まったく、隣村に盗賊なんて入ってきちまったから警戒を強くしろなんて通達が来ているからな。いつもなら門なんて閉める必要がないんだ。って、すまねぇな」
「いえ。それは大変ですね。でも、盗賊は一人残らず倒したはずですから大丈夫だと思いますよ」
「ほお。ホグース村にはそんな腕利きがいたのか? 初耳だな。あの村は自警団すら無いからな。だがな、油断は禁物だぞ。盗賊なんて、湧いてくるような奴らだ。仲間の仕返しだ! なんて考えるやつもいるかも知れねぇからな」
衛兵の言う通りだ。
あの兵士たちは手練な感じがした。
動きだって組織だっていたし、他に仲間がいないとも限らないな。だとしたら……
「安心しな。とは言わないが、急報を受けた領都守備隊がすぐに動いたらしいぞ。ホグース村の警護をするみたいだから、きっと大丈夫だろうよ」
「そう……ですか」
別に村がどうなろうと、今となってはあまり関心はない。
あの村には大切な人は誰もいないから。
だけど、ちょっと心が痛いのは故郷だからだろうか?
「まぁ、ここで立ち話も何だ。さっそく我が愛しの妹がいる……おっと、言うのを忘れていたぜ。妹には手を出すなよ」
すごい威圧だ。
これをさっき向けられていたら、躊躇なく攻撃していただろう。
「大切にしているんですね。妹さんを」
「当たり前だろ!! 家族なんだからな」
家族か……。
『緑草亭』と書かれた看板が目印の宿屋に到着した。
「これが……」
道中、ずっと衛兵の妹自慢が続いていた。
家族を大切にする人の話は心が和むが、さすがにずっと聞かされるとうんざりもする。
正直、途中から全く話を聞かずに町並みを眺めていた。
ここは領都とホグース村の丁度中間に位置し、ホグース村の鉱石を領都に運ぶ際の中継地となる場所だ。
ホグース村の他の村からも物資が集まるみたいで、大きめな倉庫がいくつか並んでいるのが見えた。
町もそれなりに賑わっていて、狭い街路には肩が触れそうなほど人が集まっていた。
目的は食事と酒と言ったところか。
夜もちょっとずつ深まってきて、仕事終わりの人が多いようだ。
「お兄ちゃん! お疲れ様」
宿屋の扉を開けると、すぐに女性がゆっくりと向かってきた。
「ああ!! 今日は客を連れてきたぞ。とりあえず、元気の出る料理を出してやってくれ!!」
妹……いや、宿屋の女主人は衛兵をキッと睨むと、頭を軽く下げた。
「本当に申し訳ありません。兄が何か迷惑なことをしませんでしたか? この通り、余計なことをペラペラと」
「いえいえ。滅相も。迷惑を駆けたのはむしろ、こちらというか……大丈夫ですから」
「だよな!! 話が分かる奴はキライじゃないぜ。とにかく、ここの料理は美味いからな。まぁ、ゆっくり今日だけとは言わず、何日も泊まっていけ」
「お兄ちゃん!!」
女店主はまた頭を下げてくる。
バツが悪くなったのか、衛兵は逃げるように宿屋から出ていった。
「本当にすみませんでした。ここで本当に良いんですか? 兄に無理やり連れてこられたんじゃ……」
あの衛兵はいつもこんな事をしているのだろうか?
そうなると、あの妹自慢は毎回?
だとすると、女店主はさぞかし苦労をしているだろうな。
知らぬ間に有名人になっていそうだ。
「本当に大丈夫ですよ。ここに泊まらせてください」
「はい。ありがとうございます。お連れの方もご一緒でよろしいんですよね?」
(さすがに一緒の部屋は不味いよな?)
「別の部屋……」
「いいえ! 一緒の部屋でお願いします!!」
「えっ? ああ、かしこまりました……お部屋をご用意いたしますから、まずは食堂の方でお待ちください。料理もすぐにお出ししますから。兄がご迷惑をおかけしたでしょうから、お酒を一杯、サービスしますね」
「いや、僕はお酒は……」
言おうとしたが、女店主は急ぎ足でどこかに行ってしまった。
「参ったな……それよりも、どういうつもりだよ!!」
「え? 何のことですか?」
何を惚けたふりをしているんだ?
「同じ部屋だよ。さすがに不味いだろ。君と僕はその……関係が……」
「いいえ。ロレンス様と離れるなんて、絶対に嫌です!!」
なんだよ、それ……分からないけど……こんな感情は初めてだ。
体が火照るような感覚に襲われていた。
街道をひたすら進み、領都ビーゼルに向かっていた。
道中はずっと村のことを考えていた。
子供だったから分からなかったというのもあるかも知れないが、気付かない……見ないふりをしていたのかも知れない。
これからずっと暮らす村を悪く考えたくない……そんな風に考えていたのかも知れない。
マリーヌと出会った頃……その時から村の人たちはおかしかった。
マリーヌを邪険な扱いをしていた。
父さんも付き合うことを凄く反対していた。
マリーヌはどう見ても普通の子供だ。
魔族の面影なんて一切ない。
それでも村長さん以外はマリーヌを見ようとしなかった。
そういえば、村長さんのことを父さんは裏切り者だと言っていたな。
あれはどう言う意味だったんだ?
村の皆が嫌うマリーヌを匿っていたから?
でも不思議だ……村長さんはマリーヌの存在を秘密にしていた。
扉を隠し、マリーヌを部屋に閉じ込めていた。
僕だって、父さんに聞かされていなければ、おそらく気付かなかった。
分からない。
父さんはどうしてマリーヌの存在を知っていたんだ?
隣に住んでいたから?
その後に鉱山長がしたマリーヌへの仕打ちを考えたら、マリーヌを村長さんの家にいることを知って放置しているだろうか?
村の誰かに通報して、マリーヌを村長さんの家から連れ出すなり、村を追放するなりをするのではないだろうか。
……どういうことだ?
もしかして、父さんは……村長さんと通じ合っていた?
父さんもマリーヌを保護することに噛んでいたとなると話を通じる。
でも、一体何のために? マリーヌ可愛さ?
分からない。
それにあの村には何か秘密がある。
それと関係しているのかも知れない。
鉱山長すら逆らえない存在……
そして、少なからず意に反するような事が行われているということ……。
分からない……父さんはもうこの世にもいない。
考えてみれば、父さんを送り出すこともしてやれなかったな……
でも素直に送り出すことがとても出来そうにない。
今は分からないことだらけだ。
だけど、領都につけば、何かしら分かるはずだ。
父さんのことも何か分かるかも知れない。
出来れば……父さんのことを暖かく送り出してやりたかったよ。
……マリーヌ。これから村を出て、うまくやっていけるだろうか?
……マリーヌ。君に酷いことをするやつをこの世から僕が消してやる。
君が笑って過ごせるように……。
そんな事をずっと……ずっと考えてしまう。
終わりがなく、ずっと。
村を出てから、今まで考えたこともないようなことを考えてしまう。
「止まれ!!」
何かに押し出されてしまい、尻餅をついてしまった。
視線を上に向けると、そこには皮鎧を身にまとった兵士の姿があった。
(こいつは……敵だ!!)
すぐに立ち上がり、戦闘態勢に入った。
兵士を睨みつけ、相手に出方を窺う。
(近づいてきたら、右手をすかさず相手の懐にいれればいいんだ……それで相手は……消える)
消える?
消えるっていうのは……殺すことだよな?
僕はいつから人を殺すことに平然としていられるようになった?
なんだよ、これ。僕はどうなってしまったん……だ?
ふいに誰かに後ろから抱きつかれた。
少し持ち上げていた右手を巻き込むように、まるで身動きが取れないように。
この匂い……とても安心する匂いだ。
「……マリーヌ」
「ロレンス様!! 冷静になってください!」
「何を言っているんだよ。マリーヌ。こいつは敵だぞ。君の敵なんだ」
「ちゃんと見てください。ここには……ロレンス様の敵はいませんよ」
槍をこちらに向ける兵士が目の前にいた。
兵士の目はこちらを警戒するものであったが、何度も目にした、決して人を殺すような目をしていなかった。
「ああ……ごめんなさい。本当にごめんなさい。僕はどうかしていて……」
「大丈夫ですよ。きっと色々なことが起きて、混乱しているだけですから」
マリーヌの優しい声が耳元で聞こえてくる。
とても安らぐ……もっと聞いていたい。
(ん? マリーヌ? 違う。こいつは)
「セフィトス。いい加減に離れてくれ。僕はもう大丈夫だ」
「えーっ。本当ですか? もうちょっとくっついていてもいいんですよ?」
「いや、もういい。本当に十分だ」
離れようとしない彼女を剥がすように手で押した。
すぐに兵士に向かって頭を下げた。
「すみませんでした」
「お前たちは何者だ? どこから来た!?」
兵士は僕の態度が変わっても、槍を戻すことはなかった。
当たり前か。
敵意を勝手に向けたのは僕なんだから。
「僕はロレンス。こっちはセフィトスです。それとワンちゃん。僕達はホグース村からやってきました」
「ホグース村、だと?」
兵士は何かを悟ったのか、すぐに槍を元の位置に戻し、肩をとんと叩いてきた。
「大変だったな。早馬で聞いている。ホグース村の事件は」
もう伝わっているのか……ちょっと驚きだな。
「坊主はその生き残りだろ? 殺気立つのは仕方がないことだ。だが、気をつけろよ」
「はい。すみませんでした」
「で? これからどこにいくつもりだ?」
「領都へ向かうつもりです」
「そうか。まぁ頑張れよ。とりあえず、テリンデに入るだろ?」
テリンデ?
ああ、ここはテリンデ街の入り口だったんだ。
そうか。この人は衛兵だったんだ。
そんな人に殺気を向けてしまったのか……なんという迂闊。
考え事をして、こんなに周りが見えていなかったなんて。
「どうした? 入っていくだろ? もう陽が落ちそうだから、今入らないと朝まで入れなくなるぞ。なんだったら、宿屋も紹介してやるぞ。実はな、俺の妹がやっている宿屋が……」
この人、すごくいい人そうだ。そんな人に……本当にすみません!!
「お願いします。……宿屋を」
「お? おう。まぁ、うまい飯でも食えば、元気が出るってもんだ。とりあえず、入った入った。さっさと門を閉めちまいたいんだ」
衛兵はそそくさと門の中に入り、僕達を誘導していく。
入り終えると同時に、衛兵が合図を出すと、他の衛兵が門を閉ざしていく。
「これで今日の仕事は終わりだ。まったく、隣村に盗賊なんて入ってきちまったから警戒を強くしろなんて通達が来ているからな。いつもなら門なんて閉める必要がないんだ。って、すまねぇな」
「いえ。それは大変ですね。でも、盗賊は一人残らず倒したはずですから大丈夫だと思いますよ」
「ほお。ホグース村にはそんな腕利きがいたのか? 初耳だな。あの村は自警団すら無いからな。だがな、油断は禁物だぞ。盗賊なんて、湧いてくるような奴らだ。仲間の仕返しだ! なんて考えるやつもいるかも知れねぇからな」
衛兵の言う通りだ。
あの兵士たちは手練な感じがした。
動きだって組織だっていたし、他に仲間がいないとも限らないな。だとしたら……
「安心しな。とは言わないが、急報を受けた領都守備隊がすぐに動いたらしいぞ。ホグース村の警護をするみたいだから、きっと大丈夫だろうよ」
「そう……ですか」
別に村がどうなろうと、今となってはあまり関心はない。
あの村には大切な人は誰もいないから。
だけど、ちょっと心が痛いのは故郷だからだろうか?
「まぁ、ここで立ち話も何だ。さっそく我が愛しの妹がいる……おっと、言うのを忘れていたぜ。妹には手を出すなよ」
すごい威圧だ。
これをさっき向けられていたら、躊躇なく攻撃していただろう。
「大切にしているんですね。妹さんを」
「当たり前だろ!! 家族なんだからな」
家族か……。
『緑草亭』と書かれた看板が目印の宿屋に到着した。
「これが……」
道中、ずっと衛兵の妹自慢が続いていた。
家族を大切にする人の話は心が和むが、さすがにずっと聞かされるとうんざりもする。
正直、途中から全く話を聞かずに町並みを眺めていた。
ここは領都とホグース村の丁度中間に位置し、ホグース村の鉱石を領都に運ぶ際の中継地となる場所だ。
ホグース村の他の村からも物資が集まるみたいで、大きめな倉庫がいくつか並んでいるのが見えた。
町もそれなりに賑わっていて、狭い街路には肩が触れそうなほど人が集まっていた。
目的は食事と酒と言ったところか。
夜もちょっとずつ深まってきて、仕事終わりの人が多いようだ。
「お兄ちゃん! お疲れ様」
宿屋の扉を開けると、すぐに女性がゆっくりと向かってきた。
「ああ!! 今日は客を連れてきたぞ。とりあえず、元気の出る料理を出してやってくれ!!」
妹……いや、宿屋の女主人は衛兵をキッと睨むと、頭を軽く下げた。
「本当に申し訳ありません。兄が何か迷惑なことをしませんでしたか? この通り、余計なことをペラペラと」
「いえいえ。滅相も。迷惑を駆けたのはむしろ、こちらというか……大丈夫ですから」
「だよな!! 話が分かる奴はキライじゃないぜ。とにかく、ここの料理は美味いからな。まぁ、ゆっくり今日だけとは言わず、何日も泊まっていけ」
「お兄ちゃん!!」
女店主はまた頭を下げてくる。
バツが悪くなったのか、衛兵は逃げるように宿屋から出ていった。
「本当にすみませんでした。ここで本当に良いんですか? 兄に無理やり連れてこられたんじゃ……」
あの衛兵はいつもこんな事をしているのだろうか?
そうなると、あの妹自慢は毎回?
だとすると、女店主はさぞかし苦労をしているだろうな。
知らぬ間に有名人になっていそうだ。
「本当に大丈夫ですよ。ここに泊まらせてください」
「はい。ありがとうございます。お連れの方もご一緒でよろしいんですよね?」
(さすがに一緒の部屋は不味いよな?)
「別の部屋……」
「いいえ! 一緒の部屋でお願いします!!」
「えっ? ああ、かしこまりました……お部屋をご用意いたしますから、まずは食堂の方でお待ちください。料理もすぐにお出ししますから。兄がご迷惑をおかけしたでしょうから、お酒を一杯、サービスしますね」
「いや、僕はお酒は……」
言おうとしたが、女店主は急ぎ足でどこかに行ってしまった。
「参ったな……それよりも、どういうつもりだよ!!」
「え? 何のことですか?」
何を惚けたふりをしているんだ?
「同じ部屋だよ。さすがに不味いだろ。君と僕はその……関係が……」
「いいえ。ロレンス様と離れるなんて、絶対に嫌です!!」
なんだよ、それ……分からないけど……こんな感情は初めてだ。
体が火照るような感覚に襲われていた。
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