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王都編
125 新たな一面
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頭を抱えていた。
『料理』スキルを失ったショックからなかなか立ち直れなかった。
あと少しで、境地が見えたと言うのに……。
それに『無限収納』に入れている食材の数々は封印しなければならなくなった。
今の僕にはとても扱えるようなものではない。
今後、使えるような人と出会った時に渡してみよう。
「ロスティの料理がもう食べられないのね」
もう一人、ショックを隠しきれない者がいた。
『錬金術』スキルを手に入れた時は少なからず興奮したものだが、やはり衣食住は重要だ。
今まで『料理』スキルの恩恵を大きく受けていたものほど、その隙間は大きく開く。
「ねぇ、ロスティ。『錬金術』で料理を作ってみない?」
無茶なことを言う。
そんなことが出来たら、テッドだって苦労しないだろうに。
『錬金術』は魔法を物質に付与する技術。
待てよ……魔法ってなんだ?
魔力を消費することで現象を作り上げるものだ。
しかし、魔法以外を付与するというのは出来ないのだろうか?
そう……例えば、スキルを付与するということは出来ないだろうか?
ここに『ドブ攫い』というスキルがある。
ミーチャには内緒だが、こっそりと熟練度を上げていた。
そして、『無限収納』からスコップを取り出す。
ここからどうするか……。
ドブ攫いをするイメージをする。
自然とドブ攫いに最適化された姿勢になる。
この状態で……スコップに『錬金術』を発動する。
……どうだろうか?
「ミーチャ。このスコップを持ってくれないか?」
「嫌よ」
「なんで?」
「だって、なんか汚いじゃない」
「ドブ攫いの汚れだよ。気にならないじゃないか」
「気にするわよ。ドブよ!?」
なかなか受け取ってくれないな。
しょうがない。
「ティーサ。持ってくれないか?」
「嫌で……はい、持ちます」
「どうだ?」
「どう、と言われましても……結構、持ちやすいスコップだというくらいで」
何!? ティーサはこのスコップの良さが分かるだと?
思わぬ逸材を見つけてしまったかもしれない……
いや、そうではない。
「ドブ攫いをイメージしてくれ」
「申し訳ありませんが、ドブ攫いをしたことがないので……土を掘るくらいなら……」
なるほど……検証しようにも相手を選ばなければならないということか。
「ロスティ。なんで、『ドブ攫い』を選んだの? もうちょっと、他のものはないの? そういえば『口笛』ってスキルあったわよね? それがいいんじゃないかしら」
あったな……『口笛』スキル。
口で様々な音階を奏でることが出来る。
口笛で敵を寄せ集めることが出来るというので、買ってみたが、ダンジョンに行けば食材用の敵に困ることもなかったので使う機会がなかったのだ。
口笛を吹いてみた……外が若干、賑やかになったような気がするが、気のせいだろう。
問題は何に付与するかだ。
この鉢巻が良いかもしれない。
口笛がうまくなる鉢巻……悪くないな。
口笛を吹きながら、『錬金術』を発動……
どうだろうか?
ミーチャは嫌そうだな。
「ティーサ。とりあえず、口笛を吹いてみてくれないか?」
「えっ? お恥ずかしながら、口笛はどうしても出来なくて。頭では分かっているのですが、なぜか出来ないんですよね。ミーチャ様は……申し訳ありません! そんなに睨まないで下さいよ」
どうやら、二人共、口笛は苦手なようだ。
さて、鉢巻をティーサに付けてもらって……
「さあ、頼むぞ!」
ティーサの口から、かすかな口笛が……聞こえてきた?
口笛かどうか、かなり怪しいがティーサは驚きの表情をしている。
「ミーチャ様。私、口笛を吹けていましたよね?」
「どうかしら?」
「ミーチャ様もやってみませんか? もしかしたら……」
「もしかしたら、何? まぁいいわ。そんな鉢巻を付けてくらいで吹ければ苦労はないわよ」
……ミーチャも必死な表情で口笛を奏でようとしている。
ちょっと、面白い。
いやそうではない。だから、そんなに睨まないでくれ。
「吹けた? 吹けたわよね? ティーサ。どう?」
「そ……そうですね。ふ……けてましたね!」
なんだ、その間は。
正直に言えば、かなり怪しい。
音らしいものは出ていたような気がしないでもないが……。
「ロスティ。どうやら成功したみたいね。ところでスキルを付与したとすると、ロスティの持っているスキルはどうなるの?」
ん? そんなの……あれ?
「スキルが無くなっている?」
さっきまで奏でていた口笛が全く吹けなくっている。
実は『口笛』スキルを手に入れる前は全く吹けなかったのだ。
「そういうことね……つまり……」
スキルを物質に付与することは『錬金術』で可能なようだ。
しかし、付与するとスキルそのものは消滅してしまう。
ちなみに魔法を付与する場合、魔力が消滅するようだ。
つまり、一回分の魔力が消耗されるということだ。
「じゃあ、『口笛』スキルの付与が成功しているのなら、もう少し、上手く奏でることが出来るんじゃないのか?」
ミーチャとティーサにものすごく睨まれてしまった。
「私としてはかなり上出来だった口笛をバカにするとは……いい度胸ね。まぁいいわ。多分だけど、『錬金術』の熟練度が影響しているんじゃないかしら」
ふむ。それは考えられるな。
『スキル授与』と同じ考え方なら、付与されるスキルの熟練度は『錬金術』の熟練度に影響されるということだ。
「でも、やっぱり変だよ。たとえ、口笛の熟練度が最低の☆1だとしても、下手……いや、その程度しか出来ないっていうのは……」
「可怪しいわね。あれほど、上出来な口笛をその程度とは……ねぇ、ティーサ。どう思う?」
「ひどい話だと思います」
ミーチャは口笛が吹けたことがどんだけ嬉しいんだ?
いや、これは重要なことだ。
はっきりしておかなければならない。
なんとか二人の睨みに耐えながら、検証を続けていくと一つの結論が出てきた。
「熟練度が下がるようだな。ということは『口笛』スキルは☆0.5みたいな感じなのかもしれない。それならば、納得だ」
「いいえ。私は納得できないわ!」
「私もです! ミーチャ様の言うとおりです」
とりあえず無視だ。
目の前にはいくつかの検証した物が散乱している。
どれもが付与に成功したものだ。
「これからスキルを取り出すことは出来ないのかな?」
出来そうだったが、無理だった。
どうやら僕自身に『錬金術』を使うことは出来ないようだ。
変わりに他のものを使ってみると、簡単に移動が出来た。
物から物ならば可能なようだ。
「ミーチャ。そんなに鉢巻を気に入ったの?」
さっきからずっと口笛らしいものを吹き続けている。
よく見ると鉢巻にミーチャと書かれていた。
まぁ、いいか。
『錬金術』……なかなか奥が深そうなスキルだ。
魔法だけではなく、スキルを付与できる。
これを極めれば、包丁を握っただけで料理人ということも可能になるということだ。
スキルで人生を決められてしまう……そんな世界に変化をもたらせることができるかもしれない。
ん? 何かを忘れているような気がするな……。
まぁいいか。
錬金術の研究は夜な夜な行われた。
もちろんミーチャの口笛も王宮の片隅で響いていた……。
『料理』スキルを失ったショックからなかなか立ち直れなかった。
あと少しで、境地が見えたと言うのに……。
それに『無限収納』に入れている食材の数々は封印しなければならなくなった。
今の僕にはとても扱えるようなものではない。
今後、使えるような人と出会った時に渡してみよう。
「ロスティの料理がもう食べられないのね」
もう一人、ショックを隠しきれない者がいた。
『錬金術』スキルを手に入れた時は少なからず興奮したものだが、やはり衣食住は重要だ。
今まで『料理』スキルの恩恵を大きく受けていたものほど、その隙間は大きく開く。
「ねぇ、ロスティ。『錬金術』で料理を作ってみない?」
無茶なことを言う。
そんなことが出来たら、テッドだって苦労しないだろうに。
『錬金術』は魔法を物質に付与する技術。
待てよ……魔法ってなんだ?
魔力を消費することで現象を作り上げるものだ。
しかし、魔法以外を付与するというのは出来ないのだろうか?
そう……例えば、スキルを付与するということは出来ないだろうか?
ここに『ドブ攫い』というスキルがある。
ミーチャには内緒だが、こっそりと熟練度を上げていた。
そして、『無限収納』からスコップを取り出す。
ここからどうするか……。
ドブ攫いをするイメージをする。
自然とドブ攫いに最適化された姿勢になる。
この状態で……スコップに『錬金術』を発動する。
……どうだろうか?
「ミーチャ。このスコップを持ってくれないか?」
「嫌よ」
「なんで?」
「だって、なんか汚いじゃない」
「ドブ攫いの汚れだよ。気にならないじゃないか」
「気にするわよ。ドブよ!?」
なかなか受け取ってくれないな。
しょうがない。
「ティーサ。持ってくれないか?」
「嫌で……はい、持ちます」
「どうだ?」
「どう、と言われましても……結構、持ちやすいスコップだというくらいで」
何!? ティーサはこのスコップの良さが分かるだと?
思わぬ逸材を見つけてしまったかもしれない……
いや、そうではない。
「ドブ攫いをイメージしてくれ」
「申し訳ありませんが、ドブ攫いをしたことがないので……土を掘るくらいなら……」
なるほど……検証しようにも相手を選ばなければならないということか。
「ロスティ。なんで、『ドブ攫い』を選んだの? もうちょっと、他のものはないの? そういえば『口笛』ってスキルあったわよね? それがいいんじゃないかしら」
あったな……『口笛』スキル。
口で様々な音階を奏でることが出来る。
口笛で敵を寄せ集めることが出来るというので、買ってみたが、ダンジョンに行けば食材用の敵に困ることもなかったので使う機会がなかったのだ。
口笛を吹いてみた……外が若干、賑やかになったような気がするが、気のせいだろう。
問題は何に付与するかだ。
この鉢巻が良いかもしれない。
口笛がうまくなる鉢巻……悪くないな。
口笛を吹きながら、『錬金術』を発動……
どうだろうか?
ミーチャは嫌そうだな。
「ティーサ。とりあえず、口笛を吹いてみてくれないか?」
「えっ? お恥ずかしながら、口笛はどうしても出来なくて。頭では分かっているのですが、なぜか出来ないんですよね。ミーチャ様は……申し訳ありません! そんなに睨まないで下さいよ」
どうやら、二人共、口笛は苦手なようだ。
さて、鉢巻をティーサに付けてもらって……
「さあ、頼むぞ!」
ティーサの口から、かすかな口笛が……聞こえてきた?
口笛かどうか、かなり怪しいがティーサは驚きの表情をしている。
「ミーチャ様。私、口笛を吹けていましたよね?」
「どうかしら?」
「ミーチャ様もやってみませんか? もしかしたら……」
「もしかしたら、何? まぁいいわ。そんな鉢巻を付けてくらいで吹ければ苦労はないわよ」
……ミーチャも必死な表情で口笛を奏でようとしている。
ちょっと、面白い。
いやそうではない。だから、そんなに睨まないでくれ。
「吹けた? 吹けたわよね? ティーサ。どう?」
「そ……そうですね。ふ……けてましたね!」
なんだ、その間は。
正直に言えば、かなり怪しい。
音らしいものは出ていたような気がしないでもないが……。
「ロスティ。どうやら成功したみたいね。ところでスキルを付与したとすると、ロスティの持っているスキルはどうなるの?」
ん? そんなの……あれ?
「スキルが無くなっている?」
さっきまで奏でていた口笛が全く吹けなくっている。
実は『口笛』スキルを手に入れる前は全く吹けなかったのだ。
「そういうことね……つまり……」
スキルを物質に付与することは『錬金術』で可能なようだ。
しかし、付与するとスキルそのものは消滅してしまう。
ちなみに魔法を付与する場合、魔力が消滅するようだ。
つまり、一回分の魔力が消耗されるということだ。
「じゃあ、『口笛』スキルの付与が成功しているのなら、もう少し、上手く奏でることが出来るんじゃないのか?」
ミーチャとティーサにものすごく睨まれてしまった。
「私としてはかなり上出来だった口笛をバカにするとは……いい度胸ね。まぁいいわ。多分だけど、『錬金術』の熟練度が影響しているんじゃないかしら」
ふむ。それは考えられるな。
『スキル授与』と同じ考え方なら、付与されるスキルの熟練度は『錬金術』の熟練度に影響されるということだ。
「でも、やっぱり変だよ。たとえ、口笛の熟練度が最低の☆1だとしても、下手……いや、その程度しか出来ないっていうのは……」
「可怪しいわね。あれほど、上出来な口笛をその程度とは……ねぇ、ティーサ。どう思う?」
「ひどい話だと思います」
ミーチャは口笛が吹けたことがどんだけ嬉しいんだ?
いや、これは重要なことだ。
はっきりしておかなければならない。
なんとか二人の睨みに耐えながら、検証を続けていくと一つの結論が出てきた。
「熟練度が下がるようだな。ということは『口笛』スキルは☆0.5みたいな感じなのかもしれない。それならば、納得だ」
「いいえ。私は納得できないわ!」
「私もです! ミーチャ様の言うとおりです」
とりあえず無視だ。
目の前にはいくつかの検証した物が散乱している。
どれもが付与に成功したものだ。
「これからスキルを取り出すことは出来ないのかな?」
出来そうだったが、無理だった。
どうやら僕自身に『錬金術』を使うことは出来ないようだ。
変わりに他のものを使ってみると、簡単に移動が出来た。
物から物ならば可能なようだ。
「ミーチャ。そんなに鉢巻を気に入ったの?」
さっきからずっと口笛らしいものを吹き続けている。
よく見ると鉢巻にミーチャと書かれていた。
まぁ、いいか。
『錬金術』……なかなか奥が深そうなスキルだ。
魔法だけではなく、スキルを付与できる。
これを極めれば、包丁を握っただけで料理人ということも可能になるということだ。
スキルで人生を決められてしまう……そんな世界に変化をもたらせることができるかもしれない。
ん? 何かを忘れているような気がするな……。
まぁいいか。
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もちろんミーチャの口笛も王宮の片隅で響いていた……。
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