10 / 69
地方コンテスト
第9話 結果発表
しおりを挟むついに装飾部門が始まった。
鍛冶師部門はやはりというべきか、思った通りの人が優勝していた。
僕もあの舞台に立ってみたいな。
「お兄ちゃん。あれも食べていい?」
「ダメだぞ。そろそろ始まるんだから」
といっても、アリーシャには暇なのか。
品を説明するのも僕がいれば、事足りるし……。
「やっぱり、これをあげるよ。好きなものを食べてきていいよ」
「いいの!? 金貨一枚も。ちょっと、行ってくる!」
本当にアリーシャはかわいいな。
妹がいたら、こんな感じなんだろうか?
僕に兄弟と言えば、最低な兄しかいないからな。
せめて、アリーシャにはいい兄でいないとな。
さて……。
「これより鍛冶師コンテスト、装飾部門を始めさせていただきます!」
アナウンスが流れ、ぞろぞろと観客が集まりだす。
といっても、先程の熱気は余り感じられない。
装飾部門はどちらかというと、実用性を重視していない。
鑑賞物としての価値に重点が置かれている。
そう言う意味では僕の剣はかなり不利だ。
実用性に全振りしているようなものだから。
切れ味、耐久度、重さ……その辺りを考えて、研いでいるから。
そんな中でも人だかりが出来ている場所があった。
「やっぱり、魔道具だけは別なんだな」
誰に言うわけでもなく呟く。
魔法という不思議な力を物体に封じ込めることに成功した技術だ。
それ事態は歴史が古い。
それを武具に使うという発想はなかなかない。
まだ、新しい技術のため、荒削りではあるが将来性は凄まじいだろう。
「これ、手にしてもいいですか?」
「ええ、もちろん」
僕のところにも何人かの人がやって来る。
装飾部門では変わった……何の飾り気もない普通の剣だ。
関心が集まるわけがないな。
しかも、皆、首を傾げながら去っていく。
何か、変なところでもあったのかな?
「ほお。君も出ていたか」
誰だ?
若く、顔の整った……というか、考えられないくらいカッコイイ人だな。
着ている服も上等なものだ。
どこかの貴族かな?
といっても、面識はない……よな?
「ウォーカー家を出ていったと聞いたが……」
随分と家の事情に詳しいみたいだな。
「あの……」
「剣を見ても?」
あまり人の話は聞かなそうだな。
「どうぞ」
剣の持ち方からして、やっぱり貴族だな。
王国剣術の型が自然と出ている。
「これはいいね。でも、変だな」
やっぱり、僕の剣は変なんだ……。
でも、どこが?
今の僕が持っている全てをぶつけた作品だ。
変なところは一つもないはずなんだけど。
「これは、ここの武具屋で買ったのかい?」
「はい。それを研いで……」
「ふむ……」
その人はゆっくりと剣を置い、しばらくじっと剣を見つめていた。
「そういうことか!」
いや、何が?
だけど、それから言葉が続くことはなく、立ち去ってしまった。
あの人は一体……。
それからすぐにコンテスト終了の合図が鳴った。
終わったかな?
観客の感触もあまりいい感じではなかったし、僕の剣はどこか変みたいだから。
でも、いいんだ。
最初からコンテストでいい結果を残そうなんて、無理な話なんだ。
もっと研鑽を詰んで、また挑めばいい。
でも……入賞しないと買い取り先が……
僕のマイ工房が……。
「お兄ちゃん。ただいま」
えっと……
「口の周りを拭いてやるから、こっちに来なよ」
一体、どれだけ食べたんだ?
口の周りが大変なことになっている。
「んとね!! あっちに……」
それからしばらくはアリーシャの食レポが始まった。
どれもがツバを飲み込みたくなるほど美味しそうだった。
「でもね。お店、もう終わりだって」
……残念だ。
また、来年参加したときにでも食べてみようかな。
「お待たせしました! これより鍛冶師コンテスト、装飾部門の入賞者を発表します!」
ついにやってきたな。
装飾部門は、鍛冶師部門と違って最終選考は存在しない。
出展数が違いすぎるから。
僕は祈るような思いで発表を見守る。
入賞さえすれば……
「第三位……」
ついに入賞者の発表だ。
「ヴェルーダン工房のマーティンさんの作品です!」
たしかにあの人の装飾は凄まじかったな。
金で剣の全身を染め上げ、そのうえ宝玉が取り付けられいた。
まさに宝だ。
貴族ならば、応接室に必ず飾りたいと思わせる一品だった。
「第二位……」
一位は絶対に無理だ。
なんとか、ここに……
「ブール鍛冶協会のロンスキーさんの作品です!!」
まさか、あの人が二位だって!?
魔道具で革新的な技術を見せつけて、誰よりも観客を集めていたのに。
燃える剣……それが代名詞みたいな素晴らしい武具だった。
ということは一位は誰なんだ?
いや、その前に……
終わったな。
僕の入賞はありえない。
「第一位は……」
もう帰ろうかな。
でも、ちょっと気になるな。
「個人での参加ですね……ライルさんの作品が今回の最優秀作品となります!」
どよめきが少し起こった。
いやいやいや……
あれ? 同名ってことはないよね?
信じられない。
そんな事は……嘘だよね?
「お兄ちゃん! おめでとう!!」
「あ……うん。本当に僕なのかな?」
そういった直後に案内の人に連れて行かれた。
まだ、信じられないよ。
僕のが最優秀だって?
そんな訳が……。
壇上に立たされ、三位の人から賞を受け取っていた。
大きなメダルのようだ。
そして、僕の番だ。
……ってこの人は。
「やあ、また会ったね」
誰なんだ、一体。
「これより本コンテスト主催のスターコイド公爵家当主様よりご挨拶を賜りたいと思います。デルバート=スターコイド様、お願いします」
……うそ、だろ?
この人……あの……
デルバート兄さん!?
いや、でも……面影が微塵も……
「今回も素晴らしい作品に……」
全く話が耳に入ってこなかった。
会うのは十年振りくらいかな?
子飼いの男爵家の宿命だろうか。
親貴族に子弟の奉公人を立てるのが通例になっている。
大抵は後継者にならない次男とかに、その役目が回ってくる。
もちろん、ウォーカー家からは僕が出された。
小さい頃の話だ。
その時に、何度か話したことがあったんだ。
やたらと、自分のことをお兄さんと呼べとしつこかった記憶だけが今も残っている。
その癖でつい、デルバート兄さんと言ってしまいそうだ。
今は公爵家当主……代替わりをしたとは聞いていたけど……
まさか、デルバート兄さんがなるとはな。
所詮は男爵の次男。
こんな情報すら耳に入ってこないとは……悲しいな。
「それでは皆さん、これでコンテストは終了となります! また、来年、お会いしましょう」
これで終わったな。
いや、始まったんだ!
僕のマイ工房計画が……!
あれ?
どうして、肩を掴まれているんだろう?
「ライル君。ゆっくりと話をしようじゃないか? ん?」
どうやら、計画の前に一波乱ありそうです。
まさか、あの人と再び会うなんて……夢にも思っていなかったんだ。
2
あなたにおすすめの小説
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる