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地方コンテスト
第12話 公爵の闇①
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宴は一昼夜にも及んだ。
「デルベート様。僕達はそろそろ……」
これで何度目だろうか?
その度に……
「私の最大の喜びを共に分かち合おうとは思わぬのか? あのフェリシラが……うぐっ」
帰れない……。
どうしたものか。
アリーシャは相変わらず、ずっと食べているのか。
良く休まずに食べていられるものだな。
大騒ぎするデルベート様を横目にフェリシラ様のいる部屋を窓から見つめていた。
僕には分からなかった。
なぜ、彼女があのような病気を患っているのか……。
そして、最後に聞いたあの言葉。
思い出しただけで恥ずかしいけど、あれは本当に彼女の言葉だったんだろうか?
気の迷い?
なんにしても、僕に確かめる方法はない。
それに僕は庶民に過ぎない。
立場が違いすぎるのだ。
僕はもう二度と彼女に会うことはないだろう……。
そう思うととても胸がギュッと痛む。
「でも、しょうがないよな」
「おや? 何がしょうがないのかな?」
またこれか。
「デルバート様、絡み酒は大概に……」
僕はごくりと生唾を飲んだ。
決して、美味しそうな香りがしたからではない。
とても怖い……いや、そんな表現ではない、底知れない恐怖を感じさせる目をしていたのだ。
「とても思い出したくないんだけどね……君には教えておこうと思ってね」
何が……始まると言うんだ?
……ここは?
案内された場所は小さな部屋だった。
ただ、ソファーとテーブルだけが置かれただけの質素な作り。
だが、やたらと頑丈な扉が異様な雰囲気を放っている。
「待たせたね」
「あの……ここは?」
デルバート様は執事からワインとグラスを受け取り、外に出るように指示を出した。
執事には……「私が言うまで、誰も入れるな」……と言っていた。
僕は正直、逃げ出したい気持ちに襲われていたが、それを踏みとどまらせていた理由があった。
それは……
「フェリシラの事……どこまで知っているかな?」
彼女の話だったからだ。
僕が知っている話なんて大したことはない。
王国の学園に入学したと第二王子と婚約したことくらいだ。
それからの事は何も知らない。
「ふむ。ところで、一つ聞きたいのだ。君はフェリシラを今でも好きでいてくれるのかな?」
……。
僕は首を横に振った。
デルバート様がどう言う意味で聞いているのかはわからない。
庶民の僕が高嶺の花であるフェリシラ様をどう思っているかなんて、どうでもいいことだと思う。
だけど……
「分かりません。自分の気持ちがどこにあるのかも」
「ふむ。正直な答えだ……では、話そう」
一体、何だったんだ?
だけど、その後の話は怒りに震えるほどの内容だった。
「そんなバカな話がありますか!?」
「それがあったのだ……だからこそ、思い出したくはなかった」
彼女は学園を入学したのは10歳だったらしい。
そのときにはすでに第二王子とは婚約者の間柄だった。
それなり、うまく関係は築けていたらしい。
しかし、どこかで歯車が狂った。
その年は学園で珍しいことが起こった。
それは庶民からの転入生が来たことだ。
その女性はとても優秀で、見目も誰もが羨むものだったそうだ。
第二王子はその女性に恋心を持った。
もちろん、婚約者がいる以上、庶民との恋はどうあっても許されるものではない。
それを面白くないと思った第二王子は……
フェリシアに信じられないようなことをした。
女性としての尊厳を奪い、最後には毒を飲ませた。
毒は遅効性で、じわじわと体を岩のように変えてしまうものだ。
待っているのは死、のみだ……。
病状はかなり進行しているみたいだ。
なんとか治療を試みるが、彼女がそれを受け付けず、どうしようもない状態だと言う。
こんな話を聞いて、僕はどうかしていた。
目の前にあるワインを瓶ごと飲み始めた。
飲まずには聞いていられなかったんだ。
「君は本当にいい男だね。この話でフェリシアのために怒ってくれているんだろ?」
「当たり前じゃないですか!! フェリシア様が可哀想で……」
デルバート様も涙ぐみ始めていた。
「私はね……ライル君。愛する妹をこのような仕打ちをした奴を許さないよ」
それはそうだ。
絶対に許せない。
「あの第二王子を必ず、私の手で捻り潰してやる。そのためなら、手段は選ばない。どんな手段でも……フッ……フッフッフッ」
こういう時は変な気分になってしまうものだ。
「そうです! やりましょう!!」
「はっはっはっ!! そうだ。その意気だぞ」
……。
……。
……それって反逆行為じゃん!
ダメだよ。
第二王子を捻り潰したら、大変なことになっちゃうよ。
しかも、公爵が?
戦争だよ。絶対に戦争になるよ。
「デルバート様!! ちょっと、考え直しましょう!」
「いや、絶対に許さん。あのボンクラに天誅を下してやる。加担した奴らも全員……」
ダメだ。
完全に闇に落ちかけている。
ちょっと、待て。
僕……非常にまずくないか?
こんな話になるとは思ってもいなかったが……逃げ出したほうが正解か?
扉には誰もいない。
簡単に逃げ出せるはず。
これ以上、話を聞けば、引き返せなくなる。
僕の鍛冶道が潰えてしまう……。
ひっ!! なぜ、腕を取られているんだ?
いつの間に。
「逃さぬよ。ライル君」
怖い……怖すぎる。
「デルベート様。僕達はそろそろ……」
これで何度目だろうか?
その度に……
「私の最大の喜びを共に分かち合おうとは思わぬのか? あのフェリシラが……うぐっ」
帰れない……。
どうしたものか。
アリーシャは相変わらず、ずっと食べているのか。
良く休まずに食べていられるものだな。
大騒ぎするデルベート様を横目にフェリシラ様のいる部屋を窓から見つめていた。
僕には分からなかった。
なぜ、彼女があのような病気を患っているのか……。
そして、最後に聞いたあの言葉。
思い出しただけで恥ずかしいけど、あれは本当に彼女の言葉だったんだろうか?
気の迷い?
なんにしても、僕に確かめる方法はない。
それに僕は庶民に過ぎない。
立場が違いすぎるのだ。
僕はもう二度と彼女に会うことはないだろう……。
そう思うととても胸がギュッと痛む。
「でも、しょうがないよな」
「おや? 何がしょうがないのかな?」
またこれか。
「デルバート様、絡み酒は大概に……」
僕はごくりと生唾を飲んだ。
決して、美味しそうな香りがしたからではない。
とても怖い……いや、そんな表現ではない、底知れない恐怖を感じさせる目をしていたのだ。
「とても思い出したくないんだけどね……君には教えておこうと思ってね」
何が……始まると言うんだ?
……ここは?
案内された場所は小さな部屋だった。
ただ、ソファーとテーブルだけが置かれただけの質素な作り。
だが、やたらと頑丈な扉が異様な雰囲気を放っている。
「待たせたね」
「あの……ここは?」
デルバート様は執事からワインとグラスを受け取り、外に出るように指示を出した。
執事には……「私が言うまで、誰も入れるな」……と言っていた。
僕は正直、逃げ出したい気持ちに襲われていたが、それを踏みとどまらせていた理由があった。
それは……
「フェリシラの事……どこまで知っているかな?」
彼女の話だったからだ。
僕が知っている話なんて大したことはない。
王国の学園に入学したと第二王子と婚約したことくらいだ。
それからの事は何も知らない。
「ふむ。ところで、一つ聞きたいのだ。君はフェリシラを今でも好きでいてくれるのかな?」
……。
僕は首を横に振った。
デルバート様がどう言う意味で聞いているのかはわからない。
庶民の僕が高嶺の花であるフェリシラ様をどう思っているかなんて、どうでもいいことだと思う。
だけど……
「分かりません。自分の気持ちがどこにあるのかも」
「ふむ。正直な答えだ……では、話そう」
一体、何だったんだ?
だけど、その後の話は怒りに震えるほどの内容だった。
「そんなバカな話がありますか!?」
「それがあったのだ……だからこそ、思い出したくはなかった」
彼女は学園を入学したのは10歳だったらしい。
そのときにはすでに第二王子とは婚約者の間柄だった。
それなり、うまく関係は築けていたらしい。
しかし、どこかで歯車が狂った。
その年は学園で珍しいことが起こった。
それは庶民からの転入生が来たことだ。
その女性はとても優秀で、見目も誰もが羨むものだったそうだ。
第二王子はその女性に恋心を持った。
もちろん、婚約者がいる以上、庶民との恋はどうあっても許されるものではない。
それを面白くないと思った第二王子は……
フェリシアに信じられないようなことをした。
女性としての尊厳を奪い、最後には毒を飲ませた。
毒は遅効性で、じわじわと体を岩のように変えてしまうものだ。
待っているのは死、のみだ……。
病状はかなり進行しているみたいだ。
なんとか治療を試みるが、彼女がそれを受け付けず、どうしようもない状態だと言う。
こんな話を聞いて、僕はどうかしていた。
目の前にあるワインを瓶ごと飲み始めた。
飲まずには聞いていられなかったんだ。
「君は本当にいい男だね。この話でフェリシアのために怒ってくれているんだろ?」
「当たり前じゃないですか!! フェリシア様が可哀想で……」
デルバート様も涙ぐみ始めていた。
「私はね……ライル君。愛する妹をこのような仕打ちをした奴を許さないよ」
それはそうだ。
絶対に許せない。
「あの第二王子を必ず、私の手で捻り潰してやる。そのためなら、手段は選ばない。どんな手段でも……フッ……フッフッフッ」
こういう時は変な気分になってしまうものだ。
「そうです! やりましょう!!」
「はっはっはっ!! そうだ。その意気だぞ」
……。
……。
……それって反逆行為じゃん!
ダメだよ。
第二王子を捻り潰したら、大変なことになっちゃうよ。
しかも、公爵が?
戦争だよ。絶対に戦争になるよ。
「デルバート様!! ちょっと、考え直しましょう!」
「いや、絶対に許さん。あのボンクラに天誅を下してやる。加担した奴らも全員……」
ダメだ。
完全に闇に落ちかけている。
ちょっと、待て。
僕……非常にまずくないか?
こんな話になるとは思ってもいなかったが……逃げ出したほうが正解か?
扉には誰もいない。
簡単に逃げ出せるはず。
これ以上、話を聞けば、引き返せなくなる。
僕の鍛冶道が潰えてしまう……。
ひっ!! なぜ、腕を取られているんだ?
いつの間に。
「逃さぬよ。ライル君」
怖い……怖すぎる。
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